「きらら2000」プロジェクト
- Teacher's Training for Road to Newcastle -

山口県宇部市立常盤中学校
技術科教諭 須賀沼浩一郎
suganuma@ube-ygc.ed.jp
キーワード 中学校,研修,CMI,教職員のためのNet Day


インターネット利用の意図
 本校は生徒数781名,通常学級21クラス,障害児学級2クラス,合計23学級,職員数50名の大規模校である。本実践は,それまでほとんど校務処理にしかパソコンを利用できていなかったといってよい本校職員が,インターネットを活用した教材作成を行うまでの実践事例報告である。インターネットを巡る環境が激変して,生徒の家庭の半数程度がパソコンを購入している。あるいは購入を計画中,というほどになった。3・4年前までは,インターネットで求人情報等を取り寄せると就職活動が有利になる,といわれていたのが今やインターネットを利用できない者は就職がない状態であるといっても過言ではない。まして,現在の中学生が就職を迎える頃を考えると,末恐ろしくなってくる。山口県宇部市にもやはりその波は押し寄せてはいるが,学校現場となると社会に立ち後れているのが現状である。本校に限らず宇部市内の全中学校は,1999年8月にそれまでの生徒・教師用パソコンを廃棄し,新たに生徒用パソコン40台・教師用パソコン1台,またイーサネットのLAN環境を完備するため,ネットワークサーバ1台がコンピュータ教室等に配備された。また職員室には管理用パソコンとして1台,合計42台が配備・稼働を始めた。当然ながら,職員室内の全ての機器は,コンピュータ教室のサーバとLANケーブルで接続されている。そして,職員室には全二重100BASE-TXのスイッチングハブにルータが接続されてダイアルアップ接続で,教育委員会のセンターサーバと接続されており,市内全中学校が広域WANを構成してる。また将来的には,市内全小学校21校も接続される予定である。そしてその委員会のセンターサーバがファイヤーウォールを介して,インターネットと接続されている。詳しい機器構成は近いうちに以下のURLで公開される予定である。
公開予定Webページhttp://www.ube-ygc.ed.jp/


1 企画の目的について
 本プロジェクトの目的は,企画提出時は以下の通りであった。
・インターネットを活用した授業を仕組むための教員研修や講習会等の運営を行うための研究
・姉妹都市の生徒会と本校生徒会とのインターネットを利用(メールやテレビ会議等)した国際交流
 2番目のインターネットを利用した姉妹都市との国際交流については,宇部市教育委員会における定例行事である教員研修で現地を訪れた本校伊藤教諭が,パソコン等にあまり詳しくなく,また事前の打ち合わせ等も詳細にできなかったため,なにも行っていないに等しい。わずかに個人レベルで現地教員と連絡を取り合っている程度である。来年度は,宇部市のネットワーク環境について詳しい者を現地へ派遣してもらい,現在は書簡等でのみ行っているオーストラリアNewcastle市の生徒や教員との交流を,E-Mailや疑似テレビ会議システムを利用して行いたいと考えている。
 さて前項目でも少しふれたが,1番目の目的について詳しく述べることとする。それまでほとんどといってよいほど本校は,校務処理,例えば校納金口座振替事務・五教科成績処理・進学事務・保健室統計・個人選択授業統括業務などに限定して学校に設置されたパソコンを利用していた。もちろん個人としては,もっと詳しい成績処理や統計処理,あるいは教材作成等ではワープロ専用機代わりとしてパソコンを利用している。学校全体のCMIシステムは,現在宇部市立黒石中学校教諭であらせられる小柴成吾氏他が企画・作成されたSchool Data Base,略してSDBで実現されている。ハードウェア的には,たった1セットのパソコンプリンタシステムで前述とそれ以上の校務処理を実現している。このシステムは非常によく学校現場のニーズを分析されており,いわゆるかゆいところに手が届く,あるいは芸が細かいシステムとなっており,宇部市内の中学校でそのシステムの恩恵にあずかっているところは数多くある。余談ながら,なぜ全市的にこのシステムを採用しないのか不思議で仕方がない。現在は小柴教諭のご好意により,以下のURLでその全てのシステムが公開されている。SDB SupportWebページhttp://mx5.tiki.ne.jp/~koshiba/index.htm
 また,本校教職員のパソコン所持率であるが,夏季休業以前は50名中25名であったが,冬季休業直前の調査では,その後5名がパソコンを購入し,また11名が購入を計画中である。ここまで教職員の中でのパソコン利用率が高まったのは,教職員のためのNet Dayを企画・実践し,現在はネットワークケーブルを各学年ごとのハブまで接続さえすれば,いつでも自分の机上からWebページ巡りやプリントアウトができる環境を整えたからだと考えられる。ネットワーク環境の利便性を自身で体験してもらい,パソコン使用時の大きなネックと考えられているプリンタの接続等々にまつわるトラブルを極力を排除した。また理想科学広島支店のサポートもあり,いわゆる印刷機もネットワーク環境に取り込むことができた。モニター使用という形式で印刷機をネットワーク環境に接続できたのは,非常に幸運であった。それは職員室から印刷室までのケーブル施設工事の時に,施工業者Ftecの協力もあり,校長室と事務室へもケーブルを引き回すことができたからである。今年度中には校長室と事務室へのネットワークへの接続を完了さる予定である。
 インターネットを活用した授業を仕組むための研修は,その前にまず教職員全体のスキルを引き上げるために,パソコンの基本的な講習から始めた。パソコンはあくまでも道具であるので,その便利な道具を使って教職員の仕事の効率化を図り,生徒とふれあえる時間を少しでも多くできることを強調するところから始めなければならなかった。

