兵庫県立神戸商業高等学校

○インターネット利用状況

実践項目1(インターネットクラスルーム)

  本校では3年生の課題研究を選択している2クラス(情報科12名・商業科15名)が、このプロジェクトに参加した。それぞれ週3時間と2時間の授業である。参加しているすべての生徒はそれぞれのIDをもっており、放課後等も自由にメールが使える環境にあった。このプロジェクトの始まりは、Kennewick高校Mrs. McRaynoldsとPunahou高校のMrs. Okawaがそれぞれ、昨年夏に来日された機会をとらえ、2学期を中心とした活動計画を相談したことである。

  Punahou高校とでは『日本の伝統的価値観』について9月から本校とハワイの双方合計約60名の生徒が自己紹介によるメールの交流から始め、12月にハワイの生徒が、まとめのレポートを提出するまでの間、様々な質問(日本語での)に答えることを中心にした形で行われた。レポートは、Mrs.Okawaが設定した10の単語についてそのオリジナルの意味や、現在の社会でどのような意味を持つかを調べることが課題になっており、次のような質問が送られてきた。「あなたはどんなときに義理を感じますか?」「忠義とはどういうことですか?」これらの質問は本校の生徒にとって大変答えるのが難しかったようである。その理由は質問された単語の多くが生徒の使わないものであったり、相手の日本語がスムーズなものでなかったことや、標準的な日本語を普段生徒が使用していない(若者の表現になれている)ことなどが理由であった。知らない単語の意味を調べて、改めて日本の文化に気がつくようなことも多く、本校の生徒にとっても収穫の多いプロジェクトとなった。また、CuSeemeの場面ではスムーズな画像の受信が出来ないにもかかわらず、相手の生の顔や声、動きが伝わったことで、大変盛り上がった授業となり、その後の交流のエネールギーになった。

  Kennewick高校との間では『100年前の暮らし』という共通テーマでそれぞれの地域のもつ特徴を比較し、お互いの文化を認識しあうことを目的にした。クラスを政治、経済、教育、娯楽、住居、衣服などのテーマ毎にグループ分に分けて担当の生徒を決めた。12月にMrs.McRraynoldsが再来日された時にアメリカ側の部分(右半分)が完成しているホームページのデータをzipディスクで持ってこられた。本校の生徒はその左側の部分をうめて完成させ、双方の学校のホームぺージからリンクさせる作業を進めた。情報を集める作業においては、アメリカ側では地域の博物館や図書館以外からも近隣の住民の所有する古い写真などが利用できたが、日本の場合100年前の写真は少なく、資料を集めるのに苦労した。この際、双方の生徒とも著作権をクリアするために様々な方面に連絡を取り、許可を求める作業の中で、多くのことを学んだ。

実践項目2(課題研究の授業)

  情報科3年の課題研究(40人)では個人のホームページの制作、インターネット放送局、情報収集のためのWEBの使用、E-mailによる国際交流等、様々な実験を行い、日常的な授業の中でのインターネットの利用の可能性について検証を行ってきた。

○平成9年度の成果と課題

  今年度の特徴としては、昨年とは異なった環境の中での試行が、あげられる。

  まず第一に、昨年10月以来インターネットの回線をOCNに切り替えたことである。このおかげで、それまで回線混雑のためWEBの閲覧やFTP等で授業では利用できないことが多かったが、回線切り替え以降複数の生徒が利用できる状況になったことは大きな変化であった。また、新しい機器も整備され、生徒にかかる時間的ストレスは軽減された。新しいメールソフト、ホームページ制作支援ソフトなどは生徒が創造的思考にかける時間を増やすことになった。生徒の利用の範囲とレベルが向上したことに伴って、それをサポートする側の負担が大きくなった。たとえば、DNS及びメールサーバー等の維持管理はシステム導入依頼した業者の助力に頼るところが多く、トラブルが生じたときの解決にかかる手間と時間のバランスを常に考えなければならなかった。今後我々教員の技術力の向上とメンテナンスにかける時間と要員の確保がさらに必要な状況になってきたと思われる。また、利用する生徒の数も多くなり、授業に限らず休み時間や放課後の生徒の利用規程や利用するための教育の体系化が必要になってきた。

○新100校プロジェクトに参加して

  100校プロジェクト以来、授業でのインターネットの利用方法の確立を目指して取り組んできた。今年度はインターネットクラスルームに参加することで、授業の中に一年間のリズムができ、また目に見える形の成果も残すことができた。地域との関わりとしては、毎年行っているコミュニティーカレッジにおいて、今年もインターネット入門ということで社会人に対して本校の施設を開放し、利用していただいた。参加希望者が多く、抽選で参加者を絞ったが、これは地域でのインターネットの利用に対する欲求の急激な高まりを伺わせた。今後、国内及び全世界の教育関係者がインターネットの利用に関して生じる課題を共有し、お互いの交流を深めることがいっそう求められていくと考える。今後、さらに様々な実験的取り組みを重ね、その評価とまとめをすることが本校に与えられた責務と考えている。