造形教育における映像メディア表現の可能性
−発信・交流する美術に親しむ−
高等学校・美術
北海道札幌新川高等学校 吉岡 隆
キーワード 高等学校,美術,映像メディア表現,学校間交流
1 さっぽろ雪まつり2001プロジェクト
(1) ねらい
映像メディアの特質である情報を的確に伝達する力を利用して,自分たちの意図に合った表現方法を工夫しながら他地域の児童生徒とさっぽろ雪まつりの雪像のアイデア交流をインターネットの電子会議室やテレビ会議システムを利用して行っていく。また,実際に雪像を共同制作している様子をホームページで情報発信し,映像メディアによる情報活用能力の育成を図る。
(3) 利用場面
この学習では,次の学習場面で映像メディアやインターネットを活用する。
(4) 利用環境−実践に使用した機材−
2 指導計画
時期 |
活 動 計 画 |
留 意 点 |
8月〜 9月 |
●パソコンによる雪像制作紹介ビデオの編集
・コンテ,ストーリーボードでの企画,構成・ナレーション原稿の作成,録音 |
・はじめて雪像制作を見る児童生徒が視聴対象であることに留意させる。 |
10月 〜 12月 |
●電子会議室での雪像アイデアの交流 ★インターネットの利用 |
・画像の編集加工方法がアイデアを的確,かつ印象的に伝わるよう十分吟味させる。 |
12月 〜 1月 |
● テレビ会議システムによるプレゼンテーション |
・意見交換の中から,共通するテーマやアイデアを考えさせる。 |
1月 |
● 雪像共同制作とホームページでの活動紹介 ★インターネットの利用 |
・雪像共同制作交流会の企画,運営方法を考えさせる。 |
3 利用場面
(1) 目標
学 習 活 動 |
留 意 点 |
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・内容の構成をストーリーボードにまとめる。
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・AVIファイルのサイズが4ギガバイトまでであることから,17分程度の作品にまとめる。 |
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![]() ![]() 図1 パソコンによるビデオ編集 図2 雪像制作紹介ビデオの画面 |
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・テレビ会議システムでのアイデアのまとめ。 |
・各校から提案されたアイデアから共通するテーマやモチーフをピックアップし,まとめる。 |
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![]() ![]() 図3 電子会議室での意見交換 図4テレビ会議でのプレゼンテーション |
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・最終的に決定したアイデアをもとに粘土で模型を制作する。 |
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・各校から提案されたアイデアの紹介ページの制作。 ・制作レポート用掲示板の設置。 ・中継用ライブカメラの準備。 ・雪像共同制作のスケジュール調整と準備。 ・用具,機材の準備と搬入,臨時ISDN回線の設置。 |
・雪像制作当日は,ホームページの更新をする時間がないことを考慮して準備を進める。
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図6 制作レポートの掲示板 | 図7ライブカメラのホームページ |
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図8 ライブカメラ機材 | 図9 ライブカメラ操作画面 |
4 実践を終えて
今回の実践は昨年度の実践をもとにさらに深めることを主眼においたので2単位の授業では時間的な制約がありなかなか取り組めない題材に放課後や長期休業を利用して生徒とともに取り組んでみた。しかし,パソコンによるビデオ編集は,編集そのものの作業時間は短くともファイルに出力するまでに5〜6時間かかり,手直しをするたびに予想をはるかに越える日数のかかる作業になってしまった。また,テレビ会議も小学校の授業時間に合わせるために定期試験の最終日の午後に日程を調整,2月の雪まつりにむけての雪像共同制作も1週間早め,1月27,28日に日程を組むなどかなり厳しいスケジュールで実践をしなければならなかった。
だが,実際の雪像共同制作までに研究協力校の児童生徒たちへ雪像制作の紹介ビデオを視聴してもらい,電子会議室やテレビ会議で雪まつりへむけての札幌の様子を伝えることができ,最後に行なった共同制作にうまくつなげることができたと思われる。
また,今回の実践は自衛隊の縮小にともなう雪まつりの今後のあり方として,マスコミに何度か取り上げられることになった。
学校教育の中ではなかなか実践しにくい部分ではあるが,実際に社会に関わっての造形活動の中で映像メディアとインターネットを使った今回の実践は生徒にとって大きな財産になったのではないかと思う。今後も発信・交流する美術に親しむ態度を育成していきたいと思う。
ワンポイントアドバイス
大きなプロジェクトになればなるほど関係機関への協力依頼や連絡調整に膨大な時間が必要になってくる。また,研究協力校の教員どうしの連携も非常に重要である。 |