B.1 雨水の観測マニュアル
−中学校・高等学校向け−


次へ
目次へ 総目次へ

調査目的

     全国をほぼ網羅する各地域の学校で,生徒が大気汚染の一つの指標 として酸性雨の調査を自ら行うことによって,その学習意欲を高め, 身近な環境問題としての酸性雨の実態を地域的,かつ広域的(全国的)に把握 し,その発生メカニズムへの理解を深めるため。

調査項目

    1)気象 (気温,降水量,風向,風力,天気図)
    2)大気汚染 (雨水の酸性度,雨水の導電率 )

測定上の注意

    一回の降雨とは:
     前回の雨が降り終わってから,6時間以上たって新たに降り出した雨を, 一回の降雨として扱うことにします。6時間たたないうちに雨が降った場合は, 前の雨から継続した雨とします。

 

 最も近くの気象観測所などから, 降雨(雪)量,降雨(雪)日の平均気温, 風向,風力のデータを収集しましょう。
 降水(雪)日の天気図を,新聞紙面からコピーするなどして保存しましょう。


インターネットにも、気象情報を公開しているページがあるので調べてみましょう。
新日気気象情報ホームページ(メールでアメダス)
気象庁ホームページ

 

(中学校・高等学校)

レインゴーランドの設置

     レインゴーランドは,屋上などの頭上に障害物のない場所に,台を置いて固定します。(コンクリートの壁のそばなどに設置すると,跳ね返りの水で雨のpHが変わることがあります。) 風などで転倒しないように,しっかりとした台の上にねじや釘で固定しましょう。
     レインゴーランドにたまる"ほこり"の影響で雨のpHの値が変わることがありますから,雨が降らない時でも,1週間に1度は蒸留水などでレインゴーランドを洗浄してください。 "ひらけゴマ"(雨を取り入れるところのふた)にトイレットペーパーを幅1cmくらいに切ったものをひっかけて,セットします。雨が降り始めると,このトイレットペーパーが切れて,ふたが自動的に開きます。トイレットペーパーを引っかけるつめがおれたりした場合は,事務局にご相談ください。
測定の準備
     pHメーターや導電率計の使い方は,それぞれの説明書をよく読んでください。特に,pHメーターの雨水を入れる部分は,薄いガラスが張り付けてあり, 強い力を加えるとすぐに割れますので,気をつけてください。
     pHメーターや導電率計は使用直前に,標準液(pHメーターはpH7とpH4の2種類,導電率計は141μS/cmの1種類)で校正してください。 (温度などで,値が変化しますので,測定の直前に校正を行ってください。)

雨水の測定

     雨水の酸性度(pH):レインゴーランドはカップ1〜カップ7まで,雨の降り始めから順に雨量1mmごとの雨を自動的に採水します。8mm以降の雨は, カップ8からあふれて,下の大きなカップにたまります。 採水された初期降雨(1〜8ステップ)の酸性度と導電率を,堀場のツインpHメーターと導電率計でステップ毎に測定します。8ステップは,カップ8と下の大きなカップにたまった水を混ぜ合わせて測定してください。 最後に,採水されたすべての雨水を混ぜ合わせての平均pHを測定します。 雨水の測定は降雨後24時間以内におこなってください。

測定後

     レインゴーランドやpHメーターなど,測定後は蒸留水か脱イオン水で良く洗浄しましょう。レインゴーランドは洗浄後,ひらけゴマをセットして,次の雨に備えましょう。

降雪の酸性度
     レインゴーランドでのステップ毎の捕捉は困難ですから,別の容器(ビーカーなど)でまとめて捕捉し,これを室温で融解させた後, 24時間以内にpHメーターで測定します。

 

(小学校)

あめひこくんの設置

     ”よごれ”や”ほこり”の影響で雨のpHの値が変わることがありますから,あめひこくんを蒸留水で洗ってください。

     あめひこくんは,机などの台の上に置いて使用することもできますが,風などでとばされることもありますので,できるだけ持ち運びのできる台にねじ釘などで固定しましょう。

     屋上などの頭上に障害物のない場所に,台を置いて使用します。コンクリートの壁のそばなどに設置すると,跳ね返りの水で雨のpHが変わることがあります。また,木の枝などから雨がたれてくるような場所もさけましょう。地面やコンクリートの床の上に置くと,はね返りが雨に混ざり正確な測定ができなくなりますので,必ず台の上に置いてください。

     あめひこくんは外に出しっぱなしにしておくと,ほこりがたまってすぐに汚れてしまいますので,雨を集めるときは,雨が降り始める直前に測定場所に持ち出します。天気予報の降水確率が50%以上のときは,あめひこくんを外に出しておきましょう。

     雨が降り始めたらあめひこくんの中の容器に雨水がたまります。降り始めの雨がたまって,2〜3mmの雨量が降ると容器が回転して,それ以降の雨は外へ流れ出ていきます。雨は降り始めがもっとも汚れていることが多いので,あめひこくんはその降り始めの雨だけを採っておくようになっています。

     雨がやんだらできるだけはやく測定をします。あめひこくんを外に出したのに雨が降らなかったときや,測定するために決められた量(簡易酸性雨測定セットの試験管に半分)だけ雨が降らなかった場合は,あめひこくんを再度洗ってから次の機会にそなえましょう。

簡易酸性雨測定セットについて

     ”酸性”・”中性”・”アルカリ性”という水溶液の性質は,リトマス試験紙などを使って調べることができます。例えば,塩酸や炭酸水は酸性,蒸留水や食塩水は中性,水酸化ナトリウム溶液や石灰水はアルカリ性です。
     しかし,同じ酸性でも塩酸は金属を溶かしてしまうような劇物ですし,炭酸水はジュースとして飲むことのできるものというように,酸性の強さにちがいがあります。そのようなときに,pHという数値を使って酸性・アルカリ性の強さを表すことになっています。pHの数値は0〜14の範囲で表し,pH7が中性で,数値が7から小さくなるほど酸性が強くなります。逆にpH7から大きくなるほどアルカリ性が強くなります。雨を例にすると”pH5の雨”と”pH4の雨”では,pH4の雨の方が強い酸性を示していることになります。

     簡易酸性雨測定セットの試薬を利用すると,雨水のpHを測定することができます。

雨水の測定

     あめひこくんで採った雨を測定します。あめひこくんのふたをはずすと,採水容器の中に雨水がたまっています。その雨水を簡易酸性雨測定セットの中の試験管2本に,半分の高さまで入れて試験管立てに立てます。

     雨水を入れた1本の試験管に,”酸性雨測定用試薬”を目薬をさすときの要領で3滴たらして,軽く振って色が均一になるように混ぜます。試薬の色がどのような色に変化したか,簡易酸性雨測定セットの中の比色紙の酸性雨比色表とくらべて,一番近い色のpHの値を読みます。

     pHが4.5より大きいときは緑色や青色になりますが,”酸性雨測定用試薬”で緑色や青色になったときはpHの値を決めにくいので,もう1本の雨水を入れた試験管に”PH測定用試薬”を3滴入れて,比色紙の”pH比色表”とくらべて,一番近い色のpHの値を読みます。

     雨水の測定は降雨後24時間以内におこなってください。

測定後
     あめひこくんや試験管など,測定後は蒸留水で良く洗浄して,次の雨に備えましょう。
降雪の酸性度
     雪が降った場合はあめひこくんの上に積もって,雨のときのように採水することはできませんから,別の容器(ビーカーなど)でまとめて雪を集め,これを室温でとかした後に測定します。

        Eスクエア プロジェクト ホームページへ