ネットワークを利用した相互学習評価活動の支援
-Webサーバと連動したデータベースの活用-
山梨大学教育人間科学部附属中学校
コンピュータ部会 清水宏幸・菅谷 信
http://gika10.fzk.yamanashi.ac.jp/e2/fzkesquera.htm
キーワード : ネットワーク,イントラネット,CGI,相互評価,教科学習,作品評価,
課題提示,意見集約,perl,中学校,総合的な学習,インターネット,
交流学習,共同学習
任意のディレクトリにアクセスすると,その中にあるコンテンツのタイトル一覧が表示される。タイトルをクリックすると,コンテンツが表示され,上のフレームにコメント入力タグが表示される。
コメントを入力すると,それぞれのコンテンツごとにコメントが保存される。「コメントを見る」をクリックすると,今までにあるコメントが一覧表示される。教師側のメリットとして生徒のwebページを教科のディレクトリに転送するだけで,自動的にタイトルメニューが生成される。(図―1)
図-1コメントシステム画面(ブラウザとしてmicrosoft i eを利用)
2.実践計画
(1)実践した学習活動
6 月 | 第2学年保健体育科 |
11月 | 第1学年技術・家庭科,第3学年国語科 |
12月から2月 | 第3学年英語科, 第1学年セルフB(総合的な学習の時間 福祉領域 ), 第3学年セルフC(個人探求的な総合学習) |
(2)指導展開例
技術・家庭科の指導案を例として示す。
学習内容 「製作活動の中間評価」技術・家庭科
技術分野「技術とものづくり」20時間目
学年学級 第1学年
学習目標 ○製作活動を振り返り技術や解決方法などをコメントできる。
○互いに情報交換して、有効な情報かどうか評価しあう。
展開例
学習 過程 |
生徒の活動 | 教師の活動 | 留意点等 |
導入 | 実習記録を振り返り、どんな工具を使い、困ったときにどんな事をしてきたか思い出す。 | 今までの製作実習について振り返らせて、おもに道具の使い方や加工方法などでこまった場面などを聞くなどして自分の解決方法を思い出しやすい状況に導く。 |
自習記録ファイル |
課題 提示 |
ブラウザを起動する。 提示されたURLを入力する。 コメントメニューから、各製作段階のページを閲覧する。 コメントシステムの使い方を理解する。 |
WebコメントシステムのURLを示して、各製作段階に分かれたwebページを閲覧させて、そこに、自分の持っている情報を入力することを指示する。 情報として価値のあるものは、問題点と具体的な解決方法、有効な工夫点、失敗の原因となることなどである。 |
学習プリント |
展開 | 実習記録ファイルを見直す。 任意のwebページのコメントをみたりして、自分の持っている情報がない場合は、コメント入力する。 |
活動の支援、機器操作支援、また、生徒の記録にないが、教師の記録にあるような内容を思い出させて入力を促進する。入力内容がより具体化するよう支援する。 |
コメントシステムのURLを表示 |
まとめ | 今までに入力されたコメントを閲覧し、特に有効だと思う情報をひとつえらび、その理由を学習プリントに記入する。 |
本日の学級の仲間の情報を互いに評価するように指示し、本日のか活動記録に有効な情報を選んで記入する。 |
3.学習の展開
その結果,本年度は国語,英語,技術・家庭科,保健体育,セルフB(領域別の総合的な学習の時間),セルフC(個人探求型の総合的な学習の時間)において利用され,発表活動の効率化,相互の意見交流による活性化,自己評価能力の向上などの成果を示す指導者の感想が得られた。以下はその抜粋である。
保健体育科「健康と環境」〜環境の利用と保全〜 指導者 菅谷 信 |
WEBへのファイル公開が可能なデータベースの活用により,相互評価の場面にかける時間が大幅に削減できた。また,それぞれの意見をリアルタイムにフィードバックできるだけでなく,その意見に対するレポート作者の返答も即時に行える点は,生徒の意欲向上につながる大きな要素となった。授業時間外でも閲覧することが可能となった。生徒の中には,休み時間等を利用して積極的に多くのレポートを閲覧・評価しようとするものも多く,意欲の向上がみられた。以前のように多量の紙にプリントアウトするようなことは一切なくなり,紙資源の無駄使いに対する改善が図れた。 |
国語科におけるコンピュータのネットワーク機能を利用した 音声言語学習の評価活動 指導者 保坂 伸 |
・・・音声言語の学習では、そうはいかない。40人にスピーチの経験をさせようと思えば40回のスピーチの時間を保証しなくてはならないのである。それだけで3〜4時間はかかってしまう。最大確保しても1学期に7時間程度の時間の中で、これは実施不可能に近い数字である。録画したVTRは、MPEG−1という画像データ形式に変換し、クラスごとにCD−Rに保存した。この方法に、「コメントシステム」をあわせれば、生徒が自分自身のスピーチを見て、その内容や身振り手振りについて自己評価をするだけでなく、瞬時に生徒相互の評価活動をさせることができる。これは、従来の音声言語学習の最大のネックであった評価の問題を乗り越えるのに、たいへん有効な方法であると考える。今回は実験的な試みであったので、いまだに課題はある。しかしながら、マルチメディアが一般に広く利用される簡便な方法の一つとしての可能性が見つかったと考えている |
英語科3年コンピュータを利用した自主レポートの作成と有効な相互評価活動 指導者 今村淳一 |
多くの友人からのフィードバックを基にして、各自が自分の課題追求レポートの自己評価につなげていくことに意義があった。この学習サイクルは、単に作品を相互交流させる「展示会」としての働きだけではなく、友人の多くのレポートを見ることで、「課題設定の視点」「課題追求の方法」「レポートのまとめかた」「課題追求によっての成果や課題」など多くの視点において、友人と自分を比較することで「自らの」課題追求の過程を振り返ることができること,また自分のレポートをさらに磨きをかけたいという意欲付けにつながること、さらに友人からのコメントを読んで、自分のレポートを客観的に見つめられること。教師からの評価以上に成就感・達成感を獲得することができることなどが成果としてあげられる。また、同じ学習を異学年が行う際に、先輩達のレポートを参考にすることで、自らの課題設定の有効なガイダンスとなり、意欲付けにもつながると考えられる。 |
技術・家庭科1年「学習評価とHOW TOデータベースの構築」指導者 鈴木 昇 |
加工技術の基礎的な知識と方法は学ぶが、実際の加工場面では個々が違った問題点にぶつかり、教師や友人と相談しながら解決する場面がある。このときの解決情報は、実践的なノウハウの部分で記録に残しにくい。そこで、webコメントシステムを活用して、製作実習のいくつかの場面を設定し、コメントとして生徒個人が問題点や改善点、解決方法などを記入する学習を行ってみた。コメントが多くつくにつれ、また後者のコメントほど具体的な表現となり、発信の工夫がみられた。また、実際の意見交流の授業と比較すると、生の意見交流はできないが、生の発言力の弱い意見も得られることで、生徒の思考や判断について、より客観的に実態分析できる情報としても価値があると思われる。複数課題、多角的な課題などを設定するような学習ユニットでもその相互の情報交換や意見交流などにも有効に働くと思われる。たとえばグループごとに違う実験や実習を行って、あとで総合的にまとめていく学習場面などである。このように、webページに教師の意図した課題を設定することで、webコメントシステムは、課題提示と成果の収集のシステムとしても利用価値があると思われる。 |