高知県立高知西高等学校

○インターネット利用状況

 ・実践項目1 自主企画【HTMLを用いて考える力を培い、平素の授業に使える「ネットワーク教材」の作成】

   すべての児童・生徒を対象に各教科における思考力・理解力・表現力の向上、知識・技能の取得をねらいとし、各教材を「しくみ」と「考え方」というキーワードで再構成し、HTMLによるリンク構造を与えWEB上に展開できる形態にする。

   いわゆるホームページによる情報発信や電子メール、Cu−See−Meなどによる交流学習も、時代が求める新しい教材や教育ではあっても、同様に大切である「教科書」の授業課題をすべて解決するものではなく、情報発信や交流学習なども、「生きる力」の育成のための一つの場面にすぎないことを忘れられてはならない。

   ネットワーク利用の一つの方向として、普通高校という特性もあり、「教科書」で教えるための教材をホームページ作成に用いられるHTML形式で作成し、教科書の内容にある「学習情報」に独自の形式をもたせた「ネットワーク教材」の開発に取り組んだ。

   HTML教材の選択理由は、教員が前もって教材内容をよく研究し、全体の内容の関連づけを意識して、内容を精選し作成するので、生徒が自学自習で復習するのに適した教材である。HTML教材はネットワーク教材としてインターネット上に公開し、広く意見を集めていくことが可能で、個々の教員の指導のノウハウを「再生産性」のある形式で吸収できる。また、教材データデータベースができれば、それぞれの学校の教育課程にあった内容を選び、また、手を加えて平素の授業に用いることができる。オフラインの場合、仮にスタンドアロンであっても、ハードディスクなどにコピーすることで利用できる。いずれの場合もプリント教材への転用により、コンピュータのない教室でも活用ができる。

 ・実践項目2 高等学校開放講座コンピュータ入門

   生涯学習推進事業の指定を受け、地域社会の人々を対象にした高等学校開放講座を開設した。タイトルは「コンピュータ入門」、その実践は次の通りである。

    第1回 8月 2日(土)14:00〜17:00コンピュータ操作の基礎

    第2回 8月 3日(日) 9:00〜12:00インターネット入門(1)

    第3回 8月 9日(土) 9:00〜12:00インターネット入門(2)

    第4回 8月10日(日) 9:00〜12:00インターネット入門(3)

    第5回 9月30日(土) 9:00〜12:00表計算入門(1)

    第6回10月25日(土) 9:00〜12:00表計算入門(2)

    第7回11月30日(日) 9:00〜12:00表計算入門(3)

   20歳代から60歳代まで24名が参加していただいた。インターネット入門では、WWWの体験、電子メールの交換などで初めて知り合った人々が積極的に交流を深めていた。デジタルカメラでグループ写真を撮り、その写真をワープロへ貼り付けたときには、表現力豊かな文書に感動してもらうことができた。これをホームページに載せるまでにはいたらなかったが、受講生には好評であった。

   表計算入門では、単なる和や平均にとどまらず、関数の使い方や事務処理への活用まで深めることができた。いろいろな計画もあったが受講生の要望にこたえることができた。来年度も開設の予定で進行中である。

 ・実践項目3 インターネットを使った進路指導

   3年生を対象にインターネットを通じて進路希望大学の募集要項、過去の入試問題、カリキュラムなどを入手させた。最新の情報をリアルタイムに入手できたことは、地方の生徒にはよい刺激となった。また、ホームページを見ることにより大学の特色・雰囲気も分かり進路決定への動機づけにも効果的であった。今後は、1、2年生にもロングホームの時間などを利用し進路指導に役立てる計画がある。

 ・実践項目4 郷土料理を通じた国際交流

   本年度、担当者の一人が、教員海外派遣事業により、米国で研修する機会があった。そこでホストファミリーとインターネットの教育への活用を討論することができた。まず、両国の異文化理解のために、お互いの郷土料理の紹介をし、レシピや写真など生の交流を図ることができた。今後、生徒同士の電子メール交換を通して他国の理解を深める計画も予定されている。    

