フォームのイメージをつかもう

中学校第3学年・保健体育
三木市立教育センター 梶本 佳照
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キーワード 中学校,3年,保健体育,器械運動,インターネット,ホームページ
協力校 三木市立緑が丘中学校


インターネット利用の意図
 体育の授業では,技能習得においてフォームのイメージをつかむことが重要な要素になってくる。従来は,ビデオカメラで撮影し,ビデオデッキで見るということが一般的であったと思われる。これは,確かに有効な方法であるが,生徒が自由に見たいシーンを検索し何回も見る時には,ビデオテープのアナログデータを検索することになり使用しにくい。また,データを指導者がお互いに共有するという観点から考えると,デジタルデータとしてコンピュータに保存し,さらにどの端末からも見る為に,ブラウザから表示できる形にするのが良いのではないかと考えた。ブラウザから表示できる形にするとイントラネットはもとよりインターネットから他校のデータも参照することができ,データの蓄積という点からも広がりがあり有効である。
 そこで,「器械運動」領域での,演技データをQuickTimeのmov形式とRealVideo形式の2種類で作成し使用することにした。


1 動画データの作成と編集
(1) 撮影機器
 撮影機器は,手軽さと画像の鮮明さの2点から検討して,動画が撮影できるデジタルカメラを使用することにした。デジタルカメラは,SANYOのDSC-SX150を使用した。このカメラは,動画をQuickTimeのmov形式で保存できる。動画のサイズは,640×480/15fps,320×240/15fps,160×120/15fpsで撮影できる。ファイルサイズは320×240/15fpsファインモードで,1.20秒が526KBである。撮影したファイルの転送は,カードリーダを利用したので待ち時間は事実上なしであった。
(2) 動画データの形式
 最初動画データの形式は,デジタルカメラの保存形式であるQuickTimeのmov形式だけを考えていたが,少し時間の長いデータになるとファイル容量が大きくなりすぎてダウンロードに長時間かかってしまう。そこで,ストリーミングデータとしても作成しダウンロードの時間を気にしなくて使用できるように考えた。ストリーミングデータは,個人や小規模で利用する場合,特別なサーバを必要しなくても運用できるRealVideo形式を使用することにした。
(3) 動画の編集
 撮影した動画の編集は,QuickTime4Proを中心に使用した。長い動画のカットも手軽に行うことができた。QuickTimeデータの編集は,あまり記述してある書籍が見つからなかったが,データのカットやコピーは思ったより簡単に作業ができた(図1)。QuickTime4Proは,QuickTimeに登録キーコードを入力することにより移行できる。パソコン接続キットに付属しているソフトを使用すれば,さらに細かく編集ができる(図2)。QuickTimeProからは,読み込んだデータは,保存時にAVIフィルへも書き出しができる。


図1 QuickTime4 Proでの編集画面


図2 接続キット付属ソフトでの編集画面

(4) ストリーミングデータの作成
 RealVideoやRealAudioのデータ作成方法やhtml上で再生させる場合の記述方法について掲載されている書籍は少ない。今回は,雑誌の掲載記事やWeb上から情報を得ることになった。実際にこれからストリーミングデータを作成される方に参考になるものと考え,データの作成方法を詳しく記述することにする。
まず,RealVideoやRealAudio作成用のソフトはRealNetworks社のサイトからダウンロードできるRealProducerG2(図3)を使用した。
 1) 元データの作成
 RealProducerG2を使用できるファイル形式は,QuickTimeのファイルやAVIファイルなどである。QuickTimeのmovファイルの場合,今回の使用したデジタルカメラから作成されるmovファイルそのままでは,ファイル形式が対応していない。そこで,movファイルを一度読み込んで「書き出し」のオプション(図4)で圧縮プログラム「シネパック」を選択してmovファイルとして保存するとRealProducerG2で使用できるようになる。または,AVIファイルとして書き出してそれを元データとして使用してもストリーミングデータは作成できる。


