地域調査にGPSを活用しよう

― GPSを使って日時・地図・位置・写真が入った調査ホームページを完成させよう ―

 三木市立教育センター 小学校 中学校 梶本 佳照

730457@ns.miki.ed.jp

http://www.miki.ed.jp/center2/

キーワード:総合的な学習の時間,インターネット,GPS,環境教育,情報教育,地域調べ,特別活動

協力校 三木市立三樹小学校 三木市立自由が丘中学校


インターネット利用の意図

 児童生徒が地域調査等をして調べたことをWebページとして保存することにより,特定のソフトに依存することなく,学校間交流学習で活用することができる。また,ブラウザーは,どのコンピュータにも標準で入っているので,校内のどの端末からも調査結果を見ることができ,授業に活用しやすい。Webサーバーに公開されていると,保護者や調査に協力してもらった方々も家庭や職場から学習内容を見ることができ,学校で行っていることに対して理解と関心を得るのに有効である。


 

1.はじめに

 「総合的な学習の時間」の実施にともない,児童生徒が課題に基づいて地域調査をする機会が増えてきた。しかし,調査したものをコンピュータでまとめる場合に従来模造紙で作成していたものをそのままコンピュータで再現しているのが現状であり,コンピュータのもつ多様なメディアを扱えるという機能を生かしているとは言いがたい。今後,地域調査に伴う地図上の場所・日時・移動した経路・写真・文書を,個々ばらばらではなく統合的にまとめる方法が必要になってくるのではないかと考えた。そこで,各自が調査した結果をまとめる方法として,ハンディGPSレシーバーとデジタルカメラを利用して調査した場所・日時・移動した経路・写真・文章を一つのものとして表すことを実施検証することにした。

 実際に調査するテーマとして小学校では「修学旅行」,中学校では「ゴミ収集車の動き」を取り上げた。修学旅行は「京都」へ行き,各グループで事前に決めておいた場所を回って調べた。ゴミ収集車の動きは,自分の校区内を回る特定の1台の動きを追って調べた。

 結果として,児童生徒はコンピュータを使用したまとめ方の新しい可能性を感じ取ったり,地域調査したことをまとめることに新たな興味をもったようである。

2.調査に使用した機器等の説明

写真1

(1)使用機器

GPS(GLOBAL POSITIONING SYSTEM)レシーバー

 GPSについては,カーナビの普及で広く知られるようになってきた。今回使用した機種は,ハンディタイプ(写真1)のもので液晶部に,緯度・経度/速度・方位/現在時刻を表示できる。内部メモリーに移動した軌跡をログデータとして保存しコンピュータの電子地図上に表示させることができる。誤差は,約10mである。実際に持って歩くと数字が変わっていくので精度を実感できる。コンピュータとの接続は,USBで行う。


(2) 使用ソフト

 gtrexという今回使用したHandyGPSのデータを編集するように開発されたソフトを使用した。このソフトは,GPSのログデータを読み込んで電子地図上に移動軌跡として表示したり,調査場所で撮影したデジタルカメラの写真を地図上に半自動的に配置することができ,撮影ポイントにはコメントを入れることもできる。

 なお,実践時期の違いによりVersion1.0とVersion2.0の二種類使用することにした。

3.具体的な実践

(1)    修学旅行でのグループによる調べ学習

単元名 出かけよう!わたしの旅 (特別活動・総合的な学習の時間)

 指導計画

 

学習内容

留意点

活動の開始

1 京都の魅力を探ろう

  京都で行きたい所をみつける

  見つけた京都を紹介し合う

 京都について自分なりに調べる

 発表の中で自分の知らなかった京都について知ることにより,調べることに対する興味を高めさせる

 インターネットの活用

活動の展開

 

 

2 京都を調べるコース作り

  自分なりにコースをつくる

  同じ計画の者とグループを作る

 目的意識を持たせる為にまず個々でコース作りをさせる

 当日の活動で似通った計画の児童どうしでグループ作りを行う

  インターネットの活用

  グループごとに計画作り

詳しく計画を立てる(乗物・時間・料金等)

旅行社の方に計画を見てもらい修正する

インターネットの活用

  京都市内の調査

グループ活動

GPSの使い方を再度確認する

調査地点でのメモを詳しくするように助言する

  調べたことをまとめる

gtrex でまとめていく

思い出ムービー形式で保存する

Webページとして保存する

調査地点でのメモを参考に他の人に伝えたいことを意識させる

テスト画面で結果確認 → 修正 →確認→ 修正 を行う

インターネットの活用

活動のまとめ

  発表会をする

グループごとに発表する

QuickTime形式として発表する

Webページとして発表する

各グループのまとめ方や調査した場所で印象にのこった点等に注目させる

 

インターネットの活用

  小学校の修学旅行で京都市内を調べる活動を行った。各グループごと に調査する課題を決め,それに基づいて市内で回る場所を決めておく。当日の活動は次のように行った。

   ア GPSとデジタルカメラを持って行き, 各ポイントでGPSのマークボタンを押すことにより,その地点の緯度経度を記録させる。

   イ それと同時にデジタルカメラで調査したい 事柄にもとづいて,その場所を撮影するとともに文章で記録する。

 まとめ方は次のように行った。

 ア GPSをコンピュータに接続して位置データを編集ソフトに取り込み,電子地図上に移動した軌跡を表示させる。(写真2)

