日田地域ネットワークとの交流

大分県立日田林工高等学校 河津 文昭
キーワード 高等学校,地域ネットワーク,地域交流,メーリングリスト


企画の目的・意図
 本校は,九州のほぼ中央部,大分県の西部に位置し林業科,林産工学科,機械科,電気科,建築科,土木科の6学科を設置する生徒数900名程度の職業系高等学校である。100校プロジェクトに指定されて以来,地域と密接に関係を持ちながら地域の特性と学科と特性を加味したユニークな活用方法を展開してきた。平成9年6月1日に日田市郡及びその周辺地域におけるインターネットの振興,研究,実践を通じて会員の親睦とそのレベルの向上を図ることを目的とした「日田インターネットの会」が設立した。本校はこの会の設立準備より密接な関係を持ちながら支援してきた。平成10年度まではインターネットの普及啓発のための技術支援,研修等をおこなってきたが,平成11年度についてはどのように地域に定着させ活用できるかを中心に取り組んできたので報告する。


1 実践の準備
(1) 今までの取り組み
(a) 日田インターネットの会の誕生
 従来から日田地域のインターネットを取り巻く状況は厳しく,アクセスポイント,インターネットに対する知識や活用面での低さなどの問題により非常に立ち遅れていた。そこで日田地域のインターネットユーザの有志70名程度と共に地域のインターネットの普及啓発活動を行う「日田インターネットの会」を平成9年5月31日に発足させた。会の目的を「日田市郡及びその周辺地域におけるインターネット(広義にはコンピュータ通信全般を含む)の振興,研究,実践を通じ会員の親睦とそのレベルの向上を図る事を目的とする。」(会則2条)とした。(http://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/kaisoku.html)
 そして,この「日田インターネットの会」と共に日田地域のインターネットの普及啓発に努めてきた。下記に今までの具体的な活動を記す。
(ア) 初心者のためのインターネット講習会の開催(日田林工高校と共催)
 平成9年8月3日本校の施設を利用して講習会が開催され100名以上の参加者
 テキストについてはhttp://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/inet/index.htm
 講習会の状況はhttp://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/inet/kouza_01.htm
(イ) 「ハイパーフォーラム in ひた」の開催(日田林工高等学校 大分県情報化委員会準備会 大分県,(社)大分県地域経済情報センター,NTT,ニューコアラ,(財)ハイパーネットワーク社会研究所との共催)
 平成10年2月25日新100校プロジェクト「地域展開」の一環として実施
 http://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/forum98/open_forum98.html
(ウ) 公開セミナー(日田林工高校と共催)
 「パソコン{をにで}学ぶ」日本文理大学 赤星哲也先生
 http://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/report/980606.html
(エ) 小学生のためのホームページ講座(日田林工高校と共催)
 平成10年12月5日 http://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/kangi-es98/98es_index.htm
(オ) 日田インターネットの会ホームページ講座支援
 4 回シリーズで実施した。
 第1回目 ホームページを作ってみよう。
 第2回目 デジタル写真と画像処理
 第3回目 FTPの使い方
 第4回目 さらにグレードアップするためには
(カ) インターネット接続および技術支援出張サービス
(キ) 隣接地域ネットワークとの交流 http://210.145.55.195/~msa/u-net/inet.html
(ク) 地域へのインターネットの啓発活動
(ケ) インターネット利用についての情報交換
(コ) 日田林工高校のサーバ管理支援

(b) 本校と地域とのかかわり
 平成7年5月に本校にインターネットが導入された当時は,インターネットユーザは少なく,もちろん,学校現場においては県内で接続されている学校はほとんどなかった。当然ながら,100校プロジェクト校としてインターネットを地域の学校にいかに広め,また,地域の特性に応じた教材としてどのように展開していけばよいかということを模索した。したがって,積極的に教育現場や地域に対して本校の施設を開放することにした。
(ア) メーリングリストの提供
 大分県教育ネットワーク(会員70名) edu-oita@hitarinko-h.ed.jp
 日田インターネットの会(会員250名) hita-net@hitarinko-h.ed.jp
(イ) Webサイトの提供
 日田インターネットの会ホームページ http://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet
 希望があれば各小中高等学校のホームページを本校に置くことにしている。
(ウ) 講習会,研修会における講師,施設の提供

