自分たちの町を紹介しあう交流授業

−わたしたちの町でがんばっている人々を紹介しよう−

                     小学校第5学年・総合的な学習の時間・三重大学教育学部附属小学校 鵜飼 節夫
キーワード 小学校,5年,総合学習,情報,インターネット,Webページ,学校間交流


インターネット利用の意図
 自分たちの生活している中で,がんばって働いている人について取材し,その取材で分かったことや伝えたいことなどを電子メールや互いのWebページ,テレビ会議システムなどを利用して交流する。
 津市(附属小学校所在地)は,県庁所在地でもあり様々な産業が盛んなだけでなく,商店や交通も発達している。また,河芸町(豊津小学校所在地)は,津市に隣接しているものの,農業・漁業中心の地域で,津市の地域性とは異なったものがある。
 それぞれの町の特色あることがらについて情報交換したり,自分の町にはないような内容について伝えあったりして,社会にはいろんな仕事があることや,はたらいている人の苦労や工夫を知る。
 そして,これまで気づかなかった自分たちの町や,地域の人たちに誇りを持ち,自分たちの自信につなげていく。
 子どもたちは,自分の地域で,直接見たり聞いたり試したりする体験学習をする。そして,いろんな人との出会いの中で,苦労や楽しさについて考える。
 また,学校内ではなかなか学習できないような内容にも触れることができる。
 この学習が次の学年に受け継がれたり,他の学校でも取り組まれたりして,総合的な学習の輪がさらに広がる可能性を持っている。


1 わたしたちの町でがんばっている人々を紹介しよう
(1) 目標
(a) みんなで協力し合って,津の町でがんばっている人についての取材をし,取材してきたことをまとめて,Webページで発信することができるようになる。
(b) 取材や友だちのWebページを通して,がんばっている中身について深く考え,がんばっている人の生き方に共感したり,自分の励みにしたりして,これからの生活に活かそうとする。
(c) 取材やWebページづくりの時,デジタルカメラやホームページ作成ソフトを活用し,意欲的に取り組むことができる。
(2) 単元設定の理由とその指導について
(a) 単元設定の理由
 本年度,5年生の子どもたちは,全国発芽マップ99’に参加し,自分たちがケナフを育てた時の苦労や,がんばって育てたケナフに花が咲いたときの喜び等をたくさんの人に知ってもらいたいという気持ちが表れてきた。
 また,子どもたちの中には,本校のホームページから一昨年度の「津の町を紹介しよう」のページを見て,自分たちも津の町を紹介したいという子どももいた。
 そこで,その子どもたちの思いを学級で紹介していった。子どもたちは,駅の職員の人が忙しいときにも,何かで困っている人から尋ねられたときには,優しく丁寧に教えていることや,朝早くから,公園をはいたりしている人がいるので,そのがんばっているところを紹介したいというものであった。つまり,津の町の史跡や有名な店を紹介するのではなく,仕事でがんばっている人を調べて,ケナフのように,Webページでたくさんの人にがんばっている人を通して津の町を紹介したいと言ってきたのである。
 そこで,津の町でがんばっている人について取材していく活動を通して,実際に自分の足を運ぶことで,仕事の中身を詳しく知ることがでたり,その人の頑張りや人柄に直に接することで,その人の生き方に共感したりすることができると考えた。
 また,Webページをつくることを通して,取材の時にどんな情報を得ればよいのかや取材の仕方を学んだり,情報を発信するときの責任についても考えさせることができると考えてこの単元を設定した。
(b) 指導について
 この単元では,子どもたちに,取材面,内容面,技能面の3つの側面から指導してきた。
 取材面では,取材先との連絡を取り,納得がいくまで繰り返し取材をするように指導した。
 内容面では,感じたことや思ったことが中心になり,見る人にとって興味がわき,欲しい情報が詰まったものになっているかを意識させながら,Webページをつくらせた。
 技能面では,デジタルカメラ等の機器やhtmlエディタで,Webページをつくっていった。
(3) コンピュータ活用場面
 この学習では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。
(a) Webページづくり
 自分たちが取材してきたことをもとにして,がんばっている人のページをつくる。さらに,見る人のことを考えた内容にしていくことや,内容を充実させていくために交流校の友だちの意見を取り入れてつくり直していく。
(b) テレビ会議システムによる交流
 調べたことをもとにリアルタイムで交流し,お互いに質問をし合ったり,興味を持ったことや考えの違いなどについて意見を出し合うために,ネットミーティングというソフトを利用したり,フェニックスを利用したりする。
(c) 電子メールによる交流
 仕事の内容で,自分だったらどんなことを聞きたいかを事前に聞き合ったり,未完成のWebページを見て思ったことや感じたことなどを伝え合うために,メールを活用する。
(4) 利用環境