移動した軌跡
思い出アルバム作成
写真2
写真3

 イ そのポイントごとに撮影したデジタルカメラの画像データ を配置するとともに,コメ ントを記入する。この作業画面は,思い出アルバムと呼ばれている。(写真3)

 ウ 思い出アルバム作成画面から必要に応じて印刷をする。印刷できるものは ,地図と 写真の組み合わせ,印刷,写真のみの印刷,画面に表示されている地図の印刷,ルート 全体地図の印刷である。

  エ アルバムを動画風にまとめたQuickTimeで動くムービー(写真4)とWebページ形式(写真5) に書き出す。

思い出ムービー
Web形式
                        写真4
写真5

 (2) 校区でのゴミ収集車の動き

生徒達は,校区でゴミ収集車が走っているのは見たことはあるが,実際にどのような道順で回っているのかは知らない。また,どのような作業が行われているのかも知っているようで知らない。そこで,ゴミ収集車のある1台を決めてそれが校区をどのような道順で回っているのか,どのような作業をしているのかを調べることにした。

指導計画

単元名 ゴミの行方(クラブ活動として実施)

 

学習内容

留意点

活動の開始

  校区のゴミ収集の仕方について考える

集められ方(分別収集 収集車)

時間

どのような方法で集められているのか思い浮かべさせる

収集車がどのような動き方をしているのか

意識させる

活動の展開

  実地調査

GPSをもってゴミ収集車の後を
    追跡する

事前に市役所の担当課と連絡を取って趣旨を十分理解してもらっておく

収集作業に支障がないように注意する。

  作成

gtrex を使用してまとめる

Webページとして保存する

他の人に説明することを意識して作成させる

インターネットの活用

活動のまとめ

  まとめをみる

 Webページ保存したものを見る

お互いのまとめを見て自分では気づかなかった点に注目させる

インターネットの活用

 実施調査当日の活動は次のように行った。

ア ゴミ収集車の後を教師運転の車に乗り,ついて行く。

イ 収集場所で止まるごとにGPSのマークボタンを押してその場所の緯度経度を記録させる。

ウ 作業の様子や周辺の様子をデジタルカメラで撮影したり,気づいたことを記録する。(写真6)

エ 思い出アルバム画面から,アルバムの印刷やWebページ形式(写真7)に書き出しを行う。

気づいたことを記録
Web形式
写真6
写真7

ゴミ収集車は,住宅街を移動する為停車中に他の車の通行の妨げにならないように,作業される方は,機敏な動作で出来るだけ短時間で作業を終えるように,かなり激しく動かれていた。その為,記録する方もかなり忙しい作業になった。

ソフトは,変更されたものを使用したので,思い出アルバムの作成画面からは,トラベルレポートとコレクションマップの印刷となり,書き出し形式からはムービーがなくなった。その為,授業に使用するには少し物足りなくなった。

4.成果と課題

GPSを用いることにより児童達は,今まで考えられなかったまとめ方に触れることができ大変興味を持ったようである。共通した感想を紹介すると,「GPSを使ってまとめてみて,新しいコンピュータの使い方が新たにわかったし,絵を入れたりしてきれいにまとめられたのでよかった。その時の様子もわかりやすいから,見た時にはっきりしていると思う。」である。さらに,結果をWebページに書き出しすることができるので学習内容を公開するのに大変有効であった。まとめ方の大まかな仕様というものがソフトの仕様によって決まってしまうのが心配であるが,児童達はそれぞれに個性を発揮して表現していたので,あまり問題にしなくてよいのかもしれない。

授業での活用では,GPSの液晶部に表示された緯度経度を見て自分の位置を地図から確認するといった使い方にも利用できそうである。携帯性はないがノートパソコンに接続して使用すると地図上で位置を確認しながら行動できる。また,誤差が約10mなので大きな場所の面積や形を調べることにも応用したい。

ワンポイントアドバイス

 gtrex Version1.0で作成したデータは,C:\Program Files\Sony\GTREX\MyAlbum にまとめて保存されるので,児童が使用するPCが変わっても対応ができる。しかし,Version2.0では,C:\Windows\All Users\AppliCation Data\SonyCorporation\Gtrex\GDBData の中に写真とマップビュー,カードビューに使用されるアイコン等が保存され,C:\Program Files\Sony\Handy GPS Utilities\GPSlog 中にGPSのログが保存される。さらに,作成されたデータもそれぞれ違うフォルダーに保存されるので,使用するPCが変わったりする環境では使いにくくなる。

オートロケーション機能(デジタルカメラの統一規格 DCFに対応したデジタルカメラ)を利用すると,撮影日時から判断して,撮影した画像を自動的に撮影場所に配置することが出来る。

HandyGPSは,周りに高い建物があると衛星の電波を捕捉しにくくなるので注意が必要である。また,位置を表示する為には,3つの衛星の電波を捕捉する必要がある為,使用できるまでに10分ほどかかる場合もある。移動する車の中でもフロントガラス寄りにGPSをもってくるとほぼ問題なく使用できる。車で移動して175度子午線の標識を通過する時にGPSの表示も実際に175度を示した時には改めて驚いた。

参考文献

赤堀侃司編著(2000):「情報活用能力をはぐくむ」 小学校編 (ぎょうせい)

赤堀侃司編著(2000):「情報活用能力を伸ばす」 中学校編 (ぎょうせい)

利用したURLなど

HandyGPSやgtrex関連 (http://www.vaio.sony.co.jp/software/)