オリジナル曲をインターネットで交流学習
小学校第6学年・音楽科・オリジナル曲を作ろう

香寺町立中寺小学校 黒田和子・太田垣善隆
キーワード 小学校,6年,音楽,作曲,インターネット,学校間交流

 


インターネット利用の意図
 これからの学校における音楽教育は自己表現活動だけにとどまらず,それを基にしたコミュニケーションをも重視する必要がある。
音楽活動には,歌唱表現の技能習得や楽器を演奏する技能の習得,また楽譜を読み書きする技能の習得が必要である。しかし,それらの活動に時間と労力をかけすぎると,お互いにコミュニケーションのない音楽活動になってしまう。
そこで,表現したいという意欲さえあれば,表現活動の技能習得が不十分であっても表現活動をすることができるコンピュータのMIDIシステムを活用した。またコンピュータを利用することにより自分のクラスだけでなく他のクラス,さらにインターネットを通して他の学校とも交流し,音楽を基にしたコミュニケーションができると考え,本題材「自分の音で表現」を設定した。
ただし,日本の音楽の特徴や日本の伝統的な楽器について知る学習は,コンピュータを使わずに行った。


1 自分の音で表現
(1) ねらい
 本校では,コンピュータを活用した学習を,総合的学習はもちろん,各教科においても積極的に利用し,コンピュータの利点を活かした利用法の研究に取り組んでいる。その中で,音楽科についてもコンピュータで簡単なふしを作り,自分の作ったふしをリアルタイムで聴きながら,自分の思いをメロディーの中に表現していく活動を行っている。
本題材は「越天楽今様」で,日本の伝統的な音楽の響きを歌や合奏で味わい,「春の海」で日本の伝統的な楽器である箏と尺八の音色に親しむのに適している。また,コンピュータを使って日本のふしを創作する。自分が作った曲をすぐに聴けたり修正したりすることが簡単にできるというコンピュータの利点を知り,よりいっそうふしづくりに興味関心をもたせる事ができる教材である。
そして,学級,学年の中のみならず,インターネットを利用して他校の児童とも交流し,その視野を広めていく学習を進めていくことにした。

(2) 指導目標
 ・日本のふしや,日本の伝統楽器である箏や尺八に関心をもち,その響きを味わうことができる。
 ・5つの音の組み合わせや,楽器を選択し,日本のふしをつくることができる。
 ・自分が作った曲から,情景をイメージし,絵や俳句で表すことができる。
 ・インターネットを利用し,自分の学校の人や他の学校の人の意見を聴きながら,よりいっそう意欲的に音楽づくりに取り組むことができる。

(3) 利用場面
 この学習では,指導計画の(d)以外の学習場面でコンピュータを活用する。

(4) 利用環境
 (a) 使用機種 PC-9821Ct16 20
 (b) 周辺機器
 (c) 稼働環境 コンピュータ室 
PC-9821Ct16 20台(512Kでインターネット接続)
 (d) 利用ソフト バーチャルミュージくん
88,スタディノート, インターネットエクスプローラ  4.01

2 指導計画

指 導 計 画

留 意 点

(a) 既習曲を入力する
音楽ソフト
  (バーチャルミュージくん88)

・4/4拍子,16小節の設定をしておく。
 ・入力方法は,音符パレットから入力する方法と,鍵盤パレットから入力する方法があることを知らせ,入力しやすい方を児童に選 ばせる。
 ・入力がすんだら,再生して聴き,間違いがないか確認させる。
 ・保存する方法を知らせる。

(b) 前時に入力した曲の音色を換えて楽しむ
音楽ソフト(バーチャルミュージくん88)

・音色を切り換える方法を知らせる。
・知っている楽器を聴くだけでなく,できるだけたくさんの音が聴けるように,十分な時間を設ける。

(c) (a)の曲にリズムを作り,リズム楽器を選んで聴く
音楽ソフト (バーチャルミュージくん88)

・演奏画面の音色から打楽器を選ぶこともできるし,リズム設定により,打楽器を選ぶこともでることを知らせる。

(d) 日本のふしに親しむ
・「越天楽今様」を聴く
詩の特徴を知る。
ゆったりした曲である。
レミソラシの5音が使われている。
歌詞は七五調になっている。
日本の伝統的な楽器を使っている。
・「春の海」を鑑賞する。

・実際にリコーダーとビブラフォンで演奏させ,曲の感じをつかませる。
 ・この曲も5音が使われ,また日本の伝統的な楽器を使って演奏されていることを気づかせる。

(e) 日本のふしを作る
・越天楽今様の速さ,使われている音色や
音符を参考にする。
音楽ソフト(バーチャルミュージくん88)

