インターネットを活用した日韓音楽交流授業

小学校第6学年 音楽科
東京都府中市立府中第一小学校
学校企画担当 教諭 丸山 智子
fuchu01s@sage.ocn.ne.jp
http://www3.ocn.ne.jp/~fuchu01s/

キーワード:小学校・第6学年・音楽科・創作・日韓交流・電子メール・テレビ会議


インターネット利用の意図
 現在、国際理解教育の一環として、アメリカなど英語圏の国との学校間交流が広がりつつある。しかし、アジア諸国が日本をパートナーとして意識している現状をふまえて、日本の子供たちがアジア諸国を意識していけるように、国際交流の範囲を広げていく必要がある。インターネットを活用した交流は、間接的ではあるが、ホームページや電子メールを活用して、日常的な交流を行う可能性をもっている。ただし、韓国の言葉は、英語ほど一般的ではなく、言語を介した日常的な交流から入ることは難しい。そこで、どの国でも共通の音楽による交流を企画した。日韓両国で同じ楽譜作成ソフトを利用し、電子メールを活用することによって、共同作品づくりが可能となる。また、この音楽作品をきっかけにして、テレビ会議によって、お互いの演奏を鑑賞したり、意見や感想を直接交換し合い、より臨場感のある交流へと発展させることができる。


1 題材名「韓国の友達と、ことばとリズムのアンサンブルをつくろう」
(1)ねらい
  本題材では、ことばのリズムを生かして簡単な歌詞をつくり、いくつかのリズムパターンを組み合わせたり、重ねたりすることによって、リズムアンサンブルをつくることをねらいとしている。また、個人や親しい友達との作品づくりから、韓国の児童との共同作品づくりに発展させる。これらの活動を通して、韓国の文化にふれたり、言語も文化も異なる交流相手(以下ペンパルとよぶ)とのコミュニケーションを深めていく。
 
(2)指導目標
 1)世界の様々な国や地域の音楽を鑑賞し、音楽の特徴を感じ取る。
 2)ことばのテーマを選び、ことばのリズムを生かした歌詞をつくる。
 3)歌詞の特徴をとらえて、歌詞に合ったリズムをつくる。
 4)リズムアンサンブルを生かして、アンサンブルに合う旋律をつくる。
 5)完成した作品を、声や楽器を使って演奏する。
 6)友達の作品を鑑賞し、そのよさや自分の作品とのちがいを感じ取る。
(3)利用場面
 1)自己紹介の自画像をデータ化する。
  自画像やニックネームをカードに描き、デジタルカメラで写し、データ化する。
 2)ことばのリズムを生かした音楽作品をつくる。
  コンピュータを使って、ことばのリズム感を生かしたリズムアンサンブルを、楽譜作成ソフトを用い、簡略なスコア形式でつくる。また、リズムアンサンブルに合う旋律や伴奏を加えて作品を仕上げる。
 3)電子メールを利用して共同作品をつくる。
  日韓の子供4人で1グループを基本とし、日韓双方の子供がスコアに自分が考えたリズムや旋律を入力し、電子メールで交換しながら作品を仕上げていく。
 4)テレビ会議による交流
  メール交換の交流をさらに発展させ、出来上がった作品を互いに演奏して発表したり、感想を述べ合ったりしてリアルタイムの交流を行う。
 
(4)利用環境
 1)使用機種 
  コンピュータ室:NEC PC-9821Xa    1台 教師機
          NEC PC-9821Xb    1台 制御機
          NEC PC-9821Ct16  20台 生徒機
      音楽室:NEC VE56H/3     2台
 2)周辺機器 MIDIサウンドキーボード22台 CCDカメラ 2台
       テレビ電話 1台 音声ミキサー 1台 大型モニター1台
       ビデオデッキ1台 ビデオカメラ2台
 3)稼働環境
  コンピュータ室:室内LAN及び校内LAN,インターネット接続(ISDN回線)
      音楽室:校内LAN及びインターネット接続
 4)利用ソフト
  ミュージック・プロfor Windows(楽譜作成) Cu-SeeMe Pro(テレビ会議)
  インターネットエクスプローラ5.0  アウトルックエキスプレス
 
