インターネット及びTV会議システムを用いた異年齢による
学校間交流の実践に関する研究
小学校第5学年・総合的な学習の時間
岡山県都窪郡早島町立早島小学校 楠 博文
キーワード 小学校,5年,総合的な学習の時間,インターネット,TV会議システム,学校間交流
インターネット利用の意図
コンピュータネットワークを利用しコミュニケーションをする力は,21世紀を生きる子どもたちには必要不可欠の能力と考える。
インターネットは,「グローバルな双方向ネットワーク」であると同時に,「ローカルなコミュニケーション手段」でもある。インターネットに接続するということは,児童が地球規模に広がった双方向ネットワークの利用者の仲間入りをするということに他ならない。
これからの社会では,日頃交流がないような相手に対しても,自分の考えをはっきりと表現したり,相手を理解したりする能力を身に付けておくことは重要な課題と考える。そこで,本研究は,インターネットなどの情報手段を利用した「コミュニケーション能力の育成」に重点をおいた研究を進める。
開発した単元「コンピュータで友達をつくっちゃおう!」は,学校や学年の異なる日新小学校の児童との交流を学習に取り入れるのは,児童に同じ学級の児童同士でのコミュニケーションとは異なった抵抗感を与えるためであり,このことが,コンピュータやTV会議システムを使う良さや必然性,積極的にコミュニケーションをとろうとする態度を生むと考える。本実践研究は,コンピュータをはじめてコミュニケーションの道具として使ったり,TV会議システムを今後導入したりしようとしている学校に対して,はじめの一歩を提案するものである。
1 単元名 「コンピュータで友達をつくっちゃおう!」
(1) ねらい
学校や学年の異なる児童同士がインターネットやTV会議システムを使ってコミュニケーションを図る経験を通して,自分の意見を分かりやすく相手に伝えたり,相手の考えを正しく受けとめたりできる。
・学校や学年の異なる児童同士でも,自分の考えをはっきり表現したり,相手の考えを正しく受けとめたりすることができる。(コミュニケーション能力)
・課題や目的に応じて,情報手段を適切に活用し,受け手が分かりやすい文章表現やレイアウトを工夫しながら,情報の収集・加工・発信ができる。(情報活用の実践力)
・掲示板,チャット,電子メール及びTV会議システムをコミュニケーションの道具として使うことができ,それぞれのよさを体験的に理解する。(情報の科学的な理解)
・掲示板やチャット及び電子メールを使うときのマナーについて考え,責任ある態度で情報を発信することができる。(情報社会に参画する態度)
(2) コンピュータ(インターネット・TV会議システム等)の利用場面
この学習では,次のような学習場面でコンピュータやインターネット等を利用する。
(a) 自己紹介のホームページ作成
交流は相手を知ることから始まる。そこで,両校で相談し自己紹介のページを作成した。自己紹介のホームページを作成することが目的ではないために,紹介のページは写真と簡単な自己紹介のメッセージだけの構成とした。
(b) 日常的な交流
あらかじめ用意しておいた電子掲示板やチャットによる日常的な交流を行う。電子掲示板及びチャットは,インターネット上にあるフリーのCGIスクリプトを元に,学習に合うように改良し利用した。
(c) お互いの県や町を紹介するポスター作り
インターネットによる日常的な交流を続けていき,お互いにチャットや掲示板での交流に慣れた時点で,「互いの県や町を紹介し合おう」という課題を与えた。ポスター制作の過程で会議システムを利用してお互いに意見交換を行う。また,県や町についての情報収集にもインターネットを活用する。
(3) 学習環境
(a) 使用機種
NEC PC-9821 V200 20
(b) 周辺機器
ネットワークプリンタ(NEC Multi Writer 2200X)1台
カラープリンタ(Epson PM-700C)5台
スキャナ(Epson GT-9500)
MOドライブ(Olympus 230M)1台
(c) 稼働環境
コンピュータ教室 NEC PC-9821 V200 14台
普通教室 NEC PC-9821 V200 5台
児童会室 NEC PC-9821 V200 2台
図書室 自作PC及び企業等からの寄付PC 4台
サーバ室 NEC 9821 RSII26 1台
NEC PC-9821 V200 1台
自作マシン1台
※インターネットにはすべてのPCが64Kで常時接続。
(d) 利用ソフト
Microsoft Office 2000(Word2000,PowerPoint2000),Paint Shop Pro
5J
Internet Explorer 5.0,Outlook Express
5.0
Hotall 2001
2 指導計画
次 |
時 |
児童の意識の流れ |
児童の活動 |
主な支援 | ||
1 |
1 |
福井市日新小学校 森田先生。ようこそ!早島小学校へ |
・楽しい出会いを演出することにより,交流したいという気持ちが持てるようにする。 | |||
・福井市日新小学校の森田先生をお迎えする会を開こう! |
