親子コンピュータ教室で広げよう地域の情報化
―コンピュータ教室で広げる学校・家庭のコミュニケーション―

兵庫県神崎郡福崎町立福崎小学校 松本 正樹
キーワード 小学校,情報化,地域交流,学校家庭間交流


インターネット利用の意図
 学校と地域の交流媒体として活用する。情報の発信をしながら,学校から地域へ,地域から学校へと双方向に交流をすすめ,インターネットWebページを利用する。
 Webページは,個性豊かな表現が可能であることを活用しながら,親子で協力して作成することで第1ステップの交流を推進する。そして,作られた共同作成ページを地域に発信することで地域交流の第2ステップを推進していきたい。そして各家庭からの発信も受け止めることのできるホームページへと広げていき,学校ホームページへのアクセスを高め,学校家庭間交流としてインターネットを利用していきたい。


1 実践内容
(1) ねらい
 本校では,昨年度ネットワークコンピュータが導入され,コンピュータを使った学習が推進されている。子どもたちのコンピュータに対する意欲的な取り組みは,新しい学習として保護者の関心の高いところであり,また子どもたちの家庭での大きな話題となるところである。しかし,本校のホームページ開設にともなう家庭調査では,コンピュータを所有し,インターネットにアクセスできる家庭は1割しかなかった。子どもたちの情報の発信を,家庭で受け止めてもらうにはまだまだ時間を必要としている。
 そこで学校のコンピュータを使い,保護者と共に子どもたちがコンピュータにふれる時間を作ることで,親子の交流を深め学校教育に対する理解を得ることにつながると思われる。親子の情報発信として学校ホームページに親子教室で作成したページを発信していくと,地域の交流にもつながり,学校を中心とした情報化があたたかい親子交流から大きな広がりへと期待できるものである。家庭から学校へのつながりは,今までの学校から家庭だけの一方向性から,双方向の交流へと広がり,地域の情報化は,日々前進していくものである。
 家庭での情報化に向けて,コンピュータの準備ができない家庭へノートパソコンを交代で持って帰り,作成したホームページを閲覧しながら,インターネットを体験する。そして,ホームページに交流掲示板を作成し,書き込みをしてもらいながら地域交流を推進する。
(2) 推進内容
 学校のネットワークコンピュータを使い,希望する親子のコンピュータ教室を開催する。昨年度実施内容を基礎にして親子の交流と情報発信を行う。家庭での情報化に向けて,コンピュータの準備ができない家庭へノートパソコンを交代で持って帰り,作成したホームページを閲覧しながら,インターネットを体験する。そして,福崎小学校ホームページに交流掲示板を作成し,書き込みをしてもらいながら地域交流を推進する。
(a) 昨年度実施内容
 ・コンピュータって何?
 ・Windows95の基本
 ・インターネットと福小ホームページ
 ・子どもたちの使っているソフト体験
 ・メール体験
(b) 本年度実施予定内容
 ・デジタルカメラでなかよしこよし
 ・世界に発信しよう なかよし親子
(c) 実施予定日
 毎月1回第3土曜日 午後1時30分〜3時まで
(d) 対象
 希望する1年生から6年生の児童と保護者
(e) 学校機器利用環境
 ・ネットワークコンピュータ20台
 ・デジタルカメラ8台
 ・利用ソフトウェア 一太郎 画像処理ソフトウェアVIX(フリーウェア)
フロントページ
(3) 推進計画
(a) 参加希望親子の募集

図1 承諾書

全児童に親子コンピュータ教室参加の案内を配布し,希望家庭より申し込みを受け付ける。低学年児童家庭より18組ずつのグループに分け,月1回の実施日に割り振り連絡をする。
(b) 親子コンピュータ教室開催
指導者は,教師があたる。参加者には,学校ホームページ掲載可能な方に承諾書(図1)を記入してもらう。また,コンピュータの貸し出し申し込みも受付る。
(c) 学校ホームページ掲載
承諾いただいた作品を実施日ごとにまとめて,ホームページへ掲載する。
(d) ホームページに地域交流掲示板を作成し,地域からの発信を求める。

図2 なかよしページ作成中の親子

(4) 親子コンピュータ教室
 1年生から6年生までの子どもたちと父母が参加した。本校のPTA会員数350のうち90組の参加があった。4分1の参加である。参加児童数は兄弟姉妹で134人の参加である。プログラムは以下の内容で実施した。
(a) ねらい
 ・親子でコンピュータ教室に参加し,子どもたちが学習してきた技術を保護者と協力しながら使い,作品を作り上げる。
 ・子どもたちと保護者の協力で親子の交流が図られ,すでにコンピュータを知っている子どもたちの自尊感情を高め,また保護者にとって日頃見かけることがなかった子どもの自信あふれる姿にふれることができる。
(b) 活動の流れ

活     動

内     容

備     考

1 コンピュータの起動と終了



2 デジタルカメラとフロッピーディスク
 カメラ操作
 ソフトウェアでデジタル写真をモニターに映し出す。

3 デジタルカメラでなかよし親子を写そう。
 コンピュータ教室から出て写そう。

4 親子なかよしホームページを作ろう。

5 なかよし親子のページをインターネットに発信しよう。

・福崎小ホームページや校内イントラネットへのアクセスを中心にしながら基本的な操作を体験す
る。(学校情報の公開)

・フロッピーディスクを記録メディアとするデジタルカメラ(マビカ)の操作を体験しながら,記録メディアとデジタルデータの意味を確認する。

・デジタルカメラを使い,参加親子交流を目的としてなかよし親子を写す。

・写してきたデジタル写真をワープロソフトに貼り付け,なかよし親子ページを作成する。

・ワープロに貼り付けた写真にコメントを書き込み仕上げる。
ワープロの変換ツールを使ってHTML形式化する。


・コンピュータ


・デジタルカメラ
・フロッピーディスク
・フリーソフトウェア
(vix)



