ネットデイ丹波の取組

京都府立工業高等学校 大島浩樹
キーワード ネットデイ,ネットワーク,ボランティア,実施マニュアル


インターネット利用の意図
 急速に進展する学校におけるインターネットの活用。京都府においては,総合教育センターを拠点に南部・北部に拠点施設校を置き,すべての学校からインターネットへの接続を可能にし本校,京都府立工業高校は北部拠点設備校としてインターネットへの接続窓口を担当している。
 しかし,近隣小・中学校における情報教育環境(ネットワーク環境)は,徐々に改善整備されてきているものの,未だDOS-マシンやwindows3.1の環境下で授業を展開している例は数多い。例外としてデジタル通信回線を整備し,数台のPCをネットワーク接続している小・中学校もある。このような学校にあってもネットワーク接続されているPCは,コンピュータルームのPCであったり,職員室のPCが接続されているといったきわめて閉鎖的な現状がある。不自由なネットワーク環境下で先生方は,「校内ネットワークが欲しい!」「インターネットを利用した情報教育を展開したい!」「子供に世界のホームページを見せてやりたい!」「子供にインターネットを教室から体験させたい!」「デジタル情報の一元管理がやりたい!」「デジタル情報や情報機器の共有がしたい!」等々の願望を持っている。しかし,先生方の願どおりに整備は進んでいないのが現実である。
ネットデイ丹波は,上記のような情報教育に対する先生方の願の実現と,工業高校生の日頃の実習成果の発表,丹波地域におけるネットデイ活動のノウハウの構築を目的に実施した。


1 ネットデイ丹波の実施
(1) ネットデイとは
 ネットデイとは,ボランティアが中心になって学校のネットワーク利用環境の構築を支援する活動と定義している(参考文献)。アメリカで始まったネットデイは,日本でも数年前から取り組まれ,本校近辺の兵庫県氷上郡では盛んに取り組まれている。学校のネットワークの構築を支援し,子供達や先生方のインターネット接続の願いをボランティアの手で作り上げるのである。
(2) ネットデイ実施までのスケジュール
 ネットデイ丹波の実施にあたり,地元教育局,福知山市教育委員会,ネットデイ対象校の理解を求めるためのネットデイ勉強会やネットデイ研修会を行い,企画の理解を図るために多くの時間を費やした。以下その経過である。

日  時

内    容

6月14日
6月24日
6月28日

7月上旬


7月10日
8月17日
9月 2日
9月 9日
10月 6日
11月15日
11月27日
12月14日

1月8日

 e・スクエアプロジェクト募集
 学校企画に応募 企画名称:ネットデイ丹波
 教育局および福知山市教育委員会に対してe・スクエアプロジェクト
 (学校企画:ネットデイ丹波)趣旨説明
 福知山市教委よりネットデイ丹波対象校の紹介
(福知山市立下六人部小学校,福知山市立天津小学校の紹介)
 ネットデイ丹波対象校に趣旨説明
 ネットデイ丹波支援会議 Nes-Hメンバー
 ネットデイ下六人部勉強会
 CECより学校企画ネットデイ丹波の採択決定
 天津小学校教職員研修会(ネットデイについて)
 下六人部小学校教職員研修会(ネットデイについて)
 第1回ネットデイ下六人部実行委員会 下見・Xday 決定
 ネットデイ下六人部下見
 第2回ネットデイ下六人部実行委員会
 正副実行委員長決定  ネットデイ天津 下見・Xday 決定
 ネットデイ下六人部開催

(3) ボランティアの募集
 ボランティアの募集は,ネットデイ対象校小と本校が中心となって募った。ネットデイ経験者への呼びかけは,本校にメーリングリストnd-tanbaを立ち上げ多方面への呼びかけを行った。他のメーリングリストの呼びかけから大阪や神戸,京都市内からの参加者を含め,87名のボランティアが下六人小学校体育館に集った。(図1,2)


図1 開会式


図2 閉会式

(4) ネットデイ当日の日程
 受付で記名の後,名前入りの色つきワッペンで班を確認。体育館で開会式,成端講習,班長会,配線ルートの確認等の作業に入った。ケーブル作成に必要となる成端処理は,成端講習会を行い班長を除く全員が参加した。ケーブルテスタの判定に興味津々「一回で成功した!」「またダメか〜」「やったー!」「どっちが悪いんやろ?」とあちらこちらで歓声やため息が聞こえる講習会となった。ケーブル成端コンテストではフルークによるゲイン測定が行われ,外見からは判断できない優劣の差に「何でだろう?」の声も漏れていた。入賞者の皆さんおめでとう!

時 間

内   容

注意事項等

 8:00
 9:00
 9:30
 9:45
12:00
13:00
15:00
16:00

 実行委員打合せ・準備
 受け付け
 開会あいさつ・諸注意
 ケーブル成端講習・コンテスト
 昼 食
 作 業
 開通式
 終 了

 部材の確認と諸準備
 持参していただいた工具の記名確認
 実行委員長,校長,教育委員会
 班長は打合せ
 体育館にて食事,みそ汁のサービス有り
 自己紹介の後始める。安全第一で作業を!
 作業中でもいったん集合願います
 退校時の時間を記載願います

(5) 実施マニュアル(抜粋)
 ネットデイは手慣れたボランティアも参加するが,今回初めて参加するボランティアのために次へのステップとして親切で丁寧なマニュアルを作ることに心がけた。ネットデイとはどのようなことをするのか,自分はどこを担当しどんな作業をするのか,安全に作業を進めるための基本事項等を詳細に列挙した。また,班長にはネットデイ経験者やネットワークに関する知識が豊富なボランティアをお願いした。

