「先進的情報技術活用プロジェクト」テーマのねらいは、インターネットの教育利用についてより高度な技術利用や、新しい観点での実践活動を行うことである。具体的には、事務局が策定したテーマ選定方針に基づき、「先進的情報技術活用プロジェクト」テーマのアイディア募集並びにテーマ選定を行い、応募いただいたアイディアを企画化し、参加校を募集し実施することである。

  1.  テーマの選定経過
(1)テーマの選定方法の検討
 コンピュータ教育開発センター(CEC)は、「先進的情報技術活用プロジェクト」テーマのテーマ選定方法について検討し、平成11年6月3日のEスクエア・プロジェクト推進協力者会議までに、テーマ選定方針並びにアイディア募集要項の事務局案を作成した。

 事務局が策定したテーマ選定方針は、以下の通りである:

1) テーマ選定メンバーはEスクエア・プロジェクト推進協力者会議の有識者で、
2) テーマ選定基準はモバイル、校内ネットワーク、特殊教育および有害情報等、より新規性、技術性の高い研究テーマであること、
3) 様式はアイディア応募者の自由記述形式で行うことであった。
 上記テーマ選定方針並びにアイディア募集要項は、6月3日のEスクエア・プロジェクト推進協力者会議の承認を受けた。

(2)テーマのアイディア募集
 平成11年6月7日、企画または企画のアイディアの募集をEスクエア・プロジェクトのホームページで告知し、応募資格を問わず、広く募集を開始した。同6月15日には文部省が、全国情報教育担当者会議で資料配布並びに趣旨説明を行なった。同日、文部省の依頼を受けた事務局が、全国の都道府県並びに制令指定都市の教育長宛にアイディア募集要項を配布し、アイディア募集の依頼を行なった。

 以下はアイディア募集の要項である。

  1. 「先進的情報技術活用プロジェクト」のアイディア募集

     教育現場において今後必要となる、より新規性、技術性の高い研究テーマまたはアイディアを募集します。

     「先進的情報技術活用プロジェクト」では、より新規性、技術性の高い研究テーマについて実践研究活動を行い、その成果と課題を今後の教育の情報化の一層の推進に活かしていくものです。

     先進的な技術や手法を活用してネットワークの教育活用に取り組む学校等を対象に、より高度な技術の活用や、新しい観点での実践活動を行うテーマや研究参加校を募集して教育実践と研究を行います。その成果は随時、Eスクエアのホームページで公開し、広く意見交換を図ります。

    例えば:

    モバイルを教育に有効活用するための研究テーマまたはアイディア

    校内ネットワーク化の実証および教育利用実験の研究テーマまたはアイディア

    特殊教育に関連する研究テーマまたはアイディア

    有害情報に関連する研究テーマまたはアイディア

    以上

【実施スケジュール】


【先進的情報技術活用プロジェクトに関するアイディアの提案様式】

  1. 提案者
    氏名:

    所属(学校名/機関名):

    連絡先:郵便番号、住所

    TEL、FAX、E-mail

  2. テーマまたはアイディアの区分:
    (「先進的情報技術活用プロジェクト」)
  3. テーマまたはアイディア名:

  4. テーマまたはアイディアの内容:
    (目的、ねらい等を36文字×10行程度にまとめてください。また、必要ならば絵や図などをメールに添付してお送りください。)


【応募方法】

 上記提案様式に則り、必要事項を記入の上、下記応募先に「E-mail」「FAX」「郵便」の何れかでご送付ください。

 締切りは、上記のとおり6月25日(金)必着とします。


【応募先】

郵便番号 105-0001 東京都港区虎の門1-23-11 寺山パシフィックビル7階

財団法人 コンピュータ教育開発センター

Eスクエア・プロジェクト事務局 アイディア募集係

TEL 03-3593-1804

FAX 03-3593-1806

E-mail idea@cec.or.jp


  1.  テーマ選定理由
「先進的情報技術活用プロジェクト」のアイディア募集の結果、平成11年6月25日までに87件の応募があった。

 Eスクエア・プロジェクト推進協力者会議委員の有識者の助言のもとに、テーマ選定方針に基づくテーマ選定基準に照らし提案アイディアの実現性と効果を鑑み、関係する23件のアイディアを参考にして、事務局が5件の「先進的情報技術活用企画」を策定した。

 

  1.  各テーマの概要
 「先進的情報技術活用企画」では,インターネットの教育利用についてより高度な技術利用や、新しい観点での実践活動を通じて、技術的側面および小・中学校、高等学校および特殊教育諸学校における教育的な側面から、先端的ネットワーク関連技術の教育利用における効果や課題について調査することとし、モバイル技術的な側面を「モバイル」、校内ネットワーク技術的な側面を「校内LAN」、特殊教育的な側面を「特殊教育」、有害情報技術的な側面を「教育用レイティングシステム」、子ども用ホームページの作成技術的な側面を「子ども用ホームページ作成」として、テーマ別にワーキンググループを設置して実施した。

