東京都立光明養護学校そよ風分教室

○インターネット利用状況

<ホームページの作成>

  児童・生徒の自己紹介と行事の紹介が主であった昨年度までの内容を見直し、次の点を念頭に置いて、9年度版ホームページの作成にとりかかった。

   ・そよ風分教室における教育活動を紹介することによって、長期入院児童・生徒に対する教育の重要性について広く一般にアピールしたい。

   ・ホームページを児童・生徒の作品発表の場として活用したい。

  1学期当初、ホームページ(以下HP)への氏名掲載について保護者にアンケートをとり、本人及び保護者が氏名掲載を希望する場合を除き、イニシャルまたはニックネームを使用することにした。写真は児童・生徒を特定できないものを掲載することも確認した。

  「分教室紹介」の文面・入力は中学部の生徒が担当し、背景色や画像レイアウトなどは教員との共同作業で完成させた。

  2学期には英語担当教員の翻訳による英語版「分教室案内」をアップできた。

  「児童・生徒の作品」には、ジャンルを問わず本人の承諾を得て作品を紹介した。数人の子どもたちには画像処理の方法を教える機会があったが、作業は主に教員が行った。

<ネットワーク上の情報を使っての学習>

 (例)国語 小学4年 単元「方言と共通語」

    ネット検索を活用し、各自興味のある地方の方言について調べ学習を行った。

 (例)社会 小学5年 単元「野菜づくりのさかんな地域」

    レタス栽培農家のHPを閲覧し、栽培の工夫や出荷先などを調べた。

  十分な図書環境が整っていないそよ風分教室にとっては、インターネットがそれを補う重要なツールとなっている。参考図書が見あたらない場合や、最新の統計資料を求めているときなどに役だった。

<メールによる交流>

  メールアカウントは個人に発行せず、新着メール確認をはじめ送発信は一括して担当教員の管理下においた。

   ・異動した教員との交流:異動した元担任にメールで近況を伝えるなどした。

   ・退院転出した児童生徒との交流:自宅でインターネットが使用できる環境にある児童生徒が、まだ入院中の友達に激励のメールを送信してくれた。

   ・メールアドレスを持つ知り合いとの交流:手術を控えて外泊もできずにいた生徒は、自宅療養中の知人と頻繁にメールのやりとりをしながら緊張をほぐすことができた。

   ・メールボランティアとの交流:ホームページを見て児童・生徒の作品に対する感想をメールして下さった方と数人の児童の交流が続いている。

<余暇活動>

  ネットスケープの操作を覚えた児童・生徒は、休み時間や放課後に気軽にネットサーフィンを楽しむことができた。

  ブックマークに登録されていくURL件数が増えてきたため、個人のフォルダを作りその中に整理するように指導した。

<本校ー分教室間の事務連絡>

  地理的な条件とカリキュラムの違いから、分教室の教員は本校で行われる校務分掌会議などに頻繁には出席できない。事務連絡の一部にメールを活用した。

<病院との連携>

  国立小児病院・小児医療研究センターのHPに本分教室のHPがリンクされた。

  担任と主治医の連絡方法としてもメール利用が始まった。

○平成9年度の成果と課題

<活用方法>

  転入してきたばかりの児童・生徒とって、分教室のHPを閲覧することは、インターネットを体験すると共に、分教室を知るためのオリエンテーションの良い機会となった。

  今年度は「長期外泊中の自宅学習をインターネットを利用して支援する」という活用にあてはまるケースがなかった。電話の普及のように、各家庭にインターネット使用環境が整うまでには、まだ相当な時間がかかると予想される。自宅への機器の貸し出しや公的資金による回線使用が実現することが望まれる。

  中学部の生徒の何人かは、興味を持った分野のHP制作者にメールで質問したり、掲示板に書き込んだりと病院外の人とコミュニケーションをもつ手段としてインターネットを使用していた。ある生徒は海外のアーティストにファンレターを送りたいと思い、宛先をネットで探そうとした。結局アーティストの公式ページは見つからなかったが日本の熱心なファンのHPを見つけ、制作者にメールで問い合わせをしてみた。その方も宛先をご存じなかったが、HP上で他のファンに情報提供を呼びかけてくださり、後日生徒にメールで教えて下さったというエピソードもある。

<教育効果>

  自分の作品を外部の方にも認めてもらえたことで、児童・生徒の作品制作の意欲が増した。ある児童は長期にわたる入院生活で消極的になりがちで、自分の作品を廊下の掲示板に掲示することすらいやがっていた。ところがホームページに掲載した作品に対し、知らない人からもメールで感想が送信されてきたことなどが自信につながったようだ。その後も作品を掲載することに同意し、感想メールを楽しみに待つようになった。

<技術的課題>

  本プロジェクトの担当教員自身がパソコンに関して初心者の域を出ないのが現実であった。日常のメール管理やHPの更新は可能であったが、トラブルが生じた場合は分教室では対応しきれなかった。本校のパソコン担当教員にメールでサポートを受けるだけでなく、わざわざ来室してもらうことがしばしばあった。日常的に機器を操作する教員が限られており、結果的に授業におけるパソコン及びインターネット活用は全学年・全教科に広がらなかった。上記のことからも、教員を対象とした適切な研修の必要性を痛感した。

<リテラシー>

  治療や安静時間のために授業時数を十分確保できない分教室では、パソコン機器操作の指導などのための授業設定は困難である。実際には週二回、午前に他の教員が重度重複障害児童・生徒の指導に当たる時間帯の裏で、学年相応教科対応の児童・生徒の自習時間が組まれており、そこが導入指導に当てられた。その後は休み時間に生徒同士が教えあうなどして、結果的に在籍がある程度長期にわたる児童・生徒は数種類のソフトの基本的な操作を身につけることができた。

  いわゆるネチケットに関しては、その都度児童・生徒の利用範囲に応じて個人的に指導してきたが、今後は、本校「パソコン等活用委員会」を中心に検討中の「インターネット利用に関する校内規定」に基づいて一貫した指導をしていきたいと考える。

<その他>

  Yahoo!JAPANで「病院内学級」をキーワードに検索できるよう登録変更をした。

○新100校プロジェクトに参加して

  パソコンに習熟している教員がいないため、本プロジェクトに参加することに不安があったが、ネットを通じて広がったサポートの輪に助けられて今日に至った。児童・生徒も「人のぬくもりを感じるインターネット」利用を体験することができた。生活空間を制限されている長期入院児のQOL向上に、インターネットは大きな可能性を持つと実感した。

  (文責:そよ風分教室 赫多 久美子 E-mail:soyokaze@nch.go.jp )