生物・英語で国際交流
―Biological exchange between America and Japan

高等学校第2学年・英語
岡山県立岡山芳泉高等学校 英語科 岡崎純子 理科 河田英生
キーワード 高等学校,2年,英語,生物,インターネット,電子メール,国際交流


インターネット利用の意図
 海外の高校生との交流を行い,両国の文化の違いや共通点の発見をし,互いに理解を深める方法の一つに,距離と時間の壁をなくし,また,情報を蓄積しているインターネットを利用する方法がある。電子メールを利用して,生活・文化の面だけでなく,身の回りの生物を写真や音声で紹介して自然環境の違いも理解させたい。また,インターネットが新教育課程における総合的な学習の時間に利用可能であるか本実践を通して検証したい。


1 身の回りの生物を話題にした海外メール交換
(1) ねらい
 これまでの実践(平成9年度:電子メールで異文化理解講座,平成10年度:パソコン英語講座)から,互いに共通の話題があれば生徒達のメール交換が活発になることがわかっている。そこで,今年度は生物と英語の教員が協力し,身の回りの生物の画像・音声などのマルチメディアデータを活用することで,よく取り上げられる生活・文化・学校など日常の話題だけでなく,環境の違いを理解させ,生徒達の国際理解にも厚みをもたせたいと考える。同時に情報活用能力や自己表現力の向上を目指す。

(2) 指導目標
 身の回りの生物をテーマにして,画像・音声を英文の電子メールに添付してメール交換を行ったり,またマルチメディアデータを活用して英文ホームページを製作することによって,英語によるコミュニケーション能力・コンピュータ及びソフトの基本的な操作能力に加え,視聴覚を通じて表現する方法を身につけさせる。テーマと表現方法の拡大により,より内容のある情報交換を図り,国際交流の意義を深めることをねらいとする。

(3) 利用場面
 土曜の授業日に本校が実施している,2年生を対象にした特別講座。(70分)

(4) 利用環境
(a) 使用機種
NEC MateSerberNX SV26D(サーバ)1台
Compaq DeskproEP 6350/10.0/CDS/W(サーバ)1台
NEC VersaProNX PC-VP13WSBA1(クライアント)21台
NEC VALUESTAR NX C-MA30HCJTMB43(クライアント,スキャナ接続,作業用)

(b) 周辺機器
EPSON LP-1800(プリンタ)4台
EPSON GT-7000(スキャナ)1台
EPSON CP-800(デジタルカメラ)1台

(c) 稼動環境
WindowsNT環境でLAN接続

(d)そのほかの利用ソフト
AL-Mail32(電子メール)
Microsoft FrontPge98(Webページ製作)

2 指導計画
 
芳泉高校の第2学年では授業日となる土曜日を活用して教員各自の得意分野を生かした独自の講座を設定し,生徒は自由に選択して希望講座を受講する。今回の海外交流プロジェクトは,「パソコン英語講座」(開講3年目)及び「パソコン生物・英語講座」という名称で生徒に紹介した。希望者が多く,使用可能なコンピュータの台数(23台)を考慮し,両方の講座について,各46名を受け入れ,いずれも70分の講座をティームティーチングの形態で実施することにした。Eスクエア・プロジェクトには,「パソコン生物・英語講座」の方で参加しており,生物の教員1名,英語の教員1名が担当している。


1回
 5/29





WindowsNT操作の基礎
 WindowsNTの起動と終了の仕方, Windowの操作,キーのタッチメソッドと英文タイピング練習などについて,プロジェクタとプリントを用いて習得させる。
(インターネット利用に関するアンケート,班編成調査実施)


2回
 6/12


ネットワークコンピュータの基礎と講座内での電子メール交換
  ネットワークにつながることによって,どのようなことが可能になるのか電子メールを中心に概略を理解させる。ネチケットに対する自覚などを深めつつ,AL-Mailによる電子メール交換の基本操作を理解させる。
(班編成,それに基づく座席割の決定)


3回
 6/19


画像の取り込みに挑戦
 自分の持ってきた写真・絵などをスキャナを使って取り込み,ファイルにする操作方法を理解し,さらに,その画像処理にも挑戦させる。また,班内での電子メールの交換を行い,タイピング及び,AL-Mailの操作に習熟させる。


4回
 7/13


音声の取り込みに挑戦
 自分の声を録音し,ファイルにする操作方法を理解させる。また,日本で身近(学校または家)に見られる生物の中から班のテーマを決定し,夏季休業中にしておく準備(写真など)の打ち合わせを指示する。


5回
 9/4


ファーストメールの作成・保存
 ブラウザ操作の基礎的な知識を習得し,自己紹介や日常生活・学校行事などの様子を紹介するメールを作成,保存する方法を理解させる。


6回
 10/2


電子メールの設定とフロッピーを用いた操作の基礎
 あらかじめ規定のユーザ名で設定したフロッピーディスクを生徒数分用意し,それぞれのユーザ名,パスワードを使って初期設定を行わせる。さらにフロッピーを利用したAL-Mailの基本的な操作の仕方を理解させる。


