守れ!!ふるさとの環境
− 環境ネットワークの構築(ホタル飼育を通して)−

岡山県小田郡矢掛町立川面小学校
降魔 信行  井上 博夫
http://ww9.tiki.ne.jp/~kawamo/
kawamo@mx9.tiki.ne.jp

キーワード 小学校,総合的な学習,環境,ホタル飼育,ホタル養殖,環境ネットワーク


1 はじめに
 本校では昭和62年より飼育栽培委員会の児童を中心にホタルの飼育・養殖に取り組んでいる。校内にもホタルの季節になると人工のホタル川でホタルの光を観ることができる。児童はホタルの飼育を通して自然保護の必要性を感じてきている。しかし,自分たちでできる取り組みは限られているし,一地域だけでの取り組みではあまり多くの成果を上げることはむずかしい。また,現在も他校からホタルについての問い合わせがあるが,手紙や写真・図等を送っての対応しかできていない。この方法ではやり取りに時間を要するし,交流が続きにくい現状がある。
 そこで,13年間のホタル飼育から得た様々な情報をインターネットやTV会議,電子メール等のメディアを通じ発信することで,環境保護の大切さを多くの人々に呼びかけたい。また,同じ考えをもち,様々な取り組みを行っている学校間のネットワークを構築することで,環境保護の必要性について様々な面から広く深く考えてもらう機会を提供できると考え,本プロジェクトを計画し実践した。

2 指導計画
 
     ホタル飼育
 
            5月      カワニナ採り
            6月      ホタル捕獲
                    ホタル産卵
                    ホタル孵化
            7月      ホタル幼虫飼育
            11月     ホタル幼虫放流
 
     環境ネットワークづくり
 
            5月〜 8月  ホタルの情報発信
            9月〜11月 メールやTV会議を重ねる中で相互リンクを張り,ネットワークを構築する。
            11月〜 2月  メールによる意見交換及び評価
 
児童に指導中の藤永氏
3 実施環境
 
     人的環境
 
      本校のホタル飼育を13年間支えてくださった藤永氏に御指導していただける。近隣の学校でホタルを飼育し,インターネット教育等で実績がある高梁市立福地小学校の協力も得られる。 
    
     校内の主な器機環境                       
 
      児童用パソコン12台  校内LAN+グループウェアー(スタディーノート)   
     TV会議システム(フェニックス)
 
4 実践した内容
 
ホタルの飼育
ホタルの幼虫の観察 雨の降っている夜にホタルの幼虫が川からあがって土の中に潜るのを観察する。
餌のカワニナ採り 餌になるカワニナを近くの川から採ってくる。他の虫が入らないように,水でよく洗い,飼育容器で飼う。
産卵用の水苔採り ホタルの産卵用の水苔を近くの池に採りに行きよく洗う。
ホタルの幼虫のカウント
  産卵用のホタル捕獲 放流している川に産卵用のホタルを採りに行く。
(雌30匹,雄30匹程度)
  ホタルの産卵 飼育箱のなかで産卵用のホタルが卵を産みつける。
  ホタルの孵化 卵から孵った幼虫が水苔から水の上に落ちたのを,数えると同時にホタルの飼育箱に移す。



9月

ホタル幼虫の飼育観察 餌のカワニナを採ってくることと,ホタルの幼虫の観察と飼育箱の水の管理をする。
ホタルの放流
10月 ホタル幼虫放流 育てたホタルの幼虫を上流のほたる公園の近くの川に放流した。(約1000匹)
11月

3月
校内での飼育 残りのホタルの幼虫を校内のホタル川に放し,飼育観察する。
      
 
環境ネットワークづくり  
ホタルの情報発信 ホタルの飼育をする中で分かったことをホームページで発信する。
掲示板等で調べたことを発表すると同時にネットワークをつくる。
   