・4/4拍子,8小節とあらかじめ設定しておく。
 ・音色を選ぶ時に,日本のふしになるにはどんな楽器がよいか考えさせ,選んだ音色を聴いて確認してから設定させる。

(f) 世界に一つしかない自分の曲を作る
音楽ソフト(バーチャルミュージくん88)

・日本のふしだけにこだわらず,自由に作らせる。
 ・4/4拍子,8小節で設定しておく。

(g) 自分の作った曲を聴いてイメージした絵を描き,俳句を作る
統合ソフト(スタディノート)

・作った曲を聴いてみて,思い通りになっていない所があれば,修正させる。
 ・行き詰まった児童には,児童のイメージを壊さないように気をつけ,助言する。

(h) ホームページで発信して,感想や意見を交換する
インターネット
音楽ソフト
  (バーチャルミュージくん88)

・クイズ形式のように,最初に音だけを聴いて何らかのイメージを思い浮かべてからイメージの絵を見てもらうようにする。
 ・意見交換は返信機能のある掲示板を用意し,それを利用する。
 ・交流先には事前に連絡して,了解を得ておく。
 ・お礼の言葉も書かせる。

(i) 感想や意見を参考にして作品を修正する
音楽ソフト
  (バーチャルミュージくん88)
統合ソフト(スタディノート)

・あくまでも最初の自分のイメージを大切にさせながら,納得する範囲で作品がより一層磨きのかかる方向に修正させる。

 

留 意 点

・4/4拍子,16小節の設定をしておく。
 ・入力方法は,音符パレットから入力する方法と,鍵盤パレットから入力する方法があることを知らせ,入力しやすい方を児童に選ばせる。
 ・入力がすんだら,再生して聴き,間違いがないか確認させる。
 ・保存する方法を知らせる。

・音色を切り換える方法を知らせる。
・知っている楽器を聴くだけでなく,できるだけたくさんの音が聴けるように,十分な時間を設ける。

・演奏画面の音色から打楽器を選ぶこともできるし,リズム設定により,打楽器を選ぶこともでることを知らせる。

・実際にリコーダーとビブラフォンで演奏させ,曲の感じをつかませる。
 ・この曲も5音が使われ,また日本の伝統的な楽器を使って演奏されていることを気づかせる。

・4/4拍子,8小節とあらかじめ設定しておく。
 ・音色を選ぶ時に,日本のふしになるにはどんな楽器がよいか考えさせ,選んだ音色を聴いて確認してから設定させる。

・日本のふしだけにこだわらず,自由に作らせる。
 ・4/4拍子,8小節で設定しておく。

・作った曲を聴いてみて,思い通りになっていない所があれば,修正させる。
 ・行き詰まった児童には,児童のイメージを壊さないように気をつけ,助言する。

・クイズ形式のように,最初に音だけを聴いて何らかのイメージを思い浮かべてからイメージの絵を見てもらうようにする。
 ・意見交換は返信機能のある掲示板を用意し,それを利用する。
 ・交流先には事前に連絡して,了解を得ておく。
 ・お礼の言葉も書かせる。

・あくまでも最初の自分のイメージを大切にさせながら,納得する範囲で作品がより一層磨きのかかる方向に修正させる。

 


1 音色を換えて楽しむ


2 自分の曲を作る


3 イメージした絵と俳句を作る


4 ホームページで発信する

3 展開における利用例
(1) 目標
 ・世界に一つしかない自分の曲を意欲的に作ることができる。
 ・できた曲からイメージした絵や俳句を作ることができる。
 ・自分で作った曲を他の学校へインターネットを通して発信し,交流する。

(2) 展開

学 習 活 動

活動への働きかけ

備考

1 学習の流れを知る。

・インターネットで自分の作った曲を他の学校の人に聴いてもらうことを知らせ,意欲を持たせる。

 

 世界に一つしかない曲を作ろう

 

2 四分音符を中心に曲を作る。

・4/4拍子,8小節の設定をあらかじめしておく
 ・日本のふしをイメージしながら作ってもよいし,それにこだわらず作ってもよいことにする。
 ・メロディ譜とリズム譜を入力できるように設定しておくが,どちらを使ってもよいことにする。

・スコアグラファライト

3 作った曲を聴いて修正する。
・音程
・音符
・リズム
・音色
・速さ

・曲の最後は終わった感じにさせる。
・曲の途中にも二分音符や八分音符等にかえさせ,曲に変化をつけるよう助言する。
・音色や速さもいろいろと試してみて選択させる。
・リズムや効果音についても,希望に応じて入力させる。
・完成した児童は,ファイルに保存させる。
MIDIファイルへの変換は教師がする。

