シニアネットともに学び合う子どもたち
〜生涯学習センター・シニアネットとの交流活動を通して〜

半田市立亀崎小学校 丹波信夫

キーワード:小学校5年、総合的な学習、シニアネット、生涯学習センター、ボランティア、メール指導、web作成指導


 シニアネットとの交流を企画した意図
生きがいを求めているシニアの方々の中には生涯学習としてネットワークコンピューティングを学び、自らのスキルをあげている方が多くいる。また、学校教育現場ではこれらシニアの方々の豊富な経験に基づいた考え方にふれる機会が少ない。そこで、シニアの方々と小学生がお互いに学び合えることができないかと考えた。
小学校の教育現場においては、情報専科教員・情報T.T教員の配置がむずかしい学校が多い。地域においてボランティア的にネットワークコンピューティングについて子どもたちに支援をしたいという方との連携は欠かせないものと考える。
そこで、子どもたちがシニアネットの方々との交流を通して、ネットワークコンピューティングの基礎を学び、シニアの方々の豊富な経験に基づいた考え方にふれ、尊敬の念を持つことができることをねらいとした。
最初に、地域の生涯学習センター・シニアネットに登録されている方々に、ボランティアで小学校5年生(3クラス)でおこなわれる正規の総合科・情報の授業(各クラス週1時間で合計週3時間)の中に入って交流授業をしていただける方を募集した。
そうしたところ、17名のシニアの方がボランティアに応募してくださり、シニアネットの方々と小学校児童の交流授業を展開していく運びとなっていった。
 地域の生涯学習センター、シニアネットに参加するシニアの方々、地元の公立小学校、この3者による協力体制の確立は当地区においては初めてのものである。


                  
1 実践にあたって
 
98日、日本福祉大学において、ボランティアに応募してくださったシニアの方々・生涯学習センター職員・小学校職員の第1回打ち合わせ会をおこなった。ここで、小学校からこれからの交流授業についての提案をおこない、シニアの方々の日程調整をおこなった。
 そこで次のようなことを決めた。


2 実践例1 メールを出そう

2.1 目 標

2.2 実施時期  1011
2.3 指導計画

小単元
(時間)
学 習 活 動    留 意 事 項

備 考

アカウントの発行
(1)
・今までに電子メールを出した経験について話し合う。
・電子メールの仕組みについて簡単に知る。
・自分のアカウントとパスワードを決定してメールソフトを設定する。
・子どもたちは、今まではグループメールを使ってインターネットに出ていたが、今回は個人校内メールであることを知らせる。
・アカウント、パスワードの決定やメールソフトの設定の仕方についてシニアの方には個別に児童の相談にのってもらう。
プロキシィサーバーにフリーのプロキシィメールを入れてメールサーバーとする。

 
不正メール・危険メールについては6年生で扱うものとする。
校内の友達にメールを出そう
(1)
・ルール違反、エチケットに反したメールを見て話し合う。
・友達のメールアドレスを聞き、メールを出す。
・シニアの方や先生にもメールを出す。
・人の気持ちを考えた表現方法について考えさせる。
・基本的なメールソフトの使い方を知らせる。
・シニアの方には個別に支援をお願いする。
いろいろな技を使おう(2)
・友達からのメールに返信を出す。
・アドレス帳の使い方について知る。
・署名を作る。
・ファイルの添付の仕方を知る。
・友達やシニアの方にメールを出す。
・返信の出し方について知らせる。
・いろいろな機能を使わせてメールを出させる。
・シニアの方には個別に支援をお願いする。
・シニアの方のメールアドレスを聞いてもいいこととする。
      
         シニアネットの方々との授業の様子

3 実践例2  webページを作ろう
3.1 目 標
  • ホームページ作成ソフトを使って簡単なwebページを進んで作ることができる。

  • デジタルカメラやスキャナーを使って画像を取り込むことができる。

  • シニアの方との交流を通して、豊富な経験に基づいた考え方にふれ、シニアの方に尊敬と感謝の気持ちを持つことができる。

  • 著作権について知るとともに、プライバシーの大切さについて理解することができる。

  • 3.2 実施時期  1011
    3.3 指導計画
    小単元(時間) 学 習 活 動    留 意 事 項

    備 考

    webページの構想を練ろう

    (2)

    ・今まで見てきたwebページについて話し合う。
    ・著作権違反、プライバシー垂れ流しの教師自作ページを見て感じたことを話し合う。
    ・自分のページのテーマを決定する。
    ・ページの構成を考える。
    ・自分のページを作る意欲を喚起する。
    ・著作権を守り、プライバシーを大切にすることの大切さに気づかせる。
    ・テーマの決定やページの構成について、シニアの方には個別に児童の相談にのってもらう。
    ホームページ作成ソフトはHOTALL
    2001(dbソフト)を使用する。
    総合科・「手作り名人」で取材してきたことをwebページにまとめさせる。
    出来上がったページは校内のみの公開とする。
    (1部、交流校向けのページは公開する。)
    外向けページについては6年生で扱うものとする。
    webページを作ってみよう(5) ・自分の構想に従ってページを作ってみる。
    ・写真や絵を自分のページに入れてみる。
    ・いろいろな機能をためさせる。
    ・必要に応じてデジタルカメラやスキャナーの使い方を知らせる。
    ・シニアの方には個別に支援をお願いする。

