日本の食文化を見直し、自らの健康を見つめ直そう
−豆腐作り体験、大豆製品調査、ハワイの小学校との交流を通して−

 

小学校第5学年・総合的な学習の時間

揖保川町立神部小学校 桃川典久 作本栄子 寺前健一

E-mail(桃川): momokawa@mh1.117.ne.jp


キーワード 小学校5年,総合的な学習の時間,インターネット,
     テレビ会議,電子メール,国際交流,健康教育   

 


インターネット利用の意図

 「総合的な学習の時間」においては,子ども達が自ら課題を持って調べ学習を行い自ら学び,自ら考え,主体的に判断して課題をよりよく解決していくことが大切である。そして,多様な情報手段を活用した課題解決的な学習が必要とされる。

 インターネットは,様々な課題解決のための情報を収集する大きな手段の一つといえる。また,インターネットやテレビ会議システムを用いた情報交流によって,子どもたちが共同で課題解決に取り組むことによって知識を増やし,深めていくことや国際交流を体験させたい。


 

1.大豆パワーから食生活を見直そう

(1) ねらい

 子どもたちの課題解決のための調査活動にあたっては,児童が必要な情報を学校栄養職員,外部の専門家,図書,インターネットなどから得ることができるように,支援者は環境を整えたい。また,町内ネットワークを活用して,大豆製品(地場産業である醤油やもろみ)や大豆料理について近隣の小学校と情報交流を行い,大豆についての理解を深めたい。さらに,Eメールやテレビ会議システムを活用しハワイのマカラパ小学校と食文化について交流し,ハワイにおける日本食や豆腐の評価について知ったり,お互いの国の食事のよさを認め合ったりしたい。また,大豆とその製品とのつながりを実感するために,地域の人々の協力を得ながら実際に大豆を栽培し,自分達が収穫した大豆から,豆腐やその他いろいろな料理作りを体験させたい。健康な体作りのための食品として,大豆製品の良さを,ホームページで発信することにより,食生活の改善についての意欲の高まりをねらいたい。

(2) 指導目標
○日本食の良さに気づき,毎日の食生活を見直し,改善することができる。
○日本食・大豆製品の良さを知るために,必要な情報をホームページやEメール・図書で集めたり,実際に 調理したりすることができる。また,自分たちの考えを深めたり,周囲に広げたりするためにテレビ会議 やEメールで意見交流をすることができる。

○大豆製品の良さを知り,健康的な生活をおくるためのいろいろな食材に関心を持ち,食生活を考えること ができる。

 (3) 利用場面

  @課題を解決するためにホームページから情報を収集する。

  AEメールで質問を出し情報を得る。(サイエンスQAの活用)

  Bテレビ会議やEメールで他校と意見交流をする。

・町内の小学校(河内小学校)との交流  ・マカラパ小学校(ハワイ)との交流

 


 (4) 利用環境

@使用機 FMV-6300TX----------------------------21(コンピュータ室)

       FMV-6300DX----------------------------10(2〜6年教室に1台ずつ)

       FMV-6300TX FMV-6300DX2C FMV-6500CL4C---3(職員室)

                  FMV-6300DX2C NEC PC9821Xa7 IBMPC(2)----4(ローカ)

               テレビ会議システム(phoenix)

A周辺機 デジタルカメラ 液晶プロジェクター スキャナー プリンター

B稼働環 全コンピュータがISDN(上り) 衛星通信(下り)でインターネット接続可能

        校内LANで全コンピュータが接続されている(10BASE-T)

C使用ソフト Microsoft Internet Explorer 5.0(インターネットによる情報検索)

        Microsoft Power Point (まとめとプレゼンテーション)

 

2.指導計画 指導案

(1)単元構想(28時間)(9月〜11月)

時間

主 な 学 習 活 動

形態

個性を生かす指導・支援

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大豆について調べる計画を立てよう

 

○自分たちが栽培している大豆と食 生活との関わりについて考える。

○外国で健康食品として評価が高い 日本食について知る。

 ・交流しているマカラパ小学校(ハ  ワイ)からのメールを読む。

  豆腐 醤油 など

○大豆製品について自分の課題を見 つける。

一 斉

(学年)

 





 個 人

○自分たちが栽培してる大豆に焦点を当てることで,昔か ら日本の代表的な食材である大豆に興味を持たせたい。

○外国から入ってきた食品が増えるなかで,日本食を見直 すきっかけにしたい。

○マカラパ小学校と電子メールの交流がスムーズに行える ように翻訳をする。

 

