体験やインターネット,メールを通して育てる人に優しい町づくり
― 福祉ボランティアと環境・ゴミ問題を関連させて ―
小学校3・4・5・6年 総合的な学習の時間
大門町立大門小学校 川口達実
HQN03605@nifty.ne.jp
http://www.tym.ed.jp/sc144/
キーワード 小学校,3年,4年,5年,6年,総合的な学習,インターネット,福祉,環境
インターネット利用の意図
子供たちの多くは,コンピュータでゲームをした経験が多い。また,ゲーム・キャラクターや人気歌手のホームページをインターネットで調べた経験のある子供がいる。子供たちの生活の中に少しずつインターネットが入ってきている。インターネットは,今後の国際社会または情報社会で,ますます重要な位置を占めるようになると考える。普段の生活でも,その便利さは拡大するばかりである。そのような中で,インターネットを情報収集の手段として使い,必要な情報を取捨選択し,主体的に情報を発信する情報活用能力が望まれる。小学校段階で,この情報活用能力の基本的な力をつけることが大切である。その基本的な力を,次の3つの活動を通して身に付けさせることができると考えた。
1.自分が調べたい課題をインターネットで調べる。
2.メールの送受信により,他校との情報交換と交流を図る。
3.デジタルカメラで取材したり,インタビューしたりしたことを,コンピュータを使ってまとめたり,発表したりする。地域の方々に,取り組みの様子を公開する。
これら3つの活動を,地域社会の課題を主体的に追究し,自ら考え,表現する総合的な学習を通して行う。ホームページ上で公開質問を行ったり,メールを通じて3つの小学校の子供たちと情報を交換し合ったり,高校生に質問したりして,自分たちの課題を解決できるようになると考えた。情報化社会に「生きる力」の基本的態度を養うことを目標に,「情報を収集する→まとめる→発信する・表現する」コンピュータを使う学習活動を設定する。地域を大切にし、地域を愛する子供に育つことを願い、本テーマを設定した。
1.各学年の実践例 (インターネットなどを使用した授業は、■印をつけた。)
(1) 3年生(2クラス 69名実施)
a 単元名「人にやさしい町 大門町」(福祉・ボランティア)
b 指導目標
体の不自由な人の立場を疑似体験や見学,インターネットの学習を通して考え,体の不自由な人が安心して暮らすことができる大門町の施設設備を考えることができる。
c 指導計画
第1時 ビデオ「新ちゃんが泣いた」を見て,体の不自由な人の立場を考える。
第2時 乙武洋匡氏「五体不満足」で,体の不自由な人の気持ちを考える。
第3時 6人グループ単位で,校舎内を足の不自由な人になって,車椅子体験を行う。
第4時 第3時の車椅子体験をもとに,話し合う。
テーマ「学校は足の不自由な人に優しいかどうか」
第5時 街や生活の中にある点字を知る。基本的な介助の仕方を行う。
第6時 目の不自由な人になって,校舎内を歩く。
第7時 手話を知る。
第8時 耳の不自由な人が困る生活の場面を知り、基本的な介助の仕方を行う。
第9時 大門町を,足・目・耳の不自由な人になって街の施設設備を調べる。
・駅・役場・郵便局・スーパーマーケット・コンビニエンスストア
・グループごとの見学・体験なので,親の方に協力していただいた。
第10時 第9時の体験活動をもとに,話し合う。
テーマ「大門町は足・目・耳の不自由な人に優しいかどうか」
■第11時 インターネットの授業
ホームページ「ようこそ バリアフリーのまちへ」を使って,自分たちが体
験できなかった場所や施設を,バーチャルに体験する。
1)
どこにバリアがあるか,教師がたずねる。
2) 子供がその場所にマウスを動かすと,バリアのある施設・設備が分かる。
3) どのようなバリアがあるか,教師がたずねる。
4) 子供が予想し,答える。(子供にクリックさせる。⇒バリアが説明される。)
5) どのように直せばよいか,考えたり図に書いたりした後,話し合う。
6) クリックして、解答を見る。
第12時 体の不自由な人に優しい大門町の姿を話し合い,絵や図、文に表す。
d 効果
・ 大門町の施設・設備を,体の不自由な人の立場から考えるようになった。
・ インターネットのホームページで,自分達が見学・体験できない施設・設備を見ることができ,バリアフリーへの理解が深まった。
・ 校舎内の段差や,大門町の施設・設備を見学した際,デジタルカメラを使って取材した。それを液晶プロジェクターやテレビに映し出して説明したり,話し合ったりすることにより,より理解が深まった。
