葛尾村立葛尾中学校

○ ネットワークの利用状況

  平成8年度まで本校では 100校プロジェクトに参加し、ネットワークの教育利用を先進的に推進するという職員間の共通の課題意識のもと試行の中に生じた課題について改善を加えて実践するという日々チャレンジ精神で研究に取り組んできた。その結果として、情報発信のリテラシーは高まりは見られたが、自らを表現する自信のなさやコミュニケーション能力不足から、学習活動の中で受動的な活動となる場面が見られた。

  そこで平成9年度は、昨年度の研究の課題より、本校生徒にとって最も援助を要すると思われる表現力の育成に焦点をあて、研究に取り組んだ。

  なお、本校のネットワーク環境を整えるにあたり、多くの学校外ネットワークボランティアの方々に協力をいただいている。これまでの定期的なシステム構築により教師はもちろん生徒にとっても使いやすい校内ネットワーク環境が整備されてきた。そしてさらに本年度4月には、村の支援によりネットワーククライアントが生徒1人に1台という機器提供を受けるなど、充実した機器環境にすることができた。

○ 研究仮説

  インターネットを学習環境の一部として次のような手だてを講じた授業を行えば、基礎的・基本的な学習事項の定着を図ることができ、さらに、その段階から発展的に学習課題を見つけ、自主的に課題に取り組み、生徒の自己成長の育成が図られるであろう。

 1.自分を表現しようとする意欲を高めるインターネット活用…「表現意欲」

   表現とは、主体的かつ個性的なものである。本校が考える表現意欲とは、生徒自身が学習活動等の中で、主体的に自己を他に伝えようとする心情。

 2.情報を正確に判断する能力を高めるインターネット活用…「情報判断力」

   情報判断力とは、与えられた、もしくは見つけた様々な情報の内容を既習体験との比較により識別し、自分なりの理解をするための力。

 3.自分の情報を正確に伝える能力を高めるインターネット活用…「自己表現力」

   自己表現力とは、表現内容や表現方法について自分なりの認識をもち、表現するための技術を身につけるための力。

○ 研究の方針

 ●各教科並びに道徳,特別活動,その他教育活動全体にわたってネットワーク活用に努める。

 ●期待される学習効果を明確にし、活用場面の精選を図る。

 ●表現意欲,情報判断力,自己表現力との関連づけを図る。

 ●インターネット活用校内研修を充実させ、全教師の実践力向上を図る。

○ 研究組織

  本年度も昨年度同様、研究推進部という全体を掌握できる部門を中心に、三つの専門部を設置し、年度当初に設定した平成9年11月の自主研究発表会に向けて、全職員が一丸となって計画的に研究を行った。

 ●調査研究部

   授業実践の計画に沿って、生徒の表現力及びインターネットリテラシーに関する変容調査並びにデータベースの作成,表現力育成に関わる実践事例の収集・分析をする部門。

 ●授業研究部

   研究主題及び研究仮説に基づく各授業実践計画の作成,授業研究会の運営,表現力育成の視点に立った授業観察の視点を作成し、各授業実践の分析をする部門。

 ●活用研究部

   インターネット活用資料の収集・分析をし、校内研修会の検討,計画及び運営,ネットワーク環境の管理,整備,教育ソフトの検討をする部門。

○ 平成9年度の成果と課題

 (1) 研究の成果

 ・ インターネットに発信されている無限の情報から生徒の学習活動に有効な情報を収集し、意欲づけや興味関心を高める授業の展開ができた。

 ・ 学習のまとめるための道具として、模造紙だけでなくホームページを用いるなど表現の幅が広がった。また、電子データは加工がしやすいため、情報の再構成する過程を通して学習内容をより定着させることができた。

 ・ 表現力の育成に焦点をしぼって研究を進めてきたため、研究の方針が明確になり、授業の計画を立てる上でも方向性を見い出しやすかった。

 ・ 研究協議では、次回の授業研究の方針等を検討するなど、常に教育効果の向上をめざした話し合いがもたれるようになった。

 (2) 今後の課題

 ・ 各教科での活用の頻度や活用方法によって生徒の交流意欲に差が見られるため、教育計画の位置づけを図るとともに、計画的・組織的にリテラシーの育成に努めていかなければならない。

 ・ インターネット活用による学習効果の検証の累積がまだ十分とは言えない。

 ・ TT方式や総合学習的な指導等を要する授業が容易に行えないため、各教科及び道徳,特別活動間の関連を深めることが困難である。

 ・ 機器整備,維持のために人的・物的環境の援助体制を確立する必要がある。

○ プロジェクトに参加して

 (1) 地域の核としての活動

 ・ 昨年同様、文化祭や村のイベント等でインターネット体験教室を開催するなど、地域でも本校のネットワーク環境が活用できる機会を設け、ネットワークの教育利用価値の高さや活用方法を理解してもらうことができた。

 ・ 隣接の小中学校や教育関係者(あぶくま地域展開ネットワーク研究会)にネットワーク利用環境を提供することによって、地域の核となる学校間ネットワークを構築し、教育現場におけるネットワーク研究を支援している。

 (2) 教師の変容

 ・ 他教科との関連を図る研究推進により、授業の質的改善が図られた。

 ・ 計画的・系統的に教育機器活用研修を行った結果、教師の技術力向上が見られた。

 ・ 学習課題の解決のため、効果的なインターネット活用の場面や授業形態の工夫が見られた。

 ・ 日常的な電子文書の共有による伝達会議のスピード化が図られ、共通理解の一手段としてのネットワーク利用が定着し、パソコンを個人で所有するようになった。

 (3) 生徒の変容

 ・ 多様な表現方法の習得により、表現に工夫が見られた。

 ・ 学習環境として、インターネットを活用した結果、調べる力の向上が図られた。

 ・ 交流を成立させるため、自ら新たな課題を模索しようとするなど、学習活動に主体性が見られた。

 ・ 自己理解や自己をとりまく環境への理解が深まり、教育活動全体において個性を発揮しようとする態度が見られた。