6年生教室の作業内容
(a) ここは5−2教室からのケーブルが長いのが特徴です。また,モールをまっすぐに固定することがポイントです。
(b) ケーブル(SH2-61とSH2-62)両端に仮のラベルを貼ります。
(c) 5−2教室からモールを両面テープで仮止めしていきます。このとき両面テープでモール固定用のネジ穴を塞がないでください。
(d) ケーブルが教室へ入る穴をドリルで開けます(位置と径の指示あり)。
(e) モールが仮止め出来たら,振動ドリルで固定用の下穴(径と深さの指示あり)を開けます。
(f) コンクリートビスで固定していきます。(モールをまっすぐ固定して下さい)。
(g) 廊下を掃除します。
(h) ケーブルを5−2教室から廊下へ置いていきます。
(i) ケーブルをモールの中へ入れて,モールのフタをしていきます(SH2-61とSH2-62)。
   そして,ケーブルの端を教室内部へ挿入します。
(j) 教室内部のモール貼りと配線作業をします。
(k) 情報コンセントを設置し(位置の指示あり),適当な長さにカットしたケーブルと接続します (色順厳守)。
(l) ケーブルの反対側(ハブ側:保健室)を成端します。
(m) フルークで性能(マージンとNEXT値)を測定し,報告します(係りまでお願いします)。その後,ジャックをハブへ接続しておきます。
(n) ケーブルに仮付けしたラベルを剥がし,新たなラベルをケーブル両端に巻き付けて貼ります。
(o) 教室でパソコンを接続・設定し,インターネットへアクセスします。
(p) 作業完了後,教室内を清掃します。

(6) 部材および必要品リスト
 職員室を含む14室(図3,4)をネットワークケーブルで結び校内LANを構築した。下表は部材リストである(表1)。工具類については,参考文献(ネットデイマニュアル)を参考に用意。ボランティアの方々からもお借りしました。

品   名

製造

数量

単価

ワゴンモール(2号)

GA 210-3

30

200

ワゴンモール(3号)

GA 310-3

10

410

ワゴンモール(4号)

GA 410-3

5

640

モール(1号)

FM-13

100

65

モール(2号)

FM-23

50

95

モール(3号)

FM-33

100

140

モールコーナー(1号用)

FMM-13

100

35

モールコーナー(2号用)

FMM-23

100

38

モールコーナー(3号用)

FMM-33

100

45

モジュラージャック(埋込)

NR-3130

3

1,400

モジュラージャック(露出)

NR-3131

20

1,400

RJ-45コネクタ(両用)

ADT-RJ45

5

3,500

ケーブル(撚り線)

KB-10T5

1

16,000

モールカッター

CA-CVT

5

5,000

ケーブルテスター

LD-RCTEST/U

2

11,000

両面テープ 12mm

12-KMS

7

440

両面テープ 18mm

18-KMS

10

680

両面テープ 25mm

25-MS

5

530

インシュロック小

AB-100

1

360

インシュロック中

AB-150

1

710

インシュロック大

AB-200

1

1,200

ネットデイマニュアル本

NGS

2

2,100

保険(50人以上)

JA

1

2,500

パテ(補修材)

ホームセンター

1

365

絶縁テープ

ホームセンター

5

58

ビス

ホームセンター

7

500

備品相当品(HUB・SW-HUB)

 

 

127,000

(7) 配線図面
 下図(図3,4)は,今回の配線図面である。職員室・校長室を含め14室に情報コンセントを設置,校内LANの構築を行った。


 図3 本館配線図面


 図4 別館配線図面


(8) 作業のようす
 初めての参加者も成端講習(図5)で何度もケーブルコネクタの圧着を練習し,本番では手慣れた様子で成端する姿があった。作業の途中(図6,7)突然小学生のフルーク隊(図8)が出現しケーブルのテストを手伝ってくれた。配線された教室に飛んで行って「繋がってへんで!」「ゲインが悪いで!」「成功や!」などと大声で校内を飛び回ってくれた。


図5 成端講習


図6 天井を外す


図7 配管工事


図8 フルーク隊

2 成果と課題
 ネットデイを終え,多くのボランティアの手によって教育現場における情報教育への願いが1校でもかなえられ,ノウハウが構築されたことは大きな進歩と成果である。また,本企画をコーディネイトした本校にとって,激しい情報化の波で工業高校の存在が薄れつつある中で,地元小学校を会場に日頃の教育活動の成果発表が行えたのは大きな成果であった。
 今後,丹波地域でネットデイ活動が実施され学校における情報教育がますます前進することを期待したい。
 ネットデイ丹波の実施にあたり,中丹教育局,福知山市教育委員会をはじめ,多くのボランティアの方々にお世話になりましたことを,紙面をお借りしてお礼申し上げる。

ワンポイントアドバイス
 ネットデイは,入念な下見の実施と資材・工具の調達,ボランティアの募集が成功のポイントとなる。とにかく,下見である。また,工事にあたっては班長を中心に手慣れたボランティアへ作業内容の徹底をはかることも大切である。今回,配線工事が見栄えのする物に仕上がったのは,地元の電気工事業者のボランティア参加と工業高校生の手慣れた作業による活躍が大きい。

参考文献
 学校にLAN入しよう「教室をインターネットにつなごう」  NGS

利用したURLなど
 三輪小学校 (http://www.hikamigun.kaibara.hyogo.jp/ICHIJIMA/MIWA/nettitle.htm)
 遠阪小学校 (http://www.hikamigun.kaibara.hyogo.jp/aogaki/TOZAKA/99netday-hyosi.htm)
 ネットワークサポートセンター in 関西 (http://www.nes-k.gr.jp/)
 群馬県インターネットつなぎ隊 (http://www.tsunagi.or.jp)