東京都立光明養護学校

○ネットワーク利用状況

<生徒たちの取り組み>

  今年度も,主に高等部の生徒が取り組んだ。科学・社会科・自由課題・選択科(パソコン科)・クラブ活動・特別活動等の時間等に,電子メールの具体的機能の解説と実習などと平行して,ホームページに発表する作品の制作・自分自身を紹介するページ行事の記録の作成などを行った。作成方法については,プログラムの練習をかねてHTMLを記述しながら作成した生徒・ホームページを作成ソフトを利用しながら,教師の手助けを借りて作成した生徒・ホームページへの掲載については教員が引き受けてしまうケースなど,その生徒の実態に応じた指導方法をとった。(肖像権などの問題については,本人だけでなく,保護者の了解をも得るようにしている)

  また,ネットワーク上だけの交流だけでなく,ネット(チャレンジキッズ)を通じて知り合った遠くの学校の生徒と,フェイス・トゥー・フェイスの交流も行った。

<教員側の取り組み>

  メーリングリスト「edhand(障害児教育とインターネット)」への参加・暫定版ホームページによる研究活動の紹介・重点企画/高度化教育企画「障害児童・生徒のネットワークへのアクセシビリティ改善」(在宅学習支援システムの検討)への参加などに取り組んだ。

 今年度,ホームページを使って公開したデータは以下の通りである。

  生徒の作品・ページの公開

  高3修学旅行

  中高体育祭

  1グループ・校外学習 

  哲学の授業?(6月4日・科学の授業から)

  高2移動教室河口湖

  重複障害児のコミュニケーションと支援テクノロジーの活用

   −スイッチで動くおもちゃとコミュニケーション・エイドの利用−

国立特殊教育総合研究所教育工学研究部(特殊教育情報センター)松本 廣

   コンピュータを活用した学習指導

   1997年度公開講座・重度障害者のためのコミュニケーション技法指導者養成講座

   養護学校内外における相互支援システムについて

   東京都立光明養護学校での取り組み(チャレンジキッズ作戦会議のために書いたもの)

   障害児教育における工学技術

   肢体不自由教育の今日的課題と今後のあり方

   GIDEI(シリアルキー)の概要

   ユニバーサルデザインの原則

   職業教育研究推進校(平成7〜9年度)授業公開・研究報告会

   肢体不自由養護学校における情報機器を活用した指導 

○1997年度の成果と課題

  今年度についても,「生徒自身の作品,あるいは,自分自身を紹介する場としてのホームペー」をキーワードに,ホームページの充実化をはかってきた。ホームページを見た保護者などから,丁寧な感想と励ましのメールが届くなど,養護学校という狭い世界で,「狭い」人間関係の中で過ごしがちな彼らにとって,「他者を意識すること」「外の多くの人たちを意識する」ことで,目を向ける世界を拡げ,逆に,自分自身を見つめ直す,いいきっかけになっていたように思う。

  また,こういった情報発信ツールとしてのインターネットの利用の他に,情報収集ツールとしての利用・・・「情報を引き出す小窓」として,より手軽に,様々な情報を検索し,収集し,学習とか生活に役立てることが出来た。

  コミュニケーションツールとしての利用としては,今年度も,主に滋賀大学教育学部付属養護学校のネット(チャレンジキッズ:インターネット経由で接続が可能)を使った交流を行った。年度当初,和歌山大学付属養護学校(知的障害児対象校)から届いたメール,「今度,修学旅行で東京に行くので,その時交流できないだろうか」がきっかけで,ネット上だけでの交流にとどまらず,フェイス・トゥー・フェイスの交流にまで発展させることが出来た。光明の生徒たちにとっては,「遠く離れた(異なった障害を持つ)人たちを,友人としてどのように迎えたらいいか」を考える,よいきっかけになった。また,バーチャルな世界で知り合った人たちとの出会いを,現実社会のより豊かな出会いに結びつけるためのよい経験になったようにも思われる。

  それを可能にしたのは,子どもたち自身のフランクな交流の場と,それを支えるための教員同士の緊密な連絡の場=チャレンジキッズを提供し支え続けてくれている,滋賀大学教育学部付属養護学校の関係者各位である。この場を借りて感謝の意を表したいと思う。

  今年度についても,高等部教科学習対応グループの生徒を中心に実践を進めてきたが,システム管理担当者が,重度重複障害の生徒の担当になったこともあり,サーバーの置いてある部屋から少し離れた,重度重複障害を持つ生徒たちの教室までケーブルを引いた。日常的には,教員がメールのチェックとかサーバーの管理などに使うことが多かったが,回線を22.8kから64kにして頂いた事もあって,長期欠席の生徒の家にノートパソコンを持っていき,PHSをつないでのCU−SeeMeを使った遠隔授業の実験が可能になった。画像・音質共に,お世辞にもすばらしいものとは言い難いが,「感動的な授業だった」という評価も出された。コミュニケーションの原点を考えさせられる出来事であった。全国各地で肢体不自由養護学校の高等部の訪問教育の試行が始まっていることをあわせて考えたとき,今後も試行・研究を続けていく必要があると思われる。

  また,ハブを中継してケーブルを延長することにより,クライアント・マシンを小学部と中高等部の職員室にも置くようにしたこともあり,ネットワークの輪も徐々に広がりを見せつつある。「パソコン等活用委員会」を中心に「インターネット利用に関する校内規定」の検討も始めた所である。

  保護者・地域との連携も重要な課題である。障害児教育における情報教育を推進していく上で,児童生徒の保護者・地域の人々の理解もかかせない。今年度は,重度障害者のためのコミュニケーション技法指導者養成講座を行った。これは,東京都の学校開放施策の一環として行われている公開講座の一つとして行っているもので,対象は,児童生徒の保護者・地域住民の方・光明養護の教職員などであり,講師には,地域とか他の学校などで先進的な取り組みをされておられる方・研究者・コミュニケーション機器を取り扱っておられる業者の方などにお願いし,本校教員が助手をつとめた。 

  最後に環境整備の事に触れておこうと思う。100校プロジェクトに参加させて頂いて以来,当初予期し得なかったような問題もいくつかあったが,基本的には,障害児教育においても,その利用方法さえ間違えなければ大きな教育効果をあげ得ることが実証できたと思われる。児童生徒の実態(運動障害)を考えたとき,その必要性は通常の場合以上という事もできる。しかし,回線利用料の問題・システム担当者の過大な負担の問題は,依然として大きくのしかかっている。早急な対応が望まれるゆえんである。

 (文責:高等部伊藤 守 E-mail:koumei@koumei-sfh.setagaya.tokyo.jp 2/20)