2 実践内容
2.1 パソコンの活用についての研修計画

 まずはじめに,長期休業中の最後の週に新規導入パソコンシステムが稼働を始めてから,現在までに2回の全体研修会を行った。また,全体研修会に参加できなかった教職員,あるいはもっと研修を深めたい者を対象にした小規模な研修会もこれまで4回行った。
・全体研修会の概要とこれからの研修会の予定
 8月31日 新規導入パソコン研修会
 9月 1日 上記の研修の補足研修会
 9月29日 インターネット研修会
 10月 7日 上記の研修の補足研修会
 1月以降 教材作成ソフト研修会
 上記研修会の他には,各教科の希望で購入したソフトの活用研修会やLANの設置・設定の実習等を大きな行事がない週末等に随時行った。ただし,あくまでも自主的な少人数の研修会である。3学期以降の研修予定は,インターネットを利用した教材作成ソフトの活用研修会の全体会を1回と,個別研修会を随時行う予定である。

2.2 新規パソコン研修会
 では8月31日に行われた研修会の実践事例を詳しく述べる。ここで特筆すべきことは,全体研修会と銘打ちながらも,各個人のレベルに合わせた参加を許可したことである。具体的には「パソコン研修会について」のプリントを見ていただきたい。


パソコン研修会について
1 日 付 平成11年 8月 31日(火曜日)
2 時 間 午前の部:10:00〜12:00
午後の部:13:30〜15:30
3 場 所 コンピュータ教室(第1校舎3F)
4 内 容
午前の部(10:00〜12:00)
*コンピュータ入門
・Windows入門
・アプリケーションソフト入門
  ワープロ,表計算,etc
午後の部(13:30〜15:30)
*コンピュータ応用
・Windowsの管理・運営
・ネットワーク基礎
5 その他 午前の部はパソコン初心者の方が対象です。午後の部は,現在すでにパソコンを使われている方が対象です。午前の部と午後の部の両方に出席されてもかまいません。内容(特に午後の部)に関しては,現在メーカーと打ち合わせ中です。8月20日には最終的なものがお知らせできる予定です。

 

 上記プリントは,7月の夏季休業直前の職員会の時に配布したものである。それまでにパソコンを所持している者といない者の両方の中から,パソコンを使った何らかの講習会に参加した数名に意見を聞いて前述のプリントとなった。また,このプリント配布後に再度数名の者と講師の方から意見を聞いて,何回か改版を行った。夏季休業中の職員会の時に配布した,研修会お知らせのプリントでは,午前の内容がより基礎的になり,1.Computer入門2.Windows入門3.日本語入力について,となった。午後の部は4.ワープロ入門 5.表計算入門 6.インターネット初歩の初歩,となり,またオプションの部が加わった。7.コンピュータ応用,として導入されたネットワーク基礎解説とWindowsNTあるいはNetSupportSchoolを利用した授業運営についてとなった。また,その他の項目は,より参加しやすくする意図で以下のように変更された。

5 その他
 前の御案内と変更になりました。午前・午後の部両方ともパソコン初心者の方が対象です。内容を見られて,「私は一太郎(ワープロ)を使っているから,午後からで,いいや」とか,午前の研修2だけと午後の研修6だけ等々ご自分の必要とされるところのみに出席されてもかまいません。
  もちろん午前と午後の両方に出席されてもかまいません。
「ワードはちょっと,,,。」という方は後日希望者を集めて行われる一太郎研修会?に
ぜひご参加ください。ロータスは個人的にしかサポートいたしません。あしからず,,,。
 授業で活用していみたい方はぜひオプションの研修7を受けられてください

 

 最終的なプリントは研修会当日の朝,以下のようにかわった。

パソコン研修会について

 午前の部(09:30〜12:00)

     申し訳ありません。
コンピュータの設定の都合で6のインターネット初歩の初歩ができません。
したがいまして,インターネット関係は,NTTが後日行う研修(インターネット関連:ホームページ散策・メール体験etc,,,)とインターネットを利用した教材作成ソフト?の業者が行う研修の2回となりました。
誠に申し訳ありません。
そのために,オプションの研修が時間が少し早くなるかもしれません。これは今日の朝講師の方々と相談後,お知らせします


 1.コンピュータ入門
 2.Windows入門
 3.日本語入力について

〜昼食・休憩〜

 午後の部(13:30〜16:00)
 4.ワープロ入門
 5.表計算入門
 6.インターネット初歩の初歩 

 オプション(16:00〜17:00)
 7.コンピュータ応用
 ・ネットワーク基礎
  ・WindowsNTを利用した授業運営
  ・etc
   利用ソフト:Ms-Office2000(Word2000,Excel2000,Ie5.0,etc)
   利用テキスト:Ms-Office2000セミナーテキスト総合編(日経BPソフトプレス)

