町内ネットワークを目指して

組織作り
苫田郡鏡野町立鶴喜小学校 渋谷 陽
キーワード ネットワーク,LAN,情報教育,インターネット,電子メール


インターネット利用の意図
 地域内ネットワークの構築は先進的な学校や地域においては周知のことであっても,鏡野町のようにゼロから出発しなくてはいけない学校もまだまだ多くあると思われる。そのような学校や地域にとって少しでも参考になればと思い,取り組んだものが本研究である。
 鏡野町内には6校(小学校5校,中学校1校)の学校があり,各校ともインターネットにつながり,また,各3〜4台と小規模ながらパソコン教室等のみの教室内LANも整備されている。
 しかし,ソフト・ハードの整備を各校独自で行ってきており,町内で統一された環境整備になってない現状である。そこで,町内各校の現状把握と今後の方向性について共通に話し合える場や活動できる場が必要になってきていた。
 そのための組織作りと見通しをもった活動(町内ネットワークを目指して)をどのように行っているかをまとめた。


研究の概要
 鏡野町内には6校(小学校5校,中学校1校)があり,1昨年(平成10年度)にすべての学校がインターネットに接続できる環境になった。それに合わせて町内の研究組織として情報教育班ができた。その中でお互いのコンピュータリテラシーを高めあおうとしたが,ソフト・ハード両方とも同じ環境になく,思うように研修ができないという問題点も出てきた。
 そのため,町内6校から代表者が集まり,その中で情報教育の進め方や各校のソフト・ハードについて共通認識をする場の必要性が出てきた。
 本年度(平成11年度)になり,教育委員会及び各校の協力の下,情報教育班とは別に各校の情報教育担当者が集まり町内の情報教育について考える組織(情報教育担当者会)ができた。その結果,津山工業高等専門学校の協力を得ながら,町内の先生方を対象としたインターネット体験や各校のハード・ソフトの調査,情報教育やコンピュータ利用についてのアンケート等を行うことができた。
 各種の連絡をスムーズに行うための手段として電子メールが役に立った。これまでであれば,打ち合わせに費やしていた会場までの往復時間と会議費等も節約できた。
 このように,町内の人的ネットワークの柱は確立したわけだが,本当の意味での町内ネットワークの確立に向けては,今その第一歩を踏み出したところである。

実践内容
1 情報教育担当者会の設立

 これまで各校がそれぞれに進めていたソフト・ハードの環境整備を町内でまとめていく必要性があり,委員会,校長,各校の情報教育担当者の理解を得て,鏡野町教職員研修会情報教育班の話し合いの中で,各校から情報教育担当者が集まる「情報教育担当者会」をもつことが決まった。
 情報教育担当者会では,各校の現状共通理解と分析,今後の方向性,情報教育班の研修内容について話し合いを行うことになった。
(1)
第1回情報教育担当者会
 各校の代表者がそれぞれにいま抱えている問題点等を出し合い,共通理解を図った。

小学校


Windows95が稼働するコンピュータとDOSが稼働するコンピュータが混在しているために子どもたちに十分使わせることができない。
OSが混在しているため,毎年組まれてくるコンピュータソフトの予算を有効に使うことが難しい。
各校が独自にソフトを購入しているために,基本ソフト以外は統一できてなく,町内で研修をしてもそれを各校に持ち帰ってそのままいかすことができにくい。

 

中学校


本年度,新しくコンピュータが入れ替わるので,中学校の環境整備について話し合いたい。また,小学校との統一も考えていきたい。

 

 こういった話し合いの結果,ホームページの作成等でつながりのあった津山工業高等専門学校に各校のソフト・ハードの分析をお願いし,今後の鏡野町の情報教育の進め方についてアドバイスもいただきたいということになった。

2 津山工業高等専門学校の協力
 津山工業高等専門学校に協力を得ることについて教育委員会,校長に理解していただき,津山工業高等専門学校との何回かのメールのやりとりによって,協力が得られることになった。
 津山工業高等専門学校からは,県北における学校現場の実態を知るいい機会になり,今後増えるであろう学校におけるLAN導入の参考例の作成及び,LANの技術的サポートを行う上でのマニュアル作りのデータにしたいと積極的な協力を得ることができた。
 そこで,今後の方向性も話し合い,次のことを決めた。
(a) 各校のソフト・ハードを調査,分析し,有効な利用方法を考える。必要に応じて各校へのアドバイスをする。
(b) ソフト・ハードの調査前に各校の情報教育担当者にアンケートを取り,各校独自の希望や問題点等についても具体的に調べる。
(c) すべての調査終了後,津山工業高等専門学校にて分析し,その結果をまとめ,鏡野町の理想的なネットワークプランと実現可能なプランを具体化する。
(d) 調査結果及び,アドバイスをもとに今後の町内の情報教育の在り方を探っていき,来年度に生かしていく。

(1) アンケートについて
下記のアンケート用紙を各校に配り,津山工業高等専門学校の方へ回答を直接送った。


コンピュータ使用状況についてのアンケート

津山工業高等専門学校 岡田研究室
電子・情報システム専攻科
山田 康代

このアンケートは,初等中等教育における情報教育の現状を調査し,共通の利用環境を整え
ることを目的にしています。下記のアンケートにご協力をお願いします。
1 あなたの名前と学校名を教えてください。
2 学校にパソコンはありますか?
3 2の問いに「はい」と答えていただいた方にお尋ねします。
3.1 パソコンは何台入っていますか?
3.2 パソコンはどのような場所で利用されていますか?
またそこで,パソコンのどのような機能を利用していますか?
3.3 ネットワークにつながっていますか?
3.3.1 3.3の問いに「はい」と答えていただいた方にお尋ねします。
インターネットにつながっていますか?
3.4 パソコン環境〔機種・OS・周辺機器(プリンタ・スピーカー等)〕を教えてください。
3.5 パソコンを利用している上での問題点を教えてください。
3.6 今後パソコンをどのように利用したいと思っていますか?
ご協力ありがとうございました。

