学校ボランティアの組織作りを支援する地域イントラネットの整備

小学校第3学年・総合的な学習の時間
倉敷市立万寿東小学校 江本桂子 尾島正敏
キーワード イントラネット,地域,小学校,ボランティア,リサイクル


インターネット利用の意図
 子どもたちはコンピュータに慣れてくると,表現道具として鉛筆やノート代わりに使うようになってくる。この段階まで進んでくると自分たちが表現した作品を発表する場,作品に対する反応を期待し始める。発表する場としてクラスでのプレゼンテーションなども考えられるが,学校内で知っている人だけでなく,それ以外の人たちの反応を欲しがり始める。インターネットのホームページは,上記の目的を達成するのに適した場所なのだが,タイムリーな反応を期待することはなかなか難しい。そこで,子どもたちの作品に対する反応が欲しいときに即応できるメールボランティア的な立場の人たちが必要となってきた。
学校の様子を地域や保護者によりよく理解してもらう目的も含めて,地域イントラネットを立ち上げることにした。


1 本校のコンピュータに関する環境
 本校へのコンピュータの導入は比較的新しく,平成9年度にピア・ツゥ・ピアのLAN環境のもと11台のウインドウズマシンが視聴覚室に設置された。平成10年度の11月に文部省の「食に関する研究」で,ISDNによるインターネット接続がされ,校内のネットワーク化が始まった。インターネットの有効な利用を考えたときに,ホームページを開設し,学校の様子,子どもたちの学習活動の足跡を掲示することが有効な手段だと考えられ,ホームページを開設した。ホームページの開設にあたっては,「食に関する研究」が中心となっているので,内容が毎日の給食の献立や映像による情報の提供といったものになった。
 それに対して、保護者や子どもたち,また不特定多数の方々から質問や励ましのメールをいただき,ホームページの有効性は充分に分かった。ところが,保護者や地域の方々からは,期待していたよりも反応が少なく、子どもの実名や写真の掲載に関しては,さまざまな制約があることをメール等で知らされた。
 そんな中で,ホームページの持つ情報発信の潜在能力を有効に利用する手段はないかと考えていたときに,ホームページにパスワードを設ける方法を知り,学校の公のホームページのほかに,もう一つ保護者や地域に限定したホームページを開設することにした。

2 地域イントラネットのねらい
 最近「開かれた学校」という言葉をよく耳にする。ねらいはよく分かるのだが,いざ実践となるとむずかしさを感じてしまう。そこで,前述の保護者や地域の方々を対象としたホームページが生きてくるのでは,と考えた。ホームページは子どもたちの表現意欲を駆り立てることのできる手段の一つである。知らない人からの反応があるかもしれないという期待感や反応があったときの喜びなどが,子どもたちの表現意欲を駆り立てているように感じている。しかし,現実的には知らない人からの反応は,子どもたちが思っているほど敏感なものではなった。
 そこで,子どもたちの表現した内容に,素早く確実に反応してくれる人として,保護者や地域の方々を有効に活用し,また保護者や地域の方々には学校の情報を提供することによって学校をよりよく理解してもらうねらいで,地域限定のイントラネットを立ち上げることにした。

3 地域イントラネットのハード環境
 学校での子どもたちの表現したデータを一元化して管理するため,職員室にマイクロソフト社製のWindowsNT Serverを導入した。また,子どもたちが表現活動に使うサーバ上で動くソフトとして四国ラインズ社製の「イントラバケッツ」をクライアント機に導入した。職員室と視聴覚室を結ぶLANケーブルの敷設には,研修もかね教職員で行った。
 ホームページは,「イントラバケッツ」を導入した関係で,四国ラインズ社のサーバの中に置くことにした。

4 ホームページの構成
 ホームページ(名称「けやきネット」図1)は,主に学校からのお知らせと子どもたちの作品(図2)の2つのカテゴリーから構成することにした。お知らせは,堅くならないように学校生活や行事の様子などの映像を中心にに構成することにし,子どもたちの作品はサーバに蓄積したものからアップ・ロードすることにした。
 また,四国ラインズのご好意で,地域イントラネットに参加する家庭にはホームページへのアップローダーに「イントラバケッツ」を使用した関係で,家庭で作ったページもメール感覚でホームページにアップロードすることが可能となった。

