へき地校での,産・官・学・民の連携を重視したインターネットの活用

「総合的な学習の時間」におけるテレビ会議システム等の活用を通して 

中学校 3学年 選択理科 総合的な学習の時間

椎葉村立椎葉中学校 根井 誠・佐藤邦浩

キーワード 中学校 選択理科 総合的な学習の時間 テレビ会議 国際交流


インターネット利用の意図

 本校は,宮崎県西北部九州山脈の中央部に位置し東は諸塚村,西郷村,南は南郷村,西米良村,西都市,北は五ヶ瀬町に,その他は熊本県に堺している。その面積のほとんどは山林原野で占められ,国見岳,市房山など九州屈指の秀峰をはじめ標高1000mを超える山々が連なる。またこれらの山々を分水界として耳川,小丸川,一ツ瀬川の河川が村内に源を発し,その豊富な水量は水力発電に利用されている。また,主要産業は農林業である。

 生徒は,このような恵まれた自然環境の中で,地域の人々の温かい人情に支えられて素朴で素直に育っている。また椎葉村伝統行事の「平家祭り」や「神楽」,「焼き畑」などと多様なかかわりをもち,地域のよさを感じながら生活しており,地域で生きる力と情に満ちた生徒が育ちつつある。その一方で,じっくり考えたり,自らの意志で行動したりする機会が少なく,一人一人の生徒の主体的な判断力や行動力は十分とは言えない。

 そこで「総合的な学習の時間」や「選択教科」を中心に,ホームページの検索等はもとより,電子メールやテレビ会議システムを活用しながら,データをまとめたり発表したりすることにより,多くの人々との交流を深め,生徒自らが豊かに感じ,主体的に考え行動できるようになると考える。さらにこの企画を推進するにあたりへき地教育を支える教育委員会,産業界,保護者,大学の研究者との一層の連携を図ることで,これからの新しい学校づくりに生かしていきたい。またCEC協働実践企画「全国発芽マップ・プロジェクト」との連携を図り,参加学校との交流学習を一層進めることで将来のへき地校の教育の在り方の基盤づくりを模索していきたい。



1 ケナフ子どもサミット(3年選択理科)

(1)ねらい

 3年選択理科において,環境学習で取組んでいる1年草「ケナフ」の栽培活動を通して,全国の生徒と情報交換を通して広い視野で考えを深めさせる。またインターネットを活用したテレビ会議システムを利用することで,学習効果をさらに向上させていく。

 

 

(2) 単元の位置づけ

 生徒は,昨年から「ケナフ」栽培を続けている。「ケナフ」とはアオイ科の植物。成熟すれば下部が直径3?5cm, 高さが3?4Mになる植物で,広く東南アジアや中国,アフリカ,カリブ海沿岸,米国南部で栽培 されている。また,非木材紙資源として注目されている。さらに二酸化炭素を多量に吸収するために 地球温暖化の抑制にもつながると考えられ選択理科の環境学習に効果的な植物である。 さらに生徒自身が自然や人々に直接働きかけ,自ら課題を設定し調べていく学習を展開し,しかもインターネットを活用することによって,生徒の学習活動をいっそう能動的にすることができる。さらにその活動を大きく支える教育の場であるCEC協働実践企画「全国発芽マップ・プロジェクト」に参加することによって,生徒の学習活動をいっそう能動的にすることができると考える。

(3) 活動に迫る手立て

生徒の活動面? 栽培体験活動,インターネット情報収集及び発信,テレビ会議

教師の支援 ? 資料収集,情報発信,参加学校との事前打ち合わせ,ケナフネット

ワークジャパンとの連携,機器整備等

 

2 指導計画

 

 

3 学習の展開

(1) テレビ会議システムの活用

 インターネットを通じて広島、北海道、東京、宮崎の4会場を結びテレビ会議を行った。以前から会場と椎葉中を結び通信テストを行っていたが,当日同時に4会場を結んだため通信状況が極めて悪く,音声が伝わりにくいというトラブルが発生した。ただチャット機能を活用して,交流は図られた。