 

          図1

(a) 使用機種
 Apple GroupWorkServer1台, PowerMac 8500 1台,Performa5320 20台,アプライド社コンピュータ2台(本研究助成品)
(b) 周辺機器
 デジタルカメラCASIO QV-103台とOlympas Camedia C-830l(本研究助成品)1台,メルコMo Mos-S251 1台(本研究助成品),パナソニックポータブル       MD1台(本研究助成品) HyuretPackardイメージスキャナ1台
 図1 Webページをつくっている様子
(c) 稼働環境 【マルチメディアルーム】
 Apple GroupWorkServer1台, PowerMac 8500 1台,Performa5320 20台
【5C教室】アプライド社コンピュータ 2台(本研究助成品)
        <※上記すべてのコンピュータは,専用線(128K)で接続されている。>
(d) 利用ソフト Netscape Navigator gold3&editor,Netscape Comunicater4.6,
        Page Mill3.0,Homepage Builder2000,Photoshop5.0,QV-Link

2 指導計画

指導計画((o)/(t))

留意点

(a) 津の町を紹介しようのページを見て,思ったことを話し合う。
 ★インターネットの活用
  (イントラネット的な使い方)
 

・本校ホームページからアクセスさせ,全部のページをじっくりと見させる。
・気づいたことや感じたことを発表させるなかで,今年は,津の町の人と職業に焦点をあててページをつくることを引き出させる。

(b)(c)(d) 自分の身近なところでがんばっている人に目を向け,どのがん ばっている人について調べるのか を決める。
 ★インターネットの活用


 

・一人ひとりの子どもが,自分の身の回り(津市内)でがんばっている人に目を向け,どんな人のページをつくっていきたいかを考え始めさせる。
・いくつかの取材先を探させ,自分が実際に取り組む内容を決めさせる。
・職業についてインターネット上で自由に検索できるようにする。

(e)(f)(g) 取材の仕方や内容について考える。
 豊津小と交流を始める。
 ★インターネットの活用




 

・つくるページのテーマが決まったものから,取材の方法,取材日程,取材内容について考えさせる。
・自分たちと同じように,河芸町でがんばっている人を調べている豊津小のことを紹介し,豊津小にメールで交流の依頼をする。
・クラス全員のテーマ一覧を送り,このテーマであれば,どんなことを聞きたいかを聞き,参考にさせる。

(h)(i)(j)(k)(l)(m) 取材してきた内容を整理して,Webページにまとめる。
 

・2人で1台のコンピュータを使わせ,互いに協力してページをつくっていくようにする。
・子どもがソフトやデータを必要に応じて自由に使えるように,準備しておく。

(o)(本時)(p) 自分のWebページを手直しし,よりよいものにしていく。
 ★インターネットの活用
 ★ネットミーティング
  フェニックスの活用


 

・途中のページを豊津小の友だちに見てもらい質問を受ける。    
・全員のWebページをプリントアウトし,友達のプリントにもっと工夫してほしいことについて書き込みをさせる。
・豊津小やクラスの友だちからうけた助言を参考にして,自分のページを見直させ,よりよいものにするにはどうすればよいかを考えさせる。

(q)(r)(s) 調べなおしたりして,自分のWebページつくり直す。

・友だちの知りたいことや自分がわからないことがでてきた場合は,もう一度取材に行くようにさせる。

(t) Webページを公開する。



 

・クラスのみんな,豊津小学校の友だちに完成したWebページを見せ,表現の間違いや誤解が生じるおそれがないかなどについて点検する。
・取材先にお礼を言いに行かせる。


