坂出市立白峰中学校

1.研究のねらい

  インターネットの使用は,これまで特定の教科・教員に限られていた。それは,教員のリテラシーの問題もあろうが,どう授業を組み立てたらいいのかという議論がやがてインターネットの使用に尻込みする消極的な必要観へと変わってしまった。しかしながら,生徒のコンピュータへの関心・意欲は高く,操作能力の習熟も早いので,新しい道具を手にしたとき大胆な発想や自由な表現ができている。したがって,従来のような知っている教師が知らない生徒に教えるといった枠組みだけでは対応できない面がある。

  そこで,本年度はより多くの教科や場面で,多くの教員がまず使ってみることを計画した。情報の中には有害なものや不必要なものも多いが,生徒にはその中から本当に必要な情報を収集し,整理し,表現し,創造するといった情報活用能力を高めてきた。特に,生徒自身がホームページ作りを通じて情報発信したり,他校(特に校区の小学校)とE−メールで交流したりするなど,自ら考え,計画し,行動していく能動的な立場からの取り組みを主に考えた。また,このことが「生きる力」の育成に結びつくのではないかということから研究を続けてきた。

2.研究の内容

 (1)ホームページによる情報公開

  @ 生徒が作るホームページ

   ・白峰中学校や学校生活の紹介

   ・校区の小学校とのリンク(進行中)【自主企画】

   ・生徒会,情報処理部からのメッセージ

  A 保護者へ 地域へ

   ・食中毒情報,料理教室,学校給食献立表の掲載

  B 他校への情報公開

   ・環境データベース

     本校では,平成6年度より(NIE)の指定を受け,各教科で新聞記事を使った授業の実践を行っている。技術・家庭科では,3年生の情報基礎で記事の中の「環境」を取り上げ,コンピュータのデータベースとしての活用法の学習と併用して環境教育を行っている。データベースの記事の数としては,今までに約13,000件のデータが蓄積されており,この貴重な情報をホームページに掲載し,一般公開できないかと研究中である。

   ・コンピュータリテラシー年間計画

     本校では,毎朝,8時から8時30分までの30分間,1年生全員がクラスごとにローテーションしながらコンピュータの基礎的な操作を学習している。各校のコンピュータ教育の取り組みについて,ホームページを通して情報交換した。

 (2)WWWを用いた情報収集

  @ 英語科の取り組み

    英語科2年生において,教科書に出てくるオーストラリアのエアーズロックやコアラやカンガルーの情報,またカナダなどの国々の生活や文化についての情報を収集し,英語学習や異文化理解への意欲化につなげた。

  A 技術・家庭科の取り組み【重点企画】

    2年生の「バランスのとれた食事」の単元の中で,「ダイエットナビ」(松下電器電化住設研究所)http://town.hi-ho.or.jp/diet/へAccessし,「カルシウム足りてる?チエック」のプログラムが授業に使えないかを松下電気の担当者にE-mailで相談,連絡をとりながら進めた。内容を中学生対象に作り替えていただくことになり,それにより生徒自身でカルシウムを摂取できているかを判定させた。続いて「Bob&Angie’s kitchen」(大阪ガス)へAccessし,「カルシウムたっぷりメニュー」のページからカルシウムの多い食品や料理を調べ,食生活に生かすことを考えさせた。生徒は,インターネットを通じて自ら食品を選択し,豊かな食生活を送るための「生きる力」を身につけることができた。

    後日,担当者が来校され,授業をご覧いただいた。生徒は,食生活やホームページ作りについて,専門家から直接お話を伺う機会を得た。その時の様子を「ダイエットナビコミュニティー」のページに詳しく掲載していただいている。

  B 音楽科の取り組み

    全国の中学校で行われている合唱コンクールについてや,教科書にあるビートルズ,作曲家「バッハ」などについての情報収集を,教員だけでなく生徒自身が検索して授業や学校行事に生かした。

  C 保健室の取り組み

    インフルエンザの発生状況や症状,大腸菌O−157,O−127についての情報等について検索し指導に生かした。

 (3)E-mailによるコミュニケーション

  @ 英語科の取り組み

    英語科1年生において,授業中リアルタイムで,アメリカの人と時刻や天気などについてメール交換を行った。外国の人とすぐに交信でき,あたりまえのことではあるが,地球の裏側が夜であることが実感できた。

  A 選択社会での取り組み

    選択教科において,アメリカのSt.Jullieスクールとメール交換を行った。自己紹介したり,学校や生活について紹介したりして交流した。

  B 校区の小学校とのメール交換【自主企画】

    本校は,小学校6校区からなる大規模校で,小中連携が必要なことも多い。今回,校区の1つの小学校にインターネットが接続されたこともあり,実験的にメール交換し合った。

    中学校教師−小学校教師間では「体験入学について」「研究会のご案内」,中学校教師−小学生間では「ダイオキシンとごみ処理について」「中学校について教えてください」,中学生−小学校教師間では「担任の先生お元気ですか」,中学生−小学生間では「ホームページ見ました」などについてメール交換し合った。

3.9年度の成果

 (1)活用方法

  今までにはない,いろいろな方法で活用することができた。活用するにあたり時間的な問題や適切な資料収集等で問題も多いが,一歩踏み込んだ研究ができた。

 (2)教育効果

  まだ接続されているコンピュータの台数が少ないが,生徒のリテラシーが高まり,意欲的に情報収集,発信することができるようになった。

4.今後の課題

 (1)インターネットの活用を教科の学習計画の中にどのように組み込むか

  どこで,どのように利用すればいいのか研究していく必要がある。

 (2)インターネット接続にともなう外部に対する重要データの機密保持

  重要ファィル(成績,テスト,生徒指導,保健,家庭等に関するもの)にパスワードをつけたり,重要ファィルの保存されているコンピュータとインターネットを接続しているコンピュータとは別にしたりして流出防止のためのシステム作りに取り組む。

 (3)モラルとエチケット

  情報の中には,有害なものや不必要なものもあり,どの情報が必要なのか,正しい判断で情報選択できる力をつける。また,ホームページやE−mail作成においても何を発信し,どのような表現で送信すべきなのか考えさせる。特に,写真等は犯罪に悪用されないよう,顔のはっきりする鮮明なものは避けるなど配慮する