インターネット利用で豊かな心を伝え広げ合う電子絵本協同編集会議室の設計と運用研究
〜総合的な学習「オオサンショウウオ保護啓発プロジェクト」を通して〜
中学校第1学年・総合的な学習の時間
岡山大学教育学部附属中学校 藤本 義博
キーワード
中学校,総合的な学習の時間,インターネット,ネットミーティング,環境,交流,協同学習,絵本,異年齢,異校種,異地域,特別天然記念物,絶滅危惧種,貢献・寄与
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図1 電子絵本協同編集会議室 |
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図2 電子絵本の例
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活動段階 (時間) |
学習活動とインターネットの関わり |
@目的設定 (2) |
第1次「オオサンショウウオを知ろう」 文献,インターネット,ビデオ,NHK放送教材で調べたり,研究者から直接お話を伺って国の特別天然記念物オオサンショウウオについて知る。 |
@計画 (2) |
第2次「絵本制作の計画をたてよう」 興味や問題意識をもって具体的な絵本のテーマ(絵本で伝えたい内容と心・気持ち)を作る。 |
B探究活動 (4) |
第3次「保護啓発のための資料を集めよう」 自らの絵本のテーマにそって,対象年齢を設定し,わかりやすく興味をもてる表現のあり方を市販の絵本等から学び取る。文献,インターネット,ビデオ,NHK放送教材で調べたり,研究者の方に取材したり,野外調査を行ってオオサンショウウオや絵本作りに関係していることについてさらに深める。 |
C表現活動 交流活動 (12〜) |
第4次「小学生と交流学習を行いながら絵本を作ろう」 川についての環境学習を行っている学校とインターネットの電子メールで交流学習を行いながら,インターネット上に設置した仮想の編集会議室を活用して,協同で電子絵本を制作していく。 |
D交流活動 貢献・寄与 (6) |
第5次「完成した絵本を送ろう,ホームページで保護をよびかけよう」 協同で創作した電子絵本を保護区の学校へ送ったり,Webページで保護をよびかけたりする。1年間の電子絵本創作の体験を一人一人研究レポートにまとめたり,完成した電子絵本を教育委員会や教育センターの視聴覚ライブラリーに登録していただいて環境学習を行う学校に還元したり,放送局や新聞社等のメディアを利用して社会一般にも保護を呼びかける。 |
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図3 ネットミーティングのようす | 図4 児童に絵本を読んで聞かせる生徒 |
本時の ねらい |
○ インターネットのネットミーティングを利用して,附属小学校3年は組の児童36名に,特別天然記念物オオサンショウウオの絵本作りを紹介するオンライン交流を行い,絵本作りのために参考になった小学生の反応を例をあげて説明できる。 ○ 小学生と協同で絵本作りをすることの意欲を高めることができる。 |
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学習活動 | 指導上の留意点 | 備考 | |
1.交流学習のあいさつを行う。 2.児童にオオサンショウウオを紹介するとともに,本時の交流学習の目的を確認し合う。 3.制作途中の絵本を1枚づつ紹介し,児童の質問に答えたり,感想をまとめる。 4.附属小学校の児童が学んだことや興味関心がわいたこと疑問,感想などの発表を聞き,訪問児童との別れのあいさつをする。 5.絵本作りのために参考になった小学生の反応を発表し合い,まとめを行う。 |
1.ネットミーティングでお互いにあいさつをし合う。 ・ 授業前に交流会場のコンピュータや電話等の機器の準備を確認 しておく。 ・ 授業前後の自分自身の変容に気づくために,授業 前に事前の気持ちをノートしておく。 2.岡山県庁文化課に保護飼育許可済みのオオサンショウウオを交流 の児童に紹介して,オオサンショウウオに対する興味関心を高める とともに,感想を簡単に聞いてリサーチする。 ・ 制作途中のオオサンショウウオの絵本についての感想や改善点 を指摘するモニターとしての役割を附属小学校の児童に説明する。 3.あらかじめ本校のWebページの電子編集会議室に制作中の絵本を掲載しておき,互いに同じ電子編集会議室の絵本を閲覧しながら,ネットミーティングする。 4.小学校の担任教師の司会のもとに本時の学習で学んだことを発表させる。 ・ 小学校の総合的な学習で取り組んでいる生き物の学習に関係し ていることを発表させ,絶滅の危機は野生生物共通の課題であるこ とに気づかせる。 ・ 今後は協同で絵本作りをすることを提案した後,お別れのあいさつを生徒の司会進行で行う。 5.児童に,制作意図がどの程度伝わったか,また改善をどのようにしていくのか簡単に発表させる。 ・ 生徒一人一人に絵本作りの今後の計画を簡単に紹介させる。 ・ 授業後の気持ちをノートし,授業前後の自分自身の 変容を発表させ,今後の意欲を高める。 |
ネットミーティング可能なコンピュータ 電話 オオサンショウウオ 事前ポートフォリオ Web上の編集会議室 事後ポートフォリオ |
ワンポイントアドバイス オオサンショウウオは,体長1m,なかには1.5mにも達する世界最大の両生類である。生きた化石といわれ学術的にも貴重な生き物であるために,昭和2年に岡山県の北部が生息地として特別天然記念物に指定された。さらに,オオサンショウウオ自体も昭和26年に天然記念物,昭和27年には特別天然記念物に指定されており,飼育することも実際の河川で捕獲することも一般にはできない。本実践の電子編集会議室の設計理念を参考にしていただければ幸いである。 |