5 保護者・地域への啓蒙
 このプロジェクトを推進するにあたって,参加していただける家庭の確保が一番の問題となると考え,ホームページを立ち上げる前から,保護者の方々に対して,パソコン教室やインターネット教室を7月初めから9月にかけて5回開催した。毎回20名前後の保護者の方々が参加され,熱心にコンピュータと取り組んでおられた。地域イントラネットのホームページの立ち上げに際して,当初の予想も多い30軒以上の保護者の方々が参加してくださった。


図1 けやきネットのトップページ


図2 3年生の作品(リサイクル工作)

6 地域イントラネットの活用
 今回は,3年生の総合的な学習の時間を利用して,地域イントラネットの活用に取り組み,さらに学校ボランティアの組織を作ることにした。単元の流れは次のとおりである。
(1) プロジェクト名
 チャレンジ!! リサイクル

(2) プロジェクトの目標
・社会科の学習を契機に,リサイクル活動に対して興味・関心を持ち,どのような取り組みがなされているのかを調べることができる。
・調べた事柄をコンピュータを使って分かりやすくまとめ,発表することができる。
・周りのいろいろな人々とかかわる中で自分たちの生活を見直し,環境を大切にしようとする意識を高めることができる。

(3) プロジェクトの展開 (第3学年 全30時間)
リサイクルって何か調べよう (全員活動) (10時間) 
◯ 「おやつパーティー」を開こう。
・自分たちが食べた後でごみとして出るものが多いことに気づく。
・ごみの中にはリサイクルできるものがあることを知る。
◯ 各家庭で「買い物調べ」と「ごみ調べ」をしよう。
・買ったものの中に,ごみとして捨てるものがあること,またその中には空き箱やトレイなど,リサイクルできるものもたくさんあることに気づく。
◯ リサイクルについて調べてみよう。
・ス−パ−マ−ケットの見学を通して,商店でも資源や環境のことを考えた取り組みをしていることを知る。
・リサイクルについて本やビデオを見て調べたり,ごみを減らすために各家庭で取り組んでいることを家の人や先生に尋ねたりする。
・資源ごみの分別の仕方やリサイクルに取り組んでいる様子について知り,実際に体験したり,その様子をデジカメで撮影したりする。(生活に役立つリサイクル工作,廃油で石鹸作り)

リサイクルについてまとめよう (課題別グル−プ活動)(12時間)
◯ ごみを減らすために地域や外国の人々はどんな取り組みをしているのか,さらに追求してみよう。
・各自詳しく調べたいテーマを決める。
 (ごみを減らす工夫,資源ごみの再利用の方法,分別の仕方についてなど)
・本で調べたり,直接インタビューしたり,地域イントラネットを使って尋ねたいことを質問したりする。
◯ コンピュータを使ってまとめよう。(本時)
・地域で積極的に取り組んでいる人の話を聞く。
・集めた情報をもとに,分かったことや自分たちの考えをコンピュ−タを使ってまとめていく。
◯ グル−プごとにまとめたことを発表しよう。
・他のグループの作品を評価し合う。
◯ 2組が調べたこともコンピュータで見てみよう。

未来を創ろう!守ろう! (全員活動)  (8時間)
◯ リサイクルについてまとめたことをホ−ムペ−ジにのせよう。
○ リサイクルに取り組もう。
・身近な廃材を利用して作品を作り,「リサイクル展」を開いたり「倉敷っ子美術展」に出品したりする。
・校内クリ−ン作戦,アルミ缶あつめがもっと活発になるように全校に呼びかける。
・3年生が主体となって学区内クリ−ン作戦を行う。

(4) プロジェクトについて
 1学期の社会科「すみよい町づくり」で,地域の人々は協力して生活の向上や住みよい環境づくりに努力していることを調べ、コンピュータを使ってまとめた。2学期は,社会科「わたしたちのくらしと商店のはたらき」の学習と関連させて,社会の動向に目を向け資源の有効利用や環境保護の立場に立って考えてみる総合的な学習「チャレンジ!!リサイクル」を計画した。
 子どもたちはグループごとにテーマを決めて,地域の人などから情報を集め,調べ学習を行う。また他のグルー プや他のクラスと情報交換をする中で,資源を無駄にしないためのさまざまな工夫や努力に気付かせることにポイントを置いて指導を行った。さらに学習したことを生かし,リサイクル活動に取り組むことで社会の一員として,自分たちの住む環境を大切にしようとする態度を大切にした指導を考えた。
 このプロジェクトでは,学習していく中で地域の人々からより多くの情報を得ること,コンピュータに情報を蓄積していき来年度以降にも活用してもらうこと,また学習したことをより多くの人に知ってもらうことを目的に,地域イントラネットや「イントラバケッツ」のソフトを活用し,コンピュータを使ってリサイクルについての取り組みをまとめる活動に重点を置いた。