2 企画の実践
 日田インターネットの会設立から,地域のインターネットの啓発普及に努めてきた。しかしながら,インターネットユーザは増加したものの「個人ユーザレベルのインターネット活用方法」ついての進展がみられない状況であった。そこで,実際の活用方法を研修する企画および学校側からその支援体制をさらに強化することにした。
(1) 公開セミナー(日田林工高校と共催) 平成11年2月27日(於:日田商工会議所)
 「インターネットの商用利用を考えるセミナー」
 〜インターネットを使った販売など話には聞くが,実際にはどうなのか,その実体を探る!〜
 http://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/227semina.htm
 地元,日田商工会議所と連携しながら,日田インターネットの会,本校の3者の共催で実施した。日田にアクセスポイントを持つプロバイダ,現在インターネットを使って販売に成功している方,地元商工業者など10名のパネリストでパネルディスカッションが行われた。地元,商工業者を中心に100名以上もの参加があった。セミナーでは,具体的な例も発表され地元商工業者には大きな刺激となったと思われる。
(2) 第5回日田インターネットの会公開講演会 平成11年6月26日(於:本校)
 本校では,「地域に根ざした学校作り」ということで積極的に学校施設を広く一般に開放している。そういう中で,本年度より日田インターネットの会年次総会および講演会も本校の施設を利用して実施することにした。総会終了後,下記のような講演会を実施した。土曜日の放課後であったため多くの本校生徒が参加した。
 「これからのインターネット」
 〜日田のインターネットの未来〜
 講師:首藤 完治
  鬼塚電気工事(株)デジタル工房ハート,マッキントッシュトレーニングセンター大分マネージャー
 以前より,地元のインターネット事情を特に詳しい首藤完治氏を招いて「日田のインターネットの未来」と題し講演を頂いた。日田地域のインターネット回線事情や教育的活用,商業的活用など幅広い話しを頂き大変参考になった。
(3) サーバの強化
 100校プロジェクトで初期導入されたサーバについては,WWW,ftp,news,メールサーバが一体化されているものである。本校のWWWのアクセス数は5,000〜10,000件,メールアカウントは100名を越えている。特にメーリングリストについては5個のグループを設定していることからサーバが過負担になることもある。今後とも,企画の進行と共にWeb,メール等の流通量が増えることが予想されるので,サーバの負担を軽減するために従来のサーバ(randy)にDNSサーバおよびメールサーバを置き,もう一台のサーバ(randy2)をFreeBSDで構築し,WWWサーバ,ftpサーバ,newsサーバ,プロキシサーバを置くことにした。回線はOCNエコノミー(128k)を使い「インターポール」でファイアーオールをかけ各実習室,職員室等にはプライベートアドレスを割り振りクラスBのクライアントが設定されるようにした。さらに,実習室内ではNTサーバを置き,実習室内のアクセスについてはhttp.ploxyを使いストレスの解消を行っている。(図1)なお,構築に関しては日田インターネットの会の支援も受けた。現在は,教職員については希望者全員に,生徒については授業や特別活動等に必要と担当教師が認めたなら自由にアカウントできるようになっている。

進路指導室 実習室等
    図1 日田林工高校のインターネットサーバと校内LAN

       表1 サーバ機の機能の振り分けについて

  Randy
   (OSはUNIX)

DNSサーバ(既存), メールサーバおよびPOP(既存)
NISサーバ, NFS

 randy2

(OSはFreeBSD 3.1RELEASE)

WWWサーバ(apache)
HTTP Proxyサーバ(squid)
ftpサーバ(wu-ftp)
NFS, NISクライアント
ニュースサーバ

  教室内サーバ(NT)

