インターネット・イントラネットの教育的利用

小学校第6 学年・総合的な学習
名古屋市立旭丘小学校 渡辺一弘
ne004m-t@asahigaoka-e.snet.aichi-c.ed.jp

キーワード 小学校,6 年生,総合的な学習,ホームページ,リサイクル


インターネット利用の意図
 総合的な学習として,コンピュータ学習や課題解決学習を行っている。本で調べるのと同じように調べる手段としてインターネット検索をしたり,発表の手段としてホームページにしたりと,道具としてのコンピュータ活用を図っている。
 年間を通して常時全学年がインターネットやイントラネットを活用しており,その成果は校内LAN でいつでも自由に閲覧できる。ここで紹介する学習内容は,課題解決学習の進め方を確立しようと実践した第6 学年の環境学習である。

1. 単元名「もう一度使えるよ」
(1) ねらい
 ペットボトル回収やアルミ缶・牛乳パック回収を体験した子供たちから,ペットボトルなどを集めてその後どうなるのだろうという疑問を感じ,質問する子供が出てきた。
 この機会に「リサイクル」について調べたり考えたりする課題解決学習を展開することにより,子供たちの主体的な学習活動が期待できる。そこで,課題の設定,情報の収集・作成,情報の整理・統合,情報の発信,情報の交換・調査の学習段階を踏まえて,学習の仕方を身につけたり,コンピュータを活用する力を伸ばしたりしようと考えた。
 
(2) 指導目標
 ペットボトルやアルミ缶等のリサイクルの流れと再生品について,知りたいことや調べたいことを課題として調べ学習を行い,身近な環境問題に対する自分の考えを深める。
 
(3) 利用場面
 本学習では,次の場面でコンピュータを活用する。

  1. 情報の収集・作成
     インターネット検索を行い,リサイクルに関するホームページを探し,アドレスをお気に入りに入れたり,リンク集を作ったりする。
  2. 情報の整理・統合
     お気に入りやリンク集等から課題に合わせた資料を選んだりまとめたりする。
  3. 情報の発信
     資料をもとにリサイクルに関するホームページやかべ新聞を作成する。
  4. 情報の交換・調査
     作成したホームページをプロジェクタで投影したり,大型ディスプレイに映したりして発表会を行う。


(4) 利用環境

  1. 使用機種 WINDOWS95・98
  2. 周辺機器 プリンタ,プロジェクタ,スキャナ,デジカメ,MO
  3. 稼働環境 コンピュータ室 22台,サーバ 3 台,図書室 2 台,音楽室 1 台,
    インターネットルーム 6 台,児童活動室 1 台,特別活動室 1 台,保健室 1 台
    第1 学年〜第6 学年・障害児学級の全15学級 各1 台ずつ,職員室 7 台,
    その他個人持ちコンピュータ 7 台,以上全て校内LAN 及びインターネット接続
  4. 使用ソフト キューブネットJr,イントラバケッツ,一太郎,IE5.0,ビルダー

 
2. 指導計画(10月〜11月)

 学習段階            学 習 活 動

第1 時
 課題設定
 

○ 中部リサイクルセンターの講話を聞き,アルミ缶はどうやって回収・再生されるかを知り,リサイクルについて興味・関心を持つ。
○ 疑問に思ったことや調べたいことをメモする。

第2 時〜4 時
 情報の収集
    作成







 

○ 調べたいことが似ている人同士グループを組む。(1〜5人)
スチール缶,牛乳パック,ペットボトル,トレー,紙類,ビンなど
○ テーマ別グループで調べる計画を立てる。
(1) 調べる内容を具体的にする。
(2) 調べる方法を考える。(インターネット,本,新聞,聞き取り)
(3) 調べるときの役割を決め,誰が何をやるのかを明確にする。
○ ホームページを探し,お気に入りに入れたりメモしたりする。
○ 使えそうなホームページのリンク集を作る。

第5 時・6 時
 情報の整理
    統合

○ インターネット・図書等を活用しリサイクルについて調べる。
○ 集めた資料からテーマに合った資料を選ぶ。
○ まとめ方の作成計画を立てる。
 

第7 時〜9 時
 情報の発信


○ 作成計画をもとに,資料を切ったり貼ったり書いたりして,ホームページやかべ新聞を作成する。
 

第10時・11時
 情報の交換
    調査
 

○ 発表をきいて,リサイクルの良さや問題点を考える。
○ 発表後,意見の交換をして,「地球を守るために今できること」を考え,実践計画を立てる。
 
 
3. 学習指導事例(11時間完了)
(1) 第5 時「資料を活用して,リサイクルの流れや再生品について調べることができる」
学 習 活 動 活 動 へ の 支 援 と 留 意 点

インターネットや本などを活用して自分たちが調べていくテーマに合った資料をさがしましょう。
1  めあてを知る。
 
 
 

2  よりよい資料とはどういうものか考える。
 ・ 短くまとめてある。
 ・ 言葉がわかりやすい。
 ・ パッと見てわかる。
 ・ 絵やグラフがある。

○ 今までの「修学旅行のページづくり」「社会の歴史新聞づくり」の経験を思い出して,資料を集めるときに大事にした視点を想起する。
○ 資料を探して検討する視点を生かすようにホワイトボードに掲示する。
○ まとめる際にも視点が役立つことに気づかせる。

3  テーマ別グループで,前時に入れた『お気に入り』からテーマに合う資料を選ぶ。
 ・ スチール缶
 ・ ペットボトル
 ・ 牛乳パック
 ・ 紙や雑誌など
 ・ トレー
 ・ ビン
 

