「遊び」のネットワーク

−子どもの交流を助けるネットワークの利用−

小学校第5学年・総合的な学習の時間
大津市立真野小学校 中司善憲
キーワード 小学校,遊び,交流,たてわり活動,調べ活動


インターネット利用の意図
 子どもたちにとっては「遊び」といっても,それぞれに持つイメージは違ってくる。また,それぞれに地域によって親しんでいる遊びにも差がある。昔からの伝承遊びなども多くあるが,家庭でそれらを教わる高齢者がいない場合も多い。そこで,図書室で調べたり,地域の人たちにたずねるとともに,インターネットを通して,他地域の子どもたちの今の遊びやその地域独特の伝承遊びなどを調べることによって,子どもたちの遊びの種類が増えるのではないかと考えた。
 また,それらで調べたことを,ホームページ化することで,校内の遊びの資料として利用することを試みる。


1 わたしたちの「真野小の遊び」をつくりだそう
(1) ねらい

 本校では,児童会活動の一環として,児童のたてわり組織を生かした活動をしている。このたてわり活動は,通学班を基本として,地域密着型の活動をねらっている。本年度は特に,通学班での地域の遊びを中心とした異学年交流に力をおいている。そこでは,6年生の児童をリーダとした活動が中心となる。しかし,児童の活動はドッジボールや鬼ごっこなどの遊びが中心になることが多く,遊びの種類はそれほど多くはない。また,地域の遊び場などの特性を生かし切れていないことが多い。
 そこで,次年度活動の中心となる5年生の児童に,たてわりの活動の中での「遊び」をもっと楽しく,みんなが楽しめる「真野小の遊び」を考えてみようと働きかけることにした。そして,それぞれの児童が,自分の考える「真野小の遊び」を見つけるための学習を設定した。
 その学習では,次のような活動を想定した。
・児童に,「遊び」についての自分の思いを振り返る。
・他の学年の子どもたちとの「遊び」をどの様に作っていくかを考える。
・地域の特色ある遊びを調べ再認識する。
・自分の考える「真野小の遊び」をまとめ,実践する。
 これらの活動を通していくことによって,児童が来年度,六年生としてリーダになることの自覚と責任感を養うとともに,たてわり活動への自信を持って取り組んでいく態度の育成を願っている。

(2) 指導目標
・「真野小の遊び」を考える活動に主体的に取り組み,自分の思いをまとめ,表現していくことができる。
・「真野小の遊び」について,調べたり,表現したりしていくときに,自分の思いを達成できる適切な方法や機器を選択して利用することができる。

(3) 利用場面
 この学習では次のような学習場面でコンピュータを活用する。
(a) 自分のテーマについてホームページで調べる学習
 「昔遊び」,他の地域の遊びについて調べる時に,ホームページの検索などを利用して調べ,自分のメモに取ったり,印刷して利用する。
(b) 他の地域の遊びについて交流学校と電子会議室を使って問い合わせる。
 閉じた電子電子会議システムであるメディアキッズプロジェクト(図2),ダイナリンクウェブ(図1)の学級日誌の「お手紙しよう」のコーナーを利用して,自分たちの地域での遊びを伝えるとともに他地域での遊びなどを交流していくことにより,「遊び」についての考えを深める。
(c) 自分の思いをまとめる学習
 自分の考えた「真野小の遊び」をまとめる時にコンピュータを利用して,写真やカットを印刷して,壁新聞に貼ったり,ホームページ化したりするために利用する。
(d) 次年度以降へのメッセージとしてホームページ化して残す。
 調べたことやまとめたことをホームページとして残すことにより,次年度以降への「真野小の遊び」の資料として残るように作成し,思いを伝える。

(4) 利用環境
(a) 使用機種 教師用 NEC PC-98NX MA30H 1台
      サーバ NEC PC-98NX MA45D 1台
      児童用(コンピュータ室)NEC PC-98NX MA35D  1台
                  NEC PC-98NX MA30H 10台
         (普通教室 ) Apple Macintosh LC-630 1台 Apple iMac 1 台
                 COMPAQ PLONERIA 5133  7台

(b)周辺機器 デジタルカメラ   OLYMPUS CAMEDIA C-830L 3台
 イメージスキャナー NEC    MultiReader 300U  1台

