総合的な学習へのステップアップ
― 豊島中学校の紹介ビデオと手作りのうちわを制作しよう ―

中学校全学年 総合的な学習
土庄町立豊島中学校
技術・家庭科 八木 陽介
英語科    篠原 靖和
英語科   John Momii
E-mail: tesimj01@kagawa-edu.takamatsu.kagawa.jp
URL:  http://www.niji.or.jp/school/teshimaj/
キーワード  中学校,全学年,総合的な学習,国際交流,デジタルビデオ編集


インターネット利用の意図
 豊島中学校では,インターネットを利用し,情報を検索したり,発信したりできるような環境を整え,本校の特色のある教育課程や生徒の日頃の学習活動をホームページによって随時発信している。
 また,このホームページを足がかりに海外の中学校と交流し,コミニュケーション能力を育成したいと考え,昨年度の2 学期よりTimbercrest Junior High Schoolとの交流を電子メールを通して行ってきた。しかし,英語の文章だけによるやりとりでは,語学力の大きな差があるため,相手のニーズに応えることができず,交流が滞りがちになってしまった。
 そこで本年度は,発想を転換し,電子メールでの返事を求めるのではなく,自分たちの英語の勉強として,相手に自分たちの学習成果を紹介しようという観点で豊島中学校の紹介ビデオと手作りのうちわを制作することにした。 


1 紹介ビデオ(英語版)の制作
(1) ねらい
 豊島中学校では,クラブ活動の時間に「環境」,「福祉」,「進路」,「国際理解」の4テーマを設定し,全校生徒がこのテーマの中から1つを選択し,異学年交流による総合的な学習を展開している。(【資料1】クラブ活動の流れ)
 本年度,国際理解コースを選択したのは,3年生5名,2年生3名,1年生2名の計10名で,活動内容を相談した結果,Timbercrest Junior High Schoolとの交流が滞りがちになっているので,豊島中学校の紹介ビデオを制作し,豊島中学校をもっと相手に知ってもらおうということになった。
 自分の学校紹介ビデオを生徒たちの手で制作するということは,学校の良さを再確認し,母校に誇りをもつことができると考えた。また,ALTの指導による英語でのナレーション作りは,英会話の力が上達するし,コンピュータを使っての曲作りやビデオ編集をすることにより,情報活用能力が身につくと考えた。

【資料1】クラブ活動の流れ

(2) 学習環境
 1) ハードウェア面

設置場所

機   種

台 数

利用者

インターネット

形態

目 的

 

職員室

NEC PC-9821RA20

   1

 
教職員

  ○

LAN1

事務処理

NEC MA33D/M7

   1

  ○

LAN1

  〃

※EPSONスキャナー

   1

  −

LAN1

画像入力

CANON LASER SHOT

   1

  −

LAN1

白黒印刷

ノートパソコン(個人用)

   8

 

  ○

LAN1

教材作成



音楽室
(予定)

NEC PC-CE33DSZ

   1

 
教師
及び
生徒

  ○

LAN2

AV編集

※ワイドディスプレイテレビ

   1

  −

 −

  〃

 ダブルビデオ

   1

  −

 −

  〃

MU100(外MIDI音源)

   1

  −

 −

作曲

MIDI KEYBOARD

   1

  −

 −

音入力

図書室

NEC PC-9821CB

   1

生徒

  ×

 S

電子辞典



パソコン室

NEC PC-9821mateV20

   1

教師,生徒

  ○

LAN2

テレビ会議

NEC SV26D/MZ

   1

教師

  ○

LAN2

サーバ

NEC MA33D/M7

   1

教師

  ○

LAN2

教材作成
学習

NEC MA23C/S5

  12

生徒

  ○

LAN2

※EPSONエスパーステーション

   1

教師,生徒

  −

LAN2

カラー 印刷

 2) ソフトウェア面
 ・ノンリニアビデオ編集ソフト   Madia Stdio Pro 5.2J(canopus)
 ・作曲ソフト           らくらく作曲名人 XG works V3.0 (YAMAHA)

(3) 学習の展開
 1) シナリオ作り(図1)

 ビデオ映像の場面【資料2】に合わせて,まず日本語で文章を作り,それを英語に翻訳した。

 ・カット 1  豊島の風景
 ・カット 2  登校の様子
        ↓
 ・カット10  運動会
 ・カット11  稲作
 ・カット12  豊翔会


図1 シナリオ作成の場面


 2) 発音練習及び録音(図2)

 作成した翻訳文の添削指導を担当教師から受け,その後それぞれが練習し,個別にALTから発音指導を受けた。そして,最終的にビデオを見ながら英語でナレーションをカセットテープに録音した。生徒6人がそれぞれのカットを分担して,この作業を行った。


図2 発音練習の場面

【資料2】シナリオ

 3) 作曲(校歌のアレンジ)(図3)