◎自分の課題を明確にできたか

 



















 

 


 

 




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 大豆製品について調べて料理をつくり、まとめよう

 

○自分の課題について調査する。

 ・大豆の歴史 ・大豆製品の種類

 ・大豆の栄養価 体をつくる食材

 ・大豆製品の調理方法   など

 

○大豆を使ってつくりたい料理別の グループに分かれる。

 

○パソコンを使ってまとめていく。

                    (随時)

  プレゼンテーションソフトを使う

 

○他校と交流

 町内の小学校 マカラパ小学校

 電子メール

○自分たちで豆腐づくり

 

○豆腐屋さんと豆腐づくり

 

○大豆料理づくりに挑戦

 

○中間レポートを作成する

 ・他校と交流(随時)

  町内の学小校 マカラパ小学校

 

  電子メール テレビ会議   

 ・意見交流

  グループ 他校

  プレゼンテーションソフト

  HPへ変換する 

個 人

 




グループ

(学年)

○調査の目的を明確にし,それを確かめる調査の計画を立 てやすいよう,文献,問い合わせ先などを紹介する。

○課題にあった調査や情報収集ができるように助言する。

○インターネットでの情報収集が困難にならないように児 童向けのリンク集を提供する。

○電子メールで専門家への質問ができるように学習環境を 整備し,課題解決に必要なものを選択できるように助言 する。

○調査活動のまとめは,本やホームページのまる写しでは なく,みんなにわかるように自分も十分理解してからま とめるよう促す。

○大豆は日本食の中で体をつくる基本的な食材であること をおさえさせたい。

○通訳は揖保川町のALTに依頼する。

 

○よりよい豆腐をつくるための課題を見つけだし質問でき るように助言する。

○先人の知恵と技術の素晴らしさに気づかせたい。

○好きな大豆料理をつくることによって,大豆製品を日常 的に摂取する手がかりにさせたい。

 

○情報発信の意識を持ってプレゼンテーション作成ができ るように励ます。

○マカラパ小学校との交流では,健康な体をつくるために

 

 用いられる日米の日常的な食品について認め合えるよう に助言する。

○大豆製品が健康な体をつくるために役だっていることを まとめて発信できるようにする。

◎調査結果や体験をもとに体をつくる健康食品をふまえて 大豆製品についてまとめることができたか

 


















 




 

 


 

 

 

 

 

 健康マメ会議を開こう

 

○意見交流を行う。

グループ

(学年)

○交流会をして,質問されたことやアドバイスされたこと が活かせるようにする。

○町内の小学校との交流では,大豆製品は健康な体づくり にどんな役割を果たしているか,また,その大豆製品を どのように摂取していけばよいのかを意見交流できるよ う助言する。

 





◎意見交流で得たアドバイスを効果的に活用することがで きたか

 

グループ内や他グループとの

意見交流

 

 

 

グループごとにテレビ会議で

他校と健康マメ会議を開く

・町内の小学校

 

 ・相手に対する質問

 ・相手のメッセージに対する意見

 ・自分が実践していくこと

HPを修正し,まとめる。

 


 




 



 

 

 

 

 大豆パワーを発信しよう

 

HPで発信する。

HPをプリントアウトして家族に紹  介し,話し合う。

<健康な生活へ向かう子>

 ・体をつくるための健康的な食事    について考える。

グループ

(学年)

 

個 人

 

○お互いの成果が認めあえるようにする。

○保護者と連携し,大豆製品について児童と話し合う機会 をもつように依頼する。

◎自分たちの考えを伝えることができたか

◎実践しようとする意欲を高めることができたか

 

(2) 教科等との関連

 

 

 

インターネットで調べ学習 プレゼンテーション画面例1

 


マカラパ小学校のプレゼンテーション画面 プレゼンテーション画面例2

 


 
(3) 本時の目標(第二次17時分)

  ○これまで大豆について調べた情報や調理体験をもとに意見交流をして,健康な体づくりに役立つ大
  豆パワーを発信するための中間レポートを作成する。

(4) 学習展開案

  ね ら い

       学  習  活  動

        指  導  と  支  援

 

 

 

 

  大豆パワー発信に向けて中間レポートをレベルアップしよう

 

 

1.本時のめあてを確認する。

○本時の自分の課題を明確にするための評

 

