青森県立青森工業高等学校

○ネットワーク利用状況

◎講習/講座

 ・生徒による夏休み親子ホームページ作成講座

   社会人、学生、子どもなど、年齢/職業を問わず広く一般から受講者を募り、本校情報技術科3年生15名を講師としてホームページ作成講座、WWWブラウザ利用講座を行った。開催が夏休み期間中であり、講座の内容も「インターネット利用初心者」向けに限定したため、20名ほどの募集人員がすぐに満員となった。

   インターネット、HTML、WWW、ブラウザ、メールなどの基礎的なネットワーク利用に関する説明、実際の操作、受講者によるホームページ作成の補助など講座に関わるすべての進行を生徒が行った。講師が高校生であるということで終始、和やかなリラックスした雰囲気で行われ、「もっとこういう講座をやってほしい。」「今時の高校生とこういう形で交流できることがうれしかった。」「もっと詳しく知りたいので続きをやってほしい」「高校生を見直した」などの意見をいただいた。

   講師となった生徒自身にとっては、いろいろな年齢層の人たちとふれあい、そして自分たちの知識を活かす事ができたという事実が大きな収穫であった。

 ・「義務教育10年研」

   義務教育10年研修が本校で行われ、以下の項目について講習した。

    1、コンピュータ利用基礎としてのWindows95

    2、教材情報検索としてのインターネット利用

    3、教材としてのMIDI対応音楽アプリケーション利用

   Win95講習ではコンピュータを利用する際に必要な、ファイル操作、文書作成、各種アプリケーション間のデータ共有/利用法など基礎的/実践的講習内容とした。インターネット利用講習では、クラッシック音楽のデータを提供しているアメリカのサイトからMIDIデータをダンウンロードすることを例にしてインターネットで提供されている教材の検索法、取得方法を講習した。また各教育機関がサービスを行っているサイトへのアクセスも行った。音楽アプリケーション利用講習では、MIDI規格の説明、コンピュータ利用音楽の現状説明を行い、授業で利用するための一例として音楽ソフトを使用した作曲、楽譜打ち込み、音づくりなどを行った。

 ・「小学校音楽教育研究会」

   小学校の音楽教育にコンピュータ、インターネットをどのように活用していくかということをテーマに研究会を行なった。楽譜に気軽に慣れ親しんでもらうためのアプリケーション紹介と実演を行い、インターネット上の各サイトに存在するMIDIデータの活用法/入手法、ネットワーク化された校内コンピュータシステム上でのデータの共有化とその有利性を解説した。また本校のLAN、ネットワーク機器、インターネット接続を体験してもらい、理解を深めてもらった。 

 ・文化祭、体験入学におけるインターネット体験学習

   平成9年度文化祭、中学生体験入学において、中学生を対象にホームページ作成、WWWブラウザ利用講習を行った。生徒を講師として、インターネットの概要、ネットワーク技術の簡単な説明を行い、実際にHTMLによるホームページ作成を行い、各自の作品は一定期間本校サーバの管理下に置かれ本校ホームページにリンクした。

◎各種フェア、イベント参加

 ・青森県産業教育フェア

   弘前で開催された県産業教育フェアではホームページ展示、インターネット関連技術パネル展示、mail交換実演、情報検索実演などをおこなった。

 ・全国産業教育フェア(群馬)参加

   全国産業教育フェアで行われた「体験発表」に本校情報技術科2年の2名が参加「インターネットに取り組んで感じたこと」と題して発表、優秀賞をいただいた。

  *発表内容につては、「◎その他」の項目を参照。

 ・青森県高等学校工業科部会情報教育分科会(弘前)

   情報教育分科会で行われた、学校としてインターネットをどのような形でに取り込むか、どのような利用形態をとるかなどの協議にに対して、本校の利用状況、生徒の反応、設備問題、倫理観、校内情報システムとしての利用などを挙げて、実際に導入している立場から発表した。

○平成9年度の成果と課題

◎生徒の利用状況

 ・100校プロジェクト開始当初、生徒のインターネット利用のほとんどは、ホームページ閲覧(ネットサーフィン)あるいは、手の込んだホームページ作成であった。インターネット利用環境が当たり前のように生徒に浸透してくると、その利用形態は、メール、ftp利用によるファイルのダウンロードなど、データのやり取りそのものの便利さを活かしたものへ変化してきている。ホームページ閲覧もかなり具体的な目的を持った「情報検索」に形を変えつつある。

   インターネット利用技術にあわせて、ネットワーク技術そのものに興味を持ちはじめる生徒もおり、個人のWWWサーバ立ち上げ、ネットワーク接続設定変更、本校ネットワーク構成の再考を行っている。

   特に課題研究において企業とMailのやり取りを行って技術的援助や、適切な指示を仰ぐことができたこと、研究に必要な情報、資料をインターネットから大量に入手できたこと、研究成果を資料として公に発信できることなどからインターネットの本質的な活用を学ぶことができた。

◎その他

 ・青森県企画部地域振興課津軽下北振興室の方からの依頼で「津軽岩木リゾートガイド」と題して津軽下北の観光案内ホームページを作成。作成にあたったのは、2年生の生徒2名。作成に際して何度も県庁を訪れ「実社会」を感じたことなどを全国産業教育フェア体験発表の部で発表した。作成されたホームページは現在も利用され観光案内に一役買っている。            

  (URL//www.jomon.or.jp/~resort)

◎課題

 ・本校では基本的に得られる情報を制限していないため、有害と思われる情報は生徒の倫理観にしたがって取捨選択するするよう指導しているが、今後使用頻度や利用者数が増加していく中で、体系化された倫理観や道徳感の指導法を確立しなければ氾濫する情報に飲み込まれる生徒が出てくる可能性を秘めている。

   インターネットから得られる多種多様な情報をどこまで公共の場である学校として制限するか、あるいはどうのようにして生徒に倫理観や公共の場でのエチケットを教えていくかのガイドラインを作成する必要性がある。

○プロジェクトに参加して

 ・インターネットの本格的利用を境に校内LANの利便性、必要性が再認識されはじめている。メールの有用性、ネットワークによる各種データの共有化などの利便性容易な検索による目的情報の入手などがインターネット利用により具体的に示されたため、これまで曖昧なものであった校内LAN活用のビジョンがはっきりと見え始めたためであると思われる。具体的に校内LANファイルサーバ、メールサーバの立ち上げと、ネットワークプリンタ利用、共有情報一元化、などを実現する方向に進んでいる。

 ・生徒が講師になる講座を開き、一般の人たちとの自然な形の交流ができる機会を作り出す事ができるようになったこと、mailで直接、企業や公共団体、個人とやり取りが行えるため生徒の活動範囲や視界が広くなったこと、教師側のコンピュータに対する身構えが、具体的なインターネットの利便性から薄らいでいることなどプロジェクトに参加して得たものは大きい。

  インターネットそのものより、そこから発生する「機会」や「人間関係」、「公共意識」など学校にとって有意義と思われる「事象」のほうが大切で、意味があるように思われる。このプロジェクトは教育現場に対してインターネットの教材化ではなく道具化する方向を示してくれたものであったと感謝している。