7回
 10/30


個人対個人のメール交流開始
 交流相手校に生徒の電子メールアドレスのリストを送り,1対1のメール交流を開始する。第5回で用意しておいた紹介を利用しながら,できるだけ独自の個性を表現したメールが書けるよう助言する。放課後,希望者にはコンピュータ教室を開放し,自由にメールチェック・返信ができるように配慮する。


8回
 11/6


班のテーマに沿って各自でメールを作成・送信
 2回目のメールから,新着メールへの返信に,班のテーマの中で,自分が取り上げようと考えていた植物,野菜,昆虫,鳥など生物の内容を加えていく過程を支援する。英語の下書き提出・添削を行い,専門的な語彙の検索などに関して助言する。


9回
 11/20


添付ファイルに挑戦 各自でメールを工夫して交流を楽しむ
 画像を添付ファイルで送信する方法を紹介し,日本の生物を他の国にいる相手により理解しやすくするメールの作成を支援する。互いの国の生物環境の違いが身近に触れられるようなやりとりができるように配慮する。


10回
 12/4


メール交流を楽しむ Webページの製作準備
 年末年始のあいさつを含めた1999年最後のメールを送信させる。班で製作するホームページの各自の分担を決めて,冬季休業中に自分のトピックの内容について考えるように指示する。


11回
 1/15


Webページ作りに挑戦
 本校と交流相手校のホームページを紹介し,自分たちの構想作りのヒントを与える。Microsoft Front Pageの基本的な操作方法について習得させる。メール返信を希望する生徒にはその時間を与える。


12回
 1/29


Webページ製作
 それぞれの班で設定したテーマに沿って,Webページの製作を開始する。利用する写真・音声の処理にもあたらせる。


13回
 2/5


Webページ完成へ
 芳泉高校のWebページとして公開に足る内容となるよう指導しながら完成を目指す。


14回
 2/19


総括・まとめ

 

3 利用場面
(1)
目標
 ここでは第9回の講座「添付ファイルに挑戦 各自でメールを工夫して交流を楽しむ」を取り上げて紹介する。目標は,画像を添付ファイルで送信する方法を紹介し,日本の生物について他の国にいる相手に本当に理解しやすいメールを作成することである。また,画像の選別段階などを通して,ネチケットに対する自覚などを深め,自分のメールに対する責任感を身につけさせることである。

(2) 展開

 

指導計画 (11/20)

 

 

留意点


(a) 本時はメールチェック・メール返
信,及び相手に理解しやすい工夫をし

たメール作成を行うことを指示する。


・電子メールでできる工夫の概要を伝える。
−画像・音声ファイルの添付やレイアウトの工夫−



(b) 生徒にフロッピーディスクを配布
 し,新着メールの確認を行わせる。

・「AL-Mailの設定が保存されていません」と表示されたときは「ディスクからメールボックスを探す」を選択するよう指示する。
 ・「メールボックスが有効ではありません」と表示されたときは,プロパティの画面を開き,パスワードを入れ直すかピリオドがカンマになっていないか調べるよう指示する。


(c) 添付ファイル作成の方法を説明する。


・コンピュータの1台に接続したプロジェクタで送信メールボックスを開いてファイルを添付する方法を示す。


(d) 操作方法・英語表現についての質問に答える。


・教師とアシスタントが巡回し適宜質問に答える。
・文書はMicrosoft Wordで作成することを基本とする。


(e) 英文と画像の準備ができたら送信させる。


・送信メールが送信箱に残っていないか確認をする。

 

4 実践の成果と課題
(1) 経過と成果
 1学期はワープロの入力から,スキャナによる画像の取り込みと画像データの加工の仕方,そして,AL-Mailによる生徒同士のメール交換の練習など,2学期からのシルバークリーク高校とのメール交換のための準備を行った。生徒が喜んでいたのは,画像データの加工であった。自由に色彩を変更したり,絵を上書きしたり,様々な変形文字を入れたりと,その発想力やデザインのセンスの良さは講座の意図するところとは異なるが目を見張るものが多かった。それにもまして喜んでいたのが,2学期になって初めて交流校の生徒から一人一人に宛てた電子メールが来たときであった。あちらこちらで歓声(喚声)があがり,早速英文でお礼と自己紹介の返事を出していた。生徒の生き生きとした表情がみられた。