・ インターネットに関心を持ち,ホームページを見たりメールを扱ったりする子が出てきた。
(2) 4年生(2クラス 81名)
a 単元名「わたしたちの庄川」(環境)
b 指導目標
地域の庄川について,自分の課題を持ち,資料やインターネットで調べて,庄川を美しく守っていこうとする態度を育てる。
c 指導計画
第1〜3時 庄川へ見学に行き,自分の学習課題をもつ。
第4時 庄川について各自が課題を設定する。
・川の汚染度を調べるグループができる。
・川の汚染度にあわせて住む水生生物・水生昆虫を調べるグループができる。
■第5〜6時 川の汚染度を,資料やインターネットなどで調べる。
川の水質環境について調べるグループが,庄川と全国の川を較べるために,
インターネットを使って調べる。
・水質汚染度をはかる一つの指数となる水生昆虫のことを調べる。
・一部の子供が,川の流れや水生昆虫を調べる活動に参加する。
■第7〜8時 インターネットや調べたことをもとに,課題別のグループ単位で中間発表をする。
■第9〜10時 中間発表で,友達から教えてもらったり,質問されたりして,不十分なところを
資料やインターネットで再度調べて,まとめる。
第11時 まとめの発表を行う。
d 効果
・ インターネットで,川の汚染度や家庭排水による汚染,水中昆虫,川を美しくしようとする活動などを知り,川の環境美化に努めようとする意識が高まった。
・ インターネットで全国各地の水や川に関する学習の取り組みを見るうちに,川への関心が深まった。
・ 川を美しくしようと,台所からの排水について考え,家庭における汚染予防の工夫,下水道設備などに課題をもつ子供が出てきた。また,メールを使って,質問しようとする子供もいた。
・ インターネットで簡単に調べることができることを理解し,さまざまな川の問題点を知り,新たな課題意識を持つ子供がいた。
(3)5年生(64名)・6年生(102名)
a 単元名 ぼくたち・わたしたちの大門町
b 指導の目標
自分を育んでくれる地域に関心をもち,環境や福祉など自分の課題を追求し、誰もが住みやすい町づくりを考え,表現することができる。
c 指導計画
第1時 町づくり調査隊など4つの課題別グループに分かれて,学習計画を立てる。
第2時 実際に,自分たちが住んでいる大門町を見学し,課題をもつ。
その際,デジタルカメラで撮影し,記録をとり,後のグループの情報交換や話し合いの場に活用する。
■第5時 ゴミ問題や環境問題,福祉について分からないことは,インターネットで調べたり,
メールで大門高校の方々に聞いたりする。
(大門高校でパソコンを使ったインターネット学習 写真1)
■第8時 浅井小学校,櫛田小学校とホームページやメールで情報交換をはかる。
(特定の時間を設けないで、随時行う。)
■第9時 学習活動の様子をホームページ上で公開し,取り組みを地域の方々にも知らせる。
(ホームページで公開:「稲刈り」「情報収集に協力」)
■第11時 ケナフについてインターネットで調べたり,地球温暖化の原因の一つである二酸化
炭素を多く吸収するケナフを育てたりする。そのケナフを用いて,二酸化炭素の吸収実験を行う。
その後,ケナフクッキーを作ったり,紙すきをしたりする。
(ホームページで公開:「ケナフで紙すき」)
■第15時 ホームページ上で公開質問を行い,情報を集める。(課外を含む)
(ホームページで公開:「情報収集に協力を」「凧祭り小学生と語る会」「町づくり学習」)
■第17時 町のホームページを通じて町長さんや議員の方々に,メールで質問する。
■第20時
パソコンを用いて,大門町子供議会で,町づくりのプランを発表する。
(8月31日実施 他にも原稿作成のため課外を含む )
■第23時
パソコンを用いて,学習発表会で発表する。(課外を含む)
(10月29日実施 ホームページで公開:「学習発表会」 写真2)
第25時 議員の方を招待し,大門小学校(議員さんと語る会 写真3)で,子供議会以降,
調べたこと・まとめたことの発表会を開く。
(12月18日実施 ホームページで公開)
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写真3 議員さんの話を聞く |
写真2 コンピュータで発表 |
写真1 インターネット |
d 効果