 MIDIキーボードで校歌のメロディをコンピュータに入力し,YAMAHAの作曲ソフト(らくらく作曲名人)を使って編集した。
 いろいろなパターンがあり,簡単に編曲できるが,細かなズレを部分的に修正しなければならないので,けっこう大変な作業であった。


図3 校歌の編集の場面

 4) ビデオ編集(図4)

 撮影してきた映像を,自分達で編集した。映像ごとのつながりを,きれいにするために何度もやり直したり,コンピュータを使って文字を入れたりした。コンピュータを使った編集は,手間がかかり,時間もかかったが,うまくいって良かった。


図4 ビデオ編集の場面

(4) ビデオ制作を終えての感想
   〈シナリオ班〉
     ・文章を作ったり,日本語の文章から英語になおしたりするのに苦労した。
     ・発音は,ミスをしたり日本語のような英語になってしまい難しかった。
     ・Timbercrest J.H.Sの皆さんにきちんと理解してもらえるか少し不安。
     ・このビデオをもとに電子メールや文通などを活発にし,交流を深めていきたい。
     ・この活動をして英語が少し分かったような気がする。
     ・いい勉強になったのでまたやりたい。
     ・これをきっかけに外国の知識を深めたい。
   〈編集班〉
     ・撮影,編集などビデオづくりがたいへんだったが,楽しかった。
     ・ふだんできないことができて良かった。
     ・勉強になった。
     ・パソコンを上手に使えるようになった。
     ・パソコンでいろいろなことができるということが分かった。

2 うちわの製作
(1) 製作のねらい
 交流先の中学校と電子メールの交換をしていくうちに,英語力の大きな差を感じ,英語の文章だけによるコミュニケーションでは長続きしなくなってきた。そこで作品の製作を通して想いを届けようと考え,地元(香川)の伝統工芸である『うちわ』の製作を取り入れた。表面はコンピュータを使ってデザイン化し,裏面には英語によるメッセージを書き込むようにした。

(2) 学習の準備

・パソコン
・パワーポイント
(マイクロソフト)

・スキャナ
・カラーレーザープリンタ

・はけ
・洗濯のり
・たわし

・はさみ(波形)
・製本テープ
・カッターナイフ

(3) うちわの出来るまで(貼上の部) ※英語(1時間)と選択技術(4時間)で実施

1 英文の添削

2 デザイン化

3 印刷

4 貼り立

5 筋入れ

6 型切り

7 へり取り

8 完成(表)

(4) うちわ製作を終えての感想
 ・思ったより上手にできた。
 ・自分のデザインでうちわを作れてよかった。
 ・このうちわに書いた自分のメッセージを読んでほしい。
 ・Timbercrest のみんなに喜んでもらいたい。
 ・返事が欲しい。

3 Timbercrest Junior High Schoolの校長先生からの電子メール

Dear Mr. Shinohara and Mr. Yagi,

 I want to first thank you very much for the letter and the wonderful package of fans that your students made for us.  They are a shear delight and we have put them on display in our hallway for all to enjoy.  Please convey our gratitude and admiration to your students for all the work they put into their fans and for sending them to us for our enjoyment.

 Also, thank you for the video tape.  We turned it over to our video class and the students put together some clips that we showed to our whole school on our daily TV broadcast.  The students learned much and the tape generated much discussion about the similarities and differences between your school and ours.  I think our students would like to send you a clip of "Life at Timbercrest".

 We are very busy around here this week.  It is the last week of school before our winter vacation and everyone is preparing for vacation and studying for tests and putting the finishing touches on class projects.  Frankly, I'll be glad to come back to some normalcy at the beginning of the new year.

 I will write again.  Please convey all of our appreciation to your students and thanks to the both of you for keeping the lines of communication open.

 Sincerely,

 Larry Little

4 成果と課題
 電子メールによる交流は,確かに即時的で対話形式のやりとりができるメリットがあるが,それはお互いの語学力が同じレベルになければ長続きしにくいということが分かった。本年度,発想を転換し,自分たちの勉強のために楽しみながら作品を制作できたことは,成就感が得られ,たいへん良かったと思う。
 また,これらの取り組みは,来年度から実施される総合的な学習の時間の一例となり,この応用形としてこれから様々な取り組みを展開していく見通しがたったので良かった。生徒の情報活用能力も向上したことや,保護者対象に毎週月曜日の夜にパソコン教室を開設し,取り組んでいることから,この1,2年間でインターネットに接続した家庭も増えている。
 今年度,教職員間のネットワークが完成し,現在,校内に2つのLANがあるが,来年度はこれを一本化し,各教室からもインターネットに接続できる環境を作りたい。

ワンポイントアドバイス
 ・国際交流は自分たちのペースで,楽しく英語の学習をすることが大切である。
 ・総合的な学習のための準備として,校内LANの整備をすることが大切である。

利用したURLなど
 Timbercrest Junior High School    http://tjhweb.norshore.wednet.edu/