 2学期は目標の1つである生物を紹介した電子メール交換に取り組んだ。あらかじめ決めていたテーマの生物を自分で撮影した写真をスキャナで取り込んだり,生物そのものを持ってきてデジタルカメラで撮影し,それらを説明する英文を作成する,というようになかなか大変な作業のようであった。2学期の終わり頃になると,生徒からコンピュータやソフトの使い方に関する質問が減少してきた。これは,生徒自身がコンピュータの操作に慣れ,道具として使えるようになり,また積極的に自分から情報を発信し交流を求める姿勢が出てきたためと思われる。12月の補習のある日の午後,寒いコンピュータ教室でメールを作成し,画像データを添付送信する熱心な生徒も見られた。

 3学期は,生物を話題にした英文ホームページを製作する予定である。
 国際交流という面では,海外からメールが送信されるのを心待ちにして熱心にコンピュータ教室に通い,返信メールを見つめる輝く眼差しが印象的であった。相手にメールを書くために和英辞典を引いて下書きをしてくる生徒,相手の日本語のたどたどしさに自分が完全に正しい英文を書かなくてもいいとわかったという生徒,自分の英文メールに返事がきたことで英語に自身をもった生徒,相手が頻繁にメールをくれ友達ができたと喜ぶ生徒,日本では当たり前に見かける生物もアメリカでは見かけないらしいと環境の違いに改めて気づく生徒など, プラスに評価できる多くの面が生徒の姿に見られた。

 生物と英語の教師が互いの得意分野を生かすことで多くの利点があった。例えば,生物の教師からは,生物のテーマ,話題,相手に尋ねたいことなどを例示し,英語の教師からは,英語の文章を書くためのサンプルとか英語表現のアドバイスなどが得られた。教師2人ともコンピュータにはいささかの心得はあるが,今回は特に社会人講師派遣事業で外部のコンピュータ会社からアシスタント1人の来校が可能になった。最初は,主に環境を整えるための手助けをしてもらうという主旨での依頼であったが,ソフトやLANのトラブルにも対処はもちろん,生徒・教師からの質問に答えてもらうことも多く,大いに助かった。専門分野の異なる3人が関わることで3倍以上のメリットが生じた。

(2) 課題
 「パソコン英語講座」と「パソコン生物・英語講座」の違いが理解できていなかったためか,生徒の中には講座の趣旨を良く理解していない者がいた。コンピュータの操作やソフトの利用,電子メールのやり取りには興味を示すが,電子メールで話題にする生物のテーマを考えなかったり,写真・音声の用意ができていない状態も時折見られた。生物に興味がある生徒が選択するように,説明する時間を十分とることが必要であろう。

 この講座は,70分で時間的には適当な長さである。しかし,授業日となる土曜日に実施するので,講座と講座の間隔があきすぎて前回習得したことを忘れてしまう傾向もある。そのため,新しいことを学びながら忘れた内容を質問して進める結果,時間が足りなくなる生徒もいた。また,1回欠席すると,何をすればいいのかがつかみにくくなるようであった。このような場合,同じ班の生徒同士でペアを組んでコンピュータを使用していることもあって,互いに協力して活動できるという利点は大きかった。しかし,やはり,全体的な時間の使い方を考えると,1人に1台のコンピュータが望ましいと思う。

 相手校の生徒からきたメールの中には,個人のメールアドレスを教えてほしいとか,今度日本に行くので会いたいとか,顔写真を送ってほしいというような,ネチケットに反するような内容のものがあり,相手校の教師と相談する必要を感じた。

(3) 将来の可能性
 冒頭に述べた,新教育課程の総合的な学習の時間での利用は大いに可能である。新教育課程では,総合的な学習の時間が毎週あるのでスムーズに次の学習に移ることができよう。また,自分でテーマを決め,電子メールやホームページを製作することにより,自分で調べたり考えたりする能力が育ち,海外の高校生との交流がもっと深まるであろう。

ワンポイントアドバイス
 コンピュータの講座を開くときに大切なことは,コンピュータやソフトが使えるようになることと共に,「それらを使って何をしたいのか」を明確にする必要がある。
 専門の違う教師2人で講座を持つと様々な角度から生徒にアドバイスできてよい。また,今回の講座は,生徒46人に対し教師2人以外に,コンピュータの専門的知識の必要性から,校外のコンピュータ会社から社会人講師1人が派遣され,3人で担当した。生徒だけでなく教師の方からもソフトの使い方を聞いたり,機器のトラブルの際に相談にのってもらうことができ,大いに助けられた。前にも同講座を担当したことのある教師は,この社会人講師による技術面でのプラス効果を特に実感している。

 

参考文献
インターネット英語の読み方&書き方&調べ方 安藤進著 共立出版
すぐ書ける英文手紙の書き方と模範文例集 清水雄次郎著 新星出版社

利用したURLなど
 企画協力参加校 アメリカ合衆国カルフォルニア州シルバークリーク校
 http://scnet.esuhsd.org/programs/jp/scFashion/scFashion.html(シルバークリーク校)
 http://scnet.esuhsd.org/programs/jp/halloween/halloween.html(シルバークリーク校)