交流学習の1部を紹介する。

会場:「お互いに活動を紹介しましょう。」

椎葉:「こちらは,異年齢集団で班を編成して活動計画を立てました。全校生徒132

名で取組み始めました。」

東京:「それはおもしろいですね。」

北海道:「こちらは工作で,虫かごをつくりました。これでーす。」

椎葉:「わーすごいですね。私たちもつくってみたい。」

北海道:「露地栽培で花が咲かないと言われてきたのですが,昨年は咲かせることがで

    きました。今年は地域をあげて環境活動に取組んでいます。」

会場:「会場にきている学校のみなさんはどうですか。」

このようにそれぞれの学校の活動を中心に交流を深めていった。またその後,交流した学校との手紙による交流活動に発展した。
テレビ会議中の生徒の様子
テレビ会議画面

 

 

(2)ホームページの活用

 本校でも,学校のホームページを作成している。その中に今年は特に3学年が行っている「アジア友好の翼」(椎葉村企画シンガポール修学旅行)の学習の成果を国際交流の視点にたち,クイズにしてhttp://www.shiiba.ed.jp/shiibajh/quiz/index.htmに掲載している。また寮のホームページも掲示板機能も搭載してさらに充実してきた。

【3年生作成「シンガポールクイズ」】
【椎葉中学校醇和寮ホームページ】

(3)学校企画推進会議(平成12年10月10日午前9時30分?12時:校長室)

 学校企画を円滑に進めるために産・官・学・民から代表をふくめ,推進会議を開催した。

参加者:椎葉村商工会代表(高島清行青年部長)

    椎葉村教育委員会代表(椎葉良詔課長補佐)

    椎葉村民俗芸能博物館代表(黒木光太郎庶務課係長)

    宮崎大学教育文化学部(中山 迅教授)

    宮崎産業経営大学(徳地慎二講師)

    椎葉中PTA代表(黒木 忠会長)

    税所健好 校長

    永友 敦 教頭

    久保田博則 教務主任

    佐藤邦浩  椎葉村情報教育担当

    根井 誠  学校企画プロジェクト担当

会議内容:会議では以下の視点にそった話し合いが行われた。

    ・インターネットの活用状況(椎葉中/椎葉村の状況)

    ・へき地校のインターネットの活用の可能性

    ・産,官,学,民からみた連携と開かれた学校づくりへのかかわり

    ・椎葉中からみえる産・官・学・民の連携の姿

    ・インターネットに期待するもの

主な意見としては

椎葉村教育委員会「ラジオ等の受信もままならない環境であるため,インターネットを活用した学習を積極的に取組みを進めて欲しい。また村が進める「アジア友好の翼」等もなお一層連携を強化していったらどうだろうか。」

椎葉村商工会「ホームページで発信している。職場訪問,体験学習で中学生が欲しい情報も今後ページづくりに生かしていきたい」

椎葉村民俗芸能博物館「来春には,ホームページを開設する予定なので文化関係の学習に活用できるようにしたい。中学校との相互リンクを。」

大学関係「総合的な学習の時間に,キーボード操作を徹底的にやらせると,その後様々なリテラシーの高まりにつながるのではないか。」

など様々な立場から意見が出された。

4 成果と課題

 インターネットを利用したテレビ会議システムの活用については,それぞれの学校の回線の状態の違いや,カメラとコンピュータの設定など簡単にはできない状況もあった。また以前と比べて簡単になったとはいえ,システムのテストにかなりの時間を要したり,交流学校との時間を調整設定をしたりなど難しい問題も多くあった。

 また,産・官・学・民の連携を重視したインターネットの活用ということで,椎葉村のネットワークを広げ確かなものにすることが,生徒の学びに必要不可欠であることが再認識された。それは地域の教育力を最大限活用することであり,連携を図った学習活動を展開することでもある。職場体験学習の事前に商工会のホームページから情報を得たり,知りたいことや質問を送ったりする活動は,生徒の自主性を伸ばすだけでなく,地域の学校教育への参画を促すよい機会になる。さらに地域の声を繁栄し,人材を呼び込むことにもつながってくるであろう。21世紀の教育を見据えた生徒の学びの発信や椎葉の教育力の有効な活用手段となった。

ワンポイントアドバイス

 椎葉村の支援により,インターネット等のコンピュータ整備は充実してきた。これからはさらに,行政(官)と学校,そして地域(産・民)が一層連携しあい学者(学)の理論や助言を取り入れながら,学校の教育活動を行っていく必要がある。

 利用したURL

 椎葉村役場 (http://www.vill.shiiba.miyazaki.jp/)

協力団体 ケナフネットワークジャパン