地域社会と連携したインターネット技術研修
〜ネットワークコンピュータの組立,サーバ構築の研修〜
"The Technical Seminar of Internet in collaboration"
愛媛県立新居浜南高等学校 河野 義知
キーワード 地域社会,インターネット,ネットワーク,コンピュータ組立,サーバ
インターネット利用の意図
2002年から小・中学校,2003年から高等学校で新学習指導要領が実施される。
現行の要領に比べ,次期要領では,総合的な学習の時間や各教科におけるコンピュータやネットワークの活用が明示されている。また,中学校では「情報とコンピュータ」の必修化,高等学校では「情報」が新設され必修となる。
政府は小渕首相直轄の組織である「バーチャルエージェンシー」の審議報告「教育の情報化プロジェクト」において,2005年を目途に,様々な環境を学校に実現することを政策目標に掲げて予算化を進めている。
そのポイントをまとめると以下のようになる。
・校内LANを構築し,全ての学校の,全ての教室からインターネットに接続
・全教員が一人一台のコンピュータを占有できる環境の実現
・教育情報ナショナルセンターの整備
すでに,2000年度からは教育用コンピュータの新しい整備計画も実施されることとなり,小・中・高等学校に1校あたり42台,各校の普通教室に2台,特別教室や校長室など用に6台ずつ整備されることとなっている。これによりコンピュータ教室に限られていたものが,様々な環境での利用が可能となる。
このように,教育の情報化が急速に進展し,コンピュータやネットワークといった学習環境が整っていく一方,利用する側となる現職教員の研修はまだまだ立ち後れている現状にある。
幸い,コンピュータの低価格化が進み,研修の実施が容易になってきた。そこで,地域の先生方を対象として,上記のテーマを設定し,取り組むこととした。
まず,ネットワークパソコンを組み立てるにあたり,その手引きとなる「ビデオで見るDOS/Vパソコンの組立」を愛媛県立新居浜工業高等学校と協力し,ホームページとして作成し,ネットワーク上に構築した。
次に,これを利用してネットワークパソコンの組立研修を行い,サーバの構築をし,インターネットを教育現場で利用するためのノウハウについて研修を行った。
1 実践内容
(1) スケジュール
ネットワークコンピュータの組立からサーバ構築に関する総合的研修を行う。
次のような項目を1日7時間程度の内容として設定し,4日間研修を行った。
(a) 平成11年12月29日9:30〜16:30:ハードウェアの基礎研修
(b) 平成11年12月30日9:30〜16:30:ネットワークパソコン組立実習・調整
(c) 平成12年 1月
5日9:30〜16:30:OSのインストール及び設定,LANについて
(d) 平成12年 1月
6日9:30〜16:30:インターネットサーバ構築
(2) 人員
講師 2名
新居浜市内の学校関係職員 10名
(3) 実施マニュアル
マニュアルとして,自作教材と市販されている書籍を教材として利用した。
自作教材は,オンライン型マニュアル「ビデオで見るDOS/Vパソコンの組立」とし て作成した。
書籍の教材は,インプレス社の「Linuxでサーバ構築」(定価1,800円)であり,受講者に購入していただいた。(Linuxシステムが付属)
(a) オンライン型マニュアル教材「ビデオで見るDOS/Vパソコンの組立」
ア 教材のねらい
パソコンの組み立に必要な道具,部品について知ることができる。
どのような手順で組み立てを行うかを容易に理解することができる。
イ 教材の概要
組立という作業を伴う内容であるため,動画を多く用いることとした。
ブラウザ上で実行できるものとして作成し,ネットワーク上に構築することで,インターネットを利用して,いつでもどこでも好きな場面で活用ができるものとした。
また,電子メールを活用した,双方向でのやりとりにより学習内容の深化や教材のバージョンアップについても対応できる。
ウ 教材の内容
表紙(図1参照)には組立手順をメニューとして配置した。
内容は,組立前に準備する工具を始め,CPUやマザーボードの取り付け,モニタの接続まで,全15項目より構成されている。
各ページ(図2,図3参照)は,各部品についての簡単なコメントと写真で構成し,組立の様子をビデオ(図4参照)で見られるようにしている。
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(b) 「Linux」について
今回研修で利用したOSはLinux(Red Hat Software社のRed Hat Linux
5.2)とした。
その理由として,Linuxはネットワーク機能が充実しており,信頼性が高く,オープンソースでフリーソフトといったこともあり,気軽に使えることなどから急速に普及している点が考えられる。
また,用途や目的,構成によっては,比較的スペックの低い低価格のパソコンや古いパソコンでも利用できるメリットもある。