 ワーキンググループの委員構成は以下の通りである。

「教育用レイティングシステム・ワ−キンググル−プ」委員名簿(敬称略:順不同)

区分

氏名

所属

主査

苗村 憲司

慶應義塾大学 環境情報学部 教授

委員

石原 一彦

大津市立瀬田小学校 教諭

委員

上谷 良一

兵庫県立教育研修所 情報教育研修課 指導主事

委員

宇佐美 東男

愛媛県立新居浜工業高等学校 教諭

委員

折田 一人

前橋市教育委員会 指導主事
前橋市総合教育プラザ 前橋市教育情報ネットワークmenet担当

委員

国分 明男

(財)ニューメディア開発協会 理事

委員

清水 紀久雄

山梨県総合教育センター 情報教育部長

委員

鈴木 二正

慶應義塾幼稚舎 教諭

委員

高橋 邦夫

東金女子高等学校 校長

委員

芳賀 高洋

千葉大学教育学部附属中学校 教諭

委員

長谷川 元洋

松阪市立中部中学校 教諭


「特殊教育ワ−キンググル−プ」委員名簿(敬称略:順不同)

区分

氏名

所属

主査

金子 健

明治学院大学 文学部 教授

副主査

伊藤 守

東京都立綾瀬ろう学校 教諭

副主査

松本 廣

国立特殊教育総合研究所 教育工学研究部 教育工学研究室長

委員

小野 龍智

佐賀県教育センター 所員

委員

金森 克浩

東京都立光明養護学校 教諭

委員

苅宿 俊文

大東文化大学 文学部 教育学科 専任講師

委員

島 治伸

徳島県立ひのみね養護学校 教諭

委員

田村 順一

神奈川県立平塚ろう学校 教頭

委員

三室 秀雄

東京都立江戸川養護学校 校長

「子ども用ホームページ作成ワ−キンググル−プ」委員名簿(敬称略:順不同)

区分

氏名

所属

主査

中川 一史

金沢大学教育学部附属教育実践研究指導センター 助教授

委員

神田 重信

横浜市立元街小学校 教諭

委員

窪田のり子

浦安市立富岡小学校 教諭

委員

清水 和久

金沢市立扇台小学校 教諭

委員

白江 勉

砺波市立出町小学校 教諭

委員

新谷 隆

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 客員研究員

委員

三宅 丈夫

(株)学習研究社 デジタルコンテンツ事業部 デジタルコンテンツ編集出版室室長

「校内LANワ−キンググル−プ」委員名簿(敬称略:順不同)

区分

氏名

所属

主査

林 英輔

流通経済大学 流通情報学部 教授

委員

石原 一彦

大津市立瀬田小学校 教諭

委員

大塚 秀治

麗澤大学 国際経済学部 助教授 情報システムセンター室長

委員

釘田 寿一

ネットワークサポートセンター in かんさい

委員

三橋 秋彦

墨田区立墨田中学校 教諭

委員

宮田 仁

滋賀大学教育学部教育実践センター 講師

 

「モバイル・ワ−キンググル−プ」委員名簿(敬称略:順不同)

区分

氏名

所属

主査

後藤 邦夫

南山大学 経営学部 情報管理学科 教授

委員

荒川 昭

慶應義塾普通部 教諭

委員

影戸 誠

名古屋市立西陵商業高等学校 教諭

委員

小林 道夫

神奈川大学附属中・高等学校 教諭

委員

白根 誠

(株)内田洋行 教育システム事業部 CAIサポート部 西日本サポート課

委員

辻 陽一

帝塚山学院泉ヶ丘中・高等学校教諭

委員

中島 康明

大阪府立盲学校 教諭

 以下に、各テーマの目的・目標および期待される成果の概要を記す(詳細は各テーマ毎の本編を参照下さい)。

  1.  教育用レイティングシステムを利用した実践研究

     様々な運用形態に対応して情報の選択的閲覧を支援するレイティングシステムについて、教育的な観点からフィルタリング・レベルやシステムに求められる仕様、有効な運用方法および利用方法、運用効果や課題について調査する。

    ニューメディア開発協会のセンターに構築されたPICS準拠のラベルビューロを使って試行運用を行い、試行運用結果から、評価シートを用い、教育用の推奨フィルタリング・レベルに求められる仕様数パターンをヒナ型として作成し、ヒナ型の有効性等の評価を行う。なお、必要なフィルタリング・ソフトウェアは事務局で提供する。

