慶應義塾中等部

○インターネット利用状況

・共同利用企画への参加

   昨年度に続き「全国発芽マップ」に参加し、今年度のテーマである「ケナフ」の栽培とホームページによる観察データの公開を行い、育ち方の地域差を学ぶと共にメーリングリストを用いて意見を交換しあった。

・自主企画の提案

   今年度は次にあげる2つの企画を考え、実行しようと計画したが参加者の募り方やスケジュールの立て方など運営体制の構築が上手くできずに1年が過ぎた。この経験を踏まえて来年度には実現したい。

 1)俳句入門

    俳句という文化を学ぶと同時に、他の地域の人々との交流を目的として、全国から行事や季節を感じさせる植物や景色などの写真を応募し、それを課題として俳句を募集する。運営委員会を組織し、応募作品に対する添削指導を行い、それらの中から優秀な作品を選び、「100校歳時記」を作成する。

 2)首都機能移転問題

    首都機能移転問題を通じて政治に対する生徒の関心を高めることを目的とし、現在の問題点を探り、その解決方法としてどんなことが考えられるか、また自分の住む町に首都が移転してきた場合に考えられる国としてのメリット・デメリット、地域としてのメリット・デメリットを考察し、それを各校でホームページ上に発表し、最終的には一堂に会して意見の交換を行う。(首都機能移転問題の凍結に伴い関心が薄れてしまった。)

○平成9年度の成果と課題

  昨年度からの課題であったネットワーク利用環境の拡張が行われ、本格的な利用が可能になった。ただ予算などの面からソフトの充実までに至らず、ネットサーフィンなどの基本的な利用にとどまっている。勿論これまでの状況から考えれば利用環境に格段の進歩が見られた年であった。

生徒および教員による研究レポートの発表

   本校のホームページの充実を図り、かつ普段の学習および研究を公開・発表する場として利用した。課題としては生徒が自分でホームページ化する技術を持っていないため教員がHTMLで記述することになるのであるが、その負担は大きく、全生徒にまで手が回らないのが実状である。また、著作権等に対する配慮が必要とされるため、手直し等も教員が行うことになる。もちろんこれらの問題を生徒にフィードバックさせることで更なる発展が期待できると思われる。

サーチエンジンの利用

   生徒が利用できる機器の拡張に伴い、多くの生徒がホームページの閲覧を行えるようになった。その際情報を収集する一つの手段として、サーチエンジンの利用を指導した。これによって生徒の情報収集も手軽にできるようになった。

インターネット利用の手引きの作成

   機器の拡張に伴い、実験的に生徒への開放を行った。その際ホームページを通じての「チャット」利用による問題が起こった。生徒は自分達だけの世界という考えを持ってしまったために、他者を排除しようと不適切な発言および利用をした。

   この問題を通じて、インターネットを利用する際のモラルを充分に教育する必要性を痛感した。見えない相手を認識する能力はまだ中学生には完全には備わっていないことを、こちらも十分理解しておかなければなるまい。

   また昨今のコンピュータ普及の著しい中、各家庭において機器に触れる機会が増え、かなり使いこなせる生徒が増えてきており、教員の予想の範囲を超えたこともできるようになってきている。このような生徒によるトラブルは当然起こりうることであり、特に得た知識を披露する自己表現であることも充分念頭に置いて考えねばならない。

   これらのことを踏まえ、各校における対策等を参考にして利用の手引きを作成した。このような問題は今後も起こると予想され、更に指導を充実させていかねばならないことであろう。

   なお、現時点においてインターネットを利用できる教室の開放は本校の専任教員以外に人材を登用して行えるようになった。これは今後ネットワーク管理者として専任教員の採用を実現する上での第一歩となったと考えられる。

○新100校プロジェクトに参加して

  100校プロジェクト参加以来、本校のネットワーク環境は急速に拡張され充実してきている。特に今年度はサーバー機としてワークステーション1台、クライアント機としてWindows95マシン20台が設置され、これまでの1サーバー・1クライアントであった状況を考えれば、実際に触れる機会の増加によって教員および生徒のリテラシーの面からも、インターネットというものに対する認識も急激な変化をみせた1年であった。ただ、現時点においては生徒の電子メール利用環境は整っておらず、受信または発信のどちらか一方向のみの利用となっており、双方向性を体験できずにいる。ネットワーク利用におけるモラルについて十分に検討しながら、双方向性を実現することが大きな課題と言えよう。

  さて、新100校プロジェクトの本来の目的である「インターネットを利用してどのようなことができるか」についてであるが、運営体制の構築が思うように実現できず大変残念な1年となってしまった。昨年度からの課題を徐々にクリアしつつあるものの、機器の拡張に伴い生徒が実際に体験することによって見えてきた課題は増えたといえる。しかし一方で本校における様々な問題点を再認識する機会ともなった。地域社会との連携、保護者の理解、カリキュラムの問題、1クラスあたりの適正人数、必要な機器・ソフトおよび施設の問題、前述したモラルの問題、ネットワーク管理者の問題など、インターネットの導入による新たな授業形態を構築する上で、今後十分な検討が必要である。このような問題を1つ1つクリアしつつ、インターネットを利用して何ができるかを追求していきたい。