(5) 本時の展開

ね ら い

地域で積極的にリサイクルに取り組んでいる人の話を聞き,それらを参考にしながら,コンピュータを使ってリサイクルについてまとめていくことができる。

学習活動

教師の支援

準備物

評価の観点

1 本時の学習を確認する。







2 地域の人の話を聞く。











3 グループごとにコンピュータでまとめていく。

・前時までに地域イントラネットで尋ねていた質問の返事を見る。
・下書きメモに付け加えをする。
・メモをもとにまとめる。
・作品の感想を尋ねる。
・作品を保存する。

4 学習のまとめをする。
・評価カードを書く。

・地域の人を紹介し,本時は地域の人に協力してもらってリサイクルについてまとめる学習をすることを確認する。

地域の人の話を参考にして,リサイクルについてまとめていこう

・内容をテーマごとに分けて話をしてもらい,児童に分かりやすいようにする。

・実際にリサイクル作品を見せてもらうことによって,リサイクルを身近に感じられるようにする。

・リサイクル活動をする上で心がけていることや工夫していること,難しい点などを話してもらい努力している様子が伝わるようにする。

・集めた情報や聞いた話を参考にして,コンピュータでまとめていく時のポイントを確認する。

・まとめていく途中で新たな疑問が出た場合は,地域の人に尋ねたりコンピュータに質問事項を入力したりさせて,どの班も意欲的に活動ができるようにする。



・全国の先生にも作品を見た感想やリサイクルに関する情報を寄せてもらう。

・目的に合ったデジカメ画像を選びやすいように,一覧表を用意しておく。

・コンピュータ操作が分からなくなった時は,友達に尋ねたり操作手順のカードを見たりさせて,抵抗なく取り組めるようにする。

・本時の活動を振り返らせ,工夫した点や班で協力してできた点を称揚する。

・次時はクラス内発表会の準備をすることを知らせ,次時の意欲につなげたい。









リサイクル作品


ビデオプロジェクター








先生方に情報を入力してもらうコンピュータ


デジカメ画像の一覧表

操作手順カード


評価カード






















地域の人や先生から楽しく情報収集することができたか。

目的に合った画像を選ぶことができたか。



自分たちの気持ちが伝わるように表現できたか。

7 実践を終えて
 子どもたちは,当初自分の作品がホームページに掲載されることだけでも,喜びを感じていた。さらに,自分たちの考えた質問などにタイムリーな反応(図3)があることに対して,驚きとともに喜びがあったようだ。
 しかし,これは教師のサイドの周到なお膳立てと保護者や地域の方々の協力があればこそ可能なことである。地域イントラネットに参加していただいた保護者の方々が,毎日ホームページを見てくださっているわけではない。タイムリーな反応が欲しいときには,電話やFAXを使って事前にお願いをしておくことなどの周到な準備が必要となってきた。
 また,現在は参加者が50名を超えているが,メール等で敏感に反応していただける家庭の数はごくわずかである。ホームページの持ち方,提供する情報の内容,保護者や地域の方々との連携のありようなど,目の前には課題が山積している。


図3 保護者からの反応



ワンポイントアドバイス
 本校の場合,保護者の教育に対する関心が高くパソコンの保有率も30パーセント以上に達するが,インターネットによる情報の提供は,ともすると保護者の間に不公平感を生み出してしまう。このような不公平感を生み出さないため、本校では参観日や学級懇談会を利用して,事前の説明を丁寧に行った。そして、何のために地域イントラネットを開設するのか,意義を充分に理解していただく努力を行ってきた。今後も、パソコンを保有していない保護者に対しても、ネットに掲載した情報を提供する機会や場面を設定し、真に開かれた学校の創造を目指していきたい。

利用したURLなど
 万寿東小学校のメールアドレス   
 万寿東小ホームページURL
masuhied@city.kurashiki.okayama.jp
http://www.city.kurashiki.okayama.jp/emschool/masuhiED/index.htm
http://mweb.jrslines.co.jp/keyakinet/