スウェーデンとのインターネット交流/Project S-J
英語科・FA(外国事情)

神戸市立葺合高等学校 桝井伸司
キーワード 高等学校,英語科,学校間交流,インターネット,掲示板


インターネット利用の意図
 ネットワークの利点のひとつとして,時間,空間を超えて様々な場所に住む様々な人々と出会い,それぞれの意見を交換し,相違点,類似点を確認していく中で,自分自身についてより深く理解できるようになる,というものがある。今回のスウェーデンとのネットワークを利用した国際交流を通じて,ネットワークならではの体験を生徒達にさせることによって,自己理解を深め,そしてそれを超えた相互理解を深めていくことを目的としてこのプロジェクトを企画した。


1 Project S−J
(1) ねらい

 本校では英語に特化したカリキュラムを持つ「英語科」が設置されている。帰国子女も多いこの英語科では教科書を使わずに,独自の自主教材を用いた授業がそれぞれの科目で展開されている。「外国事情」もその中の科目のひとつで,これまでは,各国の様々な情報を新聞,書籍,TV等の媒体を通してキャッチし,それをもとに学習を深めてきた。今回はインターネットによる学校間交流を軸にして,ヨーロッパとアジアの文化・習慣をお互いに紹介しあい,またそれぞれの国で起こっている出来事を報告・検証することにより互いの考え方を知り,それにより,それぞれの国の人々の考え方のベースになっている文化的背景の考察を行う,ということを目標とした。

(2) 指導目標
 日本・スウェーデンのそれぞれの近隣諸国についてインターネットの検索サイトを利用して効果的に情報を収集し,検討することにより,理解を深めること,また,集めた情報をわかりやすくレポートにまとめる能力を身に付けることを目標とした。本科目の目標は本来,海外諸国の諸事情について学習することが中心であるが,インターネットを利用することにより,それにとどまらず,その学習成果を発信することもできる。授業では掲示板を利用することによって,それを可能にさせた。また,テレビ会議システムを利用してリアルタイムの交信により,リスニング・スピーキング能力の向上も目標とした。

(3) 利用場面
 コンピュータを利用する場面としては次のようなものがある。
(a) 各国の情報収集(検索サイトを利用)
(b) レポート作成(検索サイトで収集したものをまとめる)
(c) BBS(作成したレポート等を掲載し,相手校から同様のレポートを受信する)
(d) Biopoem(詩の形式による自己紹介)の作成
(4) 利用環境
(a) 使用機種 WINDOWS98対応機
(b) 周辺機器 スキャナー
(c) 稼働環境 コンピュータ教室 LAN接続された生徒機40台・教師機1台(64kでインターネット接続)
 職員室 サーバ機1台

(d) 利用ソフト Microsoft Word, Internet Explorer, Paint Shop Pro, スクールライター

2 指導計画

一学期

(a) スウェーデンについてのクイズを作成し,生徒のスウェーデンに対する理解力をはかる。
(b) 海外版のスウェーデン紹介ビデオの視聴。
(c) スウェーデンの生徒向けに日本に関するクイズを英語でグループごとに作成。
(d) 生徒を5つのグループに分け,それぞれのグループに対して2つのアジアの国を割り当て政府・情勢・宗教・文化について調査。
調査国名リスト
A.フィリピン・カンボジア
B.タイ・マレーシア
C.ミャンマー・中国
D.インドネシア・ベトナム
E.韓国・バングラデシュ
★インターネットの利用

二学期

(a) ニュースレポート
検索サイトを利用して,スウェーデンに報告するニュースについての情報を収集する。
収集した資料からニュースレポートを作成し,コメントも添えてBBSに掲載する。
★インターネットの利用
(b) ヨーロッパのニュース
スウェーデンから送られたヨーロッパ諸国についてのニュースを読み,質問等を送付。
タイピングに不慣れな生徒も多いのでタイピング練習も並行して行う。

