札幌市立幌南小学校

○インターネット利用状況

 ◎国際環境教育プロジェクト〜「地球を守り隊」の活動を通して〜

  <ゴミによる環境破壊の問題に世界の仲間と取り組む>

 ●世界の仲間・長期海外旅行中の日本人と共同環境調査

  本校では,子どもたちにとって最も身近な環境問題として,ゴミによる環境破壊を取り上げ,世界の仲間たちと共に考え,協力して活動している。

  平成9年度の活動は,子どもたちが海水浴でよくいく小樽市銭函海岸の漂着ゴミを仕分けする体験から始めた。その大量のゴミの中に,ロシアや韓国から流れ着いたペットボトルやビニール袋があったこのことから,街から川へ,川から海へというゴミの動きの他に,国境を越えたゴミによる環境破壊を含め世界各地でゴミによる環境破壊があるのではないかと考えた。

  そこで,子どもたちは,身近な街や川でゴミ拾いボランティアを行ったり,さらにリサイクル活動をすすめると共に,ミクロネシア,アメリカ,ドイツ,ベラルーシ(旧ソ連)などの仲間に,電子メールでそれぞれの地域でのゴミによる環境破壊の実態調査を呼びかけた。

  

今年いっしょに活動した世界の仲間たち

アメリカ・ウィルソンスクールの仲間たち(左),フランスのサリ先生(中上),

ミクロネシアの代表・ダーリア(中下),ベラルーシの仲間たち(右)

  また,アメリカ大陸を歩いて横断中の関口さん一家,中国を歩いて横断中の「平成の遣唐使隊」ともインターネットを通して連絡を取り合い,アメリカ・中国の自然の様子やゴミによる環境破壊の様子を教えていただいた。このようなインターネットを使った共同環境調査の結果,ミクロネシアやハワイの海岸にまで日本からのゴミが大量に漂着していること,中国やベラルーシ,ロシアなど世界各地で,ゴミによる環境破壊が進んでいることがわかった。

 ●世界の仲間と意見交換し,ゴミ拾いボランティア,リサイクル活動を

  このような実態がわかったところで,世界の仲間たちと相談して(ミクロネシアとは,衛星を使ってリアルタイムの意見交換を行った),まずは身近なところで自分たちにできることをと,ゴミ拾いボランティアとリサイクル活動をいっしょに行うことになった。ミクロネシアからは,日本のインスタントラーメンの袋などを拾ったと報告があり,子どもたちをびっくりさせた。また,山形県・岡山県など国内各地の仲間もいっしょに活動してくれ,子どもたちを随分力づけてくれた。

 ●インターネットを介して知り合った人たちとの対面

  今年は,インターネットを通して交流した方,インターネットで知り合った方から紹介してくださった方などに,子どもたちが直接会って,環境問題や大自然,リサイクルのあり方について学ぶことができた。その一例が,文部省宇宙科学研究所のロケット博士・的川教授(宇宙のゴミ,生命と地球の大切さ,国境を越えて地球を守る大切さ),アメリカ大陸を歩いて横断した関口さんご夫妻(大冒険とアメリカの大自然),チェルノブイリで被曝したベラルーシの子どもたち(環境破壊で命を失うことさえあること,悲劇に負けず明るく生きるたくましさ,ベラルーシ・ロシアの環境破壊・リサイクル事情),Earth Shopのニールさん(リサイクルと再生品を使うことの大切さ)である。このように,インターネットで人に学ぶ活動は,直接会って学ぶ活動につながる可能性も数多く秘めていることがわかった。

 ●古紙回収行き詰まりの原因を,全国の様々な立場の大人の人たちから学ぶ

 <「集めるリサイクル」から「使うリサイクル」への発想転換>

  子どもたちが,がんばって集めた古紙を回収業者の方に渡そうとしたところ,これまでお世話になっていた方は廃業し,他の業者でも回収を断られたり,有料回収になると言われたりして,困り果てると同時に,強い問題意識を感じて,その原因を探り,何とか解決したいと活動を始めた。

  その際,ネットワークを通して協力を呼びかけたところ,わずか2日間で,全国の消費者,消費者団体,行政,回収業者,製造業者,環境関係のシンクタンクなど,実にさまざまな立場の方々が,30通以上のメールを寄せてくれた。親切に寄せられた情報,励ましの言葉に,子どもたちは,ネットワーク上の人々の温かさに感激し,真剣に原因の関連を突き詰め,これまでのリサイクルに出すだけの「集めるリサイクル」から再生品を積極的に使っていく「使うリサイクル」への発想転換が必要なことに気づき,インターネットなどを使って広く社会に訴えていった。

 ◎「北国情報コーナー」と「北国情報サービス」

 ●電子メールで全国の小学生と活発な交流

  「北国情報コーナー」「北国情報サービス」を運用する中で,全国各地の子どもたちから,実に多くのアクセスや質問,社会科の共同学習の依頼があり,子どもらしい視点から,ほほえましい共同学習が行われている。

 ◎日本最大の小学生用教科・領域別リンク集「こうなんワンダーランド」の運用

 ●全国のホームページ作者との交流,全国の小学生との共同学習>

  「こうなんワンダーランド」に,さまざまなホームページ作者の方や全国各地の小学生からコンタクトがあり,それをきっかけにいろいろ教えてもらいながら学習したり,交流が始まったりしている。

○平成9年度の成果と課題

■成果■

 「閉ざされた教室」での学習から,「開かれた教室」での学習へ

 ●「人とのつながりの中で学ぶ温かいネットワーク利用学習」の実現

  国際環境教育プロジェクトなどを通して,これまでの教師と子どもだけとで学習する「閉ざされた教室」での学習から,ネットワーク上の全ての子どもたちを共同学習者とし,ネットワーク上の多くの大人たちを教師として学校外の教育力を導入した「開かれた教室」での学習への変革が実現できた。そして,その中で,人との結びつきのすばらしさ・人の心の温かさを子どもたちに実感させることができた。

 ●学習に使えるホームページの充実

  「北国情報コーナー」「こうなんワンダーランド」など,学習に使うことのできるページをさらに充実させることができた。

■課題■

 ●「人との交流をコーディネートする支援」にかかわる教師の負担が増しつつある。

○新100校プロジェクトに参加して

  交流を通して,人との結びつきのすばらしさ・人の心の温かさを実感

  個性尊重の教育をすすめてきた中で,ナイフで人を傷つけるなど,心の痛む事件が続いている。そんな社会性が欠如しつつある子どもたちに,「人と人との結びつき」であるインターネットは,様々な子どもたちと「共に学び,共に生きる」体験をする場を創ってくれた。また,多くの学校外の大人から励まされたり,学んだりすることで,「人の温かさ」や「人のすばらしさ」を実感することができた。ネットワーク上で出会った多くの方が本校を訪ね,実際に子どもと触れ合いながら,さらに多くのことを語ってくれた。

  「インターネットを使ってみて,本当に人ってあったかいなあって思いました。」というある女の子の言葉が,新100校プロジェクトのすばらしさを物語っているように思う。このような機会を与えてくれた全ての方々に,教師・子ども共に心から感謝している。