市内イントラネットワークの活用
−データベース型サーバーを使って−

大阪府箕面市教育センター
指導主事 久保 昌司
masashi_kubo@maple.city.minoh.osaka.jp
http://www.city.minoh.osaka.jp/edu-center/html/default.html
キーワード イントラネット,データベース,検索,けいじばん


インターネット利用の意図
・児童・生徒がインターネット体験に先立ち,イントラネットワークを体験させる中で,情報モラルの育成を図りながら,交流を推進できるように身近なネットワーク環境を整備する。
・情報通信ネットワークの利便性,活用方法を教職員が体験でき,教職員の指導力の向上を図るために,イントラネットワーク環境を整備する。


1 市内イントラネットワーク環境整備のねらい
 平成14年度(2002年度)実施の学習指導要領では,コンピュータや情報通信ネットワークに慣れ親しむこと(小学校),積極的に活用すること(中学校)を求めている。しかし,児童・生徒がすぐに情報通信ネットワークを適切に活用して,学習活動に生かせるわけではない。教職員も同様である。新たな教育課題である情報通信ネットワークに関する指導はまだ手探りの状況である。
 適切なステップを踏むことによって,児童・生徒に適切に活用できる能力が育ち,教職員の指導力の向上が図れる。
 そのステップの一つとして,市内の子どもたちが発達段階に応じて自由に受発信の体験ができ,教職員にとっても利便性を実感できるイントラネットワーク環境の整備を考えた。
 また,学習指導要領が示す「情報通信ネットワークの適切な活用」は,単に情報通信ネットワークを活用して自らの課題を解決する,あるいは学び方を学ぶということだけではない。「適切な活用」とは情報モラルを育成することでもある。身近な体験的な活動を通して,児童・生徒の情報モラルの育成を目指すことも今回のイントラネット環境整備のねらいである。

2 実践内容
(1) イントラネット環境整備の状況
 図1が箕面市教育センターの新たな環境整備の状況図である。
 今回,新たにデータベース型サーバーの追加設置を行うことにより,「子どもけいじばん」「教師用掲示板」「教育・学習・備品情報」を新たに設けることが可能となり,イントラネット環境を図2のように整備した。

1 箕面市教育センターの環境整備状況


2 イントラネットホームページ

(2) 掲示板(子どもけいじばん)の整備 子どもけいじばんの作成に当たっては,ネットワーク管理者が初めにカテゴリーを設定し,情報の発信をそのカテゴリーの範囲内に限るのではなく,低学年の子どもでも自由な発想で活用できるようにした。
 また,情報の受発信を縦の系列のみでとらえると,情報の広がりが限定されたものとなる。そこで,内容検索機能も付け加え,横の広がりが可能なように設定した。(図3参照)
 さらに,管理者(教育センター)による発信元の確認,情報の削除も容易にできるように設定した。
 下の図4〜図7は子どもけいじばんの画面のようすである。教職員用の掲示板も子どもけいじばんと同じように作成した。

  

 






 

3 右が今回検索機能を付加した図

 


4 子どもけいじばんホームページ

 いくつかのインターネット上の掲示板を参考にして,つながりの把握しやすいツリー型の掲示板にした。


5 子どもけいじばん記入欄


6 検索画面

書き込み内容でも書き込み者でも検索可能にした。


7 検索結果

 興味のある内容を検索し,その内容に対して書き込み可能に設定した。


(3) 教育・学習・備品情報の整備
 当教育センターは,教育に関する調査・研究,教職員の研修,教育相談,教育資料等の情報サービスを実施している。当センター内には,教材資料室が設けられ,教育図書,AV資料,備品等を多数そろえて教職員の教材研究や教材作成に供している。しかし,どのような資料や備品が備えられているかは,実際に教職員が来所しないと分かりにくい状況であった。
 そこで,イントラネットのデータベースサーバにこれらの貸し出し可能備品の情報を掲載し,検索ができるように設定した。図8,図9がネットワーク上の画面である。
 なお,各学校の貸し出し可能な備品等も今後掲載していく予定である。


    
8 検索画面

 書名のみでなく,著者名,発行元の2つの分野でも検索ができる。 


    
9 検索結果の表示


 該当の書籍が一覧でき,よりいっそう教職員の教材研究,研修に活用されている。
 インターネットで一般的に使われている検索様式を取り入れた。教職員の情報通信リテラシーの向上もひとつのねらいである。

3 成果と課題
 計画と環境整備に研究期間の多くをとられ,実際に学校で活用された期間は短い。
 しかし,環境整備を進め,実際に情報通信ネットワークを体験することによって,教職員の新しい教育課題−情報通信ネットワーク時代に対応した教育に対する抵抗感は確実に少なくなりつつある。
 教師用掲示板は,各学校間の教職員の情報交換に使われ始めている。教育・学習・備品情報へのアクセスも多くなりつつある。
 また,子どもたちも身近な掲示板を実際に読み,そして実際に書いたものがすぐに掲載されることを体験して,情報通信ネットワークとはどういうものか,そのおもしろさと便利さを実感している。現在のところ,教職員の情報モラルに関する指導もあり,情報モラルに反するような書き込みはない。しかし,仮にそのようなことが起こった場合もイントラネットワークの環境内で適切な指導により,情報通信ネットワークの「恐さ」を子どもたちも実感し,「情報モラル」の必要性を再確認するができるように,指導の深化を図るつもりである。
 イントラネットの環境で情報モラルも含めた基礎的な学習を体験できるように環境整備が図れたことは一定の成果である。今後,各学校の図書,AV資料等のデータベース化が進んでいけば,さらに大きな成果が期待できる。
 本市では,これまで全市的な情報通信ネットワーク化に対応したイントラネット,インターネット環境の整備(図1,図2参照),市内全校のインターネット上でのホームページ公開,各学校の児童・生徒へのメールアドレスの一定数の割り当て,本市独自のメールボランティア制度の整備などを行ってきた。環境は整いつつある。
 平成14年完全実施の新しい学習指導要領では,「問題解決能力の育成」「学び方を学ぶ」ことがいっそう重視される。子どもたちの学びの中で,情報通信ネットワークを有効に活用しながらそういった「力」を身につけさせることが今後の大きな課題である。

 

ワンポイントアドバイス
 本実践は,情報処理技術者の適切なアドバイスやシステム構築の援助を得ながら,行ってきた。
 「バーチャル・エージェンシー『教育の情報化プロジェクト』に係る総理への報告について」においても,「情報化推進のコーディネーター」の教育委員会への配置を提言している。専門的な知識を有する人材の有効な活用は今後の教育の情報化に不可欠であろう。