★インターネットの利用

(c) Biopoem
画像を含めた詩の形式によるBiopoemを作成し,電子メールにより,スウェーデンに送付。
(d) 日本文化レポート
日本の宗教・文化・礼儀作法・休日・伝統的な着物についてのレポートを作成。
(e) スウェーデンより教師2名を迎えて
スウェーデン教師によるスウェーデンについての講演やスウェーデン教師に対する本校の紹介。
(f) テレビ会議の準備
1月のスウェーデンとのテレビ会議に向けて,資料をインターネットで収集。レポートにまとめる。
★インターネットの利用

三学期

スウェーデンとのテレビ会議
日本・スウェーデンそれぞれの国のファッション(歴史的なもの・現代的なもの)をお互いに紹介しあう。

 

3 学習の展開

1 BBSタイトル画面

図1はProject S-J用BBSの表紙である。スウェーデンとの交流は主にこのBBSを利用して実施した。(BBS用CGI, discusを使用)メニューにあるChat Roomは当初生徒同士の交流目的に,と設置したが,時差のため,同時アクセスができない点,また,メッセージが整理して保存されない点があるため,掲示板形式に移行した。なお,このBBSは交流校のみのアクセスに限定している。

2 Introduction Quiz

図2は指導計画(a)にあるスウェーデンに関するクイズである。本校生徒のスウェーデンに対する理解度をはかるために行い,相手校に送信した。アメリカ・カナダに比較すると北欧諸国に関する知識が少ないことがわかる。スウェーデン側がこちらの状況を把握した上で交信できることを目的とした。

3 スウェーデンからのニュース

 指導計画2学期の(b),スウェーデンから送られてきたニュースが図3である。ここではロンドンでの事故についてのニュースが報告されている。

4 日本文化レポート及びスウェーデンからのレポート

 それぞれの学校の生徒が自国の文化的側面について調査・考察したレポートが図4のようにBBSに投稿されている。このレポートではそれぞれのグループが食文化を取り上げている。

5 スウェーデン教師によるスウェーデンの福祉制度に関する講義

 今回のプロジェクトに関連して,スウェーデン側でも政府から援助金を得て,2名の教師が来校した。来校時には本校の教師・生徒を対象にスウェーデンの福祉制度に関する講義を持った。図5はその際のパワーポイントによるプレゼンテーションの画面である。

6 FENIX HIGH SCHOOL

 図6は交流校のFENIX High Schoolである。スウェーデンの中でもユニークなカリキュラムを持った学校で,授業には教科ごとに行われることは少なく,問題解決学習を中心に実施されている。

4 成果と課題
 今回の学校企画は一人の本校卒業生の話をきっかけにはじめたものである。アメリカの大学で知り合った方が卒業後,スウェーデンFENIX High Schoolで教鞭をとられ,生徒達の学習意欲を高めるためにと,その先生よりこの交流の申し出があった。インターネットによる学校間交流のプロジェクトはこれまでも実施してきたが,時差や学校による行事,学期等の違いによって交流がたち切れになってしまうことが多いことが問題点であった。今回は双方の教師グループがメーリングリストを作成し,参加することによって細かな打ち合わせをすることができ,双方の生徒達の様子を把握しながらプロジェクトを進めていくことができたように感じる。お互いに情報の行き来が少ない日本とスウェーデンという2国間で,ネットワーク回線を通じて少しでも情報交換ができたことは非常に有意義なものであった。今後は二学校間のつながりをより密なものにして,お互いのクラスの授業目標に即した交流計画を進めていきたい。

ワンポイントアドバイス
海外との学校間交流をする場合には教師間の連絡が重要である。授業担当教師(各校複数の担当教師がいる場合は特に有効)がお互いにメーリングリストに参加すると情報の流れが円滑になる。自前のサーバーを持っている場合は管理者に設定を要請することも可能だが,フリーのサービスに申し込むこともできる。http://www.egroups.com/ はそのようなサービスを行っているサイトである。また,相手がオンラインかどうかを確認でき,その場でメッセージを送信することができるインスタント・メッセージング・プログラムも海外との交流には便利なツールである。これにはICQやマイクロソフト・メッセンジャー,Yahooページャーなど,様々なツールがフリーで配布されているので必要に応じて利用されたい。

 

参加校
日本側      神戸市立葺合高等学校
スウェーデン側  FENIX High School (http://www.vaggeryd.se/utb/fenix.htm)