    友達のページを見てみよう(1)

    ・お互いのページを見て、感想を交換する。

     
    ・友達のページのよいところを誉め合うようにする。
    ・シニアの方から児童のページの感想を児童一人一人にいただく。

    4 交流授業の展開
     1クラスにつき12時間の交流授業であった。最初、シニアの方も子どもたちも緊張していたが、回を重ねていくにつれてお互いの人間関係が出来上がっていき、和やかな雰囲気の中で交流授業が展開していった。
     「メールを出そう」では早くもシニアのみなさんに助けられた。最初におこなった子どもたちのアカウントの発行・登録作業はひとりひとりについてパスワードなどの個別指導が必要であり、とても指導者1人では対応しきれないものであった。しかし、シニアネットの方が数名いてくれたので、子どもたちひとりひとりの相談に対応できた。
     また、人生の大先輩であるシニアの方々が語るルールやエチケットの話をはじめ各種アドバイスはとても重みがあるものであり、子どもたちも熱心に聞いていた。
     子どもたちはメールが出せるようになると、さっそくシニアの方のメールアドレスを聞いてメールの交換を始め出した。このメール交換は現在も続いている子がいる。
     「webページを作ろう」では、子どもたちがデジタルカメラを持って取材してきた地域の伝統産業についてのページを作った。この「webページ作り」ではひとり1ページとしたので、画像の取りこみからひとりひとりに対応した指導が必要であった。
     シニアの方々も小学校で使うwebページ作成ソフトを使うのは初めてであり、使いながら小学生にアドバイスを与えている姿が見られた。
    おかげで5年生全員が自分の取材してきた伝統産業をwebページにまとめて発表することができた。
    児童の感想 
    ぼくが、こまっているとシニアの○○さんが「どうしたの?」とやさしく教えてくれました。自分のページができたのは○○さんのおかげです。とてもうれしかったです。メールもすぐに返事をくれてうれしかったです。これからも○○さんとメール交換を続けたいです。
      授業後も楽しくおしゃべり
    感謝の会 開会式
    予定の交流授業を終えた子どもたちの中から、シニアネットの皆さんをご招待してシニアネットのみなさんに感謝する会を開きたいという声があがった。そこで、各クラスから2名ずつの実行委員を出して、「シニアネットのみなさんに感謝する会」の実行委員会を結成した。実行委員会において感謝する会の企画・運営をすべておこなった。
    感謝の会では、歌をいっしょに歌ったり、ゲームをいっしょにおこなったりして楽しんだ。     
    最後に、感謝のメッセージカードをプレゼントした時、お互いにしんみりした。シニアネットへの感謝の会が終わった後、シニアの方々と子どもたちの双方からもっと交流がしたいとの希望が出てきた。                                             
     感謝の会の後、シニアの方からいただいたメールの一部            
    今日は、楽しい思い出をいただきありがとうございました。学校に通うことがとても楽しみになっていましたので皆さんにお会いできないのが残念です。でも、メールがありますね。メールでお会いしましょうね。
    皆さんの進歩が早いので、私が勉強させていただくことがたくさんありました。
    亀小の皆さんと交流できる機会が与えられ、私はとてもしあわせ者です。
    皆さんの笑顔を頭に浮かべて書いています。また、書きますね。

    素晴らしい企画そして進行に感心しました。短い時間にぎっしり詰まった内容にあっと言うまの1時間でした。
     感動に目頭が熱くなったのは私1人ではなかったようです。今、学校が崩壊しているとか聞きますが、そんな事は微塵も感じさせない素晴らしい先生に素直な生徒さん達でした。本当に有難うございました。

    5 成果と今後の課題
     シニアネットの方々にとっては、自分たちの技術を生かせる場が得られ、子どもたちとふれあうことにより生き生きと活動していただいたように思う。全員の方が学校へ行くのが楽しみであると答えられた。
    小学校においては、情報教育を進めていく中でシニアネットの方々の支援により個に応じた指導を進めることができたことと、シニアの方々の考え方や意見を知ることができたのは大きな成果である。
    今回の実践がもたらした地域の生涯学習センターやボランティア団体との学校教育における連携の仕方は他地域、他校においても実施可能なものである。すでに数件お問い合わせをいただいているが、その地域におけるボランティアの育成が大きな課題になると考える。
     今後においては、高学年などで、シニアの方々と学校にある機器を活用したデジタル作品の共同制作などをおこなうことにより、今度はシニアの方々に機器の使い方などをアドバイスするような活動に発展させたいと考えている。

    ワンポイントアドバイス
     まずは地域の生涯学習センターやボランティア団体の門をたたいてみることである。そこで、指導者がボランティアの方々といい人間関係を作ることが大切である。
    協力機関:日本福祉大学、日本福祉大学生涯学習センター、ジャンプシニア