福岡教育大学教育学部附属福岡中学校

○インターネット利用状況

(1) 情報教育カリキュラムの作成

  生徒に情報活用能力として習得して欲しいものを明らかにするために,生徒のコンピュータに関する実態を分析し,段階表を作成した。各教科や学活における指導の際に,これを基準に行っている。ワープロは国語科,グラフィックは美術科,表計算は数学科,パソコン教室の使い方や情報化社会での倫理は学活を中心に行っている。段階表にあげている時期までに学習することが大切であるが,状況に応じてはこれよりも早い時期に,他の教科や学活で行うことも想定している。

(2) 新100校プロジェクトのための授業実践

<教科>

  @ 英語科(第2学年)

    年間カリキュラムを検討し,それぞれの題材の特徴を生かしてインターネットを活用するために,単元構成やインターネット活用の場の工夫を中心に実践した。

   ☆題材を大きく3つのタイプに類別した。(SUNSHINE ENGLISH COURSE)

   ☆電子メールによる海外との交流

    最初は海外と日本の教師が仲介して行っていたが,現在は生徒全員がキーパルを持ちメールの交流を行っている。電子メールを行う時間は,週1時間の英語の授業と昼休みや放課後の時間に行っている。

  A 美術科「視覚伝達デザイン」(第3学年)

    視覚伝達デザインの学習ではポスターを取り扱うことが一般的であるが,ホームページという最も新しく注目されていて,しかも視覚的な情報伝達手段を取りあげ,その制作を行わせることを通して,視覚伝達デザインにおける形や色,文字を工夫し構成する構想力を育てることをねらいとした。インターネット活用の視点としては次の3点を考慮して実施した。

   ☆視覚伝達デザインの題材をホームページにする。

   ☆電子メールによる専門家からのアドバイスをもらう。

   ☆制作したホームページを発信することにより,外に向かって開かれた鑑賞会を行う。

  B 技術・家庭科「金属加工のまとめの段階でのインターネットの活用」(第2学年)

    技術・家庭科で金属加工の学習のまとめの段階で,「鋳造で古代を復元しよう」という学習活動を設定した。生徒達が遺跡等から発掘された古代の金属製品を調べ,自分の関心をもった製品の復元に挑戦させた。金属の特性や福岡の古代について博物館などで探究させ,グループで古代の金属製品を鋳造させた。そして学習の成果を作品発表のページ としてホームページで発信させた。この作成したページに対する感想や意見を外部からアンケートや電子メールとしていただき,それを活動の評価の一つとして今後に活かした。

  C 学活(3年)学校行事にむけた取り組み(第3学年)

    43kmを全校生徒で1日かけて歩く伝統行事である遠行会を成功させるために最上級生としてどう取り組むかをしっかり考えさせるために,卒業生の先輩や後輩からのメールから考えさせた。

<総合学習>

  本校では「豊かな人間性」の育成を図る教育課程を創造するために,豊かな「生き方」と豊かな「学び方」ができる資質や能力を重視し,現行の教育課程の枠組みを教科,総合学習,特別活動へと改め,総合学習として「生き方学習」「WORLD TIME」「卒業研究」を設定している。各自のテーマに沿って,主体的に学習していくという特徴をふまえて,インターネットを探究のための情報収集の場と自分の考えを発信する場に取り入れている。

  @ 探究のための情報収集の場での活用例 〜総合学習「卒業研究」〜

    「卒業研究」では,中学校3年間のすべての学習(教科,「生き方学習」,「WORLDTIME」)や個人的に取り組んできた趣味や特技,部活動などを振り返り,それらの中から更に学びたいことを深めさせるとともに,これからの自分の生き方を探らせることをねらいとしている。その探究の過程での情報収集,調査活動にインターネットを活用するように指導している。

  A 自分の考えを発信する場での活用例 〜総合学習「生き方学習」〜

    生き方学習では,現代的な教育課題への対応として,「仲間」,「福祉」,「環境」,「伝統文化」,「国際理解」の5主題を3年間の中で設定し,自然や文化,人や社会との共生をめざした豊かな生き方の育成をねらいとしている。ここでは問題把握,問題解決のための方法を探る,解決に向けて実践するという三つの段階を設定し,体験活動を核にしながら知識や心情にとどまらず,自分はどうかかわればよいのかといった行動や実践をめざしている。この解決に向けて実践する段階で学んだことをホームページで発信している。

(3) イントラネットを使った校内LANの在り方の検討

   パソコン教室に8台のクライアントが接続できたが,従来の講義室のように並んでいたコンピュータの配置では授業への利用が難しく配置の変更を行った。インターネットにつながっていないコンピュータを部屋の窓や壁際に配置し、その間にクライアントを配列した。また,部屋の中央には3人掛けの机と椅子を配置することで授業でのインターネットやコンピュータの各教科での利用の可能性の幅を広げた。また,校内のイントラネッットの充実や授業での活用するため理科室への回線接続(3月)を行う予定である。

(4) インターネット活用の普及をめざした取り組み

   研究発表会(11月26日)において,これまでの100校プロジェクトの実践を全体発表で行った。また,技術,学活におけるインターネットを活用した授業を公開した。さらに,九州地区新100校活用研究会で発表を行い、これまでの3年間の取り組みを報告した。また、福岡県内の数校より、学校訪問を受け施設やこれまでの取り組みの一端を説明した。

○平成9年度の成果と課題

<成果>

 ・教科でのインターネットの活用の方向性が見えるようになってきた。

 ・総合学習ではインターネットを情報収集と情報発信の場に活用することで,より主体的で問題解決的な学習が実現でき、総合学習での活用の有効性が見えるようになってきた。

 ・3年間の継続的な取り組みでインターネットが生徒にとって情報収集,発信の手段の一つとして日常的なものになってきた。

<課題>

 ・通信速度やハード・ウェアーの関係で,インターネットの双方向性のよさを十分活用できなかった。

 ・生徒の問題解決に本当に適した情報は実際には少なく,生徒がその情報を得るために,主体的に電子メールや電子ニュース,掲示板などで問い合わせるまでには至っていない。

○新100校プロジェクトに参加して

  100校プロジェクトに参加し実際にインターネットを活用するようになって3年がたち,インターネットを取り巻く意識や環境は目を見張る変化を感じる。また,校内の環境は最初に比べたら(アナログ28.8でクライアント1台)格段に充実してきた。教育の世界も大きな変化の時を迎えている。これからが本当に学校におけるインターネットの真価が問われる時だと感じる。来年度も各教科や総合学習での実践的な活用の方向をさらに探っていきたい。