熊本国府高等学校

○インターネット利用状況

・実践項目1 授業への取り組み

  今年度の重点目標は、教科の正規授業内での活用でした。昨年度までは教師の教材収集には利用するものの、授業では実験的に各地のWebページを閲覧させるだけでした。しかし今年度は、一部の生徒を対象とする部活動としてではなく、正規の授業内でのWebページの作成や、E−mailを使った交信の実現を目指しました。まだ、一部のクラスの実践に止まってはいますが、以下の事例を実施できました。

  商業科3年生の「課題研究」では、Webページ作成を実施しました。生徒一人一人に自由に発信したいテーマを決めさせ、そのテーマにしたがって、立案、設計、データを収集し、作成。完成後みんなの前(他の教師も見学)で、作品発表会。表現能力を養う授業が展開できました。一人の落伍者もなく、作品を完成できたことは、初めての企画としては、予想外のことであり、次年度以降の拡がりが期待できます。

  「英語科」では、E−mailによる国際交流が週1時間ほどの時間を利用して実施できました。内容は、news groupの「fj」や「k12」とかサーチエンジンを使って交信相手を捜し、主にアメリカ、オーストラリア、ベルギーなどと、幾つかのテーマに沿っての意見交換でした。授業を離れても放課後などを利用して自主的に国内外の人々と交流を続けている生徒もあり、今後の拡大も期待できます。

・実践項目2 課外活動

  部活動(パソコン同好会)としては、郷土熊本のあまり知られていない情報を発信し続けるという目標で、前年度までに作成してきたWebページの更新と、新たな素材の発掘・発信を目標としました。特に「石橋のページ」は、小学校や高校の国語の教科書などの題材ともなっており、小学生からの質問のメールなど問い合わせも相次ぎ、「石橋のページでは最も充実している」などの励ましもあり、内容充実や更新の励みとなっています。担当した生徒たちが卒業し、後継者育成も課題ですが、引き継いだ生徒が、更なる充実を目指し、新たに県内の石橋データーベースを作成中です。

  また、生徒自ら、企画、観測、撮影、作成した「天体」や「水を考える」ページなどにも外部からの反響も数多く寄せられています。他にも、次々と新たなページも発信できました。構想から実際に完成するまで、数ヶ月を要します。それ故、完成させた喜びも大となっています。なお、パソコン同好会以外の一般の生徒たちも、放課後パソコン室に集まり、E−mailの交換や、興味本位のWebページ閲覧だけでなく、大学案内や入試情報の取得などと、生徒たちの利用範囲も着実に拡がっています。

・実践項目3 共同利用企画等

  「酸性雨調査プロジェクト」や「木材の平衡含水率試験」は観測機器の故障等で最近は観測されていません。沖縄の美里高校の「沖縄修学旅行」のMLでの情報交換。

  「既存データーベースの活用」は、特に現代社会の教材収集に役立っています。

  活用事例:過去の国会議員選挙の記事を紹介し、特に比例代表制のしくみ、その問題点について考えさせたり、票数により、各政党が獲得した議席が決まる過程(ドント方式)を計算させるなど。

  なお、本校が企画した「マナー指導の共同研究」は一部反応はあったものの、参加者が集まらず、企画倒れの状態であったのは反省材料です。

・実践項目4 広報・講習会活動

  インターネットの活動状況、特に本校のWebページ紹介を中心に校内に掲示し、広報につとめています。中学生のための「1日体験入学」や「学校説明会」でのインターネット紹介、本校自主企画の県内中学校の先生方を対象とした「パソコン公開講座」でのインターネット講座、熊本県商業英語研究会における「インターネットについて」の講師を務めたり、テレビや雑誌の取材など。また、県内の駅伝記録のパソコン処理システムを担当しており、その記録情報をWebページに発信しています。

○平成9年度の成果と課題

  第1の成果は、正規の授業に取り込めたということではないでしょうか。Webページ作成を利用して、自己表現能力の育成を試みた「課題研究」や、E−mailを使って映画や日常生活での体験等をテーマに討議し国際交流をはかった「英語」の授業等です。

  中でも、Webページ作成に関しては、文字、画像、音声を駆使して「自分で設定したテーマに基づく作品を完成させて、人前で解りやすく発表する」という、生徒たちにとって興味深い教材となり、マルチメディア情報活用能力やプレゼンテーション能力が育成できたものと、大いに評価しています。まだ、全クラスでの実践とはなってはいませんが、正規の授業として取り組めたことは、新たな発展の大きな一歩となるのではないでしょうか。この流れを全生徒・職員に拡大させることが課題です。

  課外活動では、熊本の情報、それも単なる観光案内ではなく、熊本の隠れた自然や文化を掘り起こし、その情報をまとめ上げたことは評価できます。郷土の情報を調べ、発信することにより、郷土熊本を見直し、更には私たちの住む地球を愛する心へと発展するものと確信しています。しかし、テーマが多岐に渡り、内容や問い合わせも多く、担当者一人では手に負えない面もあり、指導者を増やすことも課題です。

  過去2年間と比べ、生徒の利用は増加しました。マスコミから流されるインターネット関連情報をつかんでおり、教師からの指示はなくとも、自主的にブラウザーを操作し、ネットワークサーフィンを楽しんでいる状況で、ディスク使用状況も増加し、サーバーコンピュータのdisk fullの状態も相次ぎました。生徒たちの利用が盛んになるということは喜ばしいことですが、反面、興味本位の閲覧も多く、無駄なトラフィックを増大させている面もあります。今後、問題あるWebサイトの閲覧制限システムを構築したり、ネットワーク利用上のルールやマナー等の指導をさらに徹底することも必要です。

  なお、セキュリティー問題などのネットワーク管理とか、各種サービスへの新しい技術への対応、サーバコンピュータを含めた校内のハード面の更新など、課題も多く残りました。また、生徒の個人情報保護などの問題もあります。

○新100校プロジェクトに参加して

  担任教師が「あの生徒が本当に作ったのか?」と、驚異の言葉を発するほど、生徒たちの発信情報や表現内容には驚かされます。普段の教室や授業では、感じることができないほどにまとめ上げることができたのも、インターネットが新鮮で興味深い媒体となっているからです。膨大な情報の中から必要情報を見つけたり、自らの手で情報を発信するなどの過程で、情報活用能力や判断力、責任感も養われ、確かな自信を築きあげています。

  生徒に比べ、私たち職員の対応が遅れているのかも知れません。「他の仕事が忙しく、暇や余裕がない」などの声も聞こえてくることもしばしば。今の教育現場は日常業務に追われていることは確かで、時間外勤務や自宅での仕事が増えたことも事実です。しかし、新しい時代を生きる生徒たちに応えるのも教師のつとめ、新しい教育媒体としてのインターネットの活用法をさらに前進させたいものです。教師がいちいち指導しなくとも、生徒同士での情報交換による自発的問題解決も可能です。教師にとっても、居ながらにして、教育情報を獲得できる重宝な「道具」となります。教師や学校の在り方さえ、大きく変化させるのに役立つ「道具」だと確信しています。その「道具」を大いに活用するためにも、さらに積極的に取り組む考えでいます。また、サーバー管理など忘れて、自由にインターネットの恩恵に浸れる時代が、早く来るよう願っています。

  本プロジェクトに参加でき、インターネットという新たな教育環境を、先駆的に活用できたことは、大きな喜びです。今後はインターネットの教育活用に、少しでも貢献できればという方向で、地域を含めた校内外での活用普及につとめなければと考えています。ご指導をいただいたIPA、CEC、KANSのみなさまに、深く感謝申し上げます。