2 指導計画


 
 ○小題材名 ・学習内容及び活動の内容

 
 ◇教師のかかわり及び留意点
 ◆通訳ボランティアの役割
 □韓国の小学校の活動


○音楽で世界を旅しよう(音楽科・2時間)
 ・世界の様々な国や地域の音楽を鑑賞し、
  音楽の特徴を感じ取る。
 ・韓国と日本の音楽に焦点を当てて鑑賞
  し、それぞれの音楽の特徴を感じ取る。
◇従来の鑑賞曲だけでなく、韓国
 のSong教諭から送られた韓国民
 謡の合唱曲なども取り上げペン
 パルに親しみがもてるようにす
 る。








 

○韓国の6年生と友達になろう(総合的な
 学習の時間・2時間)
 ・自画像とニックネームをデジタルカメラ
  で読み込み、自己紹介のデータを作る。



 

◇相手が発音しやすいか、適当な
 長さのニックネームになってい
 るか助言する。
□日本側と同じように、自己紹介
 のデータを作る。
◆自己紹介データの受け渡しの仲
 介をするとともに、ニックネー
 ムの読み方を双方に伝える。






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○韓国の友達とことばとリズムのアンサンブ
 ルをつくろう(音楽科・5時間)
 ・テーマを選び、ことばのリズムを生かし
  た歌詞をつくる。



 ・歌詞に合うリズムを考える。










 ・韓国から返信された第1案のデータを聴
  き、自分のデータを見直し、旋律のパー
  トを入力して第2案を韓国へ返信する




 ・完成した作品を、演奏する楽器を決めて
  練習し、声と楽器とコンピュータの自動
  演奏を合わせた作品として完成する。

◇歌詞のテーマは以下のものとし
 子供が選択する。
 1)スポーツ2)食べ物3)あいさつ
 4)学校紹介5)伝承遊び6)地名
 7)動物8)体の部位9)交通10)気候
◇歌詞は、単語単位のものを基本
 とし、長い文章にはしない。
◇それぞれの国のことばの発音が
 わかるように歌詞をローマ字で
 入力する。
◇この段階で、韓国に作品のデー
 タを電子メールで送る。
◆歌詞に書かれた単語を翻訳し、
 韓国側に伝える。
□既に打ち込まれているリズムを
 参考に、歌詞とリズムパートを
 つくり、日本へ電子メールで送
 る。(第1案)
◇ペンパルの入力したデータには
 手を加えないことを原則とする
 伝えたいメッセージがある場合
 には電子メールを活用する。
□第2案に修正を加え、旋律パー
 トの続きをつくる。(完成した
 作品として日本に返信する。)
◇声とコンピュータの自動演奏は
 必ず入るようにし、楽器は双方
 の子供が選択するようにする。







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○もっと知りたい韓国(総合的な学習の時間・2時間)
 ・インターネットで、自分たちの歌詞のテ
  ーマに関して韓国のことを調べる。
 ・韓国と日本とのちがいや共通点、または
  韓国についてわかったことをまとめる。


◇韓国について総合的に調べられ
 るホームページをあらかじめ選
 んでおく。
◇まとめたことを発表し合い、情
 報を共有する。

○韓国の友達とテレビ会議で交流しよう
            (音楽科・2時間)
 ・互いに自己紹介し親近感を高める。
 ・完成した作品から、数曲を発表し合う。
 ・それまでに伝えきれなかったことを発表
  したり、意見や感想を交換する。

 

◇2時間のうち1時間は、リハー
 サルなどの準備にあてる。
◇◆同時通訳になるため、会の進
 め方など、事前に通訳ボランテ
 ィアとの打ち合わせをしておく
◇双方の言語や文化にふれる子供
の発言を取り上げ、全体で共有
 できるようにする。
 
3 学習の展開
 (1)目標
   歌詞のリズム感を生かして、リズムパートをつくる。
 
 (2)展開
  ○学習内容 ・子供の活動  ◇教師のかかわり 評価
 ○歌詞のリズム感をとらえる。
  ・歌詞を音読したり、手拍子をたたいたり
   する。
 ○リズムを正しく入力する
  ・MIDIキーボードのメトロノームに合
   わせてリズムを入力し、楽譜化する。ま
   たは、マウスで音符を入力する。
 ○音読と合わせ、さらにリズムを工夫したり
  整えたりする。
  ・コンピュータの自動演奏に合わせ、音読す
   る。
  ・リズムを工夫してリズムパートの第1案を
   完成させる。
 ○友達の作品を聴き、作品のよさや自分の作品
  とのちがいを感じ取る。
  ・自分の作品を発表したり、友達の発表を聴
   いたりして、表現の工夫などを感じ取る。
  ・韓国の友達に伝えたいことを考える。

