小2郵便局(メディアキッズ)を核とした生活科での情報機器の活用
小学校第2学年・生活科
美杉村立太郎生小学校 中林 則孝
キーワード 小学校,2年,生活科,メディアキッズ,フェニックス,学校間交流
インターネット利用の意図
小学校の低学年でのインターネット利用はどの程度可能なのだろうか,そのことを実践的に考察したいというのがこの研究の意図である。
2年生の児童は,読める漢字は限られている,ローマ字は習っていない,生活経験も不足している。こんな状態の子どもたちではあるが,家ではほとんどの児童がビデオゲームをしている。またハードへの抵抗は少ない。
単にマウスを使ってのお絵かきに終わる情報教育ではなく,電子メールやフェニックスを使った学校間交流の可能性を探りたい。
1 メディアキッズ「子どもゆうびんきょく」を立ち上げる
(1) 「小2ゆうびんきょく」から「子どもゆうびんきょく」へ
2年生だけ交流にとどめたくないので,今年は「子どもゆうびんきょく」とした。主たる参加対象学年は小学校1年,2年,3年の低学年である。メディアキッズの「作戦会議室」に次のように書き込んだ。
「友達になってください」をメインにはしたくありません。生活科や3年生の社会科で勉強したことを,低学年なりに,短い言葉でいいので,表現し合いたいと思います。また,可能なら沖縄の学校にもここに入ってもらいたいと願っています。 |
(2) オフライン会での打ち合わせ
10月10日に東京でメディアキッズの「まとめ会」(オフライン会)が開かれた。
その席で,「子どもゆうびんきょく」については次のようなことを話し合った。
主な参加対象児童 |
2 低学年にとっての入力の壁
(1) ローマ字入力か,カナ入力か
音声入力がまだ使いにくい現状ではどうしてもキーボードを使わなければならない。「ローマ字入力」か「カナ入力」のどちらかを選択しないといけない。
私はこれまで高学年では全員にローマ字打ちを覚えさせてきた。将来有益だと思うからである。何人かの児童は,タッチタイプに近い状態で打てるようになっていた。
しかし,2年生の最大の壁は,ローマ字を習っていないということである。高学年のように,一通りローマ字を習っていても忘れていることがある。
そこで,逆説的だが,ひらめいた。6年生の子でもローマ字表は欠かせない。初めはそれを見ながら打っている。それでは2年生もローマ字表を見ながらうったらいいのではないか。無理がないかどうか,そこは子どもの様子を見たらいい。
10月になり,ローマ字の表をみんなに配布し,キーの位置だけは簡単に説明した。2年生の子どもたちは,マウス操作にはゲームやCDROMを見ることで慣れているが,キーボードを使うのは初めてである。
しかし,すごいものだ。何人かは最初の時間に2行から3行,書き込んでいる。
たろうしょうがっこう2ねんおくむらえりかです。わたしたちのケナフはおおきいです。 |
たろうしょうがっこう2ねん かなざわじゅん |
幸い,2年生教室には古いパソコンがあるので,それを使ってワープロの入力練習用にすることにした。
(2) 習熟することの意味
2カ月も立つと,1/3ほどの児童はローマ字表を見なくなってきた。子どもたちの質問も,撥音や促音などのことにうつってきた。普通の簡単な表記は担任である私に聞く必要はない。当然のことながら,メディアキッズに関わることが多い児童ほど,ローマ字の習熟度は高い。この時期になると,ローマ字のことでわからなことがあっても,児童相互に教え合うようになってきた。ほとんど無理がない状態で,2年生の子どもたちがローマ字入力をマスターしつつある。これは驚くべきことであった。
3 ボードへの書き込みから
たろうしょうがっこう2ねん かなざわじゅん |
こんにちは,りゅうだいふぞく小学校3年2組の,ごやえりなです。 |
ぼくたちも,休みの日には,ときどき,てつだっています。高木こうた。 |
