「ネットで広がれ、音楽のわ!」

小学校第6学年・音楽 総合的な学習

京都府宇治市立小倉小学校   糸井 登

キーワード 小学校,6年,音楽,総合的な学習,ホームページ,作曲


インターネット利用の意図
 今まで、音楽学習では、表現領域の大部分が既存曲を演奏して表現する時間に充てられてきた。しかし、児童の音楽への感受性は以前より高いものがあり、自分達で「音楽をつくって表現する」意欲が高まりつつある。
 学習指導要領音楽科の表現領域(4)では「音楽をつくって表現できるようにする」と示されており、「ふしづくり」を学年の発達段階に応じて指導することが明記されている。だが、その取り組みの難しさゆえに、実際は、あまり多くの時間は割かれておらないのが現状である。
 このような現状を実際の鑑賞・体験やインターネットを活用することによって打破していけるのではないかと考えた。
 本企画の成果目標は以下の3点である。
 一点目は、一流のアーティストの演奏を鑑賞・体験することによって、子ども達の「音楽を作って表現する活動」への意欲を高め、作品作りに取り組み、インターネット等も活用しながら、広くその作品を発信していくこと。
 二点目は、テレビ会議システム等を使って、他の小学校との交流を試みる中で、児童の「音楽を通してのコミュニケーション能力」を高めていくようにすること。
 三点目は、「音楽作りに役立つホームページへのリンク」や「音楽作りの発信」「音楽作りの交流結果」などを自校ホームページに掲載していくことで、多くの学校への「音楽作りへの波及効果」を生み出していくことである。

1 アーティストになっちゃった(ようこそ、一流アーティスト達!)
(1)ねらい 
 子ども達に、一流のアーティストの演奏を体験・鑑賞させたい。本物にふれることによって、子ども達の「音楽を作って表現する活動」の意欲が高まるのではないか。そんな思いから、一学期から様々なアーティストを迎え、その感想などを自校のホームページにて紹介してきた。
 二学期までの活動の流れは以下の通りである。
 5月「第1回・ようこそ一流アーティスト達! 野村誠さん他、3人の音楽家を招いて」ボディパーカッションや鍵盤ハーモニカを中心とした演奏の体験と鑑賞。
 7月「第2回・ようこそ一流アーティスト達! 安那瑞穂さん他、3人のダンサーを招いて」バレエ・ストリートダンスの鑑賞と体験  
  
図1 第1回ようこそ一流アーティスト達   図2 第2回ようこそ一流アーティスト達
11月 「第3回・ようこそ一流アーティスト達! アーティスト日比野克彦さんを招いて」音楽をアートしようという授業依頼をもとに「時の音」と題した授業実施。
11月 「第4回・ようこそ一流アーティスト達! ジャズピアニスト秋吉敏子さんを招いて」ジャズピアノの鑑賞と合唱。バレリーナの方との共演も実施。
 
  
図3 第3回ようこそ一流アーティスト達   図4 第4回ようこそ一流アーティスト達

 このような一連のアーティストを招いての学習の中で、子ども達の中に着実にイメージを膨らませていくひとの楽しさや表現していくことへの意欲の高まりが育っていった。
 今回の学習「アーティストになっちゃった」では、これまでアーティストのクリエイティブな部分にふれてきた子ども達の総まとめとして子ども達による、曲作りから、CD、プロモーションビデオの作成までを行おうというものである。
 この授業でのねらいは、以下の三点である。
 一つめは、六年間の学校生活を振り返って、思い出に残る曲作りができるようにすることだ。ここででは、コード進行を利用した曲作りの学習やコンピュータを活用した作曲、伴奏なども活用していくようにしたい。
 二つめは、仕事を分担して、協力して一つのものを作り上げていく素晴らしさを感じ取らせていくということだ。ここでも、コンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオなどの機器を効果的に活用していくようにしたい。 
 三つめは、「音楽作りに役立つホームページへのリンク」や「自分達の作った曲の発信」などを自校のホームページを使って行うことによって、多くの学校への「音楽作りへの波及効果」を生み出していくようにしたい。

(2)指導目標
 学校生活を振り返り、その思いを音楽にまとめ、歌詞の情景の表現を考えた曲作りを行うことができる。
 コンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオなどの機器を効果的に活用していくことができる。
 自分達の仕事の役割分担を決め、音楽CDやプロモーションビデオを楽しみながら作成していくことができる。

(3)利用場面
 この単元では、次のような学習場面でコンピュータを活用する。
 1)作曲した曲を楽譜にしたり、伴奏をつけたりする。(音楽ソフトsinger song writer Lite 3.0  を活用)
 2)インターネットを活用して、曲作りに関する様々な情報を収集する。
 3)デジタルカメラの画像をコンピュータに取り込み、CDジャケットを作成する。
 4)自校のホームページを使って、自分達の作った曲を発信していく。

(4)利用環境         
1)使用機種    児童用   日本電気  PC-9821XA13/k12 10台
   教師用 日本電気  PC-9821XE/U7W     1台
2)周辺機器    日本電気 PC-SEMI   ネットワークシステム
3)稼働環境    児童用のコンピュータ10台から常時インターネットに接続できる。 
4)その他    フェニックスシステム(テレビ会議システム)


2 指導計画(全16時間)






主 な 学 習 活 動

(1)

(6)
 オリジナル曲を作り、その曲の楽譜や簡易伴奏をコンピュータを活用して作成していく。(ヒット曲の分析・コード進行の活用・音楽に関するホームページを参考)   ★インターネットの活用