環境ネットワーク例
ネットワークはホタル情報の単なるリンクでなくキーワード的な言葉をクリックすると複数のリンクをサブウインドウで表示させ,いろんな関連の情報を調べることができるように工夫した。このサブウインドウを表示することで,関連した情報を直接比べながら調べることができるので,思考を広げることができると考えた。リンク用のサブウインドウはJAVA SCRIPTを使って作成した。
10月 他校との情報交換 ホタルの飼育をしている他の学校と調べた内容についてメール・チャット・掲示板を使って発表し合い,お互いに意見交換する。
チャットによる意見交換 チャットの画面


 
総合的な学習から 
10月 ホタルについての情報収集
星田川の水質検査用サンプル
福地小とのTV会議交流
      飼育栽培委員会の活動からホタルを中心にして総合的学習に取り組んだグループがあった。
活動はホタルについての聞き取り調査を基に,ホタルが少なくなった原因を調べるためにホタルの多い場所と少ない場所の様子や水質の違い等を調べた。
TV会議の使って他地区の学校と意見交換をした。
                                     
  本時案
目標 ・代表の発表を参考にして発表のめあてを持ち,聞き手によく伝わる発表の仕方を身につける。
・これまでの活動を振り返ったり,友達の活動を参考にしたりして,後半の活動を修正したり変 更したりして今後の見通しを持つ。
学習活動と児童の意識・思考 教師の支援と評価

1 友達の発表を聞き,本時のめあてをつかむ。
 「ほたるの幼虫」のグループが一斉発表をする。
 ○テーマと動機
 ○今までに調べたこと
 ○資料についての説明
 ○資料の結果からいえること

 聞き手は
 ○何が言いたいかよく分かったか
 ○自分に生かせることは何か
 ○自分のめあてを書く



2 3グループに分かれて,それぞれの活動を進める。

【第1グループ】
【第2グループ】
【第3グループ】
〈発表者の準備〉          
  ・発表原稿の確認             
  ・発表資料の提示の仕方の確認
  ・わかりやすい話し方
 〈聞き手の準備〉               

  ・発表者のだいたいの内容をファイルを見て確    認しておく。
  ・感想や疑問,自分の学習に生かせることを書く。
 ○自分の考えや感想を発表する。






3 集合して本時の活動のまとめをする。
 
 ○発表の反省をする。
  ・発表の反省
  ・うまくできた点
  ・失敗した点
 ○聞き手の感想 
  ・自分の生かせる点
  ・自分の発表と比べて
4 友達の発表を聞いて気付いたことや友達の評価を 踏まえ,自分の活動を振り返る。
 ○他グループの発表で気付いたことをコンピュータ  の掲示板に張り付ける。
  ・追究のまとめの方向は。
  ・言いたいことをはっきりさせるには。
  ・分かりやすい資料にする工夫は。

 指示「ほたるの幼虫の発表を聞いて,今日のめあてを    きめましょう。」
 ○コンピュータのプレゼンテーションをテレビで交流  校に送り,アドバイスや感想をもらうようにする。
 ○役割を分担させプレゼンテーションを操作したり発  表者は聞き手の様子を見ながら,聞き手に分かるよ  うに発表したりできるように助言する。
 ○聞き手は,分からないときには必ず質問できるようにする。
【評】自分の発表がはっきり言えたかどうか。
     (学習カード)
【評】実際の発表を聞いて,めあてを確認することがで   きたか。(学習カード)
 ○終了10分前に,集合することを伝えておく。
 ○教師は各グループをまわり,支援を行う。
  (1)活用の申し出があった用具や材料を用意する。
  (2)子どもの活動を認め,特に優れた点を賞賛・紹介する。
  (3)学習カードを用意し,感想や疑問,自分の学習に生かせることを書くようにさせる。
  (4)発表者には正確に発表内容を伝えること。聞き手には正確に聞き取ることを第一に考えるよう助言する。
 ○教師は各グループの発表ごとに,活動内容のよさや,広報活動での相手への接し方・配布したものなど伝  達手段のよさを賞賛する。
 ○学習カード(すごいね)を互いに交換しましょう。他のグループの報告や,もらったカードのコメントを参考にして,自分たちの活動を振り返り,よかったことや改善したいことを考え,次の時間の計画を見直しましょう。」
【評】学習カード(すごいね)に自分の考えをしっかり書くことができたか。
     (活動観察,自己評価カード)
 指示「それでは各グループの代表の人に発表してもらいましょう。」
 ○教師の進行の下,各グループの報告を聞いて気付いたことをスタディノートの掲示板に張り付けるよう助言する。
 ○みんなが記述した掲示板を見て,返事を書くとともに自己評価カードにアドバイスを記入して次時に生かすことを確認する。

