長崎市立淵中学校

1.ネットワークの利用状況

(1) 職業調べ

  昨年に続き,1年生で職業調べを実施した。同じ内容で取り組んだのは,集めた資料を蓄積することでデータベース化を図るとともに,この取り組みを1年生の進路指導の中できちんとした形で定着させるためである。また,1年生にとって,インターネットを身近に感じさせるための,重要な取り組みと位置づけたいためでもある。

(2) 平和集会の内容検討のための資料収集

  本校では,毎月9日に学年ごとに平和集会を開き,平和について生徒たちに考えさせる場を設定している。今回,平和委員が内容を検討するにあたって,貴重な資料を入手する方法としてインターネットを活用した。具体的には「対人地雷」「オゾン層破壊の問題」などについて調査,活用した。

(3) 修学旅行における学習見学地調べ

  2年生は,昨年度の職業調べで,一応全員がインターネットに触れており,本校生との中では最も機器の操作にも慣れている学年である。その利点を生かして,秋の修学旅行の学習見学地調べ(事前学習)にインターネットを活用した。

(4) 生徒作文(メール)による意見交換

  国語の授業で,古典『平家物語(扇の的)』を取り扱った際にディベートを行い,生徒の意見を,物語の舞台となった屋島の中学校(牟礼町立牟礼中学校)に送り,牟礼中学校の生徒に意見を返してもらうように企画した(継続中)。

(5) 長与中学校の国語学習への協力

  長与中学校で,徒然草の全段を絵本にするという取り組みが行われた。その内容をホームページ上で公開し,外部の人からの意見を求めるという企画があったので,本校の生徒に意見や感想をまとめさせ,メールで送った。互いに「相手」を意識した取り組みを実施することで,生徒の関心や意欲を高められるものと考える。長与中学校とは来年度も,国語の授業を中心に,共同企画を実施していく予定である。

(6) 高校調べ

  3年生の進路選択のための資料収集にインターネットを活用した。

(7) 紅葉調べ

  akinotanoのメーリングリストに掲示されていた紅葉調べに,3年生の選択理科で取り組んだ。

(8) 「長崎市と結ぶ小中学生のためのマルチメディア平和学習フォーラム」への参加

  神奈川県藤沢市と本校の生徒の代表とが,8月9日,長崎市原爆資料館においてインターネット及びテレビ会議システムを活用し,交流を図った。藤沢市からは小中学生を中心とした交流団が資料館に出向き,本校生徒と直接意見の交流を深めた。そして,その模様はテレビ会議システムで藤沢市の慶応湘南キャンパス会場にも送られ,藤沢市の一般市民の方からも意見をいただいた。

(9) 下鴨中学校(京都)との平和学習に関する交流

  平和学習の一環として,平和学習に積極的に取り組んでいた下鴨中学校と交流を進めている。下鴨中学校は来年度修学旅行で長崎市を訪れるということなので,平和学習の資料として本校が昨年6月に実施した原爆遺跡巡りに関する資料を送付するとともに,生徒同士のメールによる意見交換を図っている(継続中)。

(10) インターネット同窓会

  昨年度から継続して取り組みを進めている。新しい卒業生からどんどんメールが届き,今年の1月3日には第30回生の同窓会が市内のホテルで開かれたが,本校のページにて開催を知った方々から感謝のメールをいただいた。

2.平成9年度の成果と課題

 ・今年は研究主任が内地留学で学校を半年間空けるなどの悪条件があったにもかかわらず,昨年度以上に多くの職員がインターネットを活用し,多くの実践をしてもらえた。少しずつではあるが,確実にインターネットが学校現場に定着していっているものと考える。

 ・年度当初計画していた企画(観光マップ作りなど)については,中途で終わってしまったが,その分昨年度の取り組みを深化,定着させることができた。

 ・昨年度は現2年生ぐらいしかインターネットを体験させることができなかったが,今年度は取り組みが増えたこともあり,全学年にまたがってインターネットを体験させることができた。生徒たちは時事問題などについても,気軽にインターネットで調べようという姿勢を見せるにようになってきた。

 ・WindowsNTサーバを設置することによって,以前よりはいくらかサーバの内部を職員でも扱うことができるようになった。その一つの例としてアンケーターをwebに組み込み,比較的簡単に外部の人からの意見を吸い上げることができるようになったことがあげられる。今後,さらに手を加え,アンケーターの充実を図るとともに,cgiを駆使して掲示板(主として卒業生を対象にしたもの)のページなども作成してみたい。

  年間を通して,「新しい取り組みへの挑戦」よりも「今ある取り組みの充実」を図ったことが,結果的には「生徒や教師へのインターネットの定着」につながったように思われる。また,パソコンクラブを中心に,メーラーの操作ができる生徒も増え,さまざまな取り組みの中で,今まで以上に気軽にメールのやりとりをすることができた。

 ・生徒に指導するには,まず教師がインターネット環境に慣れ親しむ必要があるが「慣れて使いこなす教師」と「徹底的にインターネットを避ける教師」に二分化してきた。

 ・相変わらず,ネットワーク管理者の教師の負担は大きく,そろそろ限界に来ている。校内の調整だけではどうすることもできず,「ネットワークの管理は日常業務をこなしつつ,果たして教師がやれるのか」という問題にぶつかるようになった。

 ・生徒たちが活発にインターネットを利用するようになったことは喜ばしいが,教育上好ましくないページへのアクセスを制限するには,結局教師自身がつかなければならず教師がつけない場合は,生徒はインターネットを活用できないことになる。活用を図るには各教師により大きな負担を強いることになってしまう。特に時間外(放課後)は,部活動の指導などもあるので,なかなか「生徒についてください」とは言えない。

  一番大きな問題は,ネットワークにつながっているパソコンの数が少ないことである。教師の研修のみならず,生徒の活用の場面でも支障をきたしている。また,ネットワーク管理者の負担が大きいという問題もそのまま残されており,学校内でやりくりできるレベルの問題ではなくなってきている。

3.プロジェクトに参加して

  今年度一番うれしかったのは,本校のホームページが,卒業生が開いた同窓会を盛り上げる一助になったことである。卒業生との関わりを深めることで,生徒たちの取り組みもその幅が広がっていくものと考えられる。本校の現状はまだそういう段階まで達してはいないが,いずれ今の生徒たちが大学生,社会人となったときには,きっと今以上の深みのある取り組みを,在校生と卒業生が手を携えて実現できるものと確信している。