図3 RealProducerG2


図4 書き出しのオプション

 2) ストリーミングデータの作成
 RealProducerG2で,「File」−「New Session」を選択するとレコーディングウィザードが表示されるので,それにしたがっていけば作成できる。その際,File TypeはWebサーバを使用する場合(RealServerG2を使用しない場合であるが)は,Single-rate for Web Serversを選択する。後は, Target Audienceでどの回線速度に対応させるかを選択する。
これで,拡張子がrmのデータファイルが作成できる。
 3) html上での記述
 テキストエディタでRealVideoのファイル(rmファイル)のURLを記述する。
 例 http://www.city.miki.hyogo.jp/educa/educa/clp01.rm
または,pnm://www.city.miki.hyogo.jp/educa/educa/clp01.rm
このファイルにvclp01.ramという拡張子を付けて保存する。このファイルをMetaFile(メタファイル)と呼ぶ。次にこのメタファイルにhtml上からリンクを張る。
 例<A HREF="vclp01.ram">
動きとしては,htmlにリンクを張られたvclp01.ramが呼び出され,次にvclp01.ramに記述された場所へclp01.rmを見にいくということになる。

2 器械運動(とび箱運動)
(1) ねらい
 とび箱運動の学習を進める場合,自分の力に応じてわざを選び,そのわざのできばえを高めたり,また,新しくできそうなわざに挑戦して楽しむことが目標になってくる。その際,取り組む種目のイメージをつかませたり,できばえを確かめる手段として演技をデジタルカメラで撮影した動画を活用することにした。さらに,イントラネット及びインターネットを活用して校内及び他校とのデータ共有化をはかりデータの蓄積を図るともに生徒お互いの刺激を高めることにした。
QuickTimeで再生すると,一こまずつ確認することもできるので,細かな身体の位置を確認しやすい。
(2) 指導目標
 とび箱運動には,切り返し系のわざと回転系のわざがある。第1空中局面(踏切〜着手)と第2空中局面(着手〜着地)を変化させて,いろいろなとび方に挑戦する。
 1,2年生で練習した技の中から,自分の力に応じた技を選択させ,目標をもたせて意欲的に取り組ませる。
 個別学習に重点を置き,各自が自由に練習し,自主的に練習に取り組むようにさせる。
(3) 利用場面
 この学習では,次のような場面でコンピュータを活用する。
 1) 授業開始時
 習得しようとする技の経験のない生徒に,技のイメージをつかませる為に完成した形の動画を見せる。
 2) 技の練習過程
 技の練習過程で,技がどれくらい習得されているか確かめる為に自分の動きを撮影した動画を見せる。
 3) まとめとして
 技を習得した後,完成したわざと練習中の技を比較して見せる。これにより達成感を高めさせる。
(4) 利用環境
 1) 使用機種 FMV-BIBLO 1台 FMV-6266T7 1台 FMV-6233T7 20台
 2) 周辺機器 デジタルカメラ SANYO DSC-SX150 1台
 3) 稼動環境 コンピュータ室 FMV-6233TX 21台(64Kでインターネット接続)
 体育館 FMV-BIBLO 1台(校内LANにより64Kでインターネット接続)
 4) 使用ソフト QuickTime4,RealPlyerG2,インターネットエクスプローラ5.0

3 指導計画

 

学 習 の 過 程

 

ねらい1      →→
 いろいろな技に挑戦し,できる技とできないを確かめる。

ねらい2
 自分の技をよりダイナミックに行ったり,新しくできそうな技に挑戦したりして楽しむ。








 

いろいろな技に挑戦し,できる技とできない技を確かめる。
(動画で技の動きを見る。)
 ★インターネットの利用
    イントラネットの併用

 