 




◇リアルタイム入力とマウス入力
 を説明し、子供が自分に合った
 方法を選択できるようにする。
◇リズムの工夫の方法をいくつか
 提示したり、子供の作品の中か
 ら紹介したりする。





◇歌詞のリズム感が、表現されて
 いるかを視点に鑑賞する。
◆歌詞のリズム感を生かし表現を
 工夫して、リズムパートをつく
 っている。
 
4 成果と課題
(1)共同作品の創作について
 日韓双方で、同じ楽譜作成ソフトを使ったため、つくったデータをMIDIファイルに変換しなくて済み、データの交換を正確に行うことができた。(但し、音源の違いにより、音色の設定に双方のズレが見られた。)また、直接、対話をしながらの創作ではないので、調性が明確ではないリズムアンサンブルの題材設定は有効であったといえる。実際には、週に2時間の音楽の授業での創作のため、第1案完成までの期間がかかり、第1案のデータはリズムパートが未完成のまま送ったものもいくつかあった。しかし、日本側が未完成でも拍子さえ決まっていれば、韓国側もリズムパートをつくることができ、日韓双方が同時進行で創作する時期もあった。
(2)テレビ会議について
 企画の段階では、CU-SeeMeを使ってテレビ会議を行う予定であった。しかし、日韓双方にLANが組まれていることが、テレビ会議の実施を困難にしていることが分かり、LANを介さずに直接ISDN回線につなぐことになった。また、双方がつながったとしてもいつ回線が切れるか分からない状況にあったので、通信が途絶えたときの代替策としてテレビ電話を用意した。テレビ会議は、日を変えて3回行われたが、途中回線を切断せざるを得ない状況にあい、結局3回ともテレビ電話に頼る結果となった。
 また、交流会としてのテレビ会議であるが、電子メールのやりとりでは相手の顔が見えず、作品づくりの授業後の子供の感想には「一緒につくっているという感じがなかった。」というものもあった。しかし、テレビ会議でお互いが自己紹介したことで「一緒に作品をつくっている友達がいることがわかり、作品づくりに責任を持たなければならないと思った。」という感想を持つ子供の姿が見られた。さらに、韓国の友達を実感できたことで、「時間をかけて交流したい」「もっと友達のことや韓国のことを知りたい」という気持ちが高まっていった。
(3)通訳及び言語面
 当初この企画の大きな課題は、言語面にあった。作品数が60点近くになったため、歌詞の翻訳は、翻訳ボランティアの大きな負担となり、メールでのメッセージの交換は十分にできなかった。交流には言語は不可欠であり、通訳ボランティアが少ない中でコミュニケーションをどう深めていくかは今後の課題である。
 
ワンポイントアドバイス
 テレビ会議交流を実施してわかったことは、実施にはそれを支えるスタッフの手が不可欠であるということである。例えば、司会進行役、コンピュータ操作担当、テレビ電話に切り替える場合には、音声ミキサー、ビデオカメラ担当など授業の担当者1人ではとてもまかないきれない。今回は、外部より支援を受けることができたが、校内で協力体制をつくることが必要である。
 また、テレビ会議の場合、通訳ボランティアが通訳だけでなくコンピュータの操作や通信について熟知していることも実施の条件の一つになってくると考えている。
 
企画への協力校
 韓国 ソウル市 可園初等学校
 
利用したURL
 大韓民国大使館   http://embassy.kcom.ne.jp/korea/index-j.htm
 All Korea http://www.allkorea.co.jp/
 ハングル語講座   http://www.korea.co.jp/hangul/
 韓国の服      http://langue.hyper.chubu.ac.jp/komori/park/data5.html
 韓国の気候と風土  http://www1.ttcn.ne.jp/Boo/sel-pilot.htm
 駐日大韓民国大使館 http://embassy.kcom.ne.jp/korea/index-j.htm
 
 ●共同でつくった作品
  ・旋律パート 府中第一小学校
   (続きを可園小がつくっている)
  ・リズムパート(日本語)
   府中第一小学校
  ・リズムパート(ローマ字表記)
   可園初等学校
  ※作品全体は8小節でつくられている。