茨城県立岩井高等学校

○ネットワーク利用状況

  平成9年度は,昨年度に引き続き,授業におけるインターネットの活用を第一の目標とした。特に,「インターネットを利用した国際理解教育の推進」は,インターネットの活用を始めた当初からのテーマであった。

  今年度は,創立70周年でもあり,その記念事業として校内LANの整備とサーバーの更新を行った。LANの整備は,校内の多くの場所からインターネットが利用できるようにすることによって,インターネットをより多くの教科で活用すること,また今後のイントラネットの整備の基盤を築くことを目的とした。また,サーバーの更新は,連続運用が約3年になること,最近時々再起動が必要なトラブルが発生することがあり,今後のインターネット利用環境の維持を目指した。

  平成8年度までの接続:CAI教室,図書室,進路指導室,物理室,地学室,生物室

  平成9年度の整備  :職員室,事務室,保健室,LL教室,社会科室,体育教官室,美術室(*),調理準備室(*),視聴覚室(*)

            * パソコンは未整備,ハブを設置

  平成10年2月現在 :インターネット接続サーバー    2台

                    クライアント   60台

  平成9年度は,ネットワーク利用に関して次のような取り組みを行ってきた。

1) 授業におけるインターネットの活用

   本年度も,英語学習の動機付けという位置付けで,電子メールを利用した海外との交流を行った。2年生のライティングの授業では,教育関係の国際交流に関するホームページに掲載されている交流希望者リストから,生徒自身が同世代の交流相手を選び,電子メールによる交流を行った。交流相手国はアメリカ,オーストラリア,イギリス,カナダ,シンガポール,香港であった。9月から始め,交流相手からのメールの到着状況を見て,交流の時間を授業中に設定した。授業時間中で時間が不十分な生徒は放課後も活動した。また,1年生の英語の授業では,交流を希望してきたドミニカの高校生に電子メールを送ったり,アメリカのテキサス州の学校とは相手校の先生からオフラインでの直筆の手紙による交流の提案が電子メールであり,郵送による手紙による交流も行った。

   理科では,3年生の物理Uの授業において,課題研究のまとめとして,ホームページの作成を行った。

2) 新入生へのガイダンス

   本年度も,新入生に対しCAI教室の利用ガイダンスとして,基本的なパソコンの使用方法及びインターネットの利用(WWWと電子メール)に関してガイダンスを行った。

3) 生徒の自主的な活動

  ・ホームページの作成

  ・メーリングリストへの参加,電子メールによる国際交流等

4) 自主企画の実施

  ・理科課題研究のホームページによる発表

  ・Oral Communication におけるInternetの利用

5) プロジェクト等への参加

  ・バーチャルクラスルーム ’97

  ・International Boiling Project

6) 進路指導におけるインターネットの利用

   進路指導担当の教師が情報の収集に利用したり,進学希望の生徒が志望大学に関する情報をWWWを利用して調べるようになった。進路実現への意識付けに有効であった。

7) 地域への貢献

  ・市民開放講座「パソコン入門」(5〜7月,全5回)に約40名の市民が参加した。

   パソコンの基本操作(電源のON/OFF,マウス・キーボードの操作,Windows95),ワープロ,表計算,インターネットの基礎(WWW,電子メール),ホームページの作成

  ・姉妹都市交流への参加

   岩井市の姉妹都市(アメリカ・アーカンソー州パインブラフ)からの交換学生への電子メール利用環境の提供と本校生徒との交流など

8) 地域ネットワーク(RIC-Tsukuba)関連

  ・「ネットワークセミナー」への参加(7月)

  ・研究会への参加(12月)

9 )その他

  ・茨城県内の教育関係のメーリングリスト「edu-rose」の運用

  ・社会科教育メーリングリスト「shakai」の運用

  ・教師の研修(各種メーリングリストへの参加,WWWによる情報検索)

  ・社会科教師による新聞記事データベースの利用

  ・県内外からのインターネット関連の視察の受け入れ

○平成9年度の成果と課題

1) 成果

  ・インターネットを軸に特色ある学校づくりが行え,学校が活性化した。

  ・インターネットを利用した生徒たちの自発的活動が増えた。

  ・国際交流が盛んに行われ,国際理解教育が推進できた。

  ・インターネットの利用が英語教育の動機付けに有効であることが実証できた。

  ・市民開放講座や姉妹都市交流活動を通して,学校と地域との関係が深まった。

  ・教師の研修にインターネットは有効であった。

2) 課題

  ・インターネットの授業における活用の促進

  ・個人情報の保護

  ・ネットワーク・エチケットの指導

  ・インターネット運用規定・利用規程の継続的な検討

  ・ネットワーク環境の維持(専用線経費の自主財源化,ネットワーク管理者の育成等)

  ・イントラネットの構築

  ・セキュリティの強化

○100校プロジェクトに参加して

  100校プロジェクトに参加し,この3年間の活動によって,インターネットを軸に特色ある学校づくりを推進することができた。インターネットの教育利用については,実践的な研究を行うことができ,その成果に対して県内外の学校から注目され,視察を受けた。今後もインターネットの先進校としての対外的な貢献を行うべく,実践的な研究を進めていきたいと考えている。

  また,パソコンに関する市民開放講座を実施し,その中でインターネットについて紹介し,インターネットの啓蒙活動を行った。姉妹都市活動にもインターネット環境を利用して関わった。このように100校プロジェクトに参加したことによって,地域に根ざした学校づくりが推進された。

  インターネットの利用によって,生徒の活動にも変化が見られた。電子メールによる国際交流が日常的に行われるようになり,英語をコミュニケーションの手段と捉える生徒が増えてきた。また,一方的に与えられる情報に満足するだけでなく,インターネットを利用して自分に必要な情報を能動的に求める生徒も多くなった。自己表現の場としてインターネットを活用する生徒も現れ,放課後遅くまで残って自分のホームページを制作する姿も見られた。このように100校プロジェクトに参加したことによって,インターネットに関連した自発的な活動をする生徒が増えてきた。

  一方,教師の研修においても,インターネットの利用は有効であった。WWWを利用して,教材に関連した情報を収集し、授業に活用することも行われた。また,教科やインターネットの教育利用に関するメーリングリストに参加して,情報収集や情報交換をする教師も増えてきた。

  この3年間を簡単に振り返ると,1年目は主に課外活動における利用が中心で,校内のインターネット環境の整備を行った。2年目はCAI教室の45台のパソコンがインターネットに接続したので,授業での活用が始まった。3年目は授業で活用が定着し,校内LANの整備を行った。このように今まではインターネットの利用を促進する方向で活動してきた。しかし,今後はインターネットを利用することによって生じる問題点についての取り組の必要を感じている。特に,生徒の個人情報の保護,ネットワークエチケットの指導,著作権保護の問題等については,早急に対処しなければならないと考えており,ネットワーク運用規定と利用規程の策定を進めている。

  100校プロジェクトに参加することによって,国内や国外の教育に関する広範な情報を得ることができ,21世紀に向けた教育の在り方を考える機会を得ることができた。