・1分間スピーチで自己紹介。 |
|||||
2 |
1 4 5 6 |
コンピュータの向こうに日新小の友達がいるよ! |
・自己紹介のホームページを作成させることで,日新小学校の児童をより身近に感じることができるようにする。 ・TV会議システムを導入することで,交流相手に,より親しみがもてるようにする。 | |||
・ホームページを作って自分を知ってもらおう。 |
・自己紹介のホームページを作成する。☆Hotall 2001 ・TV会議システムを使えば,相手の表情を見ながら直接会話できることを体験する。 | |||||
課外 |
随時 |
・今日はどんな書き込みがあるかな。 |
・6つの班に分かれ,日常的に掲示板に書き込む。 |
・課外で自習に掲示板に書き込ませることで,主体的に交流ができるようにする。 | ||
3 |
1 2 3 4 6 11 |
・自分たちの住んでいる岡山県や早島町の紹介をしよう。 ・どうやって情報を集めようかな。 ・これで分かりやすいポスターになっているかな?日新小の友達に聞いてみよう。 ・日新小の6年生にいろいろアドバイスをもらっていいポスターができたな。 |
・どんなことを紹介すればよいか考える。 ★岡山県や早島町,また,早島小学校についてどんなことが知りたいか,班ごとにグループ掲示板で日新小学校の人から,できるだけ多くの希望を聞き出す競争をする。 ★班ごとに,ポスターに取り入れたい題材を話し合う。 ・情報収集ができた班から,ポスター作りに取りかかる。 ・できあがったポスターをお互いに発表し,感想を述べ合う。 |
・電子掲示板で,日新小学校の6年生から,岡山県や早島町,早島小学校について聞きたいことをたずね,その項目の多さを班ごとに競わせることで,得たい情報を相手から引き出すための文章表現を工夫する必然性を与える。 ・児童が題材を選びやすいようにいくつかの項目にまとめる。 ・日新小学校の6年生が知りたいことは何かを,掲示板の書き込みからつかみ,それを意識しながら班ごとにポスターに取り入れる題材を決定させる。 ・より分かりやすいポスターにするために,集めてきた情報を表現するのにふさわしいキャッチフレーズを考えるようにさせる。
| ||
4 | 1 |
・3学期はどんな交流をしていこうかな。 |
・3学期の交流計画を立てる。 |
・2学期の交流を振り返り,3学期の計画を立てさせる。 |
※ 表中の記号は以下の場面につけている。
★インターネットの利用場面 ☆使用したソフト
3 学習の展開
(1) ねらい
交流相手校の6年生とお互いの作品について意見交換を行う過程で,自分の考えを分かりやすく表現したり,相手の考えを正しく受け止めたりすることができる。
(2) 展開
学習活動 |
教 師 の 支 援 と 評 価 | |
1 本時の学習課題を知る。 |
○本時は,分かりやすいポスターにするために,日新小学校の6年生とお互いに意見交換をしながらポスター作りを進めていくことを確認する。 | |
お互いにアドバイスをしながら,分かりやすいポスターにしていこう。 | ||
2 班ごとに,日新小学校の6年生と意見交換を行い,今後どのような工夫を加えていけば,自分たちの意図が伝わるポスターになるか考える。 3 本時のまとめをする。 4 次時の学習について知る。 |
・意見交換には,グループ会議室(Chat),グループ掲示板(BBS),及びTV会議システムを使う。 ○お互いのポスターが見合えるように,あらかじめWebページを作成しておく。また,作品を見ながら意見が書き込めるように画面を工夫しておく。 ○アドバイスを受けて,より分かりやすいポスターに変わってきている班や,的確なアドバイスが送れた班を称揚し,意見交換の意欲を高める。 ○班ごとにどのような意見交換ができたか発表する。
○今日の交流を参考にして,次時はより分かりやすいポスターを完成させることを知らせる。 |
4 成果と課題
今回の研究では,インターネット及びTV会議システムを利用して,コミュニケーション能力の育成を図ることを目的に単元を開発実践した。図1は,第3次の学習で使用したもので,このページからチャットや電子掲示板,ポスター意見交換のページ(図2)に入れるようになっている。児童が発言するときに,自分の顔写真も同時に表示されるようにしたことで,児童は発言に責任をもって行うことができた。また,情報収集を行う際に,インターネットを活用したが,単にそれぞれの県や町の情報を収集するだけでなく,Web上に公開されている写真などの著作権にも目を向けさせる指導ができた。掲示板やチャットのログや,児童の学習の様子から,児童は,相手に分かりやすい表現をしたり,どうすれば自分たちの意見がうまく相手に伝わるかなどを考えた発言をしたりすることがじょじょにできていることが分かった。
インターネットやTV会議システムといった新しい学習の道具を使ってコミュニケーションする経験を与えたことは,今後,児童に学習空間を広げる意味でも大きく意味があったと考える。
ワンポイントアドバイス |
利用したURL
電子掲示板及びチャットに用いたCGI (http://www.kent-web.com/)