(c) 稼働環境 
 平成11年9月より文部省と郵政省の共同事業「先進的ネットワークモデル事業」の大津市内の接続校としてインターネットにCATV回線を使用して接続した。校内は,事務室のNTサーバ経由で校内LANを設置して,職員室,コンピュータ室,普通教室の一部からアクセス可能である。現在職員の手による拡張中である。
(d) 利用ソフト
     統合学習ソフト スタディーノート
     ブラウザー   インターネットエキスプローラ

2 指導計画(全20時間)


       指導計画


留意点


(a)「真野小の遊び」についての学習のねらいと進め方を知る 
(1時間)


・次年度のたてわり活動の中心として自分たちが活動することを伝え,自覚を促す。
・学習活動の流れを大まかに伝える。


(b) 1年生とのたてわり2学年交流活動の計画を実行する。(図3)
(4時間)


・リーダーとしての経験をつかむために低学年と主体的に働きかけ交流する活動に取り組ませる。
 


(c) 自分の考える「真野小の遊び」を作るための課題を考える。
(1時間))


・前時の反省から全校のたてわり活動をするならどんな活動ができるか考えさせる。
・そのために必要な資料を集める方法を考える。


(d) 自分の考える「真野小の遊び」のための調査活動をする。
★インターネットの利用
(6時間)




 


★調べ方は,本,取材(聞き取り,アンケート)インターネットなどがあることを紹介し方法を適宜支援する。
★「こねっとgoo」などの検索サイトの利用法について指導する
★電子会議室(図1,2)にたずねるメールを出す時のマナーについて指導する。
・デジタルカメラ,ビデオカメラなど映像を必要とする児童のために準備する。


(e) 自分の考える「真野小の遊び」をまとめる。
★インターネットの利用
(4時間)
 


★まとめ方は,壁新聞,新聞,ホームページ,ビデオ番組などの方法があることを知らせ,必要な方法を選択させる。
・写真のコピーなど機器の一部の機能だけを利用できることも紹介する。


(f)「6年と遊ぶのはこれが最後だ集会」で,リーダーとして実践する。
(2時間)


・自分たちの考えた遊びや遊ばせ方などを生かして,実際にたてわり集団で活動する。
 


(g) 活動を振り返り,自分の思いをまとめる。
(2時間)
★インターネット(イントラネット)の利用


 


・学習を振り返り,自分の思いをまとめる。
★みんなの作品や感想をホームページ化してインターネット(イントラネット)上で公開して,他の学年や交流学校に見てもらう。
・ワープロの文書はHTML化し,その他のものはイメージスキャナなどで取り込みホームページ化する。
 

 


1 ダイナリンクウェブ


2 メディアキッズのメニュー

 

3 利用場面(7/20)
(1) 目標
 自分の考える「真野小の遊び」に必要なことがらをみつけ,そのことを調べるための方法を決めだして,調べ始めることができる。

(2) 展開


    学習活動


 活動への働きかけ


 備考


1 自分の考える「真野小の遊び」に必要なことがらを考える。

2 自分に必要な資料の探し方を  決めだし,資料を集める計画を立てる。
・インタービューしてみよう。
・図書室で調べよう。
・アンケートをしよう。
・ホームページを探そう。
・交流学校にたずねよう
3 ホームページ検索やインタビ  ュー,アンケートの方法を知っておこう。





4 自分の必要な資料を探し始める。

 


・みんなが楽しめることや地域の特性を生かすことを中心に考えるように働きかける
・それぞれのメディアの特性を考えて自分の調べてみたい内容と方法がふさわしいかカウンセリングを適宜行う。




・実際に「こねっとgoo」を使って,検索の方法を教える。
・インタビューやアンケート,おたずねメールなどでは,相手に対して,調べている目的,結果の利用法などを伝えるなど,受け手の気持ちになることを助言する。
・取材に必要なものを準備し適
宜使わせる。
 












・ブラウザーのスタートページから検索サイトへのボタンを用意しておく。





 

 