(2) 各校のソフト・ハード設置状況調査
 津山工業高等専門学校の研究生が実際に各校をまわり,パソコン設置場所,性能,所有ソフトの種類等を調査した。このことにより,WindowsマシンとDOSマシンが混在して設置されており,これらを併用して授業等で使うことが技術的にも非常で困難であり,新たにパソコンを購入するよりも費用がかかることがわかる。

(3) インターネット体験講座
 津山工業高等専門学校において,教授と研究生を講師に迎え,町内の多くの先生方の参加の下,インターネット体験講座を開いた。
 この講座では,LANでつながっているパソコン(一人1台)を自由にさわることができた。また3,4人に1名の講師の割合になっていたので,個別研修のような講座になった。参加された先生方のほとんどは,本格的なLANに初めてふれることができ,その良さやインターネットの素晴らしさを体験し,感想1にも表れているように有意義な研修になった。
 


初めてインターネットで検索ということを体験した。本当にいろんなことが簡単に調べられるんだということがわかった。
こういう風に一人に1台のパソコンがあって,みんなで同じことをしたり,全然別のことができるようになれば,子どもたちにも是非,体験させてやりたい。
将来は,小学校でもここまで環境が本当に整うのだろうか。このような環境であれば,とても便利だと思うが,教員がこのようなとても大きなシステム(LAN?)を管理するのはとうてい無理なのではないだろうか。

感想1

1 研修風景

3 教育関係企業プレゼンテーションへの研修参加
 情報教育担当者としては,ある程度管理面についても理解する必要があるので,岡山の企業展示場でLAN関係のソフト体験をする研修を行った。この体験において,最近のソフトがコンピュータの操作にそれほど習熟していなくても子どもたちが直感的に操作できるようになっていることがわかった。また,改めてネットワークの管理については専門家や専門ソフトにまかせることが現実的であることを実感した。

4 町内の組織とネットワークの見通し
 中学校が専用線で接続される見通しがつき,そのためのコンピュータ設置方法についてメールを中心にしながら連絡を取り合い,できるだけ使いやすい形の環境整備を目指した。
 その結果,40台のコンピュータの内,20台をノートパソコンにして自由に教室間を移動し利用するという新たな発想を得ることができ,実現した。
 専用線の導入で将来的な見通しとして,図2のような町内ネットワークの可能性も十分に出てきたため,その考え方や今後の取り組みについて共通理解を図るための話し合いをもった。

2

成果
1 情報教育担当者会

(1) 代表者が集まって話し合うことができるようになったので,各校の実状がわかり,現時点での問題点や課題をはっきりさせることができた。
(2) 各校の情報教育を進めていく上での新しい情報や体験等を共有できた。
(3) 教育委員会や校長の理解が得られ,情報教育担当者会の設置やその開催がスムーズにできた。
(4) 情報教育関係の研修会等の情報交換が電子メール等を利用して効率的に行うことができた。

2 津山工業高等専門学校の協力
 津山工業高等専門学校の教授や研究生による専門的なアドバイスや客観的な現状分析,今後の方向性等を適宜示唆していただくことができ見通しを持ちながら活動を続けることができた。また,鏡野町内の各学校の実態を把握していただいたことにより今後起こるであろう技術的な問題についても具体的なアドバイスをしていただける可能性が生まれた。

今後に向けて
 情報教育担当者会は,町を1つのグループとして見ることができ,そのおかげで到達目標も町全体を視野に入れながら考えることができた。しかし,これらの考えや見通しを具体化していくためにはやはり,教育委員会や各学校長の参加が必要になってくる。今後は図2にある「情報教育推進委員会」のような理想的な組織作りが望まれる。
 そのためにも,情報教育担当者が各校での情報教育の取り組みや実践を持ちより積極的に町内の全校に広まるようにするようにし,子どもたちにとってコンピュータ等の情報機器がどのように役に立つのか,教育現場でのLANがどのように有効なものであるのかをより多くの教職員に知ってもらうようにすることが大切である。また,町内ネットワークが機能すればどれほど素晴らしい教育効果が得られるかを情報教育担当者会で明らかにし,教職員に限らずできるだけ多くの方に理解してもらうようにしなくてはならない。

ワンポイントアドバイス
 津山工業高等専門学校のような外部団体の協力を得るときに注意しておかなくてはいけないことはこちらからの一方的なお願いばかりをするのではなく,お互いに協力することによって得るものがあるように心がけることである。
 また,必要な情報を効率的に収集するために教育センターや生涯学習センターのような教育関係を活用するとともにホームページや電子メールによる情報にも注目しておくことが大切である

 

参考書籍
学校にLAN入しよう 学校ネットワーク適正化委員会編 NGS
平成11年度版 コンピュータを教育に活かす(新整備計画ハンドブック) 発行JAPET 協力ECS

利用した参考URL
アライドテレシス(ネットワーク講座がセミナーのところにある) http://www.allied-telesis.co.jp/seminar/index.html
学校のコンピュータ(ハードウェア )のQ&A http://www2.biglobe.ne.jp/~t-ueda/qa/index.html
ネットワークの工事の仕方 http://www.nvc.co.jp/diy/index.htm
電子メール辞典 http://www.geo.co.jp/jiten/jiten.htm
IP・ドメインSEARCH http://www.mse.co.jp/ip_domain/