電子メールを利用した海外の学校との交流に基づく比較文化

高等学校1学年・比較文化
三重県立四日市西高等学校
清水 豊(社会) 井原 明美(英語)
キーワード 国際交流,Eメールによる国際交流,Eメールを活用した授業,日韓交流,韓国,比較文化,英語


インターネット利用の意図
 本校比較文化コースの独自カリキュラムに基づく「比較文化」の授業では,生徒が独自に設定したテーマに沿って本や新聞などから情報を集め,自分なりの考察をまとめたレポートを毎学期提出させている。これまでは,情報の収集・検索を専ら図書館で行ってきたが,インターネットが普及した昨今,これを活用できることは現代人には不可欠になりつつある。また,インターネットからは最新で,かつ音声や映像を含むより詳細な情報が手軽に得られるという利点もある。さらに,電子メールを使って海外の高校生と交流することで,既製ではない自分で直接得た情報を基に考察することも可能になる。
 以上の点から,インターネットを利用することによって生徒に現代の社会生活に必要な情報リテラシーを身につけさせ,また,自ら発見し考える力を養うことが,今回の授業の意図するところである。


1 韓国新亭女子商業高等学校との学校間交流に基づく「比較文化」
(1) ねらい

 本校は普通科各学年9クラスの中に1クラス「比較文化歴史コース」のクラスを設け,「比較文化」,「日本の文化」,「数学史」など独自の科目を取り入れたカリキュラムを実施している。特に身近なアジア諸国とのつながりを重視し,2学年の夏には韓国への研修旅行を実施。事前に朝鮮半島と日本の関係の歴史や韓国語の授業もあり,韓国との関わりが多い。しかし,生徒の中には「なぜ韓国なのか?」など今一つ韓国へ行き,韓国について学ぶ意味が見出せないでいる一面も見られた。また,昨年度「比較文化」の授業を担当して,生徒が自分たちにとってもっと身近な事(同世代の若者の持つ意識や価値観,またその生活や文化)などに高い興味を持っていることや,図書館を利用した調べ学習を行う中で,生徒に自分で発見し,自分の考えや意見をまとめる力が不足していることに気づいた。こうした点を少しでも改善できないかと考え,今回の授業を計画した。
(2) 指導目標
 目標は以下の3点である。
・同世代の韓国の高校生と交流することで,韓国を身近に感じさせると同時に韓国への関心を高める。
・電子メールを使って意見や情報を交換することで,自ら発見し知ることを体験させる。
・情報を収集・検索する際に,本や新聞を活用する従来の方法に加え,電子メール等を利用して直接情報を得たりインターネットで検索する方法も有効であることを実感させると同時に,コンピュータ社会に適応するための基礎力を身につけさせる。
(3) 利用場面
 この授業では,次のような場面でコンピュータを利用する。
(a) メール文の作成・保存
  コンピュータのワープロソフトを利用して英文メールを入力,保存する。
(b) 情報検索
  メール文を作成するまえの下調べの際にインターネットを使って必要な情報を検索する。
(c) メールの送受信
  韓国の高校へメールを送ったり,また,相手校からのメールを受信する。
(d) テレビ会議システムによる交流
 電子メールによる文字の交流と並行して,インターネット上のテレビ会議システムを利用してお互いに顔を合わせて会話する交流を行うことで,互いをより身近に感じ,また交流への関心を高める。
 これは来年度の研修旅行の際の直接交流をスムーズに進めるための前段階の交流としても大きな意味を持つ。
(4) 利用環境
 本校のパソコン教室にはMS-DOSのパソコンが約20台設置されていたが,インターネット接続環境にはなかった。そこで,このEスクエアプロジェクトを機に校内LANの予算を組み,職員室−進路指導室−図書館・パソコン教室間で校内LANを整備した。パソコン教室には新たにウインドウウズマシンを2台設置し,この2台をケーブルテレビのインターネット回線に接続することにより,授業でのインターネット使用を可能にした。

2 実践の経過



指導内容


留意点







 


 今回の「比較文化」の授業内容を説明交流相手校新亭女子商業高等学校の紹交流のためのグループ分け


 


 限られた授業時間で少しでも多くメールのが重要であることを強調する。
 グループ分けにあたっては,今回の授業に必要な過程や作業内容を説明したうえで,各グループ4〜5名でそれらの作業が円滑に行える体制をつくるよう指示する。

















 


 コンピュータの基本操作,および
ネチケットの説明













 


 実際にコンピュータを使って一つ一つの操作をさせながら説明する。

 事前のアンケートから,初めてコンピュータに触れる生徒が半数以上を占めることがわかっているので,初心者の生徒のペースに合わせて説明する。

 電子メール上のエチケット,ネチケットがあること,ネチケットにおいては人に不快な思いをさせないことが大原則であることを強調する。
 今回の交流に関しては,生徒のメールを送信前にチェックするので,詳細にわたる説明は行わず,問題のある事例が生じた時に随時指導していく。










 


 自己紹介メールの作成







 


 メールの基本的な形式を説明する

 文例はあえて出さない。

 英語の授業ではないので,英訳に困ったらいつでもヘルプが得られることを強調する

 質問のあった表現や文例を随時板書して参考文例とする。












 自己紹介メールの送信

★メールの送信


 グループ毎にメール交流のテーマを設定する。



 コンピュータを使用する際には,操作に慣れている生徒に初心者の生徒のサポートをさせ,グループ内での自分の役割をもたせる。

 テーマはできるだけ具体的にし,広範囲に及ぶ漠然としたものにならないように,また,安易過ぎるものや難しすぎるものは避け,自分たちの関心のあるテーマを設定するよう指導する。