このように,授業との関わりを持たせたので,生活科での学んだことをそのまま書き込むようになった。ともすると,掲示板では趣味や好きなタレントのことが話題になりやすいが,担任が密接に関わり授業の一環として電子メールを利用すると,話題が限定されてくるので,自然条件の違いにも必然的に目が向く。例えば,「沖縄ではピーナッツを収穫した」とか,「小天小(熊本)ではみかんの取り入れを手伝っている」「ケナフジュースは太郎生小でも宮ケ瀬(神奈川)でも可能なのだな」などというように。
ケナフのように,自分たちが育て加工したことを,電子メールで九州,沖縄,横浜の子どもたちに発信する,その結果として私たちがやっていないことについても知ることがなる。そういった学習が,いずれも子どもたちの強い好奇心に支えられているので「生きる力」「自立する力」ともなっていくだろう。かつてのような知識の詰め込み型の学習では決して得られない「学力」といえる。
図1
図2
4 生活科でのフェニックスの活用
メディアキッズの「子どもゆうびんきょく」で,ケナフのことを発信し続けた2年生の児童はそれにとどまることはなかった。直接交流が無理なら,テレビ会議でさらに「ケナフのまとめ」をしようということになり,相手校を探した。残念ながら,「子どもゆうびんきょく」に関わっている学校にはフェニックスがなかったので,別の学校を探した。そして,11月24日,香良洲小学校6年生との交流が行われた。2年生と6年生という,異学年の交流となった。
単にフェニックスで話し合うだけではなく,それを補完する物として2つの方法を講じた。1つは,私たちがこれまでケナフの学習をしてきたことをWEBページとして作っておき,それを事前に相手校に見ておいてもらった。大量の写真なので,とてもプリントアウトして送ることはできないが,WEB上でならコストも時間もかからない。まさにインターネット時代の交流であった。
もう1つは「もの」にこだわった。フェニックスでの交流は相手の顔が見えるし,声も聞こえるとはいえ,現実の空間ではない。そこに物を介在させることにした。
太郎生小:「6年生の皆さん,ケナフで作って紙を見たことがありますか。ある人は手を挙げてください。」
香良洲小:(一人も挙手しない)
太郎生小:「では,ケナフで作った紙を見たいと思う人は手を挙げてください。」
香良洲小:(多数の児童が挙手する)
太郎生小:それでは今から,ケナフで作ったハガキを届けますからね。すぐに届けるよ。そーれ」
香良洲小:(「そーれ」という太郎生側の声を聞いて)「これが太郎生小からもらったケナフのハガキです」(と,袋から取り出し子どもに配る。太郎生小でも,香良洲小でも大きなざわめきが起こった)
事前にケナフの紙を,香良洲小に届けておき,フェニックス交流の最中に取り出すという演出だった。双方の児童に強いインパクトを与えた。
5 実践を終えて
世の中はあげてインターネット時代である。しかし,小学校の低学年ではどこまで可能であるかということが今回の主たる課題であった。子どもたちだけの自由な取り組みはさすがに難しいが,授業と一体化した形でインターネットや他の情報機器を使えば,十分に役に立つ。とくに小規模校にとってはたいへんメリットが多いと,実感している。
また,フェニックスでの交流に際しては,事前にWEBページでの交流をするとか,「もの」を介在させるなどの,補完する手だてを用意したため一層効果が上がった。
交流内容について事前に打ち合わせしたり,発表方法を準備するようなことはしなかった。交流そのものに意味があるのではないからである。
これまでの私の学習では,ケナフを育て,観察し,紙を作ることで終わっていた。せいぜいが模造紙や新聞でのまとめまでである。しかし,インターネットを使うことで,そこから交流という形での学習をスタートさせることができた。ケナフの学習が終わった後も,メールの交換は続いている。新たな話題を探しながら。
ワンポイントアドバイス |
図3
交流校
香良洲町立香良洲小学校(三重)
琉球大学付属小学校(沖縄)
小天小学校(熊本)
宮ケ瀬小学校(神奈川)