めあて1
 できる技をより上手にしたり,むずかしい条件でもできるように楽しむ。
 ★自分の動きをQuickTimeで見ながら改善点を決める。

↓ 「めあて1」「めあて2」をくり返す。

上手にする技とできるようにする技を決める。
 ★インターネットの利用
    イントラネットの併用

めあて2
 新しくできそうな技に挑戦する。
 ★QuickTimeの動画を見ながら,挑戦する技を決める。

 できるようになった技は「めあて1」で,より上手にできるようにして楽しむ。
 ★練習初期の動きと比べる。

4 利用場面
(1) 目標
 ・自由練習の意義を知らせ,各自が自己の目標をもち練習に取り組む姿勢を育成する。
 ・できる技や新しい技を習熟させて楽しもうとする。
 ・各自が技の欠点を具体的に知り,ねらいを明確にした練習をできるようにする。
(2) 展開

学習活動

活動への働きかけ

備考

1 課題とめあての確認
準備運動・課題の確認
用具・器具の点検

・よりよく活動するために入念に準備運動をさせる。
 ・本日のねらい・学習内容を説明し,取り組む意欲を高める。

 

2 できる技の練習
・技能レベルに合った技を練習する。

・できるようになった技は,より上手にできるように意欲づける。
 ・動画データを随時参考にさせる。

・コンピュータ
・デジタルカメラ

3 できそうな技に挑戦
・補助の仕方を学び,積極的に補助や助言をし合って練習する。
・できそうな技に意欲的に挑戦する。

・各自のレベルに合った技が選択できるように助言する。
 ・選択した技の示範動画データを積極的に活用する。

・コンピュータ
・デジタルカメラ

4 整理運動と反省
・整理運動
・反省と次時の課題

・心身の緊張をほぐし,疲れをとる。
 ・学習カード,班ノートを活用する。

 

5 実践を終えて
 従来,動画と言えばビデオということになっていたと思う。しかし,今回のようにデジタルカメラの動画撮影機能を利用することにより大変簡単に動画のデジタルデータをコンピュータに取り込むことができ,ビデオクリップの作成が大変スムーズに行えた。


図5 動画データ例

 次に授業で使用した際の生徒の感想を次に紹介する。
「自分の技の悪い点がよくわかった。」「ビデオと違ってすぐに何回も再生してみることができるのでよかった。」,「細かい点まで分かった。」,「画面がもう少し大きかったらもっと良かった」
 このように生徒自身がQuickTimeを簡単に操作することができるので1こまずつ自分の確かめたい部分を何回も見ることができ参考になったようである。

ワンポイントアドバイス
 movやaviのデータは,一度全データを再生するPCに取り込む必要がある為,回線速度が遅い場合時間がかかってしまう。事前に一度見ておくとキャッシュ効果で次は早く見ることができる。回線速度に合わせて,画面サイズを変えて2種類のページを作成しておくのも一つの方法である。もちろんイントラネットで使用すると速度的に問題はなくなる。なお,授業中の演技をすぐに見る場合は,デジタルカメラとPCを何台か用意してグループごとに撮影させるのが良いと思う。Web上には,その中から必要なデータを選択して公開して置く。何校かと協力すると,より多くのデータが集まるので授業に活用しやすい。
 movファイルの編集は,QuickTimeからアップグレードしてPro版にしておく必要がある。

参考文献
 HomePageマガジン1999年3月号(株式会社インプレス)
 中学校保健体育科指導細案2 器械運動 (明治図書出版株式会社)
 中学体育実技兵庫県版 (株式会社学習研究社)
 HTMLタグリファレンス (株式会社ナツメ社)

利用したURLなど
 誰でもできるストリーミングビデオの巻 (http://www.avis.ne.jp/~meteor/html/lets-make-rv.html)
 realplyerG2 (http://www.jp.real.com/products/player/index.html)
 realproducerG2 (http://www.jp.real.com/products/tools/)
 QuickTime4 (http://www.apple.co.jp/quicktime/download/support/index.html)