大島紬を世界に紹介しよう
中学校全学年・美術,創意の時間
龍郷町立龍北中学校 土岐 邦寿
キーワード 中学校,美術,インターネット,電子メール,学校間交流
インターネット利用の意図
大島紬は奄美大島における基幹産業の一つであるが,近年不景気,日本人の着物離れ,後継者不足等で,先行き不安を抱えている状態である。一昔前までは,集落のあちこちでカタカタコットンと織機の音が聞こえたものであるが,このごろは機織りを見たことがないという生徒も出始めている。本校区は大島紬独特のデザインである龍郷柄発祥の地であり,現在もデザイナーや染め職人がいる。大島紬から美術のデザイン技法を学んだり,郷土を知る上で大島紬の製造過程を調べることはたいへん意義がある。そこで,龍北中学校において,技法の収集等取材してまとめたものを情報として発信することにインターネットを利用しようと考えている。また,大島紬独特のデザイン技法を学び,それを生かした美術作品を作成し,ホームページで公開し多くの人に見てもらったり,他の中学校との電子メールによる学校間交流を行い,本校の作品がどのように評価されているのか,また相手の立場に立った情報発信とはどうあるべきか等を学ばせたい。この企画を推進することにより,進路学習・体験学習の一環として職業観の育成がなされ,さらに郷土のすばらしさを理解させ伝統的産業に誇りを持たせることができる。
1 大島紬を世界に紹介しよう
(1) ねらい
新学習指導要領から本格的に導入される総合的な学習の時間では,情報教育や国際理解,環境などを柱にして多角的に取り組むことが必要となってくる。今までのように教師が設定した課題を生徒が,一定の教材を利用して解決していくのではなく,生徒自らが問題を設定し,解決するための手順や方法を企画し,実践してわかったことをまとめて発表することが求められてくる。本校では,ホームページ作成を柱とし,郷土について調べたことをパソコンを利用してまとめたり,グラフィックソフトを使って美術のデザインを作成したり,電子メールでの交流を行うことによって,生徒に幅広い視野を身につけさせることを目的とする。
(2) 指導目標
1・2年生は創意の時間の一環として,地域で紬産業に関係する方に取材を行い,ホームページにまとめて発表する。
3年生は美術の時間において,大島紬のデザイン技法を学び,グラフィックソフトを使って実際にデザインをする。また,作品をホームページにまとめ,情報発信を行い,学校間交流を行う。
このような活動を通して,パソコンを活用した情報処理能力を身につけさせるとともに,郷土に伝わる伝統産業のすばらしさと奥の深さを体験させる。
(3) 利用場面
この単元では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。
(a) 大島紬についての調べ学習
大島紬とは何なのか,どのようにして作るのか,ほかの織物とどこが違うのかなど,インターネットに接続し,検索ソフトを利用して調べる。
(b) グラフィックソフトを利用した大島紬のデザイン
大島紬のデザイン技法を一通り学んだあと,実際に自分たちでもグラフィックソフトを使って作成してみる。完成したものは,カラープリンタを使って印刷し掲示する。
(c) 調べたこと,作成したものをホームページにまとめる。
地域で大島紬を作っている人を取材し,それをグループごとにホームページにまとめる。また,3年生が作成した大島紬のデザインもホームページ用に変換して掲示する。
(d) 電子メールを利用した交流。
ホームページを公開した後,閲覧してもらった学校と電子メールを使って交流を行う。
その中で,新たな疑問点を見つけたり取材したりして,指摘を受けた部分を改善し,より見やすいホームページを目指す。
(4) 利用環境
(a) 使用環境 NEC PC9821V166 PC9821Xe PC9801BX アプライドRZC433
(b) 周辺機器 デジタルカメラ カシオQV-700 1台
ビデオキャプチャ IOデータUSB-MPG 1台
MOドライブ IOデータDTST-S640 1台
ルータ NEC CMZ-RT-DS 1台
カラープリンタ エプソンMJ-3000C 1台
(c) 稼働環境 コンピュータ室 NEC PC9821V166 5台
PC9821Xe 4台
PC9801BX 3台
サーバ用 アプライドRZC433 1台
(Windows機は64kでインターネット接続)
(d) 利用ソフト ワープロ 一太郎(機種によってバージョンが異なる)
ホームページ閲覧ソフト インターネットエクスプローラ3
ホームページ作成ソフト Fix-UpHomePage
グラフィックソフト SuperKiD
2 指導計画
1・2年生(創意の時間)
時 数 |
主 な 学 習 活 動 |
第1時 |
・大島紬について調べよう。(図1) |
第2時 |
・大島紬について,疑問点や調べたいことをあげ,グループを作って取材計画を立てる。 |
第3〜5時 |
・取材したものを「一太郎」または「Fix-UpHomePage」でまとめる。 |
第6時 |
・完成したホームページを見ながらグループごとに発表する。 |
3年生(美術)
時 数 |
主 な 学 習 活 動 |
第1時 |
・大島紬の基本的なデザイン技法について学習する。 |
第2時 |
・グラフィックソフト「SuperKiD」の基本的な使い方を学習する。 |
第3〜9時 |
・「SuperKiD」を使って大島紬のデザインを行う。 |
第10時 |
・できあがった作品を鑑賞しあう。 |
3年生(創意の時間)
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第1時 |
・「Fix-UpHomePage」を使って美術の作品のホームページを作成する。 |
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・学校間交流で,あらかじめホームページを見てもらい,感想や意見を電子メールでもらっておく。 |
第2時 |
・電子メールの内容に対して,話し合いをし,よかった点や改善点を上げ,すぐに対応できるところは改善する。 |
図1 インターネットによる検索
図2 ホームページを作成
3 利用場面
(1) 目標
美術の作品をホームページに取り入れる中で,完成した作品を想像しながら,意欲的に制作に取り組むことができる。
(2) 展開
学習活動 |
指導上の留意点 |
1 本時の学習内容を確認する。 |
・インターネットを利用して,本校のホームページに接続し,現在の完成状況を確認する。 |
図3 大島紬デザインの部屋表紙
図4 一覧表
4 実践を終えて
本校にインターネットの環境が整備されたのが,平成11年2月である。それまでは生徒はもちろんのこと,教師もインターネットを利用したことがなかった。平成11年度はマルチメディアを利用した学校教育のあり方を中心にして研修を重ね,授業においても積極的にパソコンを活用することができた。
本校は生徒数40人という小規模校であるが,今回のホームページ作成を通して世界に情報を発信しようとする気持ちが高まってきたように思う。また,電子メールで意見を交換することによって,多くの人の話を聞こうとする態度や相手の気持ちになってホームページを作成する態度が育ってきた。また,多くの生徒から「郷土のすばらしさを再確認した」,「もっと多くの人に知ってもらいたい」という感想も聞かれた。また,ホームページを見た卒業生から,賞賛と激励の電子メール等も届けられつつある。
これからはホームページの内容をよりいっそう充実させると共に,本題でもある「大島紬を世界に紹介しよう」を実践すべく,ホームページの英文化に挑戦したいと考えている。そして,完成した後はアメリカの学校との電子メールの交流を図りたい。
ワンポイントアドバイス |
参考文献
学校にインターネットは必要? (角川書店) 緒方佐代子
利用したURLなど
奄美大島紬観光公園 大島紬村 http://www.tumugi.co.jp/index.html