  2.  特殊教育におけるネットワークを利用した実践研究

    1) 障害児童・生徒向けメーラを利用した実践研究

     障害児教育において子ども達のネットワークアクセシビリティを改善し、広域ネットワークを用いた教育の可能性について調査研究する。

     障害児にとって必要と考えられるインターネット環境の中から、メーラ(メール・ソフト)を中心としたコミュニケーションツールに焦点を当て、メーラに必要な要件を調査する。

    2) 特殊教育用支援機器の活用相談に関するネットワークを利用した実践研究

     障害がある子どもたちや、彼らにかかわる教師及び保護者等の教育(療育)支援機器の利用に関する相談に対して、機器利用等に経験や知識のある教師などの支援者が、具体的な機器の紹介やその利用方法、利用の事例、地域リソース等のアドバイスをすることにより、全国規模での支援センター的な役目として応えられるように、学校等を結ぶネットワークを作る。また、相談者の近隣の支援者が直接対応することの必要性も想定し、支援機器の配置も考慮する。

  3.  子ども用ホームページの作成

     現Eスクエア・ホームページは大人向けに作成されているが、子どもたちが何の抵抗もなく使える使い易いホームページを調査研究する。

     具体的には、現在世の中にある子ども用ホームページの要件調査し評価し、子どもたちが何の抵抗もなく使える子ども用ホームページの有るべき姿を試作しながら検証する。

  4.  校内LANの構築と活用に関する実践研究

     今後、学校におけるインターネット接続環境の整備に伴い、学校内のネットワーク環境(校内LAN)の整備(教室や職員室等)を学校独自の力による整備が進められることが予想される。

     そのため、校内LANの整備の計画の立て方、実施の方法や課題等を実施事例を示すことにより、校内LAN整備の実際に役立つ情報を提供する。

    また、校内LANを整備する事により、生徒や教師にとってネットワークを身近な存在にするとともに、インターネットが校内のどこでも利用可能なることによる学習効果の向上を図る。

  5.  教育現場におけるモバイル(携帯端末)活用の実践研究

     モバイルシステムが教育現場でどのように活用できるか、また活用するための必要な要素は何かの研究を進める。

     モバイルそのものの持つ機能とそれを取り巻く情報提供サービスをもとに教育現場(野外学習、登下校時なども含む)での有効利用形態について実証する


  1.  評価と課題
平成11年度の「先進的情報技術活用企画」の5企画を通して評価できる点は、曲がりなりにも全国4万校向けに「手引書」ができ、Eスクエア・プロジェクトの広がる仕組みの一つが出来上がった点である。

また、平成12年度2月に行なったEスクエア・プロジェクト全体に関するアンケート調査でも、60%以上の回答者が「先進的情報技術活用企画」の5企画について「よく出来た」と評価している。

以下は、各テーマ毎の成果と課題を列挙したものである。

  1.  教育用レイティングシステムを利用した実践研究

    成果: 「教育用フィルタリングシステム手引書」及び報告書を作成し、レイティングレベルの実証を行い、大規模でなければ(20-30 台程度では)効果的と分かった。

    課題:

    教育用レイティングシステムの広がる仕組みとして、セキュリテイを含め「有益な情報」を作る仕組みを如何にして作るかである。

  2.  特殊教育におけるネットワークを利用した実践研究

    成果: メーラ評価ついては、参加12校から評価を戴き、操作性を中心とした改善点が抽出できた。支援機器センターについては、運用マニュアルと支援機器を準備した。

    課題:

    より良いメーラを今後メーカで商品化して戴くことと、支援機器センターの本格的活用がある。

  3.  子ども用ホームページの作成

    成果: 調査報告書及び教師用と子供用の「活用ガイドブック」を作成し、子ども用ホームページの実証を行った。

    課題:

    ポータルサイト化を目指し、如何にしたらより多くの子供達が使えるかである。

  4.  校内LANの構築と活用に関する実践研究

    成果: 教師やPTA等が校内LANの構築を行う際の、校内LAN構築計画の立て方・実施の方法や課題等、校内LAN構築に役立つ実施事例として、上記の3地域4校で校内LANの構築をした。

    課題:

    今後は、実践研究の成果を広報し普及させることが課題である。

  5.  教育現場におけるモバイル(携帯端末)活用の実践研究

    成果: 生徒の学習意欲を高め、モバイル活用技術の習得が進んでいる。民間で活用している事例とは異質の活用の芽が見えてきている。社会人と違った感性で取材活動が進む。

    課題:

    今回の参加校の意見として、貸与台数に限りがあるので、一部の生徒のみの活動となり、クラス全体、学校全体での取組みにより全体の学習意欲向上を目指す実証も行いたいとの意向がある。


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