 

 参加者のレベルに合わせて,途中からの入室や途中での退席を自由とし,自分のスキルに合わせた講習を受けられるように配慮した。またプリント中では,インターネット初歩の初歩が設定の都合で延期されたようになってはいるが,実際は,こちらの意図で削除した。ここでそれを行ってしまうと内容的に多くなり初心者への負担が大きいので,次回へと延ばした。ただし,午前中の研修風景をデジタルカメラで撮影後すぐに簡単なページを学校内のNTサーバ上で作成し,昼休み以後閲覧できるようにした。その目的は,すでにある程度パソコンを使えるがインターネットの体験がない者は,Webページ巡りの疑似体験ができるようにしたのである。また,講師の富士通オフィスマネジメントの方も非常に気が利く方で,午後の参加者のレベルに合わせてファイルの操作等の研修を行われ,研修風景のページ等の閲覧を研修の一環として行われた。参加実人数は,午前の部21人,午後の部29人,オプションの部7人であった。この第1回目の研修会の目的は,教職員全体のスキルの底上げであったが,後日のアンケートによれば,目的はほぼ達成したと考えられる。

2.3 インターネット研修会
 
NTT宇部支店の協力により,インターネット研修会となる全体研修会が9月29日に行われた。内容は,Webページ巡りとメール実習の二部構成となった。パソコン初心者は前回の研修で,マウスの操作等一通りのスキルを身につけているので,Webページ巡りではトラブル等はなかった。がしかし,メールの実習に入ったときに,キーボード入力でとまどう者が数名いた。座席の指定をしていなかったので,メールアカウントのプロパティ設定を参加者本人が行わないといけない状態になったためである。具体的には,メールサーバの設定時に,記号の入力でピリオドとカンマを間違えているために送受信ができないというものがほとんどであった。経験者数名が講師をサポートして入力ミスを訂正していったので,全員が送受信を体験することができた。この研修も非常に好評であり,参加人数が40名を越えたため,端末の数が足りず,インターネット経験者は即席のサポート係として,講師の手伝いを行った。また全体として2時間で行うことになってはいたが,一部二部のどちらも時間が足りなかった。というのも,その部の最後では自由にページ巡りとメールの送受信を行ってよいことになっていた。そのため参加者が非常に熱心に研修を行ったために,授業支援ソフトNetSupportSchoolで画面にロックをかけないといけない状態となった。とくにメールの実習は女性の参加者を中心として大好評であった。

3 成果と課題
 本導入年度の校内研修は,3つのステップで構成されている。合計3回の全体研修会で,教職員全体のスキルアップが目標であり,パソコンを道具として扱える教職員を一人でも多くすることが最終目的である。各教科で活用するための具体的な研修は,来年度以降実施予定である。また,すでにパソコンを扱うことができる教員は,教具としてパソコンを使用できるようになることが目的であるが,急がないことが第一であり,最重要目的である。また,山口県教育委員会等への提出書類が,ここ最近はメールへのファイル添付やデジタルデータでの提出が義務づけられていることが,わずかではあるが増えつつある。このことも教職員間でのパソコン活用が広まってきた一因であろう。
 第1回目の研修会の要項の移り変わりを知ってもらうために,プリント等をほぼ原本のまま掲載した。前項にあるように「パソコンを扱える初心者になる」という目標を基本に,自分の現在の能力にあわせたスキルから,参加できるように企画したつもりである。本校では,早くメール等を自由に扱わせてほしいという要望が非常に多い。がしかし,メールに関してはセキュリティ上の難点から,必要最小限に押しとどめている。いろいろな難点を克服して,早く教職員全員が自由にメールを活用できるようになってほしいものである。

ワンポイントアドバイス
 
現在の本校の職員室では,各学年ごとにパソコンが用意されており,いつでもWebページ巡りを行っての教材研究やメールの送受信が行える。また印刷機へのプリントアウト等もノートパソコンをもっていれば,自分の机上からも行える。各学年に用意してあるパソコンを確実に使用するためには,始業時間前に早めにこないと確実には使えないこともある。ようやく教職員の中ではパソコンを道具として扱えるようになったところである。インターネットを活用した授業を仕組むための研修は,まだまだこれからではあるが,来年度は全教科がパソコンを授業で活用してみたいと考えている。もうすでに授業でパソコンを扱うのは技術・家庭科(情報基礎領域)だけという時代は終わりを告げようとしている。どうかこの便利な道具をCMIだけでなく,教具として使いこなしていってほしい。ただ生徒へのあたえ方としては,心の育成が非常に重要となる。本校教諭坂本敏昭と共同で企画・実践した「情報化社会に必要な心を育てるために」をぜひ参考にして,生徒の心を育んでいってほしいと考える。公開予定Webページhttp://www.ube-ygc.ed.jp/twj/