HTTP Proxyサーバ機能(Proxy 2.0)

3 実践の評価
(1) 学校,行政,民間の協力体制
 地域の発展は,地域の一体化が条件であるように,地域ネットワークの形成においても行政,教育,一般市民(関係団体含む)等のコンセンサスが何よりも重要だと思われる。地域のネットワーク化,コンピュータ化,データベース化などを成功させるためには,それらのニーズとシーズに通じるリーダ,あるいはオーガナイザ(組織者または調整者),つまり,情報化アドバイザの役割が非常に重要であると思われる。しかしながら,日田地域のような小規模な地域においてはアドバイサー的な人材は極めて少ない。したがって,小地域において情報ネットワークの構築を進める上で学校,行政,民間のそれぞれの立場での協力体制が不可欠である。
 本校のような職業系高等学校においては「生涯教育」や「地域の中の学校」という観点から学校の開放を行い施設設備や人的提供を行ってきた。100校プロジェクトやEスクエアープロジェクトの一環としても積極的に本校の施設設備を利用して一般および教育関係への研修会,講習会等を開催してきた。また,メーリングリストなどの提供やメーリングリスト上での技術サポートや家庭に出向いての接続の設定や技術サポートを行ってきた。また,学校外での講習会などに講師として積極的に参加し,これからの日田地区のインターネット環境や方向性を明示したり,日田インターネットの会の世話人会等にも積極的に参加し,「学校と地域」「学校と日田インターネットの会」の関係を築いてきた。また,逆に本校に対してサーバの管理等技術面でのサポートを受けるなど密接な関係が生まれ地域のインターネットの拠点としての役割が増大してきている。
(2) 地域と学校をつなぐメーリングリスト
 今まで,小中高等学校や地域住民との接点はほとんどなかったが,「インターネット」というネットワークを用いて結びつきができた。そして,単なるネットワークによるハード的なつながりだけではなく,「人と人との心の結び合い」ができたことは評価できる。また,地域の教材を提供して頂いたり,生徒が地域のネットワークと直接ふれ合うことで,さらに教育効果が高まってきた。また,地域とのオンラインでの交流において,特にメーリングリストは有効な手段であると思われる。地域展開におけるメーリングリストの効果として次のようなことがあげられる。
 (a) 技術的な支援
 (b) インターネット上のマナーについての論議をする場
 (c) インターネットの各方面での高度利用を論議する場
 (d) 地域と学校(教育)の接点としての場
 (e) 地域情報を流す
 (f) 地域(住民)からの教育現場への教材提供
 (g) 事務連絡
 (h) 会員間の親睦を深める
 特に,今回の2000年問題についてはメーリングリスト上で,積極的に対応してきた。

4 実践を終えて
 平成7年にインターネットが100校プロジェクトにより導入され,日田地域での活動を広げて行く中で日田インターネットの会等の連携により,現在では6つの民間プロバイダのアクセスポイントを誘致することができた。このようなインフラ整備と共に本校が,日田地域のインターネットの拠点となり,地域のインターネットの普及啓発,技術の向上,高度利用,マナーの向上等に努めてきた。これからも,今までの活動を今後とも続け学校,行政,民間がを一体化することにより地域の更なる拠点となるように努力したいと思っている。

ワンポイントアドバイス
 インターネットの普及率は高くなったものの個人レベルの活用方法については限界があり,「インターネットを接続したが何をしたらよいかわからない」というようなユーザが増加している状況である。このようなユーザに対して何らかの支援をしていかなければならないと思っている。これから,地域展開を進めて行く上で最も重要なことは,地域,学校,行政との連携をいかに取っていくかであると思う。

参考文献
 平成9年度「新100校プロジェクト」成果報告集 II地域展開に関する企画

利用したURLなど
 大分県立日田林工高等学校 (http://www.hitarinko-h.ed.jp/)
 日田インターネットの会 (http://www.hitarinko-h.ed.jp/~hitanet/)