 
3 一年生との交流会


 図4「お手紙しよう」での交流

4 実践を終えて
 本実践は,11月から始め,3月の始めに終了する予定である。したがって,本報告の時点(1月20日)では第五次のまとめの活動中である。
 児童は本学習を始めた時に,「そうだなぁ,自分の班の6年生がしていたことはみてたけど,他は知らないし,本当に自分がするのは不安だなぁ」という気持ちを述べ,「みんなのよろこぶような遊びを見つけよう」と,学習に取り組みを始めた。
 資料を探す際には,全員に「こねっとgoo」を使っての検索の方法を指導した。児童は,思い思いのキーワードを入力して,検索結果のホームページを見ていた。最終的には,自分のテーマにあうホームページが見つからなかったり,文字だけによる記述が多くわかりにくいものなどもあり,半数近くの児童が図書室の本の利用やアンケートをとる,直接地域の老人に訪ねていくなどの活動を選択した。直感的に,「遊び」に関わる情報が手に入る点では,ホームページの検索は有益であったが,10台のコンピュータ室のパソコンでは27名の児童のそれぞれの課題追究には少し無理があったのであろう。しかし,子どもたちは自分の目的と慣れにあった方法を自然と選択していった。
 交流学校への問い合わせは「他の地域の学校ではどんなことをしているのか」を調べたいと言った児童が行った。メデイアキッズの会議室やダイナリンクの「お手紙しよう」(図4)を利用した。それほど活発なメールのやりとりにはならなかった。キーボードの入力に慣れていなかったために,自分たちのしていることの説明を上手く打てなかったためにもう一つ質問の意図が相手に伝わらなかったのであろう。しかし,教室に設置したコンピュータで,毎日,返事がきているかを確かめるなど,関心を持って活動していた。また,いずれもシステム的に閉じた環境であったので児童がのびのびと使うことができた。
 資料を集めてまとめ始めた児童も,コンピュータの数の制限から,壁新聞や新聞の形式でまとめていこうという子が多く見られた。その中で,イラストや写真の多くあったホームページからヒントを得た児童が,「パッと見てわかるように,ビデオでインタビューや遊びを紹介したい」といって撮影を進めている。そのビデオをテレビに接続して,再生して見ているときに,「いつでも見られるといいなぁ」との一言から,ホームページ上で動画の再生を見たことのある児童から,「ホームページにしたらいつでも見られる」との意見が出て,「調べたことの内容をホームページにして,来年からの5年生にも見てほしい」という願いも出てきた。
 今後,残りの学習活動を進めていく中で,たてわり活動班のリーダとして「こんな活動を進めていきたい」という児童の願いがより高まり,児童が自分の思いを上手く表現できるように支援していきたいと思う。
 本年度は,児童の使えるインターネット利用可能なコンピュータ導入の初年度であったために,メディアリテラシーが不足していた。特に,文字入力の面では児童はとまどっていた。今後の利用にあたっては,系統的にメディアリテラシーの育成につとめていく必要がある。

ワンポイントアドバイス
 学校間交流においては,児童の意見交流をいきなり始めてもなかなか難しい。児童たちは相手の様子も分からないために上手く交流できない。交流を上手く進めるためにはメディアキッズのように教師間専用の電子会議室やメーリングリストを作って綿密に連絡を取り合ったり,ダイナリンクウェブのように学級日誌交換を日常的に行うなど相手校の様子が分かるようにするとよい。まずは,研究会などで,先生同士が顔見知りになることが一番である。

 

ダイナリンクウェブ
 滋賀大学教育学部附属養護学校の大杉成喜教諭が,中心となって進めている研究プロジェクト。インターネット上のデータベースサーバを使って,ホームページ上に閉じたシステムとしての簡易電子掲示板を作り,学級日誌やメールなどの交換を行う。専用のアクセスCDを使うことで,相手の児童の顔写真を入れるなどの工夫がされている。
本年度の参加協力校 雄武町立幌内小,北海道教育大附属旭川小,大津市立真野小,板橋区立高島第三小,山口大附属山口小など6校


利用したURLなど
 メディアキッズ http://www.mediakids.or.jp/
 昔あそびへようこそ http://www.macpro.co.jp/success/mukasi/
 昔の遊び http://www.jomon.or.jp/~eosk/asobi.htm
 日本と中国の遊び http://www.net-ibaraki.ne.jp/fuchusho/play.htm