  ・評価カードに記入する。

 価カードを用意する。

○健康な体をつ

2.交流会で考えを深めながらさら

○自分の課題解決に適切な学習の場を児童

 くる大豆パワ

 に必要な情報を集め,健康な体を

 が選択できるように,前時までの児童の

 ーについて意

 つくるために役立つ大豆パワーに

 学習状況を把握し,本時に反映する。

 見交流や情報

 ついて中間レポートを作成する。

○友だちの発見を認めた上で,より内容が

 収集を行う。

 

 深まるための交流になるよう助言する。

 

○グループ間で意見交流(理科室)

○T1がグループ交流を受けもち,「大豆

 

 ・中間レポートのグループ交流   を

 や大豆料理について十分に伝えることが

 

   行い意見を出し合う。

 できるか」についての意見交流ができる

 

 

 ように支援する。

 

 

○T2がマカラパ小学校との交流を支援す

 

 

 る。

 

 

○質問することが,課題にそっているか確

 

 

 かめるよう助言する。

 

○マカラパ小学校(ハワイ)との 交

○通訳は揖保川町のALTが行い,相手に

 

            (テレビ会議室)

 よく分かるプレゼンテーションを工夫す

 

  ・マカラパ小学校の情報を聞く。

 るよう促す。

 

  ・マカラパ小学校へのプレゼンテ

○T3がパソコン室で支援をする。

 

  ーションを行う。

○機器と図書のそれぞれの有効な活用につい

 

 

 て助言する。

○収集した情報

○情報収集と中間レポート作成

○健康マメ会議に向け,見る人にわかりやす

 が相手を意識

         (パソコン室)

 い表現になっているかを助言の視点とする。

 した中間レポ

  ・インターネット 資料  図書

 

 ートになって

  ・プレゼンテーション作成

 

 いるか確かめ

  ・マカラパ小学校に質問がある場

 

 る。

  合はテレビ会議室へ行く。

 

 

 

◎大豆パワーから健康への意識をより高め

 

3.まとめをする。

 ることができたか

 

 ・評価カードに記入する。

◎自分たちの考えを伝える工夫ができたか

 

3.学習の展開

 (1) 課題別グループ

     子どもたちの主体的な意志で課題別グループ(14)をつくり,グループのメンバーで協力し   て自分の課題を解決していく。

     ・大豆事典 ・大豆調査隊 ・大豆納豆隊 ・大豆博士 ・あつあげグループ 等

  (2) インターネットの活用

  @ホームページから情報を収集する

      ・検索エンジンの活用 (こねっとgoo Yahoo きっず)

      ・大豆に関するリンク集(教師の自作)の活用

     (例) 日本一の大豆リンク集 http://www.bea.hi-ho.ne.jp/ashir/link2.html

 (3) Eメールや掲示板等での質問

    ・「サイエンスQAひろば」の活用

      子ども自身が,質問したいことを文字にして直接送ることによって,その回答を心待ちにして興味関心を持って見ることができ,まとめに活かすことができた。

  (4) テレビ会議・Eメールを活用した交流

    @マカラパ小学校(ハワイ)の子どもたちと交流し,ハワイでの大豆製品や大豆製品に対する意識について意見交流をした。

A揖保川町立河内小学校の5年生も同じように大豆について学習し意見交流をした。

 

4.成果と課題

    子どもたちが自ら課題を決め,その課題解決のためにインターネットを活用して自ら情報を収集することにより,興味関心を持って主体的に学習することができた。しかし,ホームページを検索する場合,サーチエンジンだけでは情報を見つけ出すのに時間がかかりすぎ子どもがインターネットをきらいになってしまう可能性がある。そこで適当なリンク集を作成し活用することで効果があった。

    ハワイの子どもたちと交流することで,文化の違いを感じながらお互いに大豆について学習したことを発表しあい情報や意見の交流ができ,インターネットを用いた国際コミュニケーション能力が向上した。

また,町内の小学校の5年生とのインターネットやテレビ会議システムを用いた情報交流によって,子どもたちが共同で知識を増やし深めていくことができた。

プレゼンテーションソフトを活用したまとめは,グループ毎に校内ネットワークを活用して共同作業を行うことができた。作品はHTML化して情報発信を行いいつでも校内の全コンピュータで見ることが可能である。

    今後の課題としては,国際交流を行う場合言葉の壁が大きな問題であり,翻訳ソフトや通訳等の充実が望まれる。子どもたちが作成した電子データを今後有効に活用するためのデータベースの充実が必要である。また,子ども向けのホームページが少ないので増えることを望む。

(※ 成果と課題については,紙面の都合上情報教育に関する内容のみを記載した。)