 前回設定したテーマに基づいて相手校に送るメールを作成する。

★メール作成の際に必要な情報はインターネットなどを利用して検索する。


 英訳に困った時にはいつでもヘルプが得られることを強調し,生徒が英訳の困難さを気にして内容を安易なものにすることのないようにする。









 前回作成した英文をワープロソフトを使って入力,保存,送信する。

 相手校から届いた自己紹介メールを読む

★メールの受信・送信


 今回の交流では,相手校にも生徒を同数のグループに分けてもらい,グループ同士でチームとなって交流を行う。









 


 相手校からのメールを受信し,読む。
 相手校のメールの内容を確認したうえで,相手からの質問に対する答え,さらにこちらからの質問を含めた返事のメールを作成し,送信する。
★メールの受信・送信


 質問に対する相手からの答えに対してさらに質問をするなど,設定したテーマについてはできるだけ一問一答に終わらせず深く追究していくよう指導する。

 




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 7回と同様の内容を繰り返す。

★メールの受信・送信

★インターネットを利用した情報検索


 デジタルカメラを使って写真も添付して送るなど,学校にある機器を自由に利用させ,生徒の関心に応じて,限られた時間でできるだけ多様な電子メールの機能を体験させる。


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 相手校の生徒への最後のメッセージを作成・送信
 今回の交流に関するレポートの様式,作成にあたっての注意事項を説明する


 授業としての交流は今回が最後になるが授業外で今後も交流を続けようという相手校からの提案を生徒に伝え,参加を促す。


3 実践を終えて
 「比較文化」の授業は国語,歴史,英語の3人の教員が学期ごとに担当するという形を取っていることから2学期のみという限られた時間しかないこと,海外の学校との交流ということで英語を使わなければならないことが生徒にはかなりの負担になるだろうということを懸念していたが,実践を終えた(実際にはこれからも続くのだが)時点での感想は当初の目的をかなり達成できたのではないかと思う。
 生徒の取り組みや反応も,初めて相手校からのメールが届くとかなり変化した。韓国と日本ということでお互いに英語が母国語ではないもの同士ということも,英語を負担に感じる生徒達には良かったのかもしれない。相手校にも恵まれ,熱心に,慣れない英語で長いメールを送ってくれる韓国の高校生に刺激されて,やりとりを重ねるうちに,送信するメールの文の量や内容が確実に増えていった。デジタルカメラを使って自分達で撮った写真などもメールに添付して送り,互いの顔や制服,学校の様子などがわかるにつれ,文体にも堅苦しさがとれていき,表現が会話をしているようにいきいきしてきた。
 やりとりの内容については,中にはもう少し吟味が必要に思われるものもあったが,授業を終えた生徒の感想に「もっと意見や情報が引き出せるようなテーマを選ぶべきだった。」という反省も見られることから,生徒自身でもその事に気づいているようなので,今後3学年まで続く「比較文化」のレポートのテーマ設定のいい勉強になったのではないかと思う。
 コンピュータやインターネットの利用についても,初心者の生徒も基本的な操作をマスターできた。操作に関してグループ内で互いに教えあう姿も見られ,授業が進むにつれて操作に関する質問はほとんどなくなった。
 また,交流を通して,韓国と日本の違いというよりは共通点を多く発見し,同世代の高校生と知り合ったことで韓国を身近に感じた生徒も多かった。
 今回はコンピュータの台数や1人の教員で40人の生徒を担当するという条件から,グループ単位での交流になったが,相手校の生徒から「是非交流を続けよう。」という提案があり,こちらの生徒の中にも交流の継続を希望する生徒があったので,3学期から,放課後に週1回のテレビ会議システムを利用した交流と,電子メールによる個人交流の2本立てで交流を続けていくことになった。また,双方の生徒から,8月の研修旅行でソウルにいった時に会いたいという声も出ており,この点についても校内の関係者に働きかけ,是非直接交流を実現させたいと考えている。
 今回はインターネットと電子メールの活用,海外の学校との交流による比較文化という大きな目標に短期間でのぞんだが,生徒達は基本的な方法は身につけることができた。今後はそれを駆使して積極的に使いこなす機会を与えていくよう留意していきたい。

ワンポイントアドバイス
インターネットを利用した教育については,インターネットで交流相手や実践例の検索が容易にでき,関連する本も日本でもかなり出版されている。
それに加え,こうした実践がかなり進んでいるアメリカで出版された本も非常に参考になった。日本では,amazon.comなどを通じて簡単に安く入手することができる。
この種の情報には大阪教育大学の以下のサイトから簡単にアクセスできる。
このホームページはリンク集がかなり充実しているので,交流相手を探すためのサイトにも簡単にアクセスでき非常に便利である。


参考文献
 インターネットと英語教育 (大修館書店)
 よくわかる!インターネット活用 国際交流のためのガイドブック (小学館)
 新100校プロジェクト 平成10年度 成果報告集I
 ここまできた インターネットによる国際交流
                     (財)コンピュータ教育開発センター
 Net Lessons : Web-Based Projects for Your Classroom ( O' Reilly )
 Net Learning : Why Teachers Use the Internet ( O' Reilly )
 Computers in the Classroom ( Apple )

利用した参考URLなど
 大阪教育大学 http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/index.html#SEC-3A
 IECC     http://www.stolaf.edu/network/iecc/