・ 自然班は,都市計画や緑化計画などを調べるために,役場に行き,担当者から話を聞いたり,本やインターネットで情報を集めたり,保護者の方にアンケートをお願いしたりした。みんなの活動をまとめる班会議では,「自然を守りながら開発をし,便利に暮らすことが大切ではないか」と班の意見がまとまった。グループ活動の中で情報を交換し,話し合い,まとめるという表現活動の成果である。
・ 学習発表会で,日頃の学習の成果を家庭や地域の方々に伝えることになった。子供たちは,シナリオ班,情報収集班,情報分析班,資料をコンピュータで提示するプレゼンテーション班,劇班に分かれて取り組みを開始した。シナリオ班は,発表の構成を考え,各クラスの取り組みを台本にまとめた。
・ 情報収集班は,インターネットやアンケートなどで必要な情報を集め,音響や照明も担当した。情報分析班は,資料作りを行い,小道具や大道具も製作した。演技は,ナレーション・劇班が担当した。プレゼンテーション班は,コンピュータ操作を担当し,ステージにプレゼンテーションの画面を映した。
・ 学習発表会でプレゼンテーションを経験してから,ホームページで表現する関心が高くなっていった。自分たちの活動を紹介したホームページを見て,メールが届くことがあり,子供たちの励みとなった。
・ インターネットによる情報収集の便利さを体験し,友達にインターネット情報を頼むなど,幅広く情報を集めようとする子供が出てきた。
4.成果と課題
■ 成果
(1) インターネットで,興味関心のあるキーワードで調べると,素早く多くの情報を得ることに驚き,子供たちの関心が高まる。
(2) メールでの交流は,反応の有無や疑問解決により,子供たちの取材意欲が高まる。
(3) 発表時に,デジタルカメラの画像を提示したり,発表用のプレゼンテーションソフトを使ったりすると,発表する側の意欲が高まる。聞く側も理解しやすくなる。
(4) ホームページで公開質問したり,学習活動を地域の方に知らせたりすることにより,地域の方々から教えていただいたり,励ましていただいたりする関係ができ,子供の学習意欲の向上につながる。
□ 課題
(1) インターネットで検索する時キーワード検索できるようにしないと,調べるのに時間がかかる。調べる時間を効率的にしないと,子供の意欲が減退する。
(2) ホームページを丸写しにする子供がいる。調べたいことをキーワードを使ってまとめる指導が必要と考える。
(3) インターネットができるコンピュータが2台しかないので,時間差を作っても,子供の学習活動に支障をきたすことがある。時間的なマネジメントが難点である。
◆ワンポイントアドバイス
(1) 子どもたちにホームページで情報を検索させる場合,教師側が事前に,子供の学習課題と関連するホームページを調べ,そのURLをインターネットエクスプローラーの「お気に入り」に登録しておくとよい。また,役立つリンク集を作成しておくと,子供がアクセスする時間が短縮できる。
(2) 学校間の情報交換や交流をはかりたい場合,学校間で共通の課題やテーマを設定して,教師が前もって連絡し合うようにする。すると,児童の中には,メールやホームページなどを使って情報交換や交流する子供が出てくる。
(3) 保護者や地域の方々,学習課題に関する方々にインターネットなどを通して,支援してもらえる体制を整えておく。
(4) 発表用プレゼンテーションは,「はっぴょう名人」(ジャストシステム社)がよい。
(5) IBM社ホームページビルダー2001は,ホームページを作りやすいソフトである。初心者でもわかりやすく,子どもでも使うことができる
◆参加・協力校
大門町立浅井小学校 http://www.tym.ed.jp/sc145
大門町立櫛田小学校 http://www.tym.ed.jp/sc146
富山県立大門高校 http://www.daimon-h.tym.ed.jp
◆利用したURLなど
1.バリアフリーのまちへようこそ http://www.pref.mie.jp/KENFUKU/plan/bfree/
2.こねっとgoo http://www.goo.wnn.or.jp/index_k.html
3.Yahoo!きっず
http://kids.yahoo.co.jp/
4.水と人間,ゴミ問題 ワ−ルドスク−ルネットワ−ク http://www.wschool.net/
5.水・河川情報バンク http://www.winfonet.or.jp/sitemap.html
6.カワナビ こども館 http://www.kawanavi.net/index_kid001.html