 ○閲覧した後に,各自に自己評価カードを記入するよう助言する。
【評】他のグループの発表の良い点や改善すべき点に気付くことができたか。
【評】友達の発表を聞き,発表を生かして次時の活動の目標をもつことができたか。
        (自己評価カード)

     12月 学習のまとめ
 
         今までの学習のまとめをホームページにて発信する。
         さらにホタルが少なくなった原因を探るために,川の再調査に出かけた。パックテスト等で,水は思ったよりきれいなことが分かったが,時間帯によって一時的にかなり汚れていることが分かった。また,河原にはたくさんのゴミがあることも分かった。
   
    月 川をきれいにする活動
      
         調査の結果からホタルの住める環境を守るために自分たちでできる活動をすることになった。                 
          クリーン作戦
          ちらし作戦                        
          ポスター作戦
クリーン作戦 ちらし作戦
   
ポスター作戦 ポスター例

校内のホタル川
5 結果と課題                             
 
 ホタルを育てて放流する活動を中心に活動していたが,今年度は今までの活動からさらに広げ13年間飼育し,得た情報をインターネット等のメディアを使い発信し,ホタルを中心にした環境ネットワークを構築するめあてで活動を続けてきた。ホタルの飼育については例年になく好調で,1000匹以上の幼虫を育て放流することができた。残りの幼虫は校内のホタル川で引き続き飼育している。成虫になるまでの観察を残すのみとなっている。
 今までの飼育からの情報も多くあるが,発信となると十分にできていないし,積極的な広報活動ができていないためか,他校との交流が予定より少なく幅広い交流につながらなかった。ネットワークの構築につ           
いても十分な成果があげられなかった。今回のプロジェクトの中心になる実践として,キーワードの言葉レベルのリンクを張ることで,思考に広がりを持たせたかったが,時間的な制約から実験程度のリンクしか作ることができなかった。しかし,同じホタルの飼育に取り組んでいる福地小学校とはTV会議を通して数回の交流をし,調べたことの相互発表・意見交換ができ,意欲的な活動へとつなぐことができた。
 飼育栽培委員会の児童が総合的な学習でも取り上げ,ホタルの飼育を基に,他校との交流や地元の方の話からホタルが激減していることが分かり,校区を流れる川の水質検査をする中で,水が大きく影響していると考え,学級での川をきれいにする活動へつながったことは大きい収穫である。
 
6 まとめ
 
○ 今回のプロジェクトを実践してみて一番感じたことは,調べた情報を発信する活動を通してより深い学習ができ たことである。発信しようと思えば,自分の調べたことを改めて見直す必要があり,自分の調べたことを客観的に みることができたからであろう。
○ 委員会の活動が総合的な学習でも活かされ,さらにはホタルの住みやすい環境を守る活動へつながったことは意 義があった。
○ ネットワークづくりについては,掲示板,メール等で呼びかけたがあまり交流希望校が見つからず,十分なネッ トワークにはならなかった。今回のネットワーク構築の中心になっているキーワードになる言葉レベルのリンクは 関連の情報が簡単に出てくるので思考が途切れず,思考が広がり有効にだった。