概要

 ※今年度に取り組んだ活動概要を、項目毎に記述してください。

  重点企画及び自主企画への参加等についても学校内の取り組み状況を記述してください。

○平成9年度の成果と課題

 ※インターネット利用に関する成果と、問題点について  

 ・活用方法

   この形のネットワーク教材は、オフラインの状態でも活用が可能である。このことは、待ち時間なしで授業を進めることができるということである。もしLAN上でも40台が一斉にアクセスをすれば待ち時間のため授業の流れがとまってしまい、スムーズな活用から遠くなってしまう。

   電子メールにおいては、いまのままでも十分であるがWWWでは、どんなに回線を大きくしても25名を超える授業では、待ち時間で終わってしまうことも多い。

   インターネット上に公開することで、広く意見を集約できることが大きな利点であった。HTML形式のため、ワープロと同じ感覚で教材の手直しができ、各校の教育課程にあった授業実践ができる。

 ・教育効果

   授業実践の中で、個々の生徒に応じた進度で学習が行えたことは、それまでの知識や経験によって学習の差をうめることができたと思う。欠席した場合や復習をさせるときなど効果ある指導ができた。教員側もHTML教材を作成するにあたって「しくみ」と「考え方」にまとめることで、今まで以上に教材研究をすることができた。今後、さまざまな問題を解決するにあたって、物の見方・考え方を伝えることができるように体系づけたい。他教科での応用も可能であり、繰り返し指導することで基礎学力の定着をはかりたい。    

 ・技術的課題

   教材をHTML化する際に、どうしても化学記号や数式の表現に限界がある。数式ワープロの開発とともに数式を表現できるHTML形式の存在が必要である。

   HTMLを取得するときに、リンク構造が崩れることがあるがこれを解決するユーティリティーを作成した。また、市販のブラウザでは、余計な機能もあり単機能で授業に使えるブラウザも開発した。

   たくさんある画像やHTMLファイルを一つのファイルで管理できるような、HTMLコンパイラのようなものも必要である。

 ・リテラシー

   生徒は取りかかりが早く、操作も短時間で覚え、インターネットやHTML教材の使い方にもすぐになれた。今回、この教材の学習方法をVTRに録画することによって、授業の姿や学習の方法を短時間で伝えることができ、学習のレディネスを作ることができた。

   教員には、インターネット講習会を定期考査中に開催するなどしてインターネットとその利点を紹介することができた。しかし、年に数回しか実施できないことと、各教員の机にまで接続していないため日常的な活用までにはいたらなかった。今年度末に校内LANを敷設する予定であるので、まず教員の電子メールから普及を図りたい。

○新100校プロジェクトに参加して

  地域社会への学校開放事業「生涯学習推進事業」で、受講生からは、「来年もぜひ実施してほしい」との声を多くいただいた。そして、この講座には、本校の部活動の生徒にも協力してもらい、一斉授業形式で進めるなかで、一人の受講生も取りこぼしなしにさいごまでついてきていただいたのは、生徒なしでは成功しなかったと思う。

  わからなくなれば、手をあげてもらってすぐにそこへ、生徒が駆けつけるということで、地域社会と生徒との交流も図れ、社会人が外から見る学校と生徒がなかで感じる学校との違い「物の見方」を知ることができたことは、生徒にとっても大きな成長の糧となったようだ。

  コンピュータ室のネットワークも生徒とともに敷設し、ほんとに手作りのインターネットと生涯学習事業であった。

  また、海外研修中に地元の先生とインターネットと教育について会話する機会もあった。そのなかで、ネットワーク先進国アメリカにおいては、インターネットはディベートと関連付けられた調べ学習の道具であること、そして、インターネットは直線的ではなく人の脳のようなものであるので、考える過程を指し示すのには、適した道具であることを再認識することができた。