インターネットやコミュニティ放送を活用した〈地域に開かれた学習活動〉

―メールボランティアや情報化推進担当者など学習支援体制を生かす―

小学校第4学年・第2学年,総合的な学習の時間・生活科

箕面市立萱野小学校 渡辺信一,中西太加夫

kayano_ele@maple.city.minoh.osaka.jp

http://www.city.minoh.osaka.jp/kayano-ele/home.html

キーワード メールボランティア,情報化推進担当者,FMコミュニティ放送


インターネット利用の意図
 萱野小学校では,「ネットワーク」を,自分を出発点としてよりよい社会づくりに参加していく子どもを育てる人権教育の基盤として位置づけている。インターネットやコミュニティ放送などのネットワークを活用し,多様な〈学校外〉の情報や人との出会いを楽しむなかでこそ,子どもたちは生きるための確かな力を身につけながら,豊かな文化や社会の担い手として成長していくに違いない。
 本校の実践は,「人や場との出会い」「地域・保護者とともに」「情報を楽しむ」の3つの柱を持っている。それぞれの柱を支え,子どもたちを地域や保護者と結びつけることにより,〈地域に開かれた学習活動〉を展開する手立てのひとつがインターネットである。

人や場との出会い
 4年生の社会見学や2年生の地域めぐりなどで学校外に出かけると,子どもたちはさまざまな人や場と出会う。さらに,インターネットを活用することにより,学校外から子どもたちの学習を支援してくださるメールボランティアなど,さまざまな人との出会いの幅が広がり,継続的に交流していくこともできる。

地域・保護者とともに
 自分たちのまちをよりよくしていこうという地域のとりくみや人々の願いを知り,子どもたち自身も,そこへ参加させていきたい。インターネットは,学校と地域や家庭を結ぶ,開かれた学習活動のための有効なメディアでもある。

情報を楽しむ
 自分たちが調べたことがらをやりとりし,分かち合うことの楽しさを大切にしたい。情報を活用する力を育て,その楽しさをさらに広げていくため,情報化推進担当者による「学習支援体制」を生かしながら,伝え合う方法の一つとしてデジタルメディアやインターネットを組み込んだ。


1.単元名

『広げよう!コミュニティネットワーク』(4年生)
『わっくわくまちたんけんたい−とび出せまちへ−』(2年生)

2.指導計画




人や場との出会い
 4年生は社会科の社会見学のなかで,2年生は生活科の地域めぐりのなかで自分たちの生活を支える施設やそこではたらく人々に出会う。実際に学校の外に出かけることによって,子どもたちは多様な情報をつかんでくる。

地域・保護者とともに
 子どもたちが取材した情報を整理し,地域に向けて発信していく。コミュニティ放送や箕面市広報課,情報化推進担当者といった,地域をよくするためにとりくんでいる人々や,保護者の支援を生かして学習活動を展開していくのである。

情報を楽しむ
 4年生の場合は互いの放送番組,2年生は「放送番組」「ガイドブック」「ホームページ」という多様なメディアによる発信内容を交流し,互いの学習成果を分かち合う。4年生と2年生という学年を超えた〈学年間交流〉によって,自分たちの学びの意味と位置とをより深く確認させることができる。また,活動を支えていただいた地域や保護者の方々との交流,さらには,学校外におられるメールボランティアとの交流を組み込むことによって,より学習内容を深めていくことができよう。

3.学習の展開

『広げよう!コミュニティネットワーク』(4年生)


(1)放送番組づくり(1学期)
わたしたちのくらしを支える市の施設
地域・保護者とともに
・4年生は,社会科の学習として,クリーンセンター,浄水場,下水処理場を見学した。また,市役所の方にゴミ収集車を学校へもってきていただき,ゴミ処理についてのお話を聞かせていただいた。
・ゴミ処理や上下水道は,家庭生活を支えるものであり,保護者のご意見をお聞きしながら学習を展開した。


FMコミュニティ放送
人や場との出会い

・浄水場の見学中に箕面FMコミュニティ放送「タッキー816」の取材を受けた。その出会いをきっかけに,自分たちの地域を住みよくするための情報を発信しているFM放送局の存在を知った。


タッキー816の担当者の合図で録音開始
「FMホットタイムニュース」作成
情報を楽しむ

・タッキー816の担当者に来ていただき,ラジオ放送についてのお話を聞かせていただいた。さらに,そのサポートのもと,見学した施設について伝えたい内容を番組にまとめ,実際にオンエアーしていただいた。それを聴いたメールボランティアからは,感想が電子メールにて届けられた。さまざまなメディアを用いたダイナミックな交流が成立したのである。
メールボランティアとのメールのやりとり


(2)住みよいまちへ(2学期・3学期)
「タッキー地球レポート」の大学生
人や場との出会い

・2回に分けてオンエアーした番組に対して,保護者やメールボランティアから,多様な反応が寄せられた。特に,タッキー816で,「タッキー地球レポート」という番組を担当しておられる環境工学専攻の大学生の方々から届いたメールを読み,学校外にも,自分たちと同じ課題にとりくんでいる人たちがいることを知った。