3 利用場面
(1) 目標
 未完成の自分のWebページを豊津小の友だちに見てもらい,質問や意見,感想を参考 にしてよりよいWebページをつくろうとするようになる。

学 習 活 動

活動への働きかけ

備考

1 本時の学習の進め方を知る。
 

・一人ひとりの子どもに活動の見通しを持たせる。




 

  豊津小の友だちの意見を参考にして,
  自分のページを見直そう

2 いくつかのページについてテレビ会議システムで話し合う。
・パン屋さん,交通整理,津市立図書館でがんばっている人など

 

・いくつかのページについてテレビ会議システムを用いて意見交換する。
・どんな質問がでても,答えられるように予想を立てさせ,準備させておく。

3つ以外は,事前にメールでもらっておく。

 

3 自分のページをよりよいものにしていく。
 ・自分の感想や気持ちが書かれているか。
 ・文章の内容がわかるか。
 ・文章と画像の構図

・もらった意見を参考にしながら,自分のページをどのように工夫すればよいのか考えさせる。

 






 

4 次時の自分の見通しを持つ。


 

・一人ひとりが次時にどのような活動をするのか考えさせる。
 

新たな取材が必要な場合は準備させる。
 

 2 津市の交通整理をがんばっている      図3 チカザワジムでがんばっている
    人のページ                 人のページ

4 実践を終えて
 がんばっている人に視点を当てたこの学習に取り組んだことで,子どもたちは取材のため実際に地域へ出かけ,いろいろな人と接することができた。地域の人と直に触れあうことで,その人の考えや気持ちを理解できるようになった。
 例えば,この学習の始めに,パン屋さんが一番うれしいと感じるのは,たぶんパンがたくさん売れて儲かったときだろうと予想していた子どもが,実際調べていく間に,パンがあまり売れないときでも,ひとりのお客さんが,「この前のあのパンおいしかったよ。」という一言をもらったときが一番うれしいということがわかったことである。
 また,将来,歯科医になりたいと思っていた子どもが,この取材やWebページにまとめる学習を通じて,この仕事は大変だけど,やはり自分は歯科医になりたいという気持ちがさらに強くなったという感想を持ったのである。
 この学習に取り組む以前の子どもたちは,自分と地域とのつながりや,自分がいろんな人の仕事に支えられているということには,あまり気付いていないようであった。それが,地域の人にすすんであいさつをするようになったり,友だちにも地域の人の仕事を紹介したりするようになった。
 さらに,子どもたちは,意欲的に取材やWebページつくりに取り組んでいたので,互いに相談しあいながら,コンピュータや周辺機器の操作についても,問題なく理解し,扱えるようになった。
 また,自分で取材したことをWebページにまとめ,インターネット上に公開できたことが自信になり,他の学習にも意欲的に取り組めるようになってきた。
 しかし一方では,営業時間中に取材に出かけることが一番よいのであるが,指導者一人では,子どもたちを一斉に取材に行かせることが物理的に無理であったり,子どもたちだけで学校を離れて取材に行かせることは危険であったりする問題もある。

ワンポイントアドバイス
 リアルタイムで,子どもたちが交流できると,意欲面や理解面で非常に役立つことを実感できた。ネットミーティングでは,静止画像をもとに音声やチャットを併用し,リアルタイムで交流することができた。また,ホワイトボードは,画像を共有しながら書き込みができるので有効である。ただ,実施する時間帯によっては,フリーズしてしまったり速度が遅くなったりする事があった。
 フェニックスは,動画・音声とも良好で,子どもたちにも好評であった。フェニックスとホワイトボードの併用がリアルタイムに交流するには有効である。     


参考文献
 「インターネットホームページ用素材集 CD-ROM for Windows」(株式会社インプレス)インプレス編集部
 「Internet Explorere 5 ステップバイステップ」(日経BPソフトプレス)
  ActiveEducation.inc.

利用したURLなど
 本校ホームページ(http://www.rakko.fuzoku.edu.mie-u.ac.jp)
 がんばっている人のページ(http://www.rakko.fuzoku.edu.mie-u.ac.jp/ganba/index.html)
 津市立図書館のページ(http://www.info.city.tsu.mie.jp/)