・一太郎


・コメントの工夫



図3 地域公開ページ


図4 なかよし親子作成ページ


(5) 貸し出しコンピュータ
 親子コンピュータ教室の参加者を中心にノートタイプコンピュータを貸し出した。親子で作成したページへアクセスすることを目的に,家庭でインターネットを体験してもらうことにした。30家族より貸し出しの申し込みがあった。
(a) ねらい
 ・コンピュータを持ち帰り,インターネットを通し本校ホームページの作品を家族で見ることで,家族間の会話が生まれ,学校教育に対して関心を持つこと。


図5 PC貸し出し案内

 ・持ち帰ったコンピュータで,他の親子の作品を見ることで作品に対する感想等を本校ホームページの掲示板に書き込むことで家族間の交流に広がる。
 ・上記の家族間の交流が学校校区の地域交流にまで広がり,学校を中心とした相互の情報化として進むきっかけとなる。
(b) ホームページ地域交流掲示板への書き込み
 ・とりあえず校区交流掲示板誕生おめでとうございます。第一号の投稿者になれて光栄です。まずはお祝いまで。
 ・親子コンピュータ教室に参加して
 「今日は,おもしろかったね。時間がたつのがあっという間やった。」家にかえってきてからの娘の第一声でした。私も昨年に続き2度目の参加ですが,娘のコンピュータの扱いが依然よりも上達しているのに驚きました。メデイアルームでの学習の様子をよくはなしてくれます。そのにこにこ顔から楽しさが伝わってきます。来年のコンピュータ教室ではどんなことを教えてくださるのかと今から楽しみです。
 ・ホームページ
 福小ホームページ充実してきましたね。久々にのぞいたら新しい所をみるだけで,結構時間がかかってしまいました。今日の新聞に「どこかで桜が咲いた」と載っていましたが,まさか福小でも咲いていたとは!驚きです。だいぶ前になりましたが,運動会 今年は,とてもたのしかった様です。いまだに,応援歌を時々歌っています。最初の行進には間に合わず子供に怒られましたが・・・どなたかビデオに撮っておられる方いらっしゃいませんか?

2 成果と課題
(1) あたたかい交流
 親子コンピュータ教室への参加の意欲は,出席率(95%)にも大きくあらわれている。多くの参加希望で,1家族1回だけの参加しか実践できなかったことがたいへん心残りである。父母に操作の方法を教えるときの自信いっぱいの子どもたちの表情と,子どもたちから教えてもらっている父母の満足した表情から,充実したコンピュータ教室となったことと思われる。保護者だけのコンピュータ教室では,これだけ多くの参加者がなかっただろう。子どもたちのコンピュータに対する思いが保護者に伝わった教室だった。親子の協同作業,それも今までの立場を逆転した作業は,新しい親子の対話を生んだ。地域掲示板に書き込まれた「娘のコンピュータの扱いが依然よりも上達しているのに驚きました。メデイアルームでの学習の様子をよくはなしてくれます。そのにこにこ顔から楽しさが伝わってきます。」から想像できる。
 また,コンピュータを持ち帰った家庭からも,インターネットやコンピュータを使うことを通してあたたかい家庭の雰囲気が伝わるような感想が寄せられた。

   児童の日記から

     わが家にパソコン                 5年 男子
 ぼくの家にパソコンがきた。ぼくはさっそくパソコンをしはじめた。ゲームがあったのでゲームをはじめた。なかなかいい成績がでた。お父さんが帰ってきた。さっそくゲームの説明をしてお父さんにもやらせてあげた。お父さんは,ぼくのようにいい成績がとれません。お父さんが負けずにゲームにはまっていました。するとお母さんに
「そんなにパソコンばっかりやったらあかんで!」と二人ともおこられてしまいました。

(2) 家庭から求められる情報
 学校から地域に情報を発信することはむずかしいことではない。しかし,学校から一方的な情報の発信では,家庭から返ってくる情報を期待することはむずかしい。なかよし親子のページという参加した方々には共通の内容を発信しても,定期的なアクセスがあることは少ない。学校通信・学年通信などをWeb上での発信の内容としても家庭が求める情報とはいえない。パソコンを初めて使いインターネットのアクセスを体験した家庭から情報を集めた。
 学校ホームページにどんなことが情報として発信されれば,継続して見てみたいですか?
 ・子どもたちの情報     今はやっていること  あそび  授業風景  生活のようす
 ・学校からの情報      今時の子どもの姿がわかる情報  保健室だより 病気 予防情報  行事
 ・地域交流情報として    弁当いろいろ お菓子作り  子育て こんな時はどうする?
 Webを使った学校からの情報発信は,最新のものが求められる。学校からの発信がまずは生きていることが大切なように感じた。
 子どもたちの教育は,学校・地域・家庭が連携していくことが求められている。今回のインターネットを使った心の交流には,連携の大切さを感じる部分が多く見られた。これからますます情報化される社会に,心の交流を架け橋とした連携教育を情報のキャッチボールをとおして積み上げていきたい。

ワンポイントアドバイス
 社会の情報化にともなって,家庭へのパソコンの普及が著しい。しかし,まだまだ簡単に使える機器ではない。学校に情報機器が導入されるに従ってPTAからパソコン体験学習の依頼がよくある。保護者だけのパソコン体験学習を計画するよりも,子どもたちを巻き込んだ教室を推進する方が内容が充実し,お互いを見直す時間として発展する。
学校でのパソコン教室は,子どもたちの力を取り込んで実施しよう。

利用したURLなど
 福崎小学校ホームページ(http://www.fukusaki-hyg.ed.jp/~fk/