相模原市立淵野辺小学校

○インターネット利用状況

(1)今年度の研究概要

 今年度は平成7年度・8年度の2年間にわたるネットワ −ク環境の教育活動への活用の成果から「子どもたちの思いを大切に、具体的な活動を支援し“生きる力”を培っていきたい。」という方向性で研究に取り組んできました。

 第15期中央審議会第一次答申を視野に入れ、その願いを実現するためには、教科・領域、そして学年を越えての活動の場や時間の設定・支援体制などを新たに変える必要が出てきました。そこから生まれたのが、今年度の研究の中心となっている「チャレンジタイム」です。

(2)チャレンジタイムの概要

 ・位置づけ    既存の教科などにとらわれることなく、学習や自身が課題を設定し、主体的に取り組む。

 ・具体的取り組み 5,6年生を対象とする

          年間20時間を設定する。

          児童一人ひとりの願いをもとに、個々が課題を設定する。

          課題をもとに1グル−プ10人程度にグル−プ分けする。

          全職員が支援にあたる。(本校では学校TTと呼んでいる)

(3)「チャレンジタイム」の実際

 4月  「チャレンジタイム」活動の内容・計画等の共通化

 5月  5、6年生全体オリエンテ−リング

     「チャレンジタイム」の個人テ−マを考えよう(学年・学級)

     共通なテ−マをまとめ、10人程度のグル−プ化

     22グループで「チャレンジタイム」スタ−ト

(4)各グループでの取り組み

 児童の願いをもとにした22グル−プの取り組みのうち3グル−プの様子を紹介します。

 (a)私たちの地球 −環境問題に迫ろう−

   このグル−プは、環境問題について調べたい、という願いを持った子どもたち6名で構成されています。CD-ROMやインタ−ネットを使って資料を集めてきたり、子どもエコクラブの活動に参加し境川の水質検査・酸性雨の実験に取り組んだり、と様々な活動を行ってきました。教育工学全国大会の授業公開当日は個々の課題から

  ・酸性雨の実験のデジタル情報をコンピュ−タでまとめていく様子

  ・地球お助けガイドの作成

  ・児童自身の家の情報からどのくらいCOを排出しているか、地球温暖化との関わりなどについて取り組みました。

 (b)スク−ル大作戦 −学校のこと見たがり聞きたがり調べたがりやりたがりになっちゃおう−

   このグル−プは「学校や算数に関すること」を調べたいという願いを持った児童8名が集まっています。今まで、世界の学校ではどんな勉強をしているのか?他の小学校の修学旅行はどこへ行っているのか?などインタ−ネットや電子メ−ルを使って願いを解決してきました。授業公開当日は算数の円周率を音楽にするという合科的な活動を公開しました。円周率の数字を音に置き換えた調べをオルガンで弾いてみたり、テ−プで聞いてみたり、数字の不思議さに触れていました。

 (c)ケナフを育てよう −どんな植物か興味があるんだな!−

   このグル−プは新100校プロジェクトの「ケナフという植物を育て、紙にするまで様子を日本全国で比べていこう。」という呼びかけに答え活動してきた10名のグル−プです。デジタルカメラを使用しホームページにその経過を発信し、また他の学校のホ−ムペ−ジと比較しながら育ててきました。授業公開当日は紙作りの様子を公開しました。今まで育ててきた「ケナフ」。一つ一つの作業に愛着がこもり、最後にはすばらしい紙ができあがりました。

   「誰に送ろうかな。」「大切にとっておこう。」などの言葉から一年間を通してきた活動が感じられまた。

○平成9年度の成果と課題

  今年度から新たに取り組んだ「チャレンジタイム」。特定のクラスで取り組むのではなく学校全体で取り組んできたので技術的な進歩はあまり感じられませんでした。しかし、児童のインターネットの利用の広がり、本校教員への広まりなどを考えにいれれば、格段の進歩があったものと感じています。以下、実践を通しての成果及び課題を3点あげてみます。

 ・「チャレンジタイム」の実践を通して、子どもたちが体験を通しながら問題解決を図っていくための授業時間数はなかなか確保しにくいということを実感しました。 今年度は実験的に、年間20時間設定、柔軟に対応してきましたが子どもたちにとって十分とは言えません。

 ・児童10人で1グループを基本に取り組んできましたが、個々の教師では児童一人一人の願いを解決する為の支援が十分にしきれない場面が出てきています。インターネット、地域教育力等が解決方法の一つでもありますが、より教師間の関係も密にし、多様で主体的な学習の支援環境を整えていきたいと思っています。

 ・「チャレンジタイム」の評価まで、今年度の研究の中で踏み込むことができませんでした。多くの場面で評価(励まし)を取り入れていくことによって、子ども自身の高まりが見られていくと思われます。

○新100校プロジェクトに参加して

  教育工学全国大会、授業公開のあと以下のような評価もいただきました。

  「自分で課題を見つけ、課題解決の方法を検討し、さまざまな資料を基に自ら考え、その結果を発信していく−−中教審答申や教育課程審議会「中間まとめ」が提言する新しい教育活動の姿を実際に示した「チャレンジタイム」であった。」         (内外教育12月5日)

  今年度の研究には「今進んでいる方向性でいいのだろうか?」という不安が常につきまとっていました。しかし、上記のような評価を頂いて、ほっとしています。

  来年度は今年度の課題から、100校プロジェクトのねらいでもある「従来の枠を越えた教育・学習の可能性を実証すること」そして本校の取り組みでもある「情報教育を根底に据えた『総合的学習』」をより発展させ、進めていきたいと考えています。「児童の立場に立った」ということを忘れることなく、そして目の前の児童の一過性の変化ではなく、もっと大きな時間の流れの中での児童一人一人の成長を促していきたいと感じています。