◯ 「このページはペットボトルのリサイクル方法がわかりやすい」「このページにはトレーや紙のことがのっている」など他のグループの参考になることをズバリカードに記入し,掲示板に貼る。
○ 他の活動の様子を見たり,使えそうなホームページや資料はないか相談したりしてよいことを伝える。
○ 新聞形式でまとめる場合,必要に応じて見つけた資料をプリントアウトしたり,必要な部分を切り取ったり,アンダーラインを引いたりする。
 
(1) どの資料を選んだらよいのかがわからない子供への支援
 ○ 「よりよい資料とはどういうものか」の視点をもう一度確認する。
 ○ テーマで使っている言葉が入っている資料を選ぶ。
(2) 資料を選ぶのに時間がかかる子供への支援
 ○ 「よりよい資料とはどういうものか」の視点をもう一度確認する。
 ○ 背面掲示板のズバリカードを見る。
(3) 自分のテーマに合った資料が見つからない子供への支援
 ○ 同じテーマで調べている人に聞きに行く。
 ○ リサイクルに関するリンク集やリサイクルの本を見る。


写真1 ホームページ作成

○ 『お気に入り』に入っているアドレス以外のホームページを探してもよいことを伝える。
◯ 時間に余裕のあるグループは,図やグラフ,文章などの資料をまとめるようにする。(写真1 )
◯ タイムアウトの場合,少し経ってからもう一度見るようにするか,先に違うページを見るようにする。
○ 早く終わった人は,進み具合が遅い人を手伝うようにする。

4  今日の活動を振り返り,「ふりかえりカード」に記入する。

◯ 選んだ資料を振り返り,自分のテーマに合った資料かどうか確認する。
○ テーマに合う資料が見つからなかった子供には,見つけられなかった理由を考えるように支援する。

5  活動の中でうまくいった点や困った点を発表する。
 

○ うまくいった点をほめたり,困った点をみんなで考えたりしていくようにする。
 

(2) 第10時「発表したり情報交換をしたりする中で,身近な環境に対する考えを深める」

   学 習 活 動

     活 動 へ の 支 援 と 留 意 点

リサイクルについて知り,自分にできることを考えよう。
1  めあてを知る。



2  調べたことをグループごとに発表し話し合う。

  写真2 発表の様子
 

○ 調べたことをまとめたホームページやかべ新聞をもとにしながら発表する。(写真2 )
○ 発表を聞いて,新しい情報を得たり,自分の考えを深めたりするためにメモをとるよう助言する。
○ 発表が終わったら,質問をする時間を設ける。 ○ 感想や意見を基に,リサイクルの良い点,問題点などについて板書していく。

 
(1) 良い点
 ○ 回収されたペットボトルや牛乳パックから,いろいろな製品ができる。
 ○ 何かの原料として使うことができる。
 ○ びんは何度も再利用ができる。
(2) 問題点
 ○ リサイクルには限界があるし,リサイクル製品を作るのにもお金がかかる。
 ○ きちんと分別したり,きれいにするのに手間がかかる。

3  ごみを減らすために自分ができることを考え,ワークシートにまとめる。
 

○ リサイクルの問題を自分自身の問題としてとらえて,日常生活の中でできることを考えて記入するよう呼びかける。
 
 
(3) 子供たちが作成したホームページの例
図3 「びんのリサイクル」のページ 図4 「ペットボトル」のページ
     
4. 成果と課題
(1) 児童の声
『多くの資料の中から,自分が使える資料を選ぶことが大切だとわかった』
○ たくさん資料が見つかったけど,何を選べばいいか迷った。使える資料を選びたい。
○ いい資料が見つかったが,いらない資料もあった。
○ もっと,いっぱいグラフや資料を集めたい。
『みんなで調べたことを発表し合うのはよくわかっておもしろい』
○ いろいろな製品がリサイクルされているのがよくわかってよかった。
○ グループごとにいろいろなまとめ方があってわかりやすかった。
○ 地球環境を守るために,自分でできることは積極的にやっていきたい。
 
(2) 考察
○ インターネットを使う前に,自分の調べたいことをはっきりさせることで,大量の情報の中から効率よく取捨選択し,必要な最新の情報を簡単に得ることができた。また,子供たちは,みんなで協力して調べるとより多くの情報が集まることにも気づき,お互いに情報交換をしながら楽しく課題解決学習を進めることができた。
○ 調べたことを基に発表する場を設定したり,ホームページにまとめたりすることで,自分の意見を発表する意欲が高まり,話し合い活動が活発になった。また,友達の意見を聞くことにより,自分の考えを高めることができた。
○ 調べたことをまとめる方法を選択できるようにすることは,資料を目的に合わせて整理・統合し,わかりやすく発表しようとする意識の高まりにつながった。しかし,発表の場では,資料をそのまま写すだけに留まったり,専門的な用語を使ってわかりにくい説明をしたり,質問に答えられなかったりする場合があった。また,自分の調べてきたことに固執し,相手の意見を無視してしまう傾向も見られた。
○ グループ対抗の討論形式の発表にすることで,グループ内での役割分担や共通理解を図り,よりよい発表会や報告会ができるように今後の実践研究を積み重ねたい。
授業に活用したホームページ例
○ http://www.hips.or.jp/~yasuyama/recycl/a_frame03.htm リサイクル作業工程
○ http://www.o-net.or.jp/nexpo50/fureai/kankyo/recycle.html 地球を救おう

ワンポイントアドバイス
 インターネット検索をする上でキーとなる用語を全体の場で話し合っておくことにより,絞り込み検索が容易になる。他の学習場面で自分が課題を持ったときに自分で考え自分で判断し,見通しを持って解決に取り組む力を育てるためには,教師が用意したリンク集を与えないことが大切である。