Webページ作成を通して,文学作品を読み伝える学習活動のあり方
−心豊かに読み,主体的に表現する生徒の育成を目指して−

岩瀬町立西中学校 宇津木 裕

キーワード 中学校,2年,国語,インターネット,読書,文学的な文章,宮沢賢治


インターネット利用の意図
 生徒の想像力を育て,読解力を高めていく上で非常に大きな役割を果たしているのは,やはり読書であろう。そして,主体的な読書の姿勢にこそ,さらに大きなその効果を期待することができる。しかし,情報を映像や音声で受け取ることが多くなった現代社会で,生徒の読書離れ,活字離れもいよいよ深刻になってきている。読書離れが進む中で,いかに書物に親しませるかということが大きな課題である。読書は書物からというのは実に基本的な読書のスタイルであり,今後もそれを尊重して行かねばならない。だが,読者が読みの楽しさを享受するための手段として,デジタルブックやインターネット等から活字を読むことも考えていく必要があるのではないだろうか。また,単に本を読むというだけでなく読んだものをWeb上で他の読者にも伝えるという活動によって,読みの交流の場も拡がっていくはずである。さらに,コンピュータによる図書紹介はテキストの加工が自由にできるため,読み手の解釈や個性を表現しやすい。
 さて,ここではCD作品集に納められた宮沢賢治の作品を読み,それを読者の解釈や解説を織りまぜ,音読,群読,絵本化,ビデオ紙芝居化等の活動を加えながら,Webページを作ることを目標にして活動を進めてきた。最終的に,完成した作品を本校のWebページに公開することで,学習者の目的意識や相手意識を高めた。


1.単元名 文学作品に親しむ(宮沢賢治作品を読む)
  学習材 宮沢賢治作品(「注文の多い料理店」,「よだかの星」,「オツベルと象」,
       「セロ弾きのゴーシュ」 など,生徒がグループごとに選択したもの)
 (1) 研究主題 心豊かに読み,考える生徒の育成 
 (2) 目  標     
  ○ 文学作品を楽しみながら読もうとする。(関心・意欲・態度)
  ○ 作品の内容や作品に対する自分の考えを,読み手に分かりやすく紹介することができる。(書くこと)
  ○ 作品の描写に注意して読み,そこに描かれた人物の姿や心情を理解することができる。 (読むこと)
  ○ 文脈における語句の意味や用法を理解し,作品の読み取りに生かすことができる。 (言語事項)
 (3) コンピュータ利用場面
  ○ 宮沢賢治の作品を読む。<宮澤賢治全童話集(CD):マイクロテクノロジー>
  ○ 電子辞書を活用し難解語句の意味を調べる。<岩波国語辞典(CD): システムソフト>
  ○ Webページによる図書紹介。(作品の概要紹介,登場人物紹介)
  ○ Webページによる作品紹介。(絵本化,紙芝居化,音読・群読,ビデオ紙芝居化,作品クイズ,難解語句表示,場面並びかえ等)
  ○ 掲示板やメールによる交流
 (4) 利用環境及び稼働環境
  ○ 本校のコンピュータ室及び普通教室を活用
  ○ 本校コンピュータ室の設備    
    サーバー機(WindowsNT)
    教師用コンピュータ(Windows98)
    生徒用コンピュータ(Windows98)
 1台, カラーレーザープリンター
 1台, レーザープリンター
40台, すべてLAN接続
 2台
 4台
  
  ○ 活用した関連機器及び主なソフト
    デジタルカメラ(2),ビデオカメラ(1),マイク(1),スキャナ(4)
    カセットテープレコーダー(1)
    宮澤賢治全童話集(CD):マイクロテクノロジー   
    岩波国語辞典(CD): システムソフト       
    ホームページビルダー2001:IBM            
    HYPER CUBE for WINDOWS:スズキ教育ソフト      
    FrontPage Express:マイクロソフトWindows98標準装備のもの

2.指導計画
 (1) 実施計画

 
 (2) 単元計画(○は全関東地区中学校国語研究協議会茨城大会にて公開)

 
 (3) 単元の構想
コンピュータ室での授業風景→
               
 (4) 指導案(単元第7時)         指導者 T1 宇津木 裕・ T2 三村 聖子
  @ 目 標
   ○ 宮沢賢治作品に接し,理解したことを自分たちの方法でまとめ,分かりやすく紹介することができる。
  @ 準備・資料 テキスト(CD,文庫本),コンピュータ,スキャナ,
          テープレコーダー,提示装置,色鉛筆,ケント紙
  B 展 開                                 

3.学習の展開

 (1) 読書案内について              
  @ 人物紹介 
   ○ 登場人物を書き出し,情景やその場面の行動, 会話等から人物の性格や心情を読み取り,解説する。                  
   ○ できるだけ作品の叙述に基づいて解説するよう心がける。
   ○ 人物像を簡単なイラストに表現する。 






  A 図書紹介
    ○ どんな相手に読んでもらいたい作品であるかを明確にして紹介する。(相手意識)
    班ごとにキャッチフレーズを決め,Webページの入口にする。
    ○ 読み手のことを考えながら,どんな場面を特に読んでほしいかを考え,紹介文を書く。
 

 (2) Webによる作品紹介


 (3) 作成されたWebページ
宮沢賢治作品の入口 キャッチフレーズ 個々の作品への入口
作品(図書)紹介 登場人物紹介 Webによる作品紹介

公開授業の授業風景
 (4) 活動上の支援と工夫
  ○ ティームティーチングを組み,技術的な面と内容的な面の両面から支援できるようにした。
  ○ ネットワーク接続により,他の班の活動も随時参考にできるようにした。
  ○ 掲示板を作り,自由に書き込みができるようにした。
  ○ 活動に対する充足感を味わえるよう,他の中学校や一般の人たちから評価や寸評をいただけるよう呼びかけていきたい。
                       
 (5) 掲示板による交流(他校生徒の声)

4.成果と課題
 (1) 自分の知らない人にわかるように作品を紹介しようという目的意識や相手意識を持って課題に取り組んだため,非常にに意欲的な活動が展開できた。
 (2) 生徒は実に多様な方法により作品を読んだりまとめたりしており,その過程で作品を何度も読み返すことが多く次第に内容についての理解も深まっていった。その反面, 学習活動が多様すぎて,グループごとの活動に対して十分な支援や助言が行き届かない点があった。
 (3) 生徒のコンピュータ活用能力に個人差があり,操作の習熟に費やす時間が多かった。ある程度機器の操作能力が高まれば,さらに充実した読解・読書活動が可能になるだろう。
 (4) 電子掲示板を利用して意見交換をしていく予定であるが,その内容をいかに授業の中で活用していくかが今後の課題である。
◎ ワンポイント・アドバイス
  文学作品そのものを紹介しようとする場合,当然のことながら著作権の問題が派生する。作者がすでに没後50年以上経過しているか,著作権フリーの作品であるかなどに十分配慮して学習材を選定し,単元を構成していく必要がある。
  また,Webページそのものを作成することが学習のねらいではないので,Webページのベースとなるhtmlファイルや素材,機器等を事前準備し,効率的に学習が進められるよう配慮することが肝要である。
◎ 岩瀬西中学校URL : http://www4.ocn.ne.jp/~nisijh/