 

4 スタディノートに絵と俳句をかく。

・作った曲を聴いて,イメージする絵を描かせる。
 ・曲と絵に合う俳句を作り,絵の中に入れる。
 ・音ボタンをつけて,自分で作った曲を絵の中に貼り付ける。

・スタディノート

5 ホームページに公開し,他の学校と交流する。

・教師ができた作品をHTMLファイルに変換し,ホームページにアップする。
 ・クイズのように,まず曲を聴いてイメージを思い浮かべてから,絵や俳句を見て,再度曲を聴けるように作る。
 ・返事が書きやすいように,返信機能付きの掲示板を用意する。
 ・掲示板に工夫した点など書き,感想をいただけるようにお願いする。

 

 

4 実践を終えて
 今回の実践を通して得たものは,まず児童が難しくてできないだろうと思っていた作曲という活動をコンピュータの力を借りることで,楽しくできた,いい曲ができたと成就感を持ったことである。
 初めて曲を作った後で書いた感想はおおよそ次のようであった。
「私ははじめ,作曲なんてできるのかなぁーと思っていたけど,やってみて,自分たちでオリジナルの曲がすごく日本風の曲に仕上がりました。作曲をするのは楽しかったです。」
「コンピュータを使って作曲をして,とても楽しかったです。例えば,音を演奏しないと聞けないので,聞くときわくわくしながら聞きました。曲を作るとき,メロディが難しくて悩んだけど,何とか完成して,なかなかいい音楽だったのでよかったです。今度,もう一度曲を作りたいなと思いました。」
 これまで「作曲」というと音楽を習っている一部の児童はいいが,たいていの児童は,ピアノやリコーダーの演奏できる技術にも限界があり,苦手意識を持っていたというのが現実である。しかし,今回,それが見事に覆された。偶然の中から自分の気に入ったよい曲がどんどん生まれていった。かえって,音楽を習っている児童のほうが,「コンピュータは,自分で作った通りに演奏するので難しかった。自分はこうやろうと思いながら作っても,なかなか思うように流れない。」というジレンマを感じたほどである。
 また,音楽をデータとして保存することで,大きく世界が広がった。まず,普通なら自分のクラスだけにとどまるところが,同じ学年の他のクラスの児童の作品を聴くことができた。また,学年を越えて作品を聴いてもらうことができた。そして,インターネットを利用することにより学校を越えて,広く一般の人とも交流することが可能になった。
 相手がいるということは,やっぱり緊張もするし,力も入り,よい刺激になった。そして,感想等が返ってきたらとても喜んで,大いに励みにもなった。不特定多数に公開するのもいいが,定期的に決まった相手と継続して交流をすると更に大きな成果となると考える。
 今回の実践は,正直なところ,これだと思っていてもうまく行かなかったり,想像以上に児童が力を発揮してくれたりと,右往左往しながら試行錯誤の連続であった。しかし,苦労しながらも,児童も教師も満足感を得ることができた。今後とも,それぞれの利用環境等が違うので,やりにくい場合もあるが,是非とも継続的な取り組みをしていきたい。また,学校に音楽ソフトが導入されていても,十分に活用されていない場面も見受けられることがある。是非,一歩踏み出して,とりあえず使ってみることをお勧めする。その際,この実践が少しでも役立てば幸いである。

ワンポイントアドバイス
「日本音階5音とラで終わると日本風の曲になるのか?」・・・この制限だけしか児童に言わないでやったところ,全然ならなかった。やっぱり最初に日本の音楽の勉強をして,代表的な音楽を聴いて,そのイメージを作ってから曲を作らないと難しいと感じた。
「俳句をもとにそのイメージする曲を作ることができるのか?」・・・これも非常に難しい。イメージするものによっては可能であるが,普通は大人でもなかなかできないのが現状だと思われる。小学生の段階では,曲を作った上で,そのイメージを思い浮かべる方が手っ取り早い。

 

参考文献
新しい音楽6 研究編(東京書籍)
利用したURLなど
中寺小学校 
http://www.hyogo-edu.yashiro.hyogo.jp/~nakadera-es/index.html
ヤマハ「
MIDPLUG」 http://www.yamaha.co.jp/xg/midplug/top.html
MIDPLUG for XGでホームページに音楽をつける  http://www.yamaha.co.jp/xg/midplug/server.htm