共に同じ課題を探究する
地域・保護者とともに

・「タッキー地球レポート」を担当している大学生の方々とのメールのやりとりから,実際に学校に来ていただいて話を聞かせていただくことになった。
・事前に教職員とおこなった打ち合わせでは,環境教育についての視点や課題など,貴重な情報をいただくことができた。その後も,子どもたちの学習を支援するスタッフとして,探究活動に参加していただいている。

地域・保護者への発信
情報を楽しむ

・自然環境・ごみ減量・福祉という3つのチームに分かれ,自分たちが深めたい課題を選んでグループごとに活動を続けている。
・探究活動の成果は,それぞれのグループが選択した方法により,校内だけでなく,地域や保護者へ向けて発信していく予定である。



『わっくわくまちたんけんたい−とび出せまちへ−』(2年生)


(1)萱野校区地図づくり(1学期)
地域めぐり
人や場との出会い

・2年生は,生活科の学習として,校区を3つのコースに分けて歩いた。校区全体を歩くというのは,子どもたちにとっても初めての経験であり,さまざまな施設やそこで働く人々と出会うことができた。
校区地図とクイズゲーム
情報を楽しむ

・3つのコースを回って発見したものを全員で3枚の校区地図に書き込んでいった。出来上がった校区地図をもとに,もっと詳しく調べてみたい場所を選び,それぞれのグループごとに探究した。
・各グループの探究の成果をクイズ形式にまとめ,クイズゲーム大会を開催して交流した。

校区めぐりの成果を地図に表して共有
保護者の協力
地域・保護者とともに

・グループごとの探究活動の際には,保護者の方々にご協力いただき,いっしょに地域を歩いていただいた。交流の場としてのクイズゲーム大会は,授業参観日に設定することにより,多数の保護者と共に楽しむことができた。
(2)放送番組・ガイドブック・ホームページづくり(2学期・3学期)
保護者の学習活動への参加
地域・保護者とともに

・1学期の探究活動の成果を多様な方法で伝え合うという活動を開始するにあたって,保護者の方々に企画の段階から参加していただいた。
・その後も,子どもたちの活動がうまく進むよう,主体的・継続的なサポートを続けていただいている。

電話をかける前に保護者の方と練習
3つの伝え合う活動
人や場との出会い

・放送番組はタッキー816から,ガイドブックは箕面市広報課から,そして,ホームページは,ご自身もホームページを公開しておられる情報推進担当者にゲストティーチャーとしてご参加いただき,それぞれのメディアの特徴や伝え方のコツを教えていただいた。

発信した情報への反応
情報を楽しむ

・ホームページチームの子どもたちは,デジタルカメラや情報推進担当者の方に指導していただいたグラフィックソフトを使い,ホームページを作成した。
・それぞれの方法で発信した情報には,地域の方々や保護者,メールボランティアの方々から,さまざまな反応が寄せられた。それらの方々にお礼の手紙やメールを届けて交流を深めていった。また,2年生どうしや他学年の子どもたちとコメントカードを書き合うことにより,学習の成果を共有した。

情報化推進担当者とホームページづくり
できたページをメールボランティアに紹介



4.成果と課題
人や場との出会い
 自分たちの生活を支えている施設やそこではたらく人々との実際的な出会いを,コミュニティ放送やインターネットをとおして伝えることによって,さらに多くの人々と出会うことができた。そういった出会いを積み重ね,継続的なものにしていくことにより,子どもたちのネットワークの力を育てていきたい。

地域・保護者とともに
 4年生はコミュニティ放送で環境番組を担当している大学生の方々,2年生は子どもたちの保護者のみなさんに,学習活動の企画段階から参加していただいた。実際的な活動の支援に加え,さまざまなアイディアやアドバイスを頂戴したことによって,学習をみのりあるものにしていくことができた。地域に開かれた学習活動を展開していくということは,学校教育にさまざまな大人に参加していただくことから始まるのであろう。そういう場面や機会をどのように広げていくかということが,今後の重要な課題である。

情報を楽しむ
 FM放送というメディアに加えて,ガイドブックやホームページといった多様なメディアを活用することにより,情報を伝え合うことの楽しさを広げることができた。特に,情報化推進担当者のサポートにより,グラフィックソフトや文字入力といった情報のデジタル化をすべての子どもたちが経験できたことの意味は大きい。今後,情報活用力を育成する場を,系統的継続的に設定していく必要がある。


ワンポイント・アドバイス
 メールボランティアや情報化推進担当者などの学習支援体制をインターネットやコミュニティ放送といった地域に開かれた「ネットワーク」と結びつけて活用することにより,子どもたちの学習活動は大きく活性化される。


協力団体
・箕面市メールボランティア http://www.city.minoh.osaka.jp/edu-center/html/mail.html
・タッキー816みのおエフエム http://www.minoh.fm/