反面,windows環境と比較すると作法や概念が異なるため,利用するには困難な場合がある。
そこで,今回のような研修が有用になると考えられる。
(4) カリキュラムの内容
次のような項目を1日7時間程度の内容として設定し,4日間研修を行った。
(a) ハードウェアの基礎研修
ア 研修目的
コンピュータの基本的な動作の原理やしくみについて理解する。
コンピュータのしくみや原理を理解した上で,各種部品や周辺機器の実際について知る。
イ 研修内容
・コンピュータの五大機能(入力・記憶・演算・制御・出力機能)について
・五大機能と部品との対応
・周辺機器について
ウ 研修方法
インターネットを使用し,コンピュータの原理やしくみについて紹介しているホームページを利用しながら研修を進める。
(b) ネットワークパソコン組立実習と調整
ア 研修目的
パソコンの部品には組み合わせの際の相性について知る。
ネットワークパソコンの組立方法を修得する。
各部品の取り扱い方法について理解する。
イ 研修内容
・部品の選定方法について
・部品の取り扱いについて
・ネットワークパソコンの組立及び調整
ウ 研修方法
部品の組み合わせによる相性については,やはりインターネットを利用して,これらに関するホームページを利用しながら研修する。
パソコンの組立については,オンライン型マニュアル教材「ビデオで見るDOS/Vパソコンの組立」を利用しながら行う。
(c) OSのインストール及び設定,LANについて
ア 研修目的
OSの種類や特徴などOSに関するしくみや原理について理解する。
LANのしくみや原理について理解し,LANを構築する際に必要な知識を習得する。
イ 研修内容
・OSのしくみや原理について
・OSのインストール及び設定
・OSの基本操作について
・LANのしくみや原理について
・LANの構築
・ファイルサーバのしくみや原理について
・ファイルサーバの構築
ウ 研修方法
OS及びLANのしくみや原理についてはインターネットを利用して研修を行う。
LANケーブルを作成し,組み立てたパソコンでLANを構成する。
ファイルサーバを構築するため,ネットワーク関連ソフトウェアの設定を行う。
また,Linuxの基本操作についても研修を行う。
(d) インターネットサーバ構築
ア 研修目的
Webサーバ,メールサーバ等の各種インターネットサーバのしくみや原理について理解し,サーバを構築する技術を習得する。
サーバを管理・運営する上での基礎的な事柄を理解する。
イ 研修内容
・Webサーバのしくみや原理について
・Webサーバの構築
・メールサーバのしくみや原理について
・メールサーバの構築
・サーバの運営及び管理について
・トラブル発生時の解決方法について
・資源の有効利用について
・データのバックアップについて
・教育現場での利用について
ウ 研修方法
各種サーバソフトをインストールし,基本的な設定を行いながら理解を深める。
ユーザの設定やパスワードの管理についての操作を習得する。
ネットワークでトラブルが発生した場合の解決方法について知る。
2 成果と課題
パソコンの組立というと初心者にとっては何から手を着ければよいのか分からないことが多い。そこで,オンライン型マニュアル「ビデオで見るDOS/Vパソコンの組立」を利用することで,だいたいの概要をつかむことができたので,容易に製作へ取り組むことができた。
また,インターネット上に教材を掲載することで,自宅に戻ってから研修内容の復習に役立てることができた。
企業や個人のホームページを活用することで,部品の調査,各種の整合性などについて最新の情報が十分に入手可能であることが分かった。
電子メールを活用することで,些細なことでも質問したいときに気軽に相談でき,迅速に対応することができた。
今後は,今回の企画に関する掲示板やメーリングリストを立ち上げ,様々なトラブルに対応していくと共に,情報交換を行い,交流の輪を広げていきたいと考えている。
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参加協力校
愛媛県立新居浜工業高等学校
参考文献
できるLinuxサーバ構築編 (株式会社インプレス)
辻 秀典・渡辺高志・アクロバイト&インプレス書籍編集部
利用したURLなど
愛媛県立新居浜工業高等学校(http://www.ehime-net.ed.jp)
ビデオで見るDOS/Vパソコンの組立(http://www.ehime-net.ed.jp/aikouken/wel/dosv/index.htm)
AKIBA PC Hotline!(http://www.watch.impress.co.jp/akiba/)
自作PCのすすめ(http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/diy9712/)
IBM Computer Museum(http://www.ibm.co.jp/event/museum/entrance.html)