(7)
(8)
 必要な仕事を分担し、係ごとに計画を立てよう。(監督・助監督、歌係、ダンス係、CDジャケット係、衣装・ヘアメイク係、伴奏係)
(9)

(14)
 係ごとに準備を進めていこう。(テレビ、雑誌、インターネットなどを活用して情報を得るとともに、ゲストティーチャーにも来ていただき、その仕事について協力していただく) ★インターネットの活用
(15)  発表会をしよう(プロモーションビデオの撮影)
(16)  自分の係で苦労したことなどを発表し合い、ホームページに曲とともに掲載していく内容をまとめ、発信していく。  ★インターネットの活用
  
図5プロモーションビデオ撮影の様子  図6 仕上がったCDジャケット表紙

2 学習の展開
(1)オリジナル曲ができるまで
 コンピュータなどの機器をうまく活用して、プロも顔負けのオリジナル曲を作り、インターネットを使って発信していこうという目標のもとに「アーティストになっちゃった!」の学習が開始された。
 果たして、子ども達だけで、オリジナル曲を作ることができるのかというのが、最大の難関であった。しかし、コード進行を活用した曲作りの授業や音楽ソフトを活用するとこによって、少しずつ曲を作り上げていくことができた。
 子ども達の作った曲「Our Future」の歌詞は以下のようなものである。

            Our Future
  春の太陽がすこしまぶしいね  さよならがまだ信じられない
  とても悲しいね
  この教室でみんなと過ごした  長かった時間終わるんだよね
  とても寂しいね
  *1 笑ったこと 怒ったこと 思い出のアルバムに並べ
     これからは一人で歩く  
  *2 未来に向かう道の スタートラインで出会った
     仲間達の輝く笑顔 この胸にしまおう
  みんな遊んだり勉強した仲間 でももうすぐお別れだよね
  いつか会えるよね
  みんなそれぞれの夢に向かって 走り続けているんだよね
  いつか会えるよね
     みんなと一緒 いろんなこと 乗り越えてきた仲間達
     これからはそれぞれの道へ
  *1 笑ったこと 怒ったこと 思い出のアルバムに並べ
     これからは一人で歩く                          
  *2 未来に向かう道の スタートラインで出会った
     仲間達の輝く笑顔 この胸にしまおう
 

 歌詞を作り上げた後、基本のコード進行を何度も聴く中で、みんなでメロディを作り上げていくという作業を行った。
 その後、曲の振り付けを考える係、衣装を考える係、伴奏を考える係などに分かれ、プロモーションビデオを無事撮影していくことができた。

(2)具体的な場面(みんなの曲をホームページに掲載しよう) 

学習活動
 

指導上の留意点
 

1 本時の学習内容と方法を知る。

自分達のプロモーションビデオを見る。

 ホームページにどんなふうに自分達の曲のことを掲載していったらいいだろう

2 係ごとに苦労したことや工夫した
  ことを発表していく。

3 他の学校のホームページを見る


4 自分達の書きたい内容を「一太郎 スマイル」を使って記入していく。

5 それぞれの係の内容を発表する。


大事な点については、メモをとるように指示する。


どのようなホームページが見ていて楽しい
か、分かりやすいかを確認する。

デジタル写真などを効果的に使うように支援する。

まとめ方の支援をし、次時への意欲付けを図る。
担任が最終ホームページに掲載処理を行う。


4 成果と課題
 今まで、子ども達と「音楽を作って表現する」ということに時間をかけて取り組んだことはなかった。しかし、コード進行を利用した作曲はもちろんだが、いろんな機器を活用することによって、手軽に、しかも、かなりレベルの高い曲作りに挑戦していくことが可能になってきたことを実感した。
 また、子ども達のオリジナルの曲は、いろんな行事で使うことも可能であるし、何よりインターネットによって、手軽に発信していけることも子ども達への大きな意欲づけとなった。
 課題としては、まだまだ音楽作りに必要な機器が学校現場に充実しているとはいえない状況があることである。せっかく子ども達が作った曲もCDーRWを搭載したコンピュータがなければ制作してあげられないだろうし、何よりも奨学生向けの作曲ソフトの充実が欠かせない。音楽や映像へとコンピュータの機能が充実している今、学校現場でもその充実が望まれており、機器の整備を望む次第である。
 ワンポイントアドバイス
 今回、子ども達の作った曲の伴奏を作るのに使用したコンピュータ音楽ソフトsinger song writer Lite 3.0は子ども達にも十分使えるものであった。ただ、コンピュータへの打ち込みを音符だけで行うのは無理があるので、同時にヤマハ電子ピアノSE7000を使ってメロディを弾いたものをMIDIファイルに保管し、singer song writer Lite 3.0 で簡易伴奏をつけて曲の感じをつかむということを繰り返していった。二つの機器を活用することによって、楽しみながら、伴奏を作っていくことができたように思う。


 参考URL
・ 世界の民謡・童謡  (http://www.worldfolksong.com/
・ 名古屋市立長須賀小学校 (http://academic1.plala.or.jp/nagasuka/#
・ T.MURA.Midi☆LiB  (http://www2u.biglove.ne.jp/~mura/mura.html
・ ヤマハ・ミュージックパル (http://www.yamaha.co.jp/edu/
・ 楽器博物館 (http://www,asahi-net.or.jp/?hb9t-ktd/music/mus4j.html
・ 国際楽器  (http://www.kokusaigakki.co.jp/