インターネットを活用した実践をささえる
学校情報化マネージャーの役割についての研究
中学校・総合的な学習の時間
長谷川元洋
松阪市立中部中学校
ghase@logob.com
http://www.city.matsusaka.mie.jp/edu/tyubu/
キーワード:学校情報化マネージャー、情報化推進コーディネーター、総合的な学習の時間、情報教育
2002年度から本格実施される「総合的な学習の時間」を試行した学校から、実践事例が多数報告されるようになってきた。事例の中にはインターネットを活用した学習活動場面が多く、これまでの学習活動より効果があったという報告が多くみられる。しかし、その実践を参考にしても、なかなか思うようにできないという声も聞く。これまでの経験から、インターネットを使った授業実践を行うためにはいろいろな準備が必要であり、学校全体の情報化を進める役割をする教師が必要であると考えている。学校間交流などの実践は連係プレーによって、成立すると考えている。インターネット、オフラインの両方を組み合わせた連携プレーにより、情報教育の実践を成立させたる実践を行い、学校情報化マネージャーの仕事を分析しようとした。
主として、総合的な学習の時間など、情報機器を活用した学習活動
情報教育係3名、大谷(総合的な学習の時間全体を計画、第2学年の職場体験学習を担当)、林(コンピュータの環境整備を担当、第3学年の総合的な学習の時間におけるインターネット利用のサポート)、長谷川(外部との折衝、校内LANの設計、計画、企画立案、第1学年の総合的な学習の時間における実践原案提案)が連携をとりながら、実践、研究をおこなった。
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ダイアルアップ回線接続 64Kbps(9月まで)、 ケーブルテレビ回線接続 384Kbps(10月より)、 インターネット端末 1台(4月)、10台(11月より)、17台(1月より) |
本校では2000年度より、総合的な学習の時間の試行を始めた。総合的な学習の時間ではインターネットを活用した学習場面が多くなることが予想されたが、正規のインターネット端末は1台しかないという環境であった。
![]() 写真1.中学校間交流でのPC分解組立実習の様子 |
2.で述べたように総合的な学習の時間、パソコン部の活動、国語科の古典における発展学習「芭蕉ネット」等をサポートしながら、学校の情報化を進めてきた。これらの多岐にわたる実践を成立させるためには担当教師一人では実践不可能であり、校内、校外で連携をとりながら行った仕事を<表1>にあげることにする。
総合的な学習の時間などの教育実践は複雑な要素を含むため、教師が監督、コーチ、プレーヤー、サポーターなどの複数の役割を校内、校外で連携を図る必要がある。また、情報化推進コーディネーターの配置がすすめられようとしているが、派遣が実施されるとコーディネーターとの連携も必要になってくる。学校情報化マネージャーのサポートをスポーツのチーム運営にたとえると、基本操作のサポート(基本練習)、環境整備のサポート(グランド整備、用具の準備、手入れ)、実践運営にかかわるサポート(練習試合、大会引率、他チームの顧問との連携)、情報化推進コーディネーターとの連携(外部コーチとの連携)というように考えることができる。
本研究では自分自身も実践を行いながらであったため、プレーイングマネージャーとしての立場であった。他の先生の実践のサポートをしながら、時にはワンポイントリリーフをしたり、自分のリリーフを頼んだりしながら、実践を進める形をとってきた。この点は忙しい学校現場で実践を成功させるために重要であると考える。
実践事例集には授業で何をしたという点と生徒の様子が中心に書かれ、その実践を成立させるための準備が書かれることは少ない。また、機械には弱いという先生が校内や校外の先生の協力を得て、実践する例もあるが、実践を成立させるためのサポートは謝辞の一文にまとめられ、表面に出てこないことが多いと感じた。
スポーツの有名チームの監督が書いた本や練習方法を解説した本を読んで真似をしてもなかなか成果がでないことと同じように、実践事例集にある先進事例が実践可能な状態に整える役割が学校内にないとなかなかうまくいかないと強く感じた。
5.情報教育は連携プレーで成立
以下は今年度、実践を行うために参加したMLで流れたメールの数である。
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10月10日に行った総合的な学習の時間、パソコン部の活動の中で行ったボランティア団体アインシュタインプロジェクトによる著作権レクチャーは他校とのテレビ会議も組み合わせたため、400通を越えるメールによって打ち合わせ、準備を行い、連携プレーによって、実践を成立させた。
情報教育はチームプレーによって成立する。学校全体で情報教育を行っていくためには学校情報化マネージャーの存在が重要になるであろう。
<表1>学校情報化マネージャーとしての仕事 |
パソコン部中学校間交流
菰野中学校(三重県)、南山国際中学校(愛知県)、滝中学校(愛知県)
芭蕉ネット
長浜北中学校(滋賀県)、石山中学校(滋賀県)、南島中学校(三重県)
情報化推進コーディネーターの役割についての考察 長谷川元洋、森喜世子、南